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Windows 8でDTCP-IP再生。ピクセラ「StationTV Link」

Modern UI+タッチ操作のDTCP-IPプレーヤー

StationTV Link

 ピクセラのStationTV Linkは、Windows 8対応のメディア再生アプリケーション。特徴は、Windows 8の「Modern UI」と呼ばれる新しいユーザーインターフェイスに対応していること。Windows 8からのみアクセス可能なWindowsストアから購入してインストールすることができる。

 Windowsのデスクトップアプリケーションでは、デジオン「DiXiM Digital TV」やCyberlink「PowerDVD 12」などのDTCP-IP対応メディアプレーヤーは存在していたが、Windows 8の新しいUIに対応した「Windowsストア・アプリ」として単品で販売される製品はStation TV Linkが初となる。価格は3,900円。

 本レポートではStation TV Linkの特徴や、使い勝手などについて触れていく。

Windows 8で新しく導入されたModern UIとWindowsストア・アプリ

 はじめにWindows 8について簡単に紹介しておこう。Windows 8の最大の特徴は、1995年に発売されたWindows 95以来となる、ユーザーインターフェイスの大転換を行なっていることだ。

Windows 7のWindowsデスクトップ、スタートボタンを押して表示されるスタートメニューからアプリケーションを起動する

 Windows 7までの標準ユーザーインターフェースは、「Windowsデスクトップ」と呼ばれるスタートボタンとスタートメニューを利用したもの。ユーザーはスタートボタンを押してメニューを表示させ、そこからアプリケーションを起動するというナビゲーションとなっていた。後述するWindowsストア・アプリと区別するため、最近はこうした従来のWindowsアプリを「デスクトップ・アプリケーション」と呼ぶことも多い。

 これに対して、Windows 8では標準ユーザーインターフェースとしてModern UIを導入。タイルを並べ、タッチ操作に最適化されたスタートメニューが導入された。併せて、WinRTというAPIに基づく新しいアプリケーションが導入され、WindowsストアというOS内のアプリストアのダウンロードでのみ提供される。そのため「Winodwsストア・アプリ」と呼ばれる。

Windows 8のModern UIのスタートメニュー、タイルを利用してタッチ操作に最適化されたユーザーインターフェース
Windows 8でもWindowsデスクトップは用意されており、従来のデスクトップ・アプリケーションは利用可能。ただし、スタートボタンは廃止されている

 なお、Windows 8でもWindowsデスクトップおよび、Windowsデスクトップ・アプリケーションの互換性は確保されており、従来のWindowsと同じように使うことも可能だ。

Windows 7とWindows 8の違い
 Windows 7Windows 8
標準UIWindowsデスクトップModern UI
Windowsストア・アプリ-
Win32アプリケーション
Win64アプリケーション
(64bit版のみ)

(64bit版のみ)

7日のお試し期間で動作チェックを。価格は3,900円

 Station TV Linkは、Windowsストアで購入し、インストールできる。価格は3,900円で、購入するにはMicrosoft IDと呼ばれるMicrosoftのアカウントと、クレジットカードなどでの決済が必要。

 同アプリは7日間のお試しが可能で、自分の環境で動くかどうか確認できるので、チェックしてから購入することを強く勧めたい。というのも、Station TV LinkはDRM(デジタル権利処理)で保護されているコンテンツをネットワーク越しに再生する機能を持っているため、PCのハードウェアにもそれらの対応が要求される。具体的には、PCのビデオ処理を行なうGPUのドライバと、外付けディスプレイを利用時には、そのディスプレイがHDCPに対応している必要がある。動作要件はピクセラのWebサイトに詳しく書いてあるので、参照してほしい。

 Windowsストア・アプリは1つのIDに対して5つのデバイスまでアプリをインストールすることができる。ただし、全てのデバイスで同じMicrosoft IDを利用してログインする必要があり、そのIDを利用しているユーザーしか利用することができない。

 また、Windows 8には、ARMプロセッサ版となるWindows RTもラインナップされているが、Station TV LinkはIntel/AMDのプロセッサを利用しているWindows 8/8 Proでのみの対応で、Windows RTのタブレットなどでは利用できない。

