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「フラッグシップ無くして成功無し」。Xperiaの次の一手
ソニーモバイル鈴木社長が語る“意外”な戦略とは?
(2014/3/7 10:00)
2月24日から27日まで、スペイン・バルセロナで開かれた「Mobile World Congress(MWC 2014)」で、ソニーモバイルコミュニケーションズ(以下ソニーモバイル)は、スマートフォンのフラッグシップモデルである「Xperia Z2」を発表した。また、タブレットである「Xperia Z2 Tablet」、ウェアラブルデバイスである「SmartBand SWR10」とLifelogアプリケーションなど、今年の戦略の軸となる商品も同時に展開している。
では、それら新製品は、どのような戦略の末に生まれたものなのだろうか? モバイルはソニーの三本柱の一つであり、業績回復を考える上でも重要なものだ。
他方で、「スマートフォンやタブレットはコモデディであり、利益は出ない」という悲観的な見方も広がっている。
そんな中でソニーモバイルが考える「商品戦略」とはどんなものになるのだろうか? 同社代表取締役社長である鈴木国正氏に話を聞いた。鈴木氏のコメントからは、モバイルの戦略だけでなく、「今コンシューマデバイスを売る上で必要なアプローチ」の一端が見えてきた。
フラッグシップなくして成功なし
消費者として気になるのは、「Xperia Z2」に代表される商品がどういう出来なのか、ということのはず。筆者も短時間、それら新製品に触れたが、どれも魅力的なものだった。スペック的には順当だが、製品としての価値向上は確実なものがある。
ソニーの三本柱の一つとして、Xperiaをどう売っていこうと考えているのだろうか? スマートフォン市場は急速に成熟に向かっている。ハイエンド製品の販売数量の伸びは鈍化し、MWCでも「低価格なローエンド製品」に注目が集まっていた。ソニーモバイルは現状ハイエンドに注力しており、一見トレンドとは乖離した動きのようにも見える。
しかし、鈴木社長はそこに確固たる戦略の存在を指摘する。
鈴木社長(以下敬称略):非常にシンプルに、私の頭の中では整理されていますし、会社の中でも一つになっていると思っています。
まず「我々の場」をしっかり広げていこう、ということなんですが、フィロソフィーはなにかというと「顧客に面白いものを提供していくんだ」ということです。好奇心・エモーショナルという言葉を使ったりしていますが、今となっては格好をつけて言っている感じではなくて、「顧客に正しいものを作れば、必ず伝わる」ということなんです。
ただし今の環境、ビジネスの観点で言うと、競合の中には、強くマーケットシェアをとっているところが、大きなマーケティングファンドを使って、商品力とは別のところで戦いを仕掛けてくる、つぶしに来るという状況はあります。でも我々は、正しいものを作って正しく伝えられると思っているんです。
でも、一気にはできません。例えば国ごとかもしれません。
しかし、我々と最も近く、重要なパートナーであるオペレーター(筆者注:本原稿内では携帯電話事業者のことを指す)と、「顧客に面白いものを提供する」という認識がはっきりとさせれば、他社との競合に打ち勝つこともできると思います。
ソニーの他のビジネスとまったく違うのは、オペレーターの存在が重要である、ということかも知れません。ただ仲がいいとか、たくさん買ってくれる、という関係ではない。その関係は国ごとに異なるので、どういう関係を築くべきかは一概に言えませんが、あえて一言で言えば、オペレーターとの縁です。
では「場を広げる」とはどういうことかと言う話になるんですが……。
まずは、フラッグシップのスマートフォンをきちんと作り込んだ上で、それをきちんと伝える・きちんと市場に導入するということです。ご存じの通り、ソニーの持つ基本的なテクノロジーを使って良い商品を作ることと、我々の持っているネットワークサービスやアプリケーションをフルに、良くしていくことです。そこは確実に良くなっている部分だと同意していただけると思います。NFCでの「ワンタッチ」機能を搭載した周辺機器も含め、価値のある製品は広がってきています。「One Sony」「Sony Convergence」といった言葉は、具体的な商品力になってきていると考えます。
そうしたことは、まずフラッグシップで表現せねばなりません。そしてその後、実際にやりはじめていますが、ミドルクラスであるとかその上の方へと広げていきます。我々は必ずしも「ローエンド」「低価格」とはいいませんが、ミドルへは広げています。そこも確実に導入しています。日本はハイエンドのみですが、他の国には広げています。我々が持っているデータでは、20カ国以上でシェア3位以上になっています。強いのは日本だけではないです。
場を広げるというのは、フラッグシップを導入してしっかりとブランド力を作りつつ、商品を広げていく、ということです。私が言いたいのは、この逆はない、ということ。過去には、他社もソニーも、下から攻めて失敗していることがあります。上がないのに下をやってもしょうがない。どんな国でも上から入れます。
すなわち、ブランド価値の高いプレミアムなモデルである「Xperia Z2」を軸に、携帯電話事業者と連携して商品導入をすすめる、ということだろう。低価格商品を単に展開しても、労働コスト・製造コストの低い国で作られている製品には勝てない。だからこそ「上からしっかり」やるのは、ある意味でわかりやすい戦略だ。
