|
ソニーは、テレビ製品としては世界初となる有機ELパネル搭載テレビ「XEL-1」を12月1日より発売する。価格は20万円。
新開発の11型/960×540ドット有機ELパネルを採用。自発光方式のため、バックライトなどの光源が不要という、有機ELの特徴を生かし、ディスプレイの最薄部は3mmを実現した。 独自の「Super Top Emission」により高い開口率を実現。さらに、多重反射により各画素の有機膜層から出力光を効率よく取り出すマイクロキャビィティ構造の採用や、出力光をカラーフィルタで調節することで、自然な発色と、高い色純度を実現する。 コントラスト比は100万:1以上(全白/黒)で、「われわれの持つ測定器の限界を超えている」という。黒色表現時には「完全なカットオフ、発光ゼロの状態にできる」ため、深い黒色再現が可能となっている。 また、輝度ゼロからピークまで、全階調にわたり細かな色制御が可能なため、「XEL-1では液晶でできなかった高いピーク輝度を生かした絵作りにチャレンジできた。特に、バイクのボディの金属感、闇夜のネオンの明るさの違いの表現力などでその美しい輝きを感じていただけると思う(テレビ事業本部 E事業開発部 白石由人部長)」という。 なお、Display2007/ファインテックジャパンに出展された11型有機ELテレビでは、1,024×600ドットのパネルを採用していたが、量産モデルでは960×540ドットとなった。白石部長によれば、「画素数の上でアスペクト比16:9にこだわったため」という。また、XEL-1の960×540ドットは、フルHD(1,920×1,080ドット)をちょうど4画面に分割したサイズということから、回路設計が容易になるなど、実際に商品化するときの利点が大きいことから、同解像度とした。
液晶との違いでは、バックライトがないために、光漏れがなく高輝度でも低輝度でも忠実な色再現が可能なこと。さらに自発光のメリットを生かした、高い動画性能などをアピールしている。なお、x.v.Colorには非対応。 動画応答性能については、新開発の有機EL駆動回路を搭載し、なめらかかつ自然な表現を可能とした。 また、新有機EL材料やパネル駆動回路を活用することで、長寿命化を実現しており、「焼きつきも極力排除する」という。寿命の目安としては、「一日10時間、10年間使えるということから“3万時間”」と説明している。
ディスプレイ部分をアルミ素材の片持ちアームで支えた特徴的なデザインを採用し、ディスプレイ部は前方15度、後方50度に傾け可能となっている。なお、左右の首ふり機能は備えていない。 地上/BS/110度CSデジタルチューナを内蔵しており、単体のテレビとして利用可能。ロッドアンテナや1W×2ch出力のスピーカーも備えている。入力端子はHDMI×1を装備。USBやEthernetも装備する。ソニールームリンク(DLNAクライアント)やブラウザ機能を備えるほか、デジタルテレビ用ポータルサービス「アクトビラ」にも対応。操作画面にはXMB(クロスメディアバー)を採用している。 消費電力は45W。外形寸法は287×140×253mm(幅×奥行き×高さ)、重量は2kg。本体のデザインにあわせた薄型のリモコンが付属する。 有機ELパネルはエスティ・エルシーディ株式会社で生産。最終製品の組み立て製造は、ソニー稲沢工場で行なう。
■ 有機ELを「技術のソニー復活の象徴に」。商品力で「20万円」
井原勝美副社長は、「4月の発表以来、半年間準備を進めてきた。お約束通りソニーから世界初の有機ELテレビを発売する」と宣言し、XEL-1を披露した。 井原副社長は、自発光デバイスとしての有機ELの魅力や「花火やカメラのフラッシュなどの強い輝度の表現」などの画質面の特徴をアピール。有機ELパネルを“ORGANIC PANEL(オーガニックパネル)”と名付けて展開していく方針を説明した。「もちろん有機材料(Organic)という意味を含んでいるが、それだけでなく環境フレンドリーという気持ちも込めた」という。 今後の展開については、「4月の発表以来、関連の業界の方の高い支持をいただいた。液晶テレビをすぐに置き換えるものとは思っていないが、液晶テレビの次を期待できるポテンシャルの高い技術。材料開発メーカーなどと力をあがわせて、新しい産業を育成したい。ソニーもそのために技術投資を進めていく」と関連業界との協力を訴えた。
ソニー株式会社グローバルマーケティング部門長の鹿野清氏は、「新しい需要を喚起するディスプレイの新機軸」として有機ELテレビへの期待を語った。“先進性”や“高画質”、“スタイルへのこだわり”、“環境性能”などを訴求し、消費者に“まったく新しいテレビ”をアピールしていく。 ソニービルやCEATECでの展示に加え、「体感/体験の場を増やしていくが、その場作りも必要」とし、量販店などの売り場だけでなく、ホテル「リッツ・カールトン東京」のクラブラウンジや、JALの成田空港ファーストクラスラウンジ、「レクサスギャラリー高輪」でのショールーム展示などを行なう。
テレビ事業における位置づけについて、井原副社長は「短期的には液晶を置き換えるものにはならない。液晶はビジネスとして、どんどんマーケットが大きくなる。ソニーのテレビ事業としても液晶に軸足を置いて開発していくことは変わらない」としながらも、「11インチのパーソナルユースから有機ELを始めるが、これに留まることなく開発を続けていく。まず最初のチャレンジは、“大きくしていくこと”。ただし、単に大画面化というだけでなく、薄さを生かしたライフスタイルとの関係についても注目していきたい。新しいテレビと生活のありかた、いろいろな新しい利用が考えられる。XEL-1の反応や、いろいろな意見を聞きながら、新しいテレビのあり方を考えていきたい」という。 なお、20万円という価格については、「画質、デザイン、商品力について多くの人に意見を伺ったが、長い間売りたい製品。長きに渡り適切に販売できる価格と、値ごろ感を考えて、私が決めた。採算性はあまり考慮していません。あくまで商品力。商品のバリューからの値付け」と説明した。 □ソニーのホームページ ( 2007年10月1日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
Copyright (c)2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|