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8K 120pの撮影/編集/表示までカバー。HDMI 2.1テレビ開発加速させるASTRO

アストロデザインは、放送事業者や映像機器メーカーなどに向けて、新製品やソリューションを紹介する「Private Show 2019」を東京本社で6月13日~14日に開催。開幕に先駆けて関係者や報道向けに先行公開した。なお、グランフロント大阪でも7月25日と26日に行なう。

「Private Show 2019」の8Kカメラ活用展示

8K120pで撮影/編集、表示まで

例年、多くの関係者が最新動向をチェックするため訪れているイベントで、今年は8K/120pのフルスペックスーパーハイビジョンに関する展示が充実。撮影から編集、伝送などまで8K/120pで完結する環境が整いつつあることを紹介している。

8Kカメラは、ヘッドとカメラコントロールユニット(CCU)を分離した「CM-9010-B」を紹介。小型のヘッドとCCUはU-SDIケーブル1本で最大100m引き延ばせるため、様々な用途が想定されている。このカメラを使ったVRコンテンツ制作なども紹介。さらに、映像制作以外の活用も提案しており、トンネル内撮影に利用した際、0.15mmのキズまで発見できたという。

小型8Kカメラヘッド「CM-9010-B」
人の目ではほぼ分からない、500円玉偽造防止の小さな印まで精細に表示
8Kカメラと魚眼レンズの組み合わせによる8K VRシステムを展示。高精細なVRを体験できる

表示装置としては、LGディスプレイやNHKと共同開発した8K/120Hz対応シート型有機ELディスプレイを展示。アストロデザインが撮影&制作した8K/120Hzコンテンツの再生デモを行なっていた。

紹介された映像は、川下りする様子を撮影したもの。ゆっくりカメラがパンするシーンでも、周りの岩肌まで乱れることなく精細に表示されている。120Hzコンテンツとしてよく使われるスポーツなどハイスピードな動きだけでなく、様々なケースで120Hzが活きるという。

8K120p撮影コンテンツのデモ(撮影不可のためデモ内容のみ掲載)

8Kレーザープロジェクター「INSIGHT Laser 8K Imaging by ASTRO」と8K/120p映像技術を応用した、アクティブシャッター方式による3Dコンテンツを22.2ch音声で体験できるシアターも設置。プロジェクターは、台湾Delta Electronics、英Digital Projectionとの3社共同プロジェクトで開発。名古屋・大須のアイドルユニット「OS☆U」によるライブ映像を3Dで収録したコンテンツなどを上映している。

「OS☆U」によるライブ映像を3Dで表示
8Kレーザープロジェクターで投写
3D撮影時のカメラ
シャープと共同開発した8Kカムコーダー「8C-B60A」は、ユーザーからのフィードバックを反映して、UIの改善など機能改良を続けているという
8Kカメラで水中撮影できる「水中ブリンプ」(Gates Underwater Products製)も

ディープラーニング活用で高精度映像アップコンバート

8Kライブ制作のコーナーでは、8K 480p/240p/120p/60p対応のビデオサーバー、8KからのHD切り出しコンバーターなどを展示。8Kライブ映像から、見たい部分を選んで4Kや2Kで切り出し、制作を効率化できることを紹介している。

8Kライブ制作の展示

8K編集の環境も整備。最大56コアのCPUや最大768GBメモリを搭載したハイパフォーマンスコンピューター「Tamazone Workstation」(AW-8800)を使用した、8K非圧縮映像の編集システムなどを紹介している。8K映像をカラーグレーディングして60pでプレビューすることなどが可能。グラフィックカードなどを4枚挿しても、それとは別にストレージのSSDを16台装着できるインターフェイスの充実も特徴。現在は試作機を納入中で、9月に製品版を提供予定としている。

8K編集対応の「Tamazone Workstation」(右)

自社開発ニューラルネットワークによる映像のアップスケーリング技術も紹介。膨大な画像をディープラーニングで学習し、それを元にフルHDから8Kへの変換を行なうもので、特にテロップなどで大きな効果が確認できた。近接する画素からの予測や、バイキュービック法に比べた優位性をアピールしており、この技術を搭載したDaVinch Resolve用プラグインを今年提供開始予定。

ディープラーニング採用のアップスケーリング技術デモ
右がディープラーニング採用のアップスケーリング
8Kの活用例として、高精細3DCGによる「バーチャルミュージアム」も紹介。好きな作品を壁に飾るようにして楽しめる。ソフトウェアはUnity Game Engineを使用

ウェアラブルカメラで4G LTE通信ができる「Body Camera」も紹介。1080/30pや、2,688×1,512ドット/18fpsで撮影可能で、映像をLTE通信で外部レコーダーなどに転送可能。警備やスポーツなど、幅広い用途を想定している。1,950mAhのバッテリーを内蔵し、連続12時間動作する。

LTE搭載Body Camera
活用例

8Kテレビ開発向けHDMI 2.1機器やDisplayPort 1.4も

インターフェイス関連の注目はHDMI 2.1対応機器。8Kテレビ開発での利用が見込まれるHDMIコンバーターボックス「SD-7075」は、HDMI 2.0×4本で伝送される8K映像を、HDMI 2.1ケーブル1本で出力できる変換器。4:2:0の非圧縮伝送と、DSC(Digital Stream Compression)の圧縮伝送を1ボタンで切り替える機能も装備。テレビメーカーは、非圧縮/圧縮時の映像の違いを確かめながら製品を開発できる。

HDMI 2.1対応コンバーター「SD-7075」

展示会場では実際にHDMI 2.1対応の信号発生器「VG-879」からの信号をこの変換器を介してテレビに表示するデモを行なっており、テレビメーカーもこの展示に試作機を提供して協力。同機材を用いて、今後の8Kテレビ開発の加速が見込まれる。

テレビ以外でも、米Microsoftが発表した次世代ゲーム機「Project Scarlett」で8K解像度のサポートが発表されたように、高解像度/ハイフレームレート対応を進めるゲーム機やゲーム用ディスプレイへの活用も想定しているという。

HDMI 2.1対応プロトコルアナライザー(右)も展示。HDMI 2.1ケーブル1本で正しく伝送できているかを確認できる

同社が扱うUNIGRAF製品として、DisplayPort 1.4対応テストデバイス「UCD-400」も展示。DP 1.4/HBR3(最大8K/30p)の信号入出力試験が可能。DSC 1.2aの圧縮エンコード/デコードもサポートする。

DisplayPort 1.4対応「UCD-400」

また、USB Type-C対応のDisplayPort 1.2 Alt Mode対応テストデバイス「UCD-340」も用意。入出力は最大4K/60pで、スマートフォンなどの機器開発での使用を想定している。

USB Type-C対応のDisplayPort 1.2 Alt Mode対応「UCD-340」