ソニー、25/17型のフルHD有機ELマスターモニター

-「TRIMASTER EL」。25型は241万5,000円


TRIMASTER EL

 ソニーは、有機ELパネルを搭載した業務用マスターモニターを5月1日より順次発売する。25型(24.5型)の「BVM-E250」は5月1日に発売、17型(16.5型)の「BVM-E170」は7月1日に発売し、価格は25型が241万5,000円、17型が131万2,500円。

 業務用マスターモニター「TRIMASTER」の新ラインナップとして、「TRIMASTER EL(トライマスターイーエル)」として展開。放送局やビデオプロダクションなどに提案していく。なお、液晶マスターモニターの23型「BVM-L231」は207万9,000円、17型「BVM-L170」は105万円のため、有機ELモデルは液晶より1割程度高い価格設定となる。


BVM-E250BVM-E170TRIMASTER EL

 いずれも、自社開発の1,920×1,080ドットの有機ELパネルを搭載。10bitパネルドライバーを採用している。深い黒の沈み込みや、高コントラストが特徴で、自発光方式を活かし、イルミネーション輝く夜景や太陽光などを美しく再現できる。また、高い応答性能を生かした動画性能も特徴。視野角は上下/左右178度。パネル表示フレームレートは48/50/60/72/75Hz。

 スーパートップエミッション技術と、マイクロキャビティ構造、カラーフィルタによる独自の色抽出技術により、色純度を向上。デジタルシネマの広色域にも対応する。また、低階調の色再現も向上している。

 同社では2007年12月に11型/960×540ドットの有機ELテレビ「XEL-1」を発売(2010年製造終了)しているが、基本的な技術についてはTRIMASTER ELでも踏襲している。製造装置や製造プロセスなどを見直し、大型化や高精細化を実現した。パネル寿命(輝度半減時間)は約3万時間としている。


スーパートップエミッション技術を採用TRIMASTER ELの特徴自発光ならではの高画質
「BVM-E250」と液晶マスモニ「BVM-L231」を比較。一番左は7型の有機ELモニター「PVM-740」BVM-E250(左)とBVM-L231(右)

 映像エンジンも新開発の専用プロセッサーを開発。優れたユニフォミニティー(画面全体の色表現の均質化)の実現とともに、ITU-R BT.709、EBU、SMPTE-Cの色域やCRTのガンマを正確に再現するという。調整ポイントも大幅に増やし、ピクセル単位の色ムラ、輝度ムラ調整も可能となっている。マスターモニターで厳しく要求される画面の色や輝度の均一性を保つ仕組みも搭載している。

 また、高精度IP変換処理技術も搭載。画像の特徴を検出し、原画に忠実でありながら、ジャギーや変化エラーを抑える。信号遅延時間も液晶マスターモニターの約1/3となる3ms台に抑え、「CRTとほぼ同レベル」としている。

BVM-E250の映像エンジンBVM-E170の映像エンジン新開発の映像エンジンを搭載
信号遅延時間も液晶の1/3に短縮業務用ディスプレイエンジンで、低輝度でも正確な階調表現を実現マスターモニター基準の均一性を確保
BVM-E250

 ボディは堅牢性の高いアルミ製。入力端子は標準でSDI(3G/HD/SD)入力としてBNC×2を装備するほか、Display Port×1、HDMI×1を装備。また、拡張用のスロットも4つ備えており、25型は本体横に、17型は背面から拡張ボードを設置できる。Ethernetやリモート端子(D-Sub9ピン)も備えている。

 外形寸法/重量は25型が576×148×424mm(幅×奥行き×高さ)/約13kg。17型が436×214.7×266.4mm(同)/約8.5kg。11型のほうが奥行きが長くなっているが、ラック設置時に拡張スロットの管理ができるように背面から拡張ボードを追加できるようにしたため。


BVM-E250は側面に入力端子や拡張スロットBVM-E170は背面に入力端子と拡張スロットを装備する手前の17型のほうが奥行きが長い

 


■ 有機ELで「オンリーワンを目指す」。テレビは検討中

ソニー プロフェッショナルソリューション事業本部 ビジュアルプレゼンテーション・ソリューション事業部 モニター部 大島統括部長

 ソニー プロフェッショナルソリューション事業本部 ビジュアルプレゼンテーション・ソリューション事業部 モニター部の大島順一統括部長は、「新たな映像評価の基準機」として、新ブランド「TRIMASTER EL」を発表した。

 ソニーは、2007年12月に世界初の11型有機ELテレビ「XEL-1」を発表しているが、TRIMASTER ELは有機ELの画質を活かしたマスターモニターとして展開。25型までの大型化とフルHD解像度を実現した。

 パネル製造は愛知県知多郡東浦町のソニーモバイルディスプレイが担当。材料や製造装置についてもパートナーと協力して開発し、今回の大型化を実現したという。セット製造はソニーイーエムシーエス 東海テック稲沢サイト。大島統括部長は、「最初の商品は映像クオリティの要求が高いマスターモニターだが、今後、さまざまな高画質が求められるる用途に順次展開し、オンリーワンを目指していきたい」とした。

25型の有機ELパネルを披露大型化を実現。パネル製造は東浦町のソニーモバイルディスプレイマスターモニター以外にも展開へ
ソニービジネスリューション 山田マーケティングマネージャー

 ソニービジネスソリューション 営業・マーケティング部門 マーケティング部 CCシステムMK課 マーケティングマネージャーの山田誠氏は、液晶モニターで求められる2つの大きな要素を、「正確な色再現」と「長期安定」と説明。現在の液晶マスターモニターについての、放送局などへのヒアリングでは、「黒が浮いてしまう」、「動画がぼける」の2点が代表的な不満となっていたという。

 一方、ソニーは7.4型の業務用有機ELモニター「PVM-740」も2010年5月から販売しているが、このユーザーへのヒアリングでは、「黒が沈みすぎてしまう。放送局のほかのCRTやLCDと同じように(黒を)浮かせたい」という声もあった。

 こうしたユーザー調査を反映し、パネルの性能をフルに生かした黒表示だけでなく、CRTに近いガンマモードも搭載。また、インターレース表示対応や高速応答性などニーズの高い機能を取り込んだという。3D信号の管理機能やピクセルズーム、ピクチャアンドピクチャ(2画面表示:サイドバイサイド、ワイプ、バタフライ)なども搭載している。

映像制作の新基準を目指すBVM-Eシリーズでの対応画像確認用の機能

 販売台数計画などは明らかにしていないが、「国内ではNHKと地方局を含む民放各局に提案していく(大島統括部長)」としているほか、将来的には医療用などの展開も検討していく計画。今後の大型化については、「要望は頂いているが、まずは25型をしっかりスタートしたい。そのうえで、さらなる大型化を進めていくが時期は申し上げられない」と説明。現在の製造設備では「最大30型程度までは対応できる」という。

 テレビなどコンシューマ向け展開については、「中大型化への技術開発は継続して行なっている。アプリケーションも幅広く検討しているが、テレビの具体的な展開については説明を控えさせていただく(ソニー広報センター)」とした。


(2011年 2月 16日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]