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JASRAC、著作権管理の手数料率を3年で抜本的見直し。透明性確保へ

JASRAC(日本音楽著作権協会)は、18日に開催した創立80年記念式典において「著作権管理事業の手数料を3年間かけて抜本的に見直す」ことなどを盛り込んだ新たなビジョンを発表した。

JASRACの新たなビジョン「つなごう未来へ、世界へ。80年目の変革宣言」において、今後の新たな取り組みなどについて説明。人口減少などで音楽市場も縮小する中、「『音楽著作権の保護と音楽著作物の利用の円滑とを図ることによる文化芸術の普及発展』というJASRACの目的を果たし続けるためには、世界の音楽市場を視野に入れた事業展開が必要」とし、著作権管理事業を充実させることに加え、大きな成長の余地があるアジアに着目。「健全な音楽市場が形成され、その市場が発展していくよう、アジア地域の著作権管理団体への支援が必要」としている。

日本の音楽市場が発展するための取り組みとして、これまで音楽創作のサイクルを支えてきたという「著作権管理事業」に加え、「委託者共通の目的にかなう事業」を“2つめのエンジン”とし、新たな施策を開始する予定。

現在の著作権管理事業については、2023年度の完了を見据えて「デジタルトランスフォーメーション」と「組織人事の見直し」を推進。委託者/利用者へのサービス、満足度の向上、そのための透明性の確保と経費削減を実現するという。

権利者に向けた変革としては、委託者への使用料の分配を、これまで以上に増加させるための取り組みを強化。また、委託者が自身の音楽作品の管理状況を分かりやすくするシステムも整備。現在の演奏権、複製権、インタラクティブ配信や放送にかかわる著作権管理事業の手数料を、3年間かけて抜本的に見直し、2022年に新管理手数料率を完成させるという。

現在進めているデータベースの整備や分配明細書の精緻化なども充実させる。さらに、ライブハウスや飲食店などでの演奏に対して支払われた使用料の分配を、現在の「サンプリング調査による分配方式」から、使用された全ての音楽作品の報告を元に分配比率を決める「全曲分配方式」へ移行。利用内容などの詳細な情報も委託者に公開する。

音楽を利用する人に向けた変革としては「音楽利用の手続きの利便性向上を今まで以上に実現させていく」としており、支払った使用料が権利者に届いていることを、利用者も実感できるような仕組みを整備する。

これらの著作権管理事業の変革には「ブロックチェーンやAIなどの先進技術の活用が欠かせない」とし、様々な先進技術の実用化に向けて検証を進めるという。

一方で、著作権への理解浸透も図り、「著作権法は、著作者等の権利の保護を第一義的な目的とする」という考え方に通じた研究者・法律家を増やすなど、著作権研究者の育成も急務としている。

新たなエンジンと位置付ける「委託者共通の目的にかなう事業」については、具体的な事業内容を、外部有識者で構成される委員会において検討する予定。事業の例としては、著作権思想の普及を図ることで、国民に音楽著作権の保護についての理解を求めていくことや、アジアの権利団体への支援を挙げている。