西田宗千佳の
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新「ブルーレイDIGA」開発者インタビュー その2

~3D+4つの高画質化の秘密。2系統HDMIを搭載したわけ~


左から高画質化技術担当の甲野氏、商品企画担当の前田氏、UniPhierなど先行開発担当の森本氏、省電力設計を担当した溝内氏、戦略半導体開発センター佐山氏、高音質技術担当の梅迫氏

 パナソニック「新ブルーレイDIGA」開発者インタビューの2回目は、「画質・音質」へのこだわりをお伝えする。

 DIGAシリーズは、独自のポリシーに基づく絵作り・音作りを、これまでも繰り返してきた。新型DIGAでは、3D対応や2番組同時のMPEG-4 AVC/H.264録画などの機能面が注目されがちだが、新プラットフォームの導入とともに、新たな高画質化・高音質化が図られている。

 今回は、その内容とポリシーについて、くわしく解説していきたい。


3D対応のフラッグシップ機「DMR-BWT3000」

DMR-BW880

 


■ 4つの高画質化機能は「プラットフォーム」で実現

 まず最初に、今春の新DIGA(BW-*80系とBWTシリーズ)が、高画質化についてどのような機能を搭載しているのかをおさらいしておこう。

 前モデル(BW-*70系)にない、新DIGAの画質系新機能は、主に4つ存在する。一つは、「新アドバンスドAVCエンコーダー」。MPEG-4 AVCでの「10倍長時間録画」(HBモード/2.4Mbps)を実現するために、従来のAVCエンコーダーを改良したものだ。次に「新リアルクロマプロセッサ」。従来よりDIGAの特徴となっていたクロマアップサンプリングの機能を、さらに高度化したものだ。ここまでは、既存機能の改善といった趣が強い。

 完全な新機能といえるのが、「超解像技術」と「アニメモード」だ。前者は、DVD再生時のアップコンバート画質をより高度にするためのもので、後者はアニメ番組の画質を上げ、より見やすいものにしてくれるものだ。

 それぞれの機能は、すでに同社が採用しているものの改良版であったり、他社も搭載している機能をパナソニックなりのアプローチで手がけたものであったりと、「びっくりするほど特別」な機能であるとは言い難い。しかし、それらの機能は「つけたい」と思ったら明日にもつけられる、という機能ではない。

 特にパナソニックにとって大きいのは、すべてを「ユニフィエ」というプラットフォームで実現している、ということだ。他のメーカーは、他社の家電向けLSIに、自社の付加価値のためのLSIやソフトウエアを「追加」して新機能を実現することが多い。

 だが、前回の記事で触れたように、パナソニックは低コスト化・省電力化・高機能化の3点から、プラットフォームに「付加機能をくっつける」形での機能拡張を選択しない傾向にある。そのため、今回紹介する機能の多くが、旧プラットフォームを使う最廉価機種「BR580」以外のすべての機種で利用できる。その上で、プレミアムモデルである「DMR-BWT3000」と3D対応BDプレイヤーの「DMP-BDT900」では、さらに特別な高画質・高音質化が行なわれる、という形になっている。だから、比較的売価の安いBW680であっても、前年の70系よりも画質などで大きな向上が見られる。

DMP-BDT900ユニフィエ

 今回は新プラットフォームへの移行、ということもあり、新機能の搭載には絶好のタイミング。3DやWAVCといった目玉機能と同様、改善にはちょうどいい時期だった、という考え方ができるだろう。

パナソニック・AVCネットワークス社 ビデオビジネスユニット 商品技術グループ レコーダハード設計チーム 主任技師 梅迫実氏

 また、AV機器というと、大きく・重くすることで信号や振動の安定を狙い、画質・音質の向上を図るという設計の機器が多い。前回のインタビューの最後でも触れたように、DIGAはそういったアプローチを採っていない。「シンプル・スマート・サイレントの3S」という発想で開発が行なわれている。DIGAの高音質化設計を担当する、パナソニック・AVCネットワークス社 ビデオビジネスユニット 商品技術グループ レコーダハード設計チーム 主任技師 梅迫実氏は従来とは「発想がまったく異なる」と話す。

