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機械学習で動画配信帯域を最大50%減。ブライトコーブが新エンコード技術「CAE」

 動画配信プラットフォーム事業を展開するブライトコーブ(Brightcove)は、機械学習を活用して動画コンテンツごとにエンコードを最適化する技術「Context Aware Encoding(CAE)」を、日本市場で提供開始する。動画の品質を向上させながら、配信側のストレージコストと使用帯域幅(CDN使用量)を最大50%、平均で40%削減するという。同社の動画配信プラットフォーム「Video Cloud」のユーザーはオプションサービスとして利用できる。

Context Aware Encoding(CAE)

 CAEは、帯域が限られている状況においても、視聴者に対して優れた動画体験を提供できるというエンコードの新技術。従来と異なる点として、機械学習によるコンテンツ分析アルゴリズムを用いて、視聴者の動画体験を多面的に考慮。個々の動画コンテンツの複雑さや、視聴環境に最適化したカスタムエンコードプロファイルを作成。従来よりも早く起動し、バッファリングの少ない高品質な動画を視聴者に届けられるとしている。

 個々の動画を分析し、想定されるデバイス分布やネットワーク状況を加味した最適化を実施。それを受けて解像度やフレームレートなどの動画パラメータ、ビットレートやコーデックプロファイル/レベルなどのパラメータを最適化して適切なABRラダーを設定する。

 同社は、動画配信のハードルを下げるために配信における労力とコスト削減に向けた取り組みを進めており、新技術のCAEより、膨大な数の動画やストリーミングを管理するメディア事業者にとって課題となっている、ストレージ量と帯域幅の削減に貢献。必要のないレンディションを減らし、ビットレートを自動調整することで、ストレージコストと使用帯域幅を削減する。

 機械学習を活用する利点について、BrightcoveのCTOを務めるAlbert Lai氏は、「今後、動画の種類や本数が増えていくことによってデータが蓄積でき、より適切なエンコードができる」といった点を説明している。なお、映画やドラマなどは、シーンによってアクションや静かな語りなど映像に変化があるが、現時点ではシーンごとに分析してエンコードを行なうのではなく、1本の動画全体で最適なエンコードを適用する形となる。

BrightcoveのAlbert Lai CTO

 CAEが利用できるブライトコーブのVideo Cloudは、マルチデバイス対応の動画配信サービスの環境を実現し、効率的なコンテンツ管理やデジタル著作権管理(DRM)、暗号化などのセキュリティ、視聴データに基づいた詳細なレポートなど、動画配信に必要な機能をオールインワンで提供するクラウドベースの動画配信プラットフォーム。

グローバルと日本の動画市場動向。ライブ配信などの新展開も

 同社は動画メディアや動画マーケティングなどの最新動向に関するカンファレンス「PLAY Tokyo 2018」を開催。Brightcove CEOのJeff Ray氏は、グローバルでの動画市場のトレンドとして「企業が社内外で動画を活用する」、「企業がメディアのように動画でストーリーを語る」、「メディアのライブ配信の成長と多様化」、「OTTサービスの進化」、「複雑化する動画技術」といった5つのポイントを紹介した。

Brightcove CEOのJeff Ray氏
グローバルの動画トレンド

 また、日本法人であるブライトコーブのCEO兼社長を務める伊崎洋児氏が、日本市場の動向について説明。グローバルでは動画活用は米国が先導しているものの、トレンドとしては日本でも同様に変化しているという。

ブライトコーブ日本法人の伊崎洋児CEO兼社長

 日本向けサービスとしては、前述の動画配信ビジネス向け「Video Cloud」や、動画マーケティング向け「Video Marketing Suite(VMS)」、企業の社内向けコミュニケーション用「Enterprise Video Suite(EVS)」を展開している。

 今年の新たな展開として、上記のCAEに加え、動画ポータルを簡単に作成するツールに、パーソナライゼーション機能を追加した「Gallery with Personalization」のベータ版を'18年後半~'19年前半に提供することや、ライブ配信ソリューションの「Brightcove Live」向けに管理画面で簡単に使える「Live UI」を第3四半期に提供する(現在はAPI利用)こと、OTTサービス向けターンキーソリューション「OTT Flow X」を2~3カ月以内に提供することを発表した。

最新サービスの日本展開

 日本で同社が注力しているポイントとして、クラウドサービス提供だけでなく、動画配信サービス事業者が他社と差別化するための技術コンサルティングやカスタム開発の提供することや、日本語を話すスタッフを東京だけでなく欧米にも配置することでタイムゾーンを超えて日本語でのカスタマーサポートを提供できることをアピールした。

日本の注力ポイントなど
「PLAY Tokyo 2018」を開催