周辺機器も含め「場を広げる」
一方で、鈴木社長が強調するのは「場を広げる」というやり方だ。そこで対象となるのは、スマートフォンという主軸商品だけではない。
鈴木:さらに「場を広げる」という言葉には続きがあります。
ウェアラブル、我々は「スマートウエア・エクスペリエンス」と呼んでいますが、体験全体を、「SmartBand SWR10」というハードウエアと、共通のプラットフォームであるLifelogアプリを軸に広げていこう、ということです。まだ始まったばかりですが、そこに顧客に楽しんでいただける「場」が広がっていくと考えています。
でも「ウェアラブルはみんなやっているじゃないですか」と言われると思います。そう見えますが、そのやり方が「ソニーらしさ」が生きる場だと思っています。以前はスマートフォンでも「ソニーらしさなんて、本当に出るのか」と言われましたが、いまなんとかできるように、ご納得いただけるようになってきた。スマートウエアも、まだ体験としては一歩目ですが、ソニーらしさが生きるのではないか、と思っています。
タブレット用のスピーカー(BSC10)やヘッドセット(BRH10)なども裾野を広げるための存在です。こういった、ある意味「すき間」の商品群を、普通の企業ならばファーストパーティーとしては作ってこないですよ。私らはこういうものもやりながら、サードパーティーを刺激させていただいて、もっと面白いものを作っていただこうと考えています。
鈴木:こういったジャンルまで手がけるのがソニーだと思います。他のコンペティターと比較して「どこまで自分達できちんとやりますか?」ということです。1社くらいはあるかもしれないけれど、2社・3社はいないと思っています。タブレット用のスピーカードックも、聞いていただければわかりますが、ものすごく音がいいんですよ。このボックスの限界値まで追求しました。このマイク(Stereo Microphone STM10)にしてもそうです。ここまでいい音のマイクを純正で用意しますか? ということです。
もちろん、こうした周辺機器のビジネスが何百億円もの売り上げになるとは思っていません。売り上げ規模は高くなくても、ある程度の利益率が達成できると思います。ただそれが、この1、2年で会社を支えられるくらい大きくなるか、というとそうじゃない。
これはむしろ「場を広げる」役割をしてくれているもの。スマートフォン本体と周辺機器、両方の作り込みによって顧客を魅了していくのが、ソニー流の「場を広げる」ということの定義だと考えています。そこでソニーらしさが表現できているなら、損になっていなければ良い、ということです。
周辺機器の市場は、3年・4年・5年と経てば、間違いなく大きなものになっていくと思いますから、後々はビジネスモデルとして成り立つでしょう。
こうした「場を広げる」やり方は、ソニー全体に広がっている。その思想そのものが、過去の「コンシューマーエレクトロニクスのビジネス」的ではない、と鈴木社長は指摘する。
鈴木:周辺機器も本体も、すでにソニーモバイルだけで開発するものではなくなっています。ある製品ではソニーの他の部署が開発しています。ソニーモバイルと一緒に商品作りに参画し、一元的に見えるようにしています。そのための新しい組織があり、みんなで議論しながらやっていきます。設計にしても、横の連携が非常に活発です。自然に社内でも「場の広がり」が生まれています。
スマートウエア的なものの作り込みはソニーモバイルを中心にやっていきますが、顧客との結びつきについては、ネットワークサービスを介して、より強いものになっていきますよね。カメラとアプリに連動したサービスもあれば、ライフログのように直接連動するものもある。カメラ系の「PlayMemories」とも連携し、場がどんどん広がっていくわけです。それが面白くなければお客様はやってきませんが、「デバイスが楽しい」「アプリも楽しい」「連動しているな」ということになって、知らないうちに「ソニーって面白いな」と感じて、続いていけばいいと思うのです。こうしたやり方は、昔のソニーのブランドの強さを作り込む方法論とは、また違った作り込みのプロセスです。PlayStationとモバイルは、ということになるかもしれませんが、ブランドを強くしていくための「作り込み」の過程が、過去60年間のやり方とは違ってきている。アプリケーションやサービスを含めたプロセスで「ソニーって面白い」と思っていただけるようにしなくてはならない。これが、私がずっと描いているアウトラインです。
「使ってみると離れられない」ウェアラブルを狙う
今回の発表のもう一つの軸は、ウェアラブル商品である「SmartBand」戦略だ。今後ウェアラブルデバイスの市場が伸びる、と多くの業界関係者が分析しており、ソニーも同様の期待を持っているのだろう。しかし、ウェアラブルデバイスはまだ「誰もが納得する」用途を開発できていない。誰もが欲しいと思う、ニーズの真ん中を射貫くような用途が見えてくれば、確かに爆発的に普及するのだろう。だが、SmartBandについても、まだ「真ん中」は射貫いていないように感じる。ソニーモバイルとしては、ウェアラブルデバイスのニーズをどう見ているのだろうか? そして、それはどう普及すると分析しているのだろうか?