梅迫:アナログ時代ならば、素子に大きな電流を流して安定させる、という考え方でしたが、デジタル機器ではまったく逆ですね。セット内のノイズを減らすためには、デジタル回路を集積化して高周波のスイチングノイズを減らす必要があります。結果として、消費電力が減り、発熱も抑えることができます。

 多機能化はしているが、その際に省電力化を行ない、高い電力で生まれるノイズや熱の影響を排除することが、そのまま高画質化・高音質化につながる、という考え方だ。これは昨年秋の70系からつながっている発想であり、今回の新プラットフォーム採用モデルでも生かされている。

 


■ SDでも生きる! 「新リアルクロマプロセッサ」の実力

 まず気になるのは「新リアルクロマプロセッサ」の価値だ。

 リアルクロマプロセッサは、2008年秋に登場した、DMR-BW930/830/730などの「30系」から搭載されている機能だ。詳しくは、30系発売時に掲載したインタビュー記事をご参照いただきたいが、ディスクメディアや放送でカットされている「色の変化」(クロマ)情報を補完し、「色が生み出す解像度」の情報を加えてリアリティを増す、という狙いで開発されたものだ。特に、昨年秋に発売された「DMR-BW970」では、クロマアップサンプリングを水平・垂直両方向で、かつプログレッシブ化した信号で行なうようにしたため、色のキレと解像感が高まっていた。

 さらに有効とみなされているのが、「階調ロスレスシステム」と呼ばれる仕組みだ。一般的に階調処理が行なわれる場合には、複数回の「ビット丸め」が発生する。例えば、8ビットの映像を10ビットに拡張して処理しても、また次のLSIに渡す時には、また8ビットに丸めてから渡す……という形になるからだ。一般的に各LSIは、仕様として各要素8ビットの信号で入出力することになっているためのことだが、「拡張して丸める」という処理を複数回行なうと、演算精度の劣化につながり、それが画質劣化として現れる。

3Dマルチタップを採用

 階調ロスレスシステムは、簡単にいえば、高精度にアップコンバートした数値をそのまま扱い、「ビット丸め」をしない、という考え方を採っている。8ビット映像からI/P変換処理を行ない、10ビット映像にしたあと、まとめてクロマアップサンプリングを行ない、10ビットもしくは12ビットで出力する。せっかくキレイになった映像を劣化させることがなかった。

 では、80系・BWT系で搭載された新リアルクロマプロセッサや階調ロスレスシステムは、従来のものに比べどのように改良がなされたのだろうか? 3D対応VIERAの会見では、BWTシリーズ搭載のリアルクロマプロセッサを、「3Dマルチタップ対応」としてアピールしていた。従来機種に比べどのような違いがあるのだろう、という疑問が出てくる。


AVCネットワークス社 ビデオビジネスユニット 商品技術グループ 先行開発チーム 主幹技師 甲野和彦氏

 DIGAシリーズの高画質化設計を担当する、パナソニック・AVCネットワークス社 ビデオビジネスユニット 商品技術グループ 主幹技師の甲野和彦氏は次のように話す。

甲野:基本的なクロマアップサンプリングの仕組みは、BW970のものと大きく変わっていません。MVCではLとR、両方のチャンネルで、フルHD映像が出てきますので、それぞれの映像信号に対してしっかりクロマアップサンプリングを行なう、という仕組みを「3D対応」、と呼んでいます。

 すなわち、1フレームのクロマ処理についてはかなりBW970のものに近いクオリティになっている、ということになる。3Dの映像は「迫力」がある、と思われることが多いが、現在主流となっている3D映像の場合には、迫力よりも「ディテール」「解像感」「現実感」の高さが本当の魅力だ。クロマアップサンプリングはそもそも、ディテールや解像感の表現力アップに有効な機能であり、その価値は3Dになってもゆらぐものではない。3D映像のもつ「現実感の高さ」を生かすには、クロマアップサンプリングはプラスに働くだろう。