Station TV Linkのメイン画面。Modern UIのタイル表示と一体感のあるデザインになっている
HDCPに非対応ディスプレイへの出力時には、このような警告が表示される

Modern UIの検索とフォルダ検索で、コンテンツを絞り込み

 Station TV Linkを起動すると、他のWindowsストア・アプリと同じように、Modern UIのルック&フィールを利用した画面で起動する。Modern UIの操作はタッチに最適化されているが、マウスやキーボードで操作することも可能だ。

 メイン画面には、「テレビ番組」、「写真」、「音楽」、「ビデオ」の4つが表示され、それぞれホームネットワーク上にあるDLNAサーバーで公開されているコンテンツが串刺し的にリスト表示される。

 それぞれのカテゴリを選んでいくと、より詳細にコンテンツを探していくことができる。フォルダビューも用意されており、サーバー>フォルダ>(以下その下の階層のフォルダ)という形で、コンテンツを探していくことができる。例えば、筆者宅では東芝のREGZAサーバー「DBR-M180」を設置して、8日間6チャネル丸ごと録画の設定をしている。

 このため、非常に多くの番組が録画されていて探すのが非常に大変なのだが、フォルダビューを利用すると、「DBR-M180>タイムマシン>チャンネルから選ぶ>フジテレビ>日付>番組名」といった形でたどっていくことが可能で、比較的簡単に番組を探すことができる。毎日同じ番組名で放送されているニュースなどを探してみる場合にはこのフォルダビューを利用するのが便利だ。

 もちろん検索の機能も用意されている。検索はModern UIの標準機能として用意されている「検索」の機能を利用する。具体的にはタッチなら画面の右端からスワイプ、キーボードならWindows+Cキーで表示されるチャームと呼ばれる操作バーを表示させ、そこから検索ボタンを押すと検索バーが表示される。そこに目的の番組のキーワードを入れると検索/表示され、表示された番組を選択すれば再生開始される。

リストからフォルダを選択して表示するフォルダビュー機能
Modern UIの検索機能を利用した番組検索も可能。ただし、検索対象は番組名だけで、メタデータは検索されないようだ

 ただ、最新のDTCP-IP対応ソフトウェアとしては物足りない点もある。具体的にはDTCP-IPダウンロード型ムーブと呼ばれる、ネットワーク経由でのコンテンツムーブ転送機能が無いことだ。

 ダビング10のルールで放送されている番組の場合、10回までのムーブ/ダビングができるが、DTCP-IPに対応した最新のソフトウェアの中には、この転送機能に対応し、レコーダからモバイル機器にムーブできる製品が増えている。これにより、外出先の視聴が行なえるわけだ。

設定項目は接続設定、視聴設定、アプリ設定

 しかし、Station TV Linkにはムーブ機能は無いので、基本的には家庭内のクライアントとして使う用途が中心となる。Windows 8ではタブレットのような持ち運びできる製品も増えつつあり、外でも見たいというニーズはあるだろう。ぜひ将来バージョンアップなどで、機能追加して欲しいものだ。

 なお、設定は接続するDLNAサーバー(最大10台まで)の選択項目と、テレビ番組の再生時の字幕をON/OFF、音声選択(主音声/副音声)ぐらいの簡素なものだ。

 DTCP-IPプレーヤーとしてだけでなく、DLNAクライアントとしても動作。デジタルテレビ録画番組の場合、MPEG-2 TS、MPEG-4 AVC/H.264に対応するが、デジタル放送以外のMPEG-2 PS/TSやAVCHD、WMVにも対応。写真はJPEG、音楽はリニアPCM、WMA、MP3、AAC、WAVなどが再生できる。

タッチに最適化されたアプリで、気軽にDLNAコンテンツを視聴

 今回は、富士通のWindows 8搭載タブレット「ARROWS Tab Wi-Fi QH55/J」にSmart TV Linkをインストールして利用した。筆者宅の東芝のREGZAサーバー「DBR-M180」との組み合わせでの使い勝手はなかなか良好だ。

