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構想10年以上の350台限定イヤフォン「ETOILE」。米VOLK AUDIO

「ETOILE」

アユートは、2025年に創立されたアメリカのオーディオブランド「VOLK AUDIO」より、ブランド第1弾のユニバーサルIEM(インイヤーモニター)で、創設を記念した350台限定生産のFounder's Edition「ETOILE(エトワール)」を、10月11日に発売する。価格は66万円。

VOLK AUDIOは米ジョージア州アトランタに本拠を置くオーディオブランド。米国有数のカスタムIEMメーカーで、長年最先端のIEMを設計開発・製造・販売に携わってきた経験を持つJack Vang氏によって、2025年4月に創設された。

Michael Graves氏

ETOILEは、ブランド創設以前から10年以上に渡る構想を経て誕生したという。Vang氏による設計/デザインと、5度のグラミー賞受賞、14度のノミネート歴を持つ米Osiris Studioのマスタリングエンジニア・Michael Graves氏とのタッグにより、Graves氏のニアフィールドリファレンスモニターとして、マスタリングチェックにも耐えるIEMとして設計された。

特注の10ドライバーによる5ウェイ、6クロスオーバーのクアッドブリッド構成を採用。独自の10mm径ダイナミックドライバー「M10」、ふたつのデュアルドライバーモジュールに配置されたSonion製バランスド・アーマチュア(BA)ドライバー×4基、高域用のSonion製静電ドライバー×4基、高域と超高域の精度を高める独自の8mm径静磁(静電磁気)ドライバー「M8」を搭載している。

再生周波数帯域は10Hz~50kHz、インピーダンスは8.8Ω@1kHz、感度は110.6dB@1kHz。

「M10」ダイナミックドライバー

超低域・低域用の独自ドライバー「M10」は、20Hz~350Hzの周波数帯域を再現するようにチューニング。N52グレードのネオジム磁石と、日本製の高純度OFCボイスコイルを使うことで「ドライバーの応答スピード、厳密な制御、そして明瞭な低音構造を実現している」という。

ドライバー構成イメージ

シェルに統合されたデュアルトライポートベントで内部気圧を調整し、不要な共鳴や歪みを低減。音響室内にはサフィアーノレザー層を意図的に配置することで、余韻を抑制し、減衰を制御。「インパクトがあり、制御された明瞭な低音再生を実現」した。

Sonion製BAドライバー×4基はデュアルドライバーモジュールに配置

中域・中高域は、4基のSonion製BAドライバーが担当。350Hz~8KHzまでの周波数をカバーするため、ふたつの専用デュアルドライバーモジュールに配置されている。

ひとつ目のモジュールは、中音域の核となる周波数帯域に特化して最適化されたデュアルダイアフラム構造を採用。豊かな音色や、明瞭さ、制御された解像度を実現した。

ふたつ目のモジュールは、中高音域に特化したシングルダイアフラム構造。「発音の明瞭さ、存在感を高め、倍音の整合性や一貫性を損なうことなく、重要な周波数を自然に引き立てる」とのこと。

さらに、これらのモジュールが連携することで制御された詳細な中音域再生を実現。「正確な音調バランス、情感豊かなリアリズム、精密な輪郭感をもって音楽を表現する」という。

静電ドライバー

高域・超高域は、8kHz~45kHzをカバーするSonion製静電ドライバー×4基が担当。各ドライバーは、ふたつの導電性電極の間に均一に懸架された超薄型帯電振動板を採用している。これらの振動板は、専用変圧器で駆動される。

「M8」静磁ドライバー

高域・超高域は、VOLK独自の8mm静電磁気型ツイーター「M8」が担当。「自然な音色、精密な音調制御、そして臨場感あふれる細部まで再現するよう特別に設計されている」という。

こちらも、ダイナミック型やBAと比較して、より速い過渡応答、低歪み、優れた倍音精度を実現する。また静電ドライバーと異なり、外部トランスやバイアス電圧を必要としないため、簡素で信頼性の高い動作と忠実で自然な音の再現を両立する。

ETOILEの場合、M8は8kHz~12kHzの帯域でクロスオーバーされ、静電ドライバーとシームレスに統合。固有の周波数特性は50KHzまで滑らかに伸び、45KHz付近でピークを迎えるとのこと。

クロスオーバーは、カスタム設計のプリント基板上に実装され、抵抗とコンデンサーネットワークを使うことで精密な6ウェイ周波数分割とドライバーのシームレスな統合を実現。

信号は5つの専用サウンドボアに直接ルーティングされ、特定の周波数帯域は音響フィルターによりさらに精緻化。これにより電気的、音響的に正確な整合が確保されるため、ETOILEが意図したサウンドシグネチャーを忠実に再現するという。

シェルには、エアフローを制御するデュアルトライポートベントシステムを搭載。気流を制御して、ドライバー全体の内部圧力を均一化することで、振動板の動きを安定させ、不要な共鳴を排除。明瞭さと音調バランスを維持する。

フェイスプレートには、ドイツ製樹脂パネルと、自然なダンピング効果で微小共振を抑え、低域の挙動を洗練させるというイタリア製のフルグレインサフィアーノレザー、さらに6061-T6アルミニウムをCNC加工し、24K金メッキを施したフレームを組み合わせた。

フレームは3カ所の段差付きサスペンションポイントで固定することで、共振を分散、各層を確実に支えつつ、フェイスプレート全体を剛性構造として一体化させている。

ケーブルには、プレミアムカスタムメイドの「ARC」ケーブルを採用した。長さは約120cm、コネクターはIEM 2pin 0.78mm(フラット)、プラグは4.4mmバランスのストレート。

導体は単芯5N OCC銀、単芯4N銀、銀メッキ6N OCC銅、金メッキ4N銀、パラジウムメッキ4N銀を使ったもので、それぞれが電流の形成、インピーダンス制御、絶対的な信号完全性の維持において、最適な特性を持つよう厳選されている。

内部構造も精密に整合され、各ストランド、切断面、長さは対称性や位相整合性、電気的均一性を追求して調整。

さらにハードウェアとしては、6061-T6アルミニウムをCNC加工したものを採用。ブラッシュ仕上げと黒色アルマイト処理が施されており、ケーブルのY字分岐部とプラグ部には24K金リングも刻印した、被膜は医療用グレードPVC。

イヤフォンは1台1台手作業で組み立てられるほか、イタリア製サフィアーノレザーとゴヤレッドアルカンターラを使った付属キャリングケースも手作業で製作される。

そのほか付属品はレザーケーブルタイ、マイクロファイバークロス、VOLKシリコンイヤーピース×3ペア(S/M/L)、Simbio Fフォームイヤーピースオレンジ×3ペア(S/M/L)。