 逆に言えば、「3Dのための特別な高画質化処理」が行なわれているのか、というと、「そうではない」と甲野氏は話す。3Dのために特別ななにかが必要なのか、という点については、これからの検討課題となる。

 なお今回、BW970で採用されていたクロマアップサンプリング技術は、その多くがプレミアムモデル以外でも実現されている。前回の記事で、「BW680のコストパーバリューが良くなっている」とした理由は、このあたりにある。

甲野:以前はユニフィエに付加チップを追加して実現していたのですが、今回はすべてユニフィエで実現しています。ですから、「一部の要素」をのぞき、BR580を除く、BW680などの低価格機種でも同様なクロマアップサンプリングの効果が現れます。

 実は、BW970で搭載した機能は、元々新プラットフォームで実現しよう、と考えて開発していたものなんです。それが開発の途上で、「これは工夫したら、現行のユニフィエに外付けLSIという形でも、ある程度実現できるんじゃないか?」という話になってきたので、先行して搭載したものなんです。ですから、昨年秋の段階ではかなりトリッキーなことをやって実装していたのですが、今回はシンプルな形の実装となっています。

 もちろん、さらに改良された部分もある。

甲野:今回は、SD素材に対しても高度なクロマアップサンプリングや階調ロスレスが働くようになっています。以前はHD素材にのみに有効だったのですが、さらに今回、SD素材をHD信号にアップコン出力する場合に、クロマアップサンプリングとHDへのアップスケーリングを統合して行なうようにしています。通常の機種ではこの処理を2回に分けます。実際のところ色信号に着目すると、アップサンプリングもスケーラーも同じような処理ですから、2段に分けずに1回で行なうことにより自然に色信号の帯域を伸ばそう、という考え方です。

 例えば、BS101(NHK BS1)で放映されたオリンピック中継などでは、選手のユニフォームや赤い旗など、鮮やかな赤色が揺らめくシーンが多かったのですが、そういったシーンでは画質が全然違ってくるんですよ。赤い部分では、スケーラーの影響で縦方向ににじみが出やすいのですが、これがピシッと決まるようになります。

 また従来、これらの処理の全ての効果が得られるのは、出力の解像度が1080pの場合に限られていましたが、今回は1080i出力の場合でも効果が出るようになりました。これは、内部でいったんきちんと1080p信号に変換した後で、1080i信号に戻して出力する構成にしたからです。これらの点が、新ユニフィエの効果です。

BWT3000とBDT900のリアルクロマプロセッサplusのブロック図。水色部分が新規に追加された部分

 右図でいえば、水色の部分が、今回新しく追加された部分だ。BW970は「プレミアムモデル」なので、できるだけその時点での高画質を追求するモデルといえる。だが、その多くの部分は新ユニフィエを使った新モデルに引き継がれており、BWTシリーズ・80系(BR580を除く)については、BW970譲りの高画質を多くの部分で実現している、といえるだろう。

 とはいえ、BW970や、新プレミアムモデルである「DMR-BWT3000」、「DMP-BDT900」には、さらにプラスの高画質機能がある。図でいえば最後の段にあたる「高解像度シュートレスクロマアップサンプリング」の部分がそれだ。技術的な詳細は明かされていないが、特に水平方向で発生しやすい、若干の輪郭強調(俗に言うオーバーシュート)を抑えた、より丁寧なクロマアップサンプリングを行なうものであり、これがBW970の高画質を支える部分であった。さらなる高画質化を狙い、新プレミアムモデルにもこの機能は引き継がれている。

 また、BWT3000とBDT900/BD65に新たに搭載されたのが「ディテール・クラリティ・プロセッサ for BD」という機能だ。

甲野:この機能は、従来弊社のプロジェクタに搭載していた一種のエンハンサーです。映像を周波数帯で細かく分類し、それに応じてエンハンスするのです。特にこれは、プロジェクタで見るお客様に有効です。この機能はディテール分だけを持ち上げ、エッジはほとんど上げません。プロジェクタの絵はどちらかというとやさしい絵が出ますが、強度は四段階ありますので、素材であるとかお使いのプロジェクタの特質に応じて、好みで画質を修正していただく場合に利用するといいでしょう。