鈴木:垂直立ち上げというより、「この用途がいい」という事の積み重ねで広がっていく……ということだと思いますよ。
ど真ん中に行くものを狙っていないか、というとそうではないです。いつもそれは考えないといけない。しかし、いまやれることというのは、色々な面白いものを積み重ねていくことです。
例えば、私は個人的に「SmartWatch 2」を使っていますが、もう手放せないんです。私は時計収集が趣味で、けっこういい時計もいくつか持っているんですが、残念ながら、今は家の中で自動巻用のスタンドにくっついて、グルグル回っているだけです(笑)。なぜかというと、SmartWatch 2が便利だからです。スーパーキラーな用途がなにかあるかというと、そうでもないんです。いくつかの組み合わせで快適に感じるんです。私の場合には、メールをさっと確認できるのが一番の用途。あと、テザリングの切り換えをサッとできるとか。ちょっとしたもので便利になっていくんです。
Smartbandについては「自分のぞき」ですよね。自分の生活をのぞく、という経験をするタイプじゃなかったんですが、使ってみると、「ああ、自分ってこんな生活をしていたんだな……」ということが分かって面白い。毎日6時間くらいは寝てるつもりだったのに、意外と寝ていないんだな、とか分かってくる。今は最初のステップですが、今後はアプリの機能も計測精度も、アップデートのたびにあがっていきます。いろんな機能を入れていこうと思っています。
鈴木:そうすると、好奇心にあふれる人間でなくても、そういったきっかけから「好奇心が生まれていく」ような形になるかと思うんです。私は「好奇心」という言葉が好きで、平井(一夫社長)とともに好奇心、という言葉をずっと使ってきましたが、これは「好奇心を与えてくれるような商品」だと思います。
それが西田さんのおっしゃるような「ど真ん中の商品か」と言われると、そういうことではないよな、とは思います。しかし、身につけていると「こういうものが欲しい」「こうなって欲しい」という欲求がどんどん出てくる。それが今度はイノベーションだったりクリエイティビティだったりと、おおいに社内・社外に刺激を与えてくれる存在になる、というストーリーが描けます。
それともう一つは「技術」です。
我々がなにをやっているか、すべては公開していませんが、R&Dの中で仕込んでいるものの中に、「これは面白い」と思うものがあります。そういった要素は、会社としての競争力になります。アプリケーションの中にもアイデアが蓄積されていくので、会社の中にイノベーション・マインドが蓄積されていくのですが、ハードの作り込みの方も、最初にR&Dにある程度投資をしておくことで、「あの技術は使える」「この技術もここで活かせる」という風な発想が広がっていくんです。
だから、(スマートフォンを指さしながら)これだけだと、端末ビジネスで終わりますが、場を広げていくと、いろんなところに投資すべき案件が出てきたり、イノベーションを刺激するアイデアが出てきます。そこが面白いところだと思っています。私自身、「この方向性は正しい」と毎日のように確信しています。
一方で、PS4が成功してきている。ネットワークサービスと一緒に広がっていって、新しいアイデアが生まれている。両者は別のものではないです。我々は我々でモバイルやスマートウエア・エクスペリエンスの世界を広げていきますが、PS4でSony Entertainmet Network(SEN)が強くなる。その両者は結びつくに決まっているじゃないですか。そうすれば、さらに大きな「ソニーの場」というものが出来上がってくることになります。
