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過去作品もネット配信しやすく、政府が知的財産推進計画

デジタル時代に適合したコンテンツ戦略の概要

首相官邸は13日、コンテンツ許諾を一括で引き受ける集中管理団体を設置し、オンライン配信をしやすくする「一元的権利処理制度」創設を含む「知的財産推進計画2021」を発表した。一元的権利処理制度に関しては、各省の協力や、審議会で権利者等から合意を得ながら年内に結論、来年度の措置を目指す。

デジタル化の発展により、アニメ、漫画、映画、音楽等に代表されるコンテンツは、インターネットを通じた配信が主流になりつつあるほか、コンテンツ創作・編集ソリューション等の普及により、アマチュアクリエーターによる創作・発信の機会も拡大し、コンテンツが多様化している。

そこで、大量、多種多様なコンテンツに関する一元的権利処理制度の実現を計画。集中管理団体等がコンテンツの許諾を一括で引き受け、権利元への使用料分配までを行なうことで、過去コンテンツや、アマチュアクリエーターによる創作物(User Generated Contents/UGC)、権利不明著作物などでもオンライン配信しやすくなる環境を作る。

この計画の背景として、流通環境、消費動向及び創作環境の変化だけでなく、配信プラットフォームサービスが、事業者が顧客囲い込みによる圧倒的な資本力及び消費者の嗜好に関するデータを武器に、コンテンツの制作分野に参入したことで、コンテンツの価値が増大化したことにも触れている。

コンテンツ単体の価値にとどまらず、データ収集や消費者の囲い込みのツールとして位置づけられるなど、データ駆動型経済を発展させるための中間財としての価値を併せ持つようになっている。

政府は、文化資源の豊かな日本にとっては、このような環境変化は、権利者・利用者・国民経済上の相互利益を拡大する好機であるとし、この社会経済的好機を最大限に活かすためには、良質なコンテンツが持続的に創造され、クリエイターに適正な対価が還元されながら、コンテンツの利活用が促されるエコシステムの構築が重要としている。

これには、デジタル時代における著作権制度の確立に向けた工程表を作成し、権利者の利益保護と両立した形で権利処理にかかる時間等の取引コストを低減させるための新たな工夫も含め、制度環境整備を図ることが必要とし、一元的権利処理制度の実現を計画した。

一方、現状のコンテンツ産業における大きな課題についても挙げている。

日本のコンテンツ制作環境においては、下請け構造となっている業界も少なくなく、また作品制作に携わるクリエイターが個別企業に属さないフリーランスであることも多い。こうした現場では、発注書面や契約が交わされず、著作権等の権利の帰属があいまいになるなど、商慣習の問題とも相まって、作品の成功による利益が現場に必ずしも反映されないことがある。

さらに制作現場のデジタル化の遅延による低い生産性や長時間労働、人材育成機会の不足等により、コンテンツ産業全体の生産性や競争力が上がらず、人材の流出がおきていることを懸念。また世界のコンテンツ市場が大きく伸びる一方、特定の分野を除くと日本の相対的な存在感が低下している中で、国内市場を前提としたビジネスモデルから脱却し、世界市場への更なる展開が必要との指摘もあるという。

そこで、一元的権利処理制度の実現には、分野・用途に応じて最適な手段・手続を使い分け、構造変化と課題に応えられるようにすること、一元的な処理を可能としつつ、権利者の意思の尊重にも留意すること、市場合理的かつ迅速な対価決定を行うことが可能であること、権利処理にあたっての障害を社会的意義や合理性に照らし簡潔かつ適切に解決できることなどの条件を実質的に満たす制度改革を行なう必要があるとしている。

プラットフォーム事業者が権利保護や権利処理において果たす役割を整理することも必要と指摘。

クリエイターやコンテンツ制作者が、適切な就業環境の下、作品の利用や成功による正当な利益を享受することが、健全なエコシステムの実現にあたって不可欠。良質なコンテンツが持続的に生み出されるためのこうした環境整備は、成長が著しい海外市場を取り込むにあたっても重要になるとしている。

模造品、海賊版対策も重要な課題に

同計画では、模造品や海賊版対策の強化も政府の重要な課題として取り組む旨を盛り込んだ。

コロナ禍による巣ごもり需要とも相まって、複数の巨大海賊版サイトへのアクセスが、かつて問題となった「漫画村」の最盛期を超えるなど、昨今の海賊版サイトによる被害が深刻化。海賊版に対し適切な対策をとることは、クリエイターを始めとしたコンテンツ産業従事者がユーザーによる正規版消費を通じて対価を得ることを可能とするなど、クリエイション・エコシステムの構築のための重要な一要素を構成するとしている。

2019年10月に「インターネット上の海賊版に対する総合的な対策メニュー及び工程表」が公表されたが、各取組の進捗状況を踏まえて2021年4月に更新。できることを着実に実施する第1段階に位置づけられている対策として、二国間協議や各種国際会議の場を活用した国際連携・国際執行の更なる強化や、改正著作権法の成立・施行に伴う悪質なリーチサイトの取締り等が盛り込まれた。

導入・法整備に向けて準備する第2段階の対策として、セキュリティ対策ソフトにおけるアクセス防止機能の導入及び、発信者の特定の強化を位置付けた。ブロッキングは、他の取組の効果や被害状況等を見ながら検討する第3段階の対策としている。

模倣品・海賊版対策については、これらの取組の状況も踏まえつつ、引き続き厳正な取締りを実施していくとともに、民間の取組を支援しつつ、政府一体となって対応を強化していく必要があるとしている。