ソニー、デュアルAF採用のデジタル一眼最上位「α99」
-3次元で被写体を補足。XLRマイクで録音。約30万円
別売レンズ「Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM SAL2470Z」を取り付けたところ |
ソニーは、デジタル一眼のフラッグシップモデルとして、35mmフルサイズのセンサーを備えた「α99」(SLT-A99V)を10月26日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は30万円前後。
有効約2,430万画素、35mmフルサイズのExmor CMOSを搭載し、α史上最高の高画質を実現したというモデル。センサーは、最先端プロセスを用いることで、画素受光部を低背化。集光効率を向上させたほか、回路や配線の面積を抑え、画素受光部を広く持つ「ワイドフォトダイオード設計技術」なども投入。ノイズを抑えた高感度撮影を可能としており、常用感度はISO 100~25600。
別売レンズ「Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM SAL2470Z」を取り付けたところ | フルサイズのセンサーを搭載している | トランスルーセントミラーテクノロジーを投入 |
さらに、放送用のハイエンド業務機で使われている、多点分離光学ローパスフィルタを採用。解像感の向上を図っている。
画像処理エンジンはBIONZを採用。最新バージョンになっており、高速フロントエンドLSIを搭載するほか、新たに14bit RAW出力にも対応。さらに、夜景などに対するノイズリダクション処理において、画面全体に同じ処理を行なうのではなく、画面を幾つかに分割し、その部分にマッチするノイズ抑制処理を施すことで、ノイズを抑えつつ、クッキリとした画像が撮影できる「エリア分割ノイズリダクション」機能も新たに追加した。
ミラー部を光が透過し、常にCMOSセンサーに光が当たることで、ミラーを上げないまま撮影やライブビュー表示&撮影ができる「トランスルーセントミラーテクノロジー」をハイエンドモデルでも採用。ミラーは従来の一眼レフのように、CMOSに対して斜めに配置されており、CMOSに光が透過する以外に、一部の光は上方向に反射する。上部には位相差検出用のAFセンサーが配置されており、画像のコントラスト検出でAFを行なうミラーレスのデジタルカメラと比べ、高速なAF動作を実現。
ここまでの特徴は、従来のトランスルーセントミラータイプのカメラと同じだが、α99では、CMOSセンサー自体に像面位相差AFセンサーを102点装備。さらに、位相差AFセンサーも高速高精度なタイプを19点(クロス11点)搭載。この、2つのAFを活用して、より高速・高精度なAFを実現するという。
具体的には、縦(奥)の動きを従来の位相差AFで、横(面)の動きを像面位相差で捉えることで、3次元で被写体を補足する。この機能は、新たに設けられた「AF-D」モード(デプスマップアシストコンティニュアスAF)で利用できる。
2つのAFセンサーを組み合わせ、三次元的に被写体を補足する | 「AF-D」モードを新設した |
なお、従来の位相差AFは動画撮影時に利用できるが、像面位相差は非対応。また、位相差AFは全レンズで対応できるが、像面位相差は対応レンズのみで利用でき、利用可能なレンズは順次拡充されるという(カメラ側のアップデートが必要)。
また、AF動作が働く範囲を設定する「AFレンジコントロール」機能も用意。ユーザーがAFを動作させて欲しい距離範囲を指定できる機能で、例えば、草原に咲く花を撮影するような場合、花のある場所の距離範囲を指定しておけば、その範囲でのみAFが動作。意図せず背後の草原などにピントが合ってしまったり、背後でAFが迷って花に合焦するまで時間がかかるといった問題を回避できる。
AVCHD Ver.2.0のフルHD動画撮影が可能で、フォーマットはMPEG-4 AVC/H.264。1,920×1,080ドットで60p、60i、24pまでの録画が可能。さらに、MPEG-4形式での録画も可能で、1,440×1,080ドットの30p、640×480ドットの30p撮影も可能。ビットレートは約28Mbpsの「PS」、約24Mbpsの「FX」、約17Mbpsの「FH」などを用意する。
動画撮影中はP/A/S/Mモードが選択でき、マニュアル設定も可能。フルタイムコンティニュアスAFが動作。3段階の動体追尾感度設定もできる。高感度はISO 6400まで使用可能。
サイレントマルチコントローラー |