でも私たちは、囲い込もうとはしません。基本的なテクノロジーはオープンにしていますし、プラットフォームもオープンなものを多く使っています。そういう意味では、自然にソニーとお客様のおつきあいが深くなるようなら、それがビジネスモデルだ、ということになるでしょう。
「オープン」という観点でビジネスを広げるならば、重要になるのがパートナーの存在だ。特に今後は、ソフトウエアや販売に関するパートナーだけでなく、SmartBandと組み合わせて使う「デザインされたバンド」を作ってくれる人々との協力も欠かせない。
鈴木:社外のパートナーの方々との接点は、色々な形で増やしています。例えばSmartBandについても、具体的な名前は出しませんでしたが、アプリのSDKの話もありますし、バンドのデザイン面でも協力体制にあります。「Core」という小さなモジュールの形にしたために、色々なデザイナーの方々、あるいはファッションブランドの方々との話し合いも進んでいます。また、そうしたものを流通させる上でも、いろんなファッションブランドを含め、可能性が出てきています。少なくとも、過去のソニー、通常のコンシューマエレクトロニクスのやり方とは違うものを、いま作っており、自然とそういう方向に向かっています。
ウェアラブルデバイスで一番強いメーカーは、端末についてはクローズで、スマートフォンとの組み合わせも限定する形でやっていますが、我々はオープンです。ですが、Xperia・ソニーとの組み合わせが一番使いやすい……という形は目指したいところです。実際に買ってくれるお客様は面白いもので、Xperiaを買うとSmartWatchにも、SmartBandにも興味を持っていただけます。ただ、他のスマートフォンユーザーの方も買っていただける道はきちんと用意する。それは、こうした製品が強くなっていくと、裾野を広げるのが自然ですから。繰り返しになりますが、こうした製品を売るのはスマートフォンを売ることが目的なのではなく、裾野を広げるのが目的。他のブランド、他のメーカーの製品をもってこの場に来てくれてもまったくかまわない、という思想です。
過去との比較でいえば、確かにそうしたことはしてこなかった。それはコンシューマーエレクトロニクスビジネスの特質ですから仕方がない。しかし、(ビデオデッキの)βの時など、フォーマット作りの時は、中心になりながらより広く参加を呼びかける形でした。メディア作りで培った土壌は、ここでも生きるのかも知れません。
タブレットも「プレミアム」から、重要視される「携帯電話事業者」との連携
ソニーモバイルのビジネス領域で、まだ活性化していないのが「タブレット」だ。スマートフォンの市場では存在感が出てきたが、タブレットではまだまだだ。Xperia Z2 Tabletは軽量で、市場でのインパクトも大きいだろう。しかし、200ドルの低価格タブレットがひしめくAndroidタブレットの世界で勝ち抜くのは容易ではない。特に、ソニーからVAIO事業が切り離された現在、「スマートフォンよりも大きな、個人と接するためのデバイス」として、タブレット事業の強化は急務だ。その点をどう見ているのだろうか?
鈴木:ここはしっかりやっていこう、と考えています。もちろん。
まずは10インチのプレミアム製品をしっかりと作り込みます。スマートフォンにおけるフラッグシップと同じ考え方です。プレミアムから入らないと、タブレットこそ、PCよりもひどい状況になる。ただの板のようなものを売っている企業がたくさんあるわけでしょう?
最初から投げ売りのようなところに入っていっても、お客様はソニーらしさを感じない。まずはプレミアムラインをしっかり作り込むことが重要です。規模の経済よりもクオリティの訴求をしっかりとやっていきたいです。そこに周辺機器を含めて、まずは「リビングルームで気楽に使えるタブレット」というところを訴求していきたいと考えています。そして、便利だからオプションのキーボード付きカバーをつけて持ち歩く。それが今のストーリーです。それをしっかり作り込む。
ではその先は、というと、このサイズ・この価格だけで、と考えているわけではないです。当然広げていかなくてはなりません。
まずはプレミアムを攻め、これからは7~8インチなどのサイズバリエーションも考える、ということなのだろう。だが、プレミアムタブレットは高価だ。価格重視の市場での勝算をどう見ているのか? 筆者の問いに対する鈴木社長の答えは、少々意外なものだった。
鈴木:Wi-Fiオンリーの製品というのは、どうしても価格重視で不利になるでしょう。プレミアムをしっかりある数量に届けることに徹底するしかないです。
しかしマジョリティは、タブレットもスマートフォンと一緒に、オペレーター経由で供給されることになります。ですから彼らの戦略の中にも入ってきます。特にXperia Z Tablet2については、音声通話機能も組み込みましたし。
最大のパートナーとして、オペレーターの存在はそこでも重要になってきているんです。PCがどんどん安いところにマスマーケットができて広がる中で、多くのオペレーターは、こうしたタブレットを組み合わせたビジネスを一緒に作っていきたい、と考えています。その中には、販売時の補助金、ということもあります。しかしなにより、タブレットは便利です。スマートフォンのテザリングと組み合わせる前提で、Wi-Fiのものを販売するオペレーターだって出てきます。組み合わせは色々ですし、料金プランの工夫もできます。アメリカ市場はその面で先行していますが、私が話している多くのアメリカ以外のオペレーターも、色々と考えていますし、我々と話し合っています。
すなわち、タブレットの主戦場を「携帯電話事業者とのコラボレーションによる販売」と捉え、価格面でも商品性の面でも、彼らとの連携による価値追求を行っていく、ということである。これは、スマートフォンでの戦略の延長線上にタブレットもある、という宣言でもある。
その上で鈴木社長は、「現在のコンシューマデバイスの売り方」、特に通信が絡むモバイルデバイスの売り方について、次のように示唆した。
鈴木:そういう意味では、SmartBandだって、通信機能は内蔵していませんが、スマートフォンとつながるので、同じような役割を果たし得ます。そういった組み合わせによるビジネスモデルは描きうるんです。
オペレーターを介さない、古典的なコンシューマーエレクトロニクスのビジネスに近い部分も、ある程度はあります。しかし「ある程度」しかない。タブレットがソニーモバイルのビジネスである理由は、半分が「通信関連技術が軸である」からですが、もう半分はこうしたビジネスモデルとの関係があるのです。
携帯電話事業者との関係は国ごとに異なる。日本で、ソニーモバイルはNTTドコモやKDDIと良好な関係を築いており、ビジネスも堅調だ。ヨーロッパや中東も同様である。だが、残る最大の市場である「アメリカ」はどうだろう? アップルやサムスン電子が強いのは、アメリカ市場において圧倒的な強みを維持しているからだ。今後のビジネスにおいて携帯電話事業者との関係が重要ならば、アメリカ市場でどう戦おうとしているのだろうか?
鈴木社長は「まだ明確にコメントする時期ではない」としつつも、次のように説明した。
鈴木:もっとも競争の激しい国である、とあらゆる人が言います。一方で、もっとも新しいアイデア・イノベーションが生まれる国でもあります。あの国にしっかりと根を下ろすことが重要です。
現状、唯一お話できるのは、「アメリカのすべてのオペレーターとお話をしている」ということです。具体策は申し上げられませんが、全オペレーターと議論をしている、ということだけは間違いありません。オペレーターが最大のパートナーで、そこと組んでいかに面白いことができるのか、ということが、最大の戦略です。
今のソニーの持っているものから言うと、オペレーター側から見ても「他のブランドと比べ、面白いブランドだ」と認識してくれているので、パートナーとしての議論ができる状況にあります。
アメリカでどことどのようなパートナーシップを組み、どうモバイルデバイスを販売していくのか。それがソニーモバイルにとって最大のチャレンジであり、ひいてはソニー全体の浮沈にも関わってくるだろう。結果は、そう遠くないうちに見えてくる……と筆者は予想している。
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【目次】
01.はじめに
02.ついに登場したPS4。PlayStation Meeting 2013レポート
03.PlayStation 4 徹底分析 -上- SCEが「汎用路線」で狙うのはなにか
04.PlayStation4 徹底分析 -下- 「ソーシャル・ファースト」時代に狙うゲームビジネスの再点火
05.「壁のないゲーム環境」を目指す マーク・サーニー氏インタビュー
06.北米版PlayStation 4をテスト。高い完成度のゲーム機
07.変わるゲームビジネスの中で、再び「PS2」のような成功を
08.「PS4世代でかわること」とゲーム市場の関係
09.PS4発売が2月になった理由。日本のゲーム開発の変化
10.特徴は「テレビ連携」と「クラウド」? Xbox Oneを分析する
11.Xbox One開発担当インタビュー MSが目指す「次のゲームコンソール」
12.「PlayStation Now」「クラウドベースTV」で狙うもの。SCEハウス社長インタビュー
13.PS4世代の先にあるもの
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