ARROWS Tab Wi-Fi QH55/JでStation TV Linkを利用

 起動するとネットワーク上にあるサーバーを見つけ、コンテンツが表示される。8日間/6チャネルを録り貯めるREGZAサーバーの場合、番組数が3,700近くもあり、全ての番組のリストが表示されるまでに起動してからそれなりの時間がかかる。ネットワークの速度にも依存すると思うが、筆者の環境では全番組をリスト表示するまで3分近くかかった。ただ、これはStation TV Linkの問題点というよりは、DLNAの仕組みからくる制限なので致し方ないだろう。全ての番組をリスト表示する前にフォルダビューで探していくことも可能なので、必要に併せてそちらを利用すればいいだろう。

 余談だが、DBR-M180は本体の電源が入っていないとDLNAサーバーが動作しないため、あらかじめ本体の電源を入れておく必要がある。そのためだけに本体操作を行なうのは面倒なため、東芝が公開しているWindows OS用のリモコンアプリ「REGZAタグラー」をインストールして利用している。これにより、リモートからでもREGZAサーバーの電源を入れることができて便利だ。

 目的のコンテンツを見つけてタイルをタッチすると再生が開始される。再生メニューはシンプルで、画面をタッチするかマウスなどでクリックすると表示されるコントロールパネルで、再生/一時停止、15秒のスキップ、7秒の戻しというボタンが表示される他、コントロールバーを利用して再生位置を移動することができる。この他、画面の下からスワイプすることで表示されるメニューから先頭へ戻る、番組詳細、再生速度(等速、1.2倍速、0.8倍速)、ミュートなどの操作が可能だ。

 いずれもタッチに最適化されており、タッチで簡単に操作できる。リスト表示でもピンチイン/アウト(2本の指で画面をタッチして、閉じたり開いたりする動作のこと)で年月表示とリスト表示を切り替え可能だ。同じことは写真、動画、音楽再生の時にも有効で、やはりリスト表示と年月(写真時)とアーティスト名表示(音楽時)をピンチイン/アウトの操作が行なえる。

ピンチイン/アウトでリスト表示と年月表示を切り替えることができる
ピンチイン/アウトで音楽の表示を切り替えることができる。標準はアーティスト>アルバム表示のビューだが、アーチスト一覧表示に切り替えることができる
写真のビュー。テレビと同じようにフォルダビューが可能になっている

 なお、今回のレビューで使ったARROWS Tab Wi-Fi QH55/Jは、標準で「My Cloudビデオ+」というDTCP-IP対応DLNAクライアントソフトウェアも付属しており(正確にはWindowsストアからダウンロードして利用)、その表示はStation TV Linkと瓜二つだ。実際設定パネルを表示させて確認すると発行者としてピクセラの名前が表示されているので、Station TV LinkのOEMメーカー向けバージョンなのだろう。

ARROWS Tab Wi-Fi QH55/JのMy Cloudビデオ+の画面。フォルダビューが実装されていない

 ただしMy Cloudビデオ+には、Station TV Linkにあるフォルダビューが省略されており、階層をたどってコンテンツを探すことができない。筆者のように、コンテンツ数が多いレコーダを組み合わせて利用している場合、目的のコンテンツを探すのが大変で使い勝手が良くない。録画番組数が多い人や、全録レコーダのユーザーにはStation TV Linkをおすすめしたい。

 Station TV Linkは、現時点ではWindows 8/Windowsストア・アプリとして、ユーザーが追加できる唯一のDTCP-IPプレーヤーの選択肢だ。ダウンロード型ムーブに対応していないのは惜しいが、家庭内でDLNAサーバーに接続してコンテンツを再生するという用途には必要な機能は備えている。例えば今回利用したARROWS Tab Wi-Fi QH55/Jは防水機能を備えており、お風呂や台所といった水回りでも使うことができる。Windows 8を搭載したタブレットやPCで、録画番組を家庭内のどこでも手軽に見てみたいというユーザーであれば、検討してみる価値はある。

製品名Station TV Link
発売元ピクセラ
対応機器Windows 8
発売日2013年2月上旬
価格3,900円

笠原一輝