動画撮影中の操作性を向上するため、前面の左下にサイレントマルチコントローラーを装備。操作しても音がせず、動画に余分な音を入れずに操作できるのが特徴で、フォーカスモードの切り替えや、フォーカスエリアの変更、露出補正、ISO感度設定、シャッタースピード、F値など、様々な操作を割り当てられる。一部割り当てられない機能もあるが、静止画撮影でも利用可能。
HDMI出力を備えており、ステータスアイコンなどを一切表示せず、映像のみを出力する事が可能。この映像を外部レコーダなどに入力し、記録する事もできる。
音にもこだわっており、音声レベルメーター、録音レベルコントロール機能を用意。ヘッドフォン端子も備えており、収録音をモニターできる。音声出力のタイミングもライブ/リップシンクの設定が可能。また、別売のマイク付きXLRアダプターキット「XLR-K1M」(84,000円)を取り付ける事で、XLR端子のマイクやミキサーとも接続が可能になる。
発表会場には、本格的な動画撮影用にアクセサリを取り付けたα99も参考展示された |
このアダプターキットなどを取り付けるのは、新たに設けられた「マルチインターフェースシュー」。一般的なISOシューをベースに設計し、形状は踏襲しているが、独自のマルチ端子も装備する事で、高機能なアクセサリも利用できるようにしたもの。音声信号も通す事ができるため、XLRアダプタキットを接続しても、別途音声ケーブルなどは接続する必要が無い。なお、従来のαシリーズの端子とは互換性がなくなるため、α99には、変換アダプタ「ADP-MAA」を同梱している。
別売のマイク付きXLRアダプターキット「XLR-K1M」 | |
ヘッドフォンも接続でき、モニターできる | 本格的な動画撮影にも対応可能 |
ファインダーは有機ELで、解像度はXGA。ファインダー表示の色温度を調整する機能を新たに備えているほか、APS-Cデジタルカメラ用のDTレンズを装着すると、周囲のケラレを除くため、自動的にファインダー表示を全画面に拡大表示するモードも追加された。
液晶モニタは3型で、サイバーショットRX100にも使われているWhiteMagic技術を投入。RGBにW画素を加えたもので、α77比で約2倍の明るさを実現している。また、3軸のチルトタイプとなっている。
ファインダーは有機EL | 液晶モニタは3型で、3軸のチルトタイプ |
記録メディアはメモリースティックデュオ/SDメモリーカードの両方に対応。SD専用スロットと、SD/メモリースティック両対応スロットのデュアルになっており、2つのカードに同時記録が可能。動画/静止画のどちらも同時記録でき、フルHD動画でも同時記録可能。動画と静止画、RAWとJPEGといったように、記録分けもできる。
外形寸法は約147×78.4×111.2mm(幅×奥行き×高さ)、重量は本体のみで733g。
デュアルスロットを装備している | 本体上部 |
■動画撮影にも使える、その他のアクセサリ
縦位置グリップ「VG-C99AM」も39,900円で発売する。一般的な縦位置グリップは、グリップから伸びた突起を、カメラのバッテリルームに突き刺すように接続するが、C99AMは突起が無く、カメラ本体にバッテリを入れたままで接続できるのが特徴。グリップの中に2つのバッテリを入れる事ができ、本体と合わせて3個のバッテリを内蔵できる。また、撮影中にカメラの電源を切らずに、グリップ側のバッテリを交換する事も可能。
縦位置グリップに突起が無い | 縦位置グリップを装着したところ |
撮影をしながら、グリップの電池交換が可能 | グリップの背面 |
動画撮影にも活用できるアクセサリとして、外部フラッシュ「HVL-F60M」も68,250円で発売する。ガイドナンバー60の大光量フラッシュで、クイックシフトバウンス機構を採用。通常、フラッシュは静止画撮影で利用するものだが、発光するヘッド部分の内側に、ビデオ用ライトを装備。動画撮影時の光源として利用できる。
外部フラッシュ「HVL-F60M | ビデオライトを備えている |
ほかにも、リングライトの「HVL-RL1」(34,650円)や、動画撮影にも使えるリモコンの「RMT-DSLR2」(3,150円)、バックパックの「LCS-BP3」(16,800円)といった周辺機器も10月26日に発売される。
リングライトの「HVL-RL1」 | リモコンの「RMT-DSLR2」 |
バックパックの「LCS-BP3」 | 同日には新しい望遠レンズ「300mm F2.8 G SSM II」(SAL300F28G2)も発表された。ナノARコーディングを施しているのが特徴で、高速な動体追尾も可能。10月26日発売で813,750円 |
なお、カメラ本体と縦位置グリップは防塵・防滴に配慮した設計となっている。本体にはGPSレシーバも内蔵する。
(2012年 9月 12日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎]