西田宗千佳のRandomTracking
第668回
iPhone Duo実機レビュー。高品質な折りたたみ型が抱える「時間の問題」
2026年10月21日 21:00
iPhone Duoのレビューをお届けする。
10月23日の発売を前に争奪戦が起き、すでに発売日に入手するのは困難と言われている。その人気は本物なのだろうか? 実機を使っていろいろ確かめてみた。
結果としてわかってきたのは、「非常にハイクオリティながら、今日の時点では課題もいくつかある」という点だ。
高級感のある「パスポートサイズ」
まず外観を見ていこう。
商品が入った箱は薄く幅広で、他のiPhoneと同じUSB-Cケーブルが付属。同梱品はそのくらいだ。
セットアップもプロセス自体は他のiPhoneと同じ。ただし画面が少々異なるし、Face IDではなく指紋認証の「Touch ID」になっている。カメラコントロールはあるがアクションボタンはなく、音量調節は上にある。
USB-C端子は、畳んだ時で言えば上側、開いた時なら左側にある。ちなみに、折りたたみ型で先行するサムスンは、「折りたたんだときは下、開いたときは右側」と逆だ。
閉じて片手で持ったときには、縦方向に短く感じる。開くと横長の画面になる。今年の折りたたみ型スマホではトレンドとなっている「パスポートサイズ」だ。
開くときには、画面がすりガラスのように見える。他のスマホにはあまりない要素であるが、それ自体には大きな意味はない。ただ、そういうところにこだわるのがアップルという会社ではある。
折りたたみ型というと「折り目」が話題になることが多い。アップルは「折り目が目立たない」ことをアピールしている。確かに、見たところ折り目は目立たない。使い始めて短時間だから……ということもあるだろうが、なにより「マット仕上げだから」ということが大きい。
折り目は照り返しがある場合に目立ちやすい。それをカバーするために「ナノテクスチャー仕上げ」と呼ぶマットな加工を選んでいる。暗い画面で光の方向を選ぶと、実際には「折り目が若干ある」のがわかるが、結局のところ、使っている側が気にならない形なら良いのだ。
開くとアプリを大きく使える。写真は、アップルの文書作成ソフトである「Pages」のiPhone Duo対応版である。横に持ってもいいし、縦に持ってもいい。
折りたたんだ状態で音楽を流したり、映像を楽しんだりもできる。
写真は折りたたんだ状態だが、開いた状態でも画質は良い。
折りたたみ型スマホは、その構造上、スピーカーの位置が偏りやすい。そうすると音も偏ってしまうが、iPhone Duoの場合、音がちゃんと偏らずに鳴る。
「ナノテクスチャー仕上げ」が電子書籍に最適
開いた時にマットな仕上げであるということは、iPhone Duoの大きな特徴である。特に、コンテンツを楽しむことを考えると、この要素が最も大きい、とすら感じる。
マットであることは、色の純度と輝度を下げることにもつながる。iPhone Duoの場合も、開く前と開いた後で、発色の違いに驚く部分はある。
では、インナーディスプレイの発色が悪いのか、というとそうではない。マットであればこうなるだろう、という発色だ。スマホやタブレット用にマット仕上げのフィルムがあるが、あれらを使った時よりはかなり好ましい。
今回はiPad miniとも比較してみたが、スッキリした見た目である上に、映り込みはほぼ感じられない。
特に大きな違いを感じるのは、電子書籍を読むときだ。紙のような質感になり、圧倒的に自然な印象になる。手触りも紙のようで、これもまた好印象だ。どの方向からの光でも反射は少ないし、文庫本を持つように、中央で少し折りたたんで持つこともできる。
また、インカメラがディスプレイの下に隠れており、撮影する時以外は見えないのも大きい。慣れれば意外と気にならないものだが、穴があるのとないのとでは、ない方がいいに決まっている。
前掲の写真をよく見ると、カメラがあるところにちょっと縞があるのがわかる。この部分だけ解像度が異なるので、撮影時にたまたま目立ってしまったのだろう。これを肉眼で把握するのはかなり困難であり、気になることはないだろう。
画面への「最適化」が大きな課題
一方で、良いところばかりでもない。
特に注意すべきなのは「iPhone Duo向けの最適化」という課題があることだ。
iPhone Duoは画面が縦に狭い。このことはどうしようもない事実だ。特に閉じた状態では、キーボードで半分くらい画面が隠れてしまう。ウェブの表示領域も少し狭くなる。
そこでOS側で工夫が施されていて、ステータスバーやメニューなどを右側に寄せる形になっている。最適化されていれば、画面をより有効に活用し、狭さの不利を感じづらくなる。
