ニュース
Oculus GoやGear VRで楽しむパ・リーグVR配信。家でもチャットで“一緒に観戦”
2018年7月25日 20:35
プロ野球パシフィック・リーグ公式戦をVR空間の中でライブ配信・見逃し配信する新サービス「パーソル パ・リーグTV VR」が27日よりスタートする。KDDIグループのSupershipが開発したVRプラットフォーム上で提供し、Oculus GoやGear VRといったVRデバイスで観る形となる。新しいスポーツ観戦スタイルをデモ映像で体験した。
「パーソル パ・リーグTV VR」は、KDDIとSupershipが25日に提供開始した、スタジアム観戦VRプラットフォーム「XRstadium」(エックスアールスタジアム)のコンテンツ第1弾。パシフィックリーグマーケティングが、映像配信サービス パ・リーグTVのVR版としてチャンネルを開設した。7月27日以降のパ・リーグ公式戦の中から30試合以上をライブ配信し、見逃し配信も実施する。1試合ごとに購入する方式で、視聴料金は7月27〜29日の北海道日本ハム対オリックスは各500円。オープン記念で各試合1円で視聴できるキャンペーンを実施する。
対応VRデバイスはOculus GoやGear VRで、Android 5.0以上のスマートフォンとVRゴーグルの組み合わせでも利用できる。各デバイスごとに用意されているアプリ(無料)を、Oculus GoやGear VRの各ストア、Google Playから端末にダウンロード。その後、観戦したい試合をXRstadiumのサイト上で購入する。近日中にMirage SoloとDaydream Viewにも順次対応する予定。デバイスが異なってもアプリの基本的な機能に違いはないという。
スタジアム内の最大5カ所(バックネット、ホーム一塁ベンチ横、ライト観客席、センター、ビジター三塁ベンチ横)に設置した独自のカメラで、4K解像度で360度撮影を行ない、VR空間での観戦用にステッチングしたものを配信。ユーザーはVRで観戦中、カメラを自由に切り替えて行き来でき、テレビ中継とは異なる迫力映像が楽しめるとする。カメラを設置する球場は、札幌ドーム、メットライフドーム、ZOZOマリンスタジアム、京セラドーム大阪、楽天生命パーク宮城の5つ。
バックネットやセンターのカメラアングルを選んで観てみる。CGで構成された劇場空間のスクリーン部分に、試合の実写映像が配信されている。
アプリには、アバターを表示したりボイスチャットするコミュニケーション機能を備えており、友人を最大2人まで招待して、そのアバターと一緒に試合映像を見たり応援できる(アバターのカスタマイズは現時点では不可)。また、同じ配信を観ている不特定多数の人とのテキストチャットも楽しめる。音声認識システムを備えており、文字入力はキーボードを使わずに喋るだけで行なえた。
一塁や三塁のベンチ横、ライト観客席のカメラアングルを選んでみると、目の前で野球の試合が行なわれ、横や後ろに視点を動かすと試合を応援している観客の姿が目に入る。まるで実際のスタジアムの席に座り、試合を観ているような感覚が味わえた。
7月27〜29日に行なわれる北海道日本ハム対オリックス(札幌ドーム)はフルHD解像度で映像品質は約5Mbps。遅延については通信環境によるが、おおよそ10〜20秒程度とのこと。また、現時点では映像のデータ量が膨大になるため、試合が行なわれているエリア(視界270度程度)がリアルタイム映像、それ以外の観客席などは静止画で、数十秒おきに更新する形にしている。
デモ映像では表示されなかったが、実際の配信ではスポーツのデータの解析や配信などを手がけるデータスタジアムからの情報を元に、試合速報や選手情報、シーズンの成績などの情報をVR空間内に表示。一部アングルでは、Picture in Pictureの子画面表示にも対応し、別アングルから撮影された選手の映像などが観られる。また、全アングルで試合解説音声を配信。テレビ朝日メディアプレックスが協力する。
