トピック
2018プロ野球開幕! 放送も配信も乱立する野球視聴サービスをまとめた
2018年3月29日 08:00
かつては地上波でしか観られなかったプロ野球中継は、90年代以降はその多くがBSやCSにシフトし、さらに近年はネット中継の台頭によって、スマホ・タブレットなどのスマートデバイスによる視聴も容易になった。いまやひとつの試合を視聴するのに、複数のサービスを選べるのも、珍しいことではなくなりつつある。
特にBSやCS、ネット中継では、地上波の大きなネックだった試合終了までの放映が確約されていることも多いほか、見逃し中継やハイライト動画などの付加価値も充実している。有料サービスが多くを占めるとはいえ、目当ての試合を視聴するために右往左往していた頃に比べると、よい時代になったものだと感じる。
もっとも、地上波にBS/CS、ネットと、多くのサービスが乱立しすぎて、どれを選んでよいかわかりにくくなりつつあるのも事実だ。本稿では2018年のペナントレース開幕にあたり、プロ野球公式戦を視聴する方法について、前編後編に分けて考察していく。前編である今回は各サービスの特徴を紹介し、後編となる次回では、12球団別の効率的な視聴方法をチェックする。
贔屓チームの試合を効率的に視聴するための考え方
まずは基本的な事項をおさらいしておこう。2018年現在、プロ野球の試合は1チームあたり年間143試合(シーズン125試合+交流戦18試合)あり、その半分がホーム(主催試合)、残り半分がビジターだ。そのため、贔屓チームの主催試合すべてを放送する局があったとしても、ビジターの試合は視聴する手段を別途講じなくてはいけないのが一般的だ。
例えば後述する「パ・リーグTV」や「Rakuten パ・リーグ Special」は、パ・リーグ6球団の主催試合をすべてカバーしており、これだけ契約しておけばホームもビジターもすべてカバーできる……と言いたいところだが、実際にはこれだけでは足りない。
というのも、5~6月にかけて行なわれるセ・パ交流戦のうち半分は、セ・リーグのチームが主催だからだ。そのため、これらの試合については別の視聴手段を探す必要がある。このほか、オールスターゲームや日本シリーズについても、ペナントレースの143試合とは別の扱いとなる。
従って、贔屓チームの試合をなるべく多く視聴するには、まず主催試合をすべて視聴できる手段を押さえ、次いでビジターの試合をなるべく多くカバーできる視聴方法を探すという、二段構えの策を講じるのが望ましい。同じサービスで一括してカバーできればそれに越したことはないが、それが難しい場合は料金や画質、視聴手段、さらには遅延などの条件も踏まえつつ、補完に適したサービスを選んでいくことになる。
今回はこうした用途に合致した、複数チームの主催試合をまとめてカバーできる、主な放送・配信サービスを紹介する。なお、「ジャイアンツLIVEストリーム」や「虎テレ」のように特定の球団名を冠した、その球団のみを対象とした配信サービス(巨人戦のHulu含む)に関しては、後編となる12球団別の視聴方法に含める形で紹介する。
スカパー!プロ野球セット
- 料金(税込):月額4,401円(3,980円+基本料421円)
- カバー範囲:12球団の主催試合
- 配信形態:CS
- 視聴環境:テレビ、PC、スマホなど
- URL:https://baseball.skyperfectv.co.jp/watch/
セ・パ12球団の主催試合を中継するCSチャンネルを一括契約できるセット。これひとつ契約するだけで、12球団すべての公式戦をカバーできる安心感が最大の強み。またプロ野球ファンにとってはおなじみの「プロ野球ニュース」や、ホークス主催の60試合など二軍の一部試合も視聴できるのも強みのひとつ。
CSチャンネルを視聴するには、ほかに「ひかりTV」や「J:COM」をはじめさまざまな選択肢があるが、スカパー!の場合、プロ野球公式戦を全試合カバーするという目的が明確で、専用パックを用意しているため必要なチャンネルを個別に契約していくのに比べて漏れも発生しない。またチャンネル編成が変わって中継局が増減した場合はパックに含まれるチャンネルも入れ替わるなど、対応の柔軟さも大きな利点だ。
ネット配信ではなく「放送」なので、受信環境さえ整えば安定して視聴でき、遅延が少ないという点も重要なポイント。視聴環境がテレビ中心であれば、放送の良さが最大限に生かせるはずだ。
また、9球団(ホークス、ファイターズ、マリーンズ、ライオンズ、バファローズ、イーグルス、スワローズ、ドラゴンズ、ベイスターズ)の主催試合は、追加料金なしでスマホやPCで視聴できる「スカパー!オンデマンド」が、契約期間中は無料。外出先での視聴など、ネット中継に近い視聴形態でも利用できる。
後述するネット配信サービスも含めて、カバー範囲の広さは随一だが、価格は視聴料3,980円(税込)に基本料421円(税込)を追加して月額4,401円(税込)とやや高価。今年は11球団の主催試合を月額1,890円(税込)で提供するDAZNという強力なライバルが登場しただけに、遅延の少なさなど、ネット中継と比較した場合の強みをどれだけアピールしていけるかが見ものになるだろう。また視聴手段が前述のオンデマンドを含めてもやや限定されているのも、他サービスと比べた場合のネックと言えそうだ。