また、画面の縦横比自体が今までのiPhoneともiPadとも違うものなので、アプリの画面を自動的に最適なサイズに合わせる仕組みが必要になる。
アップル純正の「写真」アプリは、この双方の最適化が行なわれている。同じくアップル製である「Pages」も対応版が近日中に公開される予定だ。
以下は、10月23日公開が予定されている音楽ゲーム「PianoFold」だ。カメラから見える向こうの風景を表示しつつ、その上に押すべきボタンの表示が重なる。
こうしたアプリは増えていくだろう。
App Store「PianoFold - Rhythm Game」
一方で、アプリのすべてが最適化を終えているわけではない。「ほとんどがまだ」というのが正確だろう。
画面サイズの変更に対応しているアプリだと、右側のメニュー部分は空欄だが、画面は広く表示できる。
だが、iPhone版のアプリがそのままで、画面サイズ変更にすら未対応だと、iPhone Duoらしい画面にはならない。
以下は、利用したい人が多いであろう「Kindle」アプリの例だ。10月21日現在では最適化されていないので、「中央に細く画面を表示する」か、「画面を横倒しにした上で、不完全に引き延ばす」形でしか使えない。
前掲の写真は、アップルの「ブック」と「ebookjapan」アプリの例。前者はもちろん完全に最適化されており、後者は「画面サイズ変更」に対応しているので、問題なく本を読める。
ゲームはさらに大変だろう。以下は「NTE: Neverness to Everness」を動かした場合だが、あくまでiPhone用なので、画面サイズを引き延ばすことしかできない。
アプリ最適化は、10月23日以降に進むと見られる。iPhone Duoの最大の欠点が「アプリを最適化しないとイマイチな使い勝手になること」だとすれば、それが解消されるにはしばらく時間がかかることだろう。
画面分割や文字入力にも注意
欠点ではないが特徴、というべき部分もある。
iPhone Duoは、開いた画面でアプリを2つ同時に使える。ただし、同時に使えるのは2つまで、しかも、表示領域の分割は「横方向に1:1」に限られる。
Androidでは、3つ以上のアプリを使えるものも多く、画面分割比率も自由に変更できる。そういう意味では、iPhone Duoは「機能が限られている」とも言える。
しかしおそらく、これは狙ってのことだ。分割を複雑にすると操作も複雑になり、操作性自体が落ちる。あえての割り切りなのだろう。
逆に言えば、そこで自由度を求める人は、iPhone DuoではなくAndroidベースの折りたたみスマホを選ぶべきである。
文字入力についても、基本的にはOS内蔵のものを使うことになる。キーボードを左右に分割して、左右それぞれの親指でタイプしていく前提のユーザーインターフェースだ。分割するかしないかは、日本語モードでもそうでなくても切り替えられる。
Androidだと複数の日本語入力ソフトが選べるが、ここも「選べるべきか否か」は好みの問題に近い。
カメラの位置などに注意
カメラにも触れておこう。
iPhone Duoは望遠がなく、メインと超広角の2つを搭載している。
以下、iPhone 18 Pro Max/iPhone Duo/Galaxy Z Fold8のメインカメラの写真だが、iPhone 18 Pro MaxとiPhone Duoの写真は、写りがかなり似ている。
他方で、使い勝手には違いも大きい。
iPhone Duoを閉じた状態なら、Galaxy Z Fold8も含め、どの製品も使い勝手は似ている。
だが開いたときには違う。
iPhone Duoの場合、開いた状態では「縦長もしくは正方形で撮影する」形になるのだ。
横長の4:3で撮影するには、閉じて撮るか、iPhone Duoを開いたうえで縦に持って撮影する必要がある。
Galaxy Z Fold8の場合だと、開いた状態で横長の画角になるので、違和感は小さい。
すなわち、iPhone Duoを「開いてそのまま写真を撮る」場合、1:1、3:4、9:16の3パターンの画角から選ぶことになる。
これはちょっとしたことだが、気になるポイントだった。
カメラという意味では、持った時の「カメラの位置」も気になる。iPhone Duoは横並び、Galaxy Z Fold8は縦並び。後者の方が、レンズへの指の「かかり」が気になるのだ。ここは、iPhone Duoを使っていてより快適だと感じた部分だ。
アプリなどの最適化には時間を要するだろうが、価格を除くと、不満点はそのくらい。アップルはじっくりと時間を使い、良い折りたたみ型スマホを作ったな……というのが正直な感想である。






























