 


■ 「超解像」と「アニメモード」はDVD画質の改善に威力を発揮

 他方、「超解像技術」と「アニメモード」は、新ユニフィエに標準搭載されたものなので、BR580をの除くすべてのモデルで利用できるものだ。

甲野:超解像は、アップコンバートする時にだけかけています。今回我々は、超解像をアップコンバートの改善と位置づけていますので。特徴は2つあります。一つは、エッジ部とテクスチャー部、平坦部にわけて、それぞれ最適な処理を行なうということ。もう一つは、補正後の画像と補正前の原画を比較して、補正のやり過ぎを排除するなどの再補正を行なうことです。例えばリンギングが出た場合にはそれを排除する、といった処理です。

 この処理はSD画像と、地デジの横1,440ドットの映像で使われます。基本技術は、LUMIXなどで使われているものと同じもので、弊社の研究部門で開発されたものです。ただし、使い方やチューニングは機器によって異なり、各々での効果は異なります。

 単純なアップコンバートではリンギングが出たり、SN比が悪くなったりしやすいので、DIGAの場合には、それをなるべく防いでより鮮明に見せる、という両立を狙うような技術としてチューニングしています。

 これは、他社でいう「再構成法」の超解像に近い考え方だが、同社はその呼称を採用していない。「定義がはっきりしない」(甲野氏)からだ。筆者は、超解像という言葉の今の使い方は、あまりにマーケティング優先であって好きではない。今回の機能については、あまり言葉にはとらわれず、アップコンバート機能の改善と考えるのがわかりやすいだろう。

 他方、他社の機能に言葉は似ているが、考え方が異なるのが「アニメモード」だ。

甲野:アニメモードは、線をくっきりかつなめらかに見せて、さらにノイズを落とす、という絵作りをしたものです。「画質選択モード」として実装していますので、モード設定を変更していただいて利用します。この時には実は、超解像もセッティングが変わります。エッジをきっちり出した方がアニメではキレイに見える場合が多いので、エッジを立てつつリンギングを防ぐ、という方向に設定を振っているんです。

 この機能は、どちらかというと、DVDやSD放送のアニメーションの高画質化を考えたものです。BD-ROMやHD放送のDR録画はそれなりにキレイですから、それよりは、もう少し下のクオリティのものの方が、改善の度合いが大きいので、主にそこを狙ったんです。

 これは、同じように「アニメでの高画質化」を謳うソニーとはかなり違う考え方だ。ソニーは録画時のノイズを減らしたり、バンディングを減らしたりといった「アニメならではの見栄え」を変更する点に注力しているが、パナソニックのアプローチは、すでにあるライブラリーの高画質化に近い。

 アニメDVDのアップコンバートというと、PlayStation 3の機能が高く評価されることが多い。SCEの開発者の話によれば、特にアニメに特化した処理が行なわれているのではなく、アニメにも効果がある、というのが正しいのだが。甲野氏は、「(DIGAの)この機能がマニアの方にどう評価されるか、楽しみです」と話す。

 


■ 2 HDMIは「音質」だけが目的ではない

DMR-BWT3000/2000とDMP-BDT900では2系統のHDMI出力を装備

 さて、BWT2000とBWT3000、プレイヤーのDMP-BDT900については、新しい要素がもう一つある。これまでパナソニックは、DIGAにHDMI端子を1つしか搭載してこなかった。だがこれらの機種では、HDMI端子を2つ搭載した。

 これまで一般に、「HDMIでは音声と映像を分けて出力するのが、高品質化に有効」と言われることが多かった。そのため、「パナソニックもその路線に乗った。一つはオーディオ用だ」と考えている人が多いようだ。

 確かに、BWT2000と3000のHDMIには、「オーディオ」に関する考え方が反映されている。だが、前出・梅迫氏は、「音質を上げるためだけに2系統化したのではない」と話す。

