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制作時間12分の1、費用10分の1でアニメ制作。DNPが「ライトアニメ」

「ライトアニメ」でアニメ化した作品イメージ
(C)海王社「どっちもどっち」

大日本印刷(DNP)は、従来の手法と比較して、アニメーション制作にかかる時間やコストを大幅に抑制できるという新しいフローを開発。「ライトアニメ」の名称で8月にサービス提供を開始した。2023年3月までに、国内での放送を想定したアニメ制作を開始するほか、グローバル市場へのコンテンツの輸出事業の開始、最先端のAI技術を持つ企業との提携などを予定している。

日本アニメが世界で人気を集めているが、「限られた人気マンガ作品のアニメ化が進む一方で、制作期間の長さや膨大なコストを理由に、コアなファンを抱えながらもアニメ化に至らない多くの優れたマンガ作品も存在している」と分析。

また、SNSや動画のサブスクリプションサービスの普及にともない、気軽にコンテンツを「倍速視聴」や「ながら視聴」などで楽しむ人が増えている事から、「多種多様な新しいアニメ作品をタイムリーに楽しみたいというニーズに対して、制作の負荷の高さや、人材不足等による制作現場の労働環境の悪化などが課題となっている」という。

そこでDNPは、出版印刷事業で培ったコンテンツ加工技術等を応用・発展させた独自のアニメ制作手法「ライトアニメ」を開発。この新しい制作フローを軸として、「グローバル市場も視野に入れたアニメ関連のエンタテイメント事業を展開する」という。

ライトアニメ事業は、原作のマンガ原稿をもとにアニメ用の原稿を描き起こす従来手法ではなく、マンガ原稿の活用を基本としており、セリフの吹き出しなどを削除したマンガ原稿に、着彩(色付け)や分割を行ない、必要に応じてアクションを加えて動画にする。これにより、制作期間とコストを大幅に抑えるという。

「この手法により、従来の制作手法ではアニメ化が難しかった多くの作品や、原画のタッチを活かしたい作品なども、比較的容易に市場に供給することができる。制作時間は従来平均の約12分の1、費用は約10分の1での提供を目指す」とのこと。

制作したアニメ作品は、DNPが事務局となり、動画配信プラットフォームに向けて放送権を販売。DNPグループが運営するハイブリット型総合書店「honto」をはじめとする電子書籍販売サイトや、様々なデジタルコンテンツ配信サービスを通して、生活者に作品の提供・販売も行なう。

第一弾として8月よりhontoにて、海王社の『どっちもどっち』のアニメーション付電子書籍の販売を開始した。

「ライトアニメ」でアニメ化した作品イメージ
@@size|70|(C)海王社「どっちもどっち」

DNPは、制作スタジオ「DNP Light Anime Production」を開設。コンテンツホルダーやパートナー企業、社外のクリエイターとの連携体制を強化し、コストパフォーマンスがより高いアニメ作品の安定供給を目指すという。

さらに、現在のマンガ業界では、デジタル技術を活用した縦スクロール化や多言語化などの展開が加速している事から、「DNPはこうした動きを先導するとともに、その先の展開としてライトアニメを見据え、国内外のあらゆるコンテンツのファンに向けて、アニメ作品をタイムリーに届ける仕組みづくりを実現していく」としており、事業全体で2025年度までに30億円の売上を目指している。