日本ハム対オリックスの配信スケジュールは、7月27日18時、7月28日14時、7月29日14時。オープン記念で視聴料金(各500円)から499円を利用クレジットカードに返金し、各1円で視聴できるようにする。
また、複合カフェ「快活CLUB」の全356店舗で、様々なVRコンテンツが楽しめる「『VR THEATER』見放題プラン」(税込900円)のひとつとして7月27日から配信。VRデバイスを持っていなくても、複合カフェ店内でパ・リーグTVのVR配信を楽しめるようにする。
KDDIも、Facebookの協力のもと、全国のKDDI直営店でOculus Goを使った体験ブースを順次設置する予定。
パーソル パ・リーグTV VRでは8月もVRライブ配信を予定しており、8月10日以降の配信スケジュールは順次公開する。
KDDI ライフデザイン事業企画本部 ビジネス統括部長の繁田光平氏は、かつてauのケータイ/スマートフォンに提供していた「au Smart Sports Run&Walk」や、近年ではスポーツインターネットメディア「SPORTS BULL」と連携して高校野球やインターハイ競技のライブ中継を行なっていることなど、KDDIとスポーツへの取り組みを紹介。
次世代移動通信システム「5G」の高速・大容量で低遅延、多接続が可能といった特徴を活かし、「(AR/VRに代表される)XRの技術によって、単純な配信・ブロードキャストではない、インターネットの技術をマージした新しい体験を作っていきたい。例えばプロ野球やサッカーなどのスポーツ観戦で、スタジアムの(リアルの)シートは満席で埋まっているけれど、“XRシート”を買って観るといったことや、プロによる実況中継やネットで一般の人がやっている実況を聴きながらの観戦、これからVRで撮り続けることで(アーカイブされた)試合の大事なシーンをVRで観てみる、といったことを、5Gの時代に向けてやっていきたい。スポーツ観戦体験をもう一歩、5G通信で進化させたい」と意気込みを語った。
スタジアム観戦VRプラットフォームのXRstadiumについては、Supership 森岡康一社長が説明。「インターネットのコンテンツは2次元から3次元の空間を前提とした作り方に変わってきている。それを加速させるのが、2020年に実用化する5G。XR技術で『3次元の空間をまるごと伝送する』ことで、何か世の中の課題を解決できることはないか、この2年間模索してきた」と話す。
「まず焦点を当てたのがスタジアム。スタジアムには、観客がそこまで行くのにかかる移動や時間のコストがあり、スタジアム側にも座席数の上限という課題がある。それらをVRで解決し、スタジアムの臨場感あふれる体験を全ての人に提供したい。他のスポーツも今後考えていきたいが、まずは野球からスタートする」(森岡社長)。今後は、2019年にワールドカップが行なわれるラグビーなどのプロスポーツのほか、高校野球も視野に入れる。例えば、VR配信している空間で球児のバーチャルOB会を開き、そこで会費や高校野球への寄付を集める、といったアイデアもあるという。
繁田氏は、球場でARグラスを使う検討をしていることにも触れ、「KDDIではODG(Osterhout Design Group)とのスマートグラスの取り組みがある。球場におけるARグラスの役割は何か? というと、私も野球が好きなのでスタッツを目の前に表示するというようなことを考える。一方で、初めて球場を訪れた人は『応援歌は何を歌っているのか?』が気になるということで、カラオケのワイプのように歌詞表示してくれると嬉しいといった声もある。いろいろな可能性があり、まだアイデアベースだが近々実現できればと思っている」とした。
将来的には、野球で攻守交代するタイミングでVR広告配信を行なうといった、XR事業化における収益化を目指すことも検討。例えばCGを活用し、「新車の中に乗り込む体験をSupershipの広告技術で提供するといったアイデアがある。視聴している人の邪魔にならない新しい広告を開発したい」。