梅迫:今回、メインとサブの2つのHDMIを用意しました。双方から映像・音声の両方を出すこともできますが、サブの方を音声専用にすることもできます。音声専用にすると、映像を1080iの黒信号に落としてDeepColorも切ります。マニアの方がマニュアル的にやられていたことを、自動で行なえるようになっています。さらに、HDMIを2系統化することで、ディスプレイとAVアンプそれぞれの機器と直接接続することが可能になります。その結果、AVアンプに映像信号と音声信号を一緒に通すことで発生していた画質/音質の双方の劣化を防ぐことが期待できます。

 我々はこれまで、HDMIの音質改善のためには「低ジッター化」を進めてきました。今回は、PLLのICを新たに起こし直していますので、BW970よりさらに改善することができました。BWT3000はそのレベルで2系統化を行なっています。

 さらに、DIGAシリーズの高音質化は、LSIなどの改良だけで行なえるものではない。セラミック製のインシュレーターに高音質志向のコンデンサー、レギュレーターと、細かなパーツ改善の積み重ねによるものだ。梅迫氏は、DIGAで採用された数々の高音質化パーツを前にしながら、「ここまで高音質パーツが増えてしまいました」と笑う。

BWT3000に搭載したコンデンサやオペアンプ、電源トランスなど新開発のOFC電源トランスを採用

梅迫:特に今回は、トランスにOFC(無酸素銅)を使ったものを開発しました。これだけのものをブルーレイに採用するのは、なかなか大変だったんですよ。コスト的にも製造的にも大変なので、パーツメーカーの方にも実際に搭載したものと、そうでないものを試聴してもらって、実際に違いを理解してもらい、最終的に搭載にこぎつけました。パーツメーカーさん側の気持ちは、OFCトランスのパッケージに、わざわざ大きく“OFC”の文字とメーカー名を入れてアピールしていただいたところからも、読み取っていただけると思うんですけれど(笑)。

 HDMIの2系統化は「音質の改善のためだけではない」というが、では、なぜ2系統なのか? その理由は「3D」にあった。

梅迫:3DはHDMI 1.4で対応します。ところが、従来のシアターシステムを構築している方にはリスクになります。アンプが1.3までの対応であれば、3Dのディスプレイをつないでもアンプ側が通過できない可能性があります。2HDMIにしたのはここにも理由があります。こうすれば、ディスプレイにストレートにHDMIをつないで3Dに対応した上で、アンプの方はそのまま利用できます。さらにいえば、アンプが1.1対応の古いものでも、リニアPCMでマルチチャンネルを出力した上で、3Dが利用できることになるのです。アンプの買い換えがいらなくなるのです。

 元々プロジェクタを利用されている方からは、配線の関係もあり、HDMIを2系統欲しい、という声も多かったんです。さらに今回、3D対応の関係もあり、2系統搭載を決めた、ということです。

甲野:HDMI出力が1系統だと、3D信号が通らないアンプをお持ちの方は、光や同軸デジタルで接続することになりますが、これではHDオーディオが通りません。本格的なシアターを組んでいる方には不満であるはずです。2本差し可能にしておけば、3D対応環境でも妥協のないホームシアターが実現できると考えたわけです。

 この点は、今後おそらく大きな問題となるだろう。HDMIの規格は進化が速かったため複雑で、どれだけの機能がどの機種で、どのような組み合わせで使えるか、ということがわかりにくい。せっかく3D対応テレビを買ったのに、3D信号をアンプがスルーできなくて楽しめないのではもったいない。2系統のHDMIは、この点を解決するのに必要なものといえる。本来は「すべてのHDMIできちんと3D対応情報がスルーできる」のが望ましいのだが、とりあえずは「できない可能性があるので、購入前に対応を確認する必要がある」ことをしっかり覚えておきたい。

(2010年 3月 18日)


= 西田宗千佳 = 1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、PCfan、DIME、日経トレンディなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「iPad VS. キンドル日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏」(エンターブレイン)、「iPhone仕事術!ビジネスで役立つ74の方法」(朝日新聞出版)、「クラウドの象徴 セールスフォース」(インプレスジャパン)、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)などがある。

[Reported by 西田宗千佳]