DAZN
- 料金:1,750円
- カバー範囲:ジャイアンツを除く11球団の主催試合(一部例外あり)
- 配信形態:ネット
- 視聴環境:PC、スマホ、ゲーム機、TV、Apple TV/Fire TV/Chromecast、テレビなど
- URL:https://www.dazn.com/ja-JP/
ジャイアンツを除く11球団の主催試合ほぼすべてを配信するサービス。昨年まではカープとベイスターズの2球団のみが対象だったが、今期は運営を終了するスポナビライブを受け継ぐ形で、配信対象が11球団へと増加した。
特徴はなんと言っても、ネット配信サービスでは随一となるカバー範囲の広さだ。ジャイアンツの主催試合のみ別サービスで補完することで、12球団のほぼすべての試合をネットで視聴できることになる。カープについては広島県内でのライブ配信は対象外であるほか、ドラゴンズの主催試合には一部対応しない試合もあるが、贔屓チームの公式戦をなるべく多く、かつリーズナブルに視聴する目的にぴったりだ。
ネックとなる点は主に2つ。
ひとつは遅延が大きいことだ。他のネット配信サービスがせいぜい十数秒~長くても30秒程度のところ、DAZNは対戦カードによっては最大で打者3~4人分もズレることもある。そのため、DAZNの視聴中にSNSでタイムラインを追ったり、テキスト速報を開いてしまうと、うっかり打席結果を画面よりも先に知ることになる。現地観戦組に遅れを取るだけならまだしも、ほかの視聴方法で観戦しているユーザにまで遅れを取るのはかなりつらい。それゆえ、実況などの目的には向かない。
もうひとつは画質だ。ベストエフォートゆえ人が増えると画質が低下するのは致し方ないのだが、DAZNはその“しきい値”がかなり低く、すぐにテンパってしまうというのが昨年までの印象だ。もちろん今年に入って改善されている可能性はあるが、配信対象チームが大幅に増えたことでさらに負荷がかかる可能性もある。こればかりは、実際に今シーズンが開幕してみなければわからない。
もっとも、月額1,750円と前述のスカパー!に比べて格安なこと、またドコモ利用者であれば月額980円とさらに安価に視聴できることから、リーズナブルな価格で多くの試合をカバーできる方法として、ネットをメインに視聴するユーザの間で大本命となるのはほぼ確実。本サービスによって初めてネットでの視聴が可能になった球団もあり、実質的な「セ・リーグTV」としての役割を果たすことも期待される。前述の懸念がよい意味で裏切られることを期待したい。
パーソル パ・リーグTV
- 料金:有料(月額1,450円、パ・リーグのいずれかの球団のファンクラブ会員は月額950円)
- カバー範囲:パ・リーグ6球団の主催試合、一部の交流戦セ・リーグ主催試合
- 配信形態:ネット
- 視聴環境:PC、スマホ、Chromecast/Apple TV
- URL:http://tv.pacificleague.jp/
その名の通り、パ・リーグ6球団の主催試合を放映するサービス。パ・リーグ6球団の合弁企業であるパシフィックリーグマーケティングが運営する、オフィシャル色が強いサービスだ。今年はパーソルホールディングスがパ・リーグのオフィシャルスポンサーについたことで「パーソル パ・リーグTV」と呼称される。
パ・リーグ6球団の主催試合をカバーするため、ホーム・ビジターを問わず、パ・リーグの特定のチームを効率的に追いたい場合に重宝する。クライマックスシリーズの中継のほか、イーグルスを除く5球団については、二軍戦の中継もカバーしている。2012年までさかのぼって過去の試合を視聴できるのも、オフィシャルならではの強みだ。
機能面でも、3画面同時視聴によりパ・リーグの3試合すべてを並行で観るというマニアックな視聴方法に対応する他、ワンプレーをさまざまなアングルから視聴できるマルチアングル機能も導入されるなど、ネット中継の強みを活かした取り組みが目を引く。
配信の遅延はおおむね10~20秒といったところで、皆無ではないものの、DAZNや旧スポナビに比べると少なく、ネット配信サービスの中では実況用途に向いている。ネックとなるのは画質で、他のサービスと比較するとやや見劣りすることもある。ビットレートは自動調整のみで固定できないことから、視聴中に変動することが多いのもやや気になるところ。
対象はあくまでパ・リーグ6球団の主催試合のみであり、交流戦のセ・リーグ主催試合は、ジャイアンツおよびタイガースの主催試合にしか対応しない点に注意。なお交流戦のパ・リーグ主催試合のみ視聴したいセ・リーグ球団のファンは、通常の「パ・リーグ見放題パック」ではなく、パ・リーグ主催の交流戦のみを視聴できる「交流戦パック」や、1日単位で購入できる「1dayチケット」(600円)を利用する手もある。
Rakuten パ・リーグ Special
- 料金:(月額税込690円または年額税込5,500円)
- カバー範囲:パ・リーグ6球団の主催試合
- 配信形態:ネット
- 視聴環境:PC、スマホ、TV、ゲーム機、Chromecastなど
- URL:https://tv.rakuten.co.jp/static/pacificleague/
楽天の動画配信サービス「Rakuten TV(旧:楽天SHOWTIME)」が提供する、パ・リーグ6球団の主催試合の定額見放題サービス。楽天がパ・リーグの2018~22年のネット中継配信パートナーになったことによるもので、従来配信していたイーグルスの主催試合だけでなく、パ・リーグ6球団すべての主催試合に対応する。また2017年シーズンまでイーグルスが提供していた「Eagles TV」での主催試合無料配信サービスも、こちらに一本化されるとしている。
対象となるのはパ・リーグ公式戦全試合、交流戦(パ・リーグ主催試合)のほか、クライマックスシリーズも含まれており、いずれもヒーローインタビューなどを含めてライブ配信するほか、過去の試合も視聴できるとしている。
今シーズンからのサービスインであるため、現段階では詳細は不明なところも多いが、利用料は税込月額690円(または年額5,500円)と安価なことから、同じくパ・リーグ6球団の主催試合をカバーする「パ・リーグTV」キラーになる可能性は高い。無料期間のないパ・リーグTVと違い、初回登録から31日間は無料の特典があるのも見逃せない。
ニコニコプロ野球チャンネル
- 料金:無料(月額税込540円のプレミアム会員が優先視聴)
- カバー範囲:ベイスターズの主催試合
- 配信形態:ネット
- 視聴環境:PC、スマホ、TV、ゲーム機など
- URL:http://ch.nicovideo.jp/npb
ニコニコ生放送が運営しているプロ野球の専用チャンネル。過去には最大4球団の主催試合を配信していた実績もあり、また今春キャンプもベイスターズとイーグルス、マリーンズのキャンプ地中継を行なっていたが、2018年の公式戦については現時点でベイスターズの主催試合しか配信予定が明らかになっていない。昨年まで公式戦を配信していたイーグルスも、公式サイトの4月までの放映スケジュールの中に名前がないため、今シーズンは(一軍の試合については)ベイスターズのみとなる可能性が濃厚だ。
ネットにおけるプロ野球配信の草分けと言っていいサービスだが、画質はお世辞にもよいとは言えず、動きの速いシーンでは打球の行方を把握できないほど、一時的に画質が低下することもしばしば。また視聴者が増えるとプレミアム会員(月額540円)が優先されて無料の一般会員が追い出されるシステムゆえ、快適に視聴することを前提にするのであれば、有料契約が欠かせない。またタイムシフト視聴についても、プレミアム会員登録が必要だ(一般会員のタイムシフトは事前予約が必要)。
メリットとして挙げられるのは、ネット配信サービスの中では遅延が少ないことで、それゆえ実況やツイートを行ないたいネットユーザから支持されている。ニコニコ動画でおなじみのコメント機能が利用でき、実況アナウンサーが放送中にコメントを拾ってくれるなどの双方向性もネットならではと言ったところだが、対戦カードによっては両チームのファンのコメントが入り乱れ、荒れることもしばしば。個性的なサービスという意味では、今回紹介している中でも突出した存在と言えるだろう。
AbemaTV
- 料金:無料
- カバー範囲:ベイスターズの主催試合
- 配信形態:ネット
- 視聴環境:PC、スマホ、Apple TV/Fire TV/Chromecast、テレビなど
- URL:https://abema.tv
AbemaTVは昨年と同様、ベイスターズの主催試合全試合を中継する。プロ野球もしくは特定球団用のチャンネルは存在しておらず、SPORTSチャンネルやAbemaGOLDチャンネル、AbemaSPECIALチャンネルなど、試合ごとに異なるチャンネルがその都度割り当てられる。
完全無料でありながら他サービスと比較しても高画質、かつ回線の品質も安定していることが特徴で、サービスインから今年でまだ2年目ではあるものの、ネット中心に視聴するファンから高く支持されている。画面サイズに制約があるスマホなどのデバイスで視聴することを意識してか、画面上に表示される字幕のフォントサイズはこころもち大きめに設定されるなど、後発サービスならではの工夫も感じられる。
他局の中継をそのまま再配信するのではなく、オリジナルの字幕や解説陣を用意するなど手が込んでおり、コメント機能のほか試合中のアンケート機能など独自の要素もあるのだが、ライブ映像の途中でプレイバック映像が挟み込まれた際、本来その間は非表示になるべき「LIVE」のアイコンが表示されたままだったりと、野球中継のノウハウ面でやや疑問符がつく箇所もある。また遅延についてもDAZNほどではないが、分単位の遅延は発生するため、実況などには向かない。
とはいえ完全無料ということでハードルは低く、現状ではベイスターズおよびその対戦チームに限定されるとはいえ、有料サービスを契約していないファンにとっては、非常に重宝するサービスだ。対応する球団の拡充にも期待したいところだ。
*3月28日時点の情報をまとめています。各サービスや各球団の最新情報はそれぞれのWebサイトなどでご確認ください