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ABEMA、日本やアジアのエンタメを世界へ発信「ABEMA Live」。その狙いを聞く

ABEMA Live
© AbemaTV, Inc.

ABEMAは、日本をはじめとしたアジアのエンターテインメントを海外からでも楽しめるようにするグローバル向けの新しいオンラインライブプラットフォーム「ABEMA Live」を開始する。第一弾配信として、1月28日に格闘技団体・ONE Championshipが東京・有明アリーナで開催する「ONE 165: スーパーレックvs. 武尊」を、タイ、フィリピン、韓国の3カ国において日本と同時生中継する。

大会の特設ページ
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サイバーエージェントの子会社でエンターテインメント産業における収益化のデジタルシフト支援を専門に行なうOENと連携。日本をはじめとするアジアのアーティストライブや舞台、スポーツイベント、ファッションショー、舞台など様々なペイパービューコンテンツを、全世界から視聴できるようにするプラットフォームを構築した。

1月24日時点ではタイ、フィリピン、韓国の3カ国でサービスを開始、順次提供エリアの拡大も予定している。

タイに向けても配信
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ABEMA Liveでは高いユーザビリティを追求し、最短で3ステップの入力で視聴チケット購入が完了するユニバーサルデザインを採用。展開する国の各言語に対応したサービス案内、カスタマーサポート体制も構築。「言語や文化を超え、老若男女誰もが手軽にアジアのエンターテインメントを楽しめるメディアを目指す」という。

タイでの購入フロー
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第一弾配信『ONE 165: スーパーレックvs. 武尊』

約4年ぶりに日本で開催される大会。なお、メインイベントとして、ONEフライ級ムエタイ世界王者のロッタン・ジットムアンノン選手とISKA世界ライト級王者・K-1世界三階級制覇王者の武尊選手が対戦する予定だったが、1月5日にONEがロッタン選手の怪我による大会欠場を公式発表。代わりに、ONEフライ級キックボクシング世界王者のスーパーレック・キャットムーカオ選手との3分5ラウンドの同級タイトルマッチが急遽決定した。

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この大会には、元ONEライト級MMA世界王者の青木真也選手も出場。同級MMAマッチでセージ・ノースカット選手と対決するほか、ダニー・キンガット選手対若松佑弥選手(フライ級MMA5分3R)、平田樹選手対三浦彩佳選手(アトム級MMA5分3R)、ボカン・マスンヤネ選手対山北渓人選手(ストロー級MMA5分3R)、箕輪ひろば選手対グスタボ・バラート選手(ストロー級MMA5分3R)、ゲイリー・トノン選手対マーティン・ニューイェン選手(フェザー級MMA5分3R)といった注目カードも用意されている。

OEN 藤井琢倫社長に狙いを聞く

国内向けの配信を行なっているABEMAが、海外に向けての配信を開始するというのは大きな動きだ。OENの藤井琢倫代表取締役社長に狙いを聞いた。

OENの藤井琢倫代表取締役社長

――今まで(ABEMA Live開始前)は、海外からABEMAのコンテンツは視聴できなかったのでしょうか? また、海外からも視聴したいという要望はありましたか?

藤井社長(以下敬称略):現在、ABEMAは日本を中心に展開しており、ペイパービュー(PayPerView)の視聴につきましても公演によって視聴できるものとできないものがあります。

海外でも視聴できるPPVコンテンツはまだ少ない状況で、視聴は可能でも海外にてローカライズできている状態ではなく、以前より、ペイパービューを海外からも購入・視聴したいという要望を頂いておりました。

――ABEMA Liveの第一弾が『ONE 165: スーパーレック vs. 武尊』になった理由と狙いを教えてください。また、多言語対応を英語、タイ語、韓国語でスタートしたのはなぜですか?

藤井:2016年のABEMA開局タイミングで、格闘チャンネルも開設し、キックボクシングや総合格闘技、ボクシングやプロレスなど様々な格闘技団体が開催する大会を生中継してまいりました。

なかでも、2022年6月に行なわれた『Yogibo presents THE MATCH 2022』(以下、『THE MATCH 2022』)では、那須川天心選手と武尊選手の夢の対決が行なわれ、ABEMAに来訪した1日の視聴者数が開局史上最高数を記録したほか、大会を視聴するチケットの券売が50万を突破するなど、まさしく“世紀の一戦”となった1日に日本中が熱狂しました。

世界での市場規模を見ても、2021年アメリカで行なわれた格闘興行のペイパービューによる売上総額は1,000億円を突破しており、ONE Championshipは世界190カ国、累計4億以上のファンを抱える“世界最大級のスポーツメディア”として注目されるなど、格闘技は言語を超えてグローバルで楽しめるコンテンツとして世界中の人に愛されています。

今回の大会も国内だけでなく世界中の人々も熱狂させる可能性があると感じ、今回の「ABEMA Live」の第一弾として挑戦することとなりました。

韓国での購入フロー
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フィリピンでの購入フロー
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――スポーツやイベント中継では、実況も重要ですが、日本語の実況解説をそのまま海外向けに配信するのでしょうか?

藤井:2022年に全64試合を無料生中継した「FIFA ワールドカップ カタール 2022」では、本田圭佑さんの解説が連日話題となり、スポーツや大会において実況解説がいかに重要な役割を果たすかを痛感しました。

本サービスでも展開する国の言語による実況解説は必要だと感じており、『ONE 165: スーパーレック vs. 武尊』では英語とタイ語の実況解説の準備を進めております。このような配信サービスでリアルタイムに他言語化を実施できるサービスはまだ少ないので、「ABEMA Live」の強みになると考えています。

また、英語、タイ語以外の多言語字幕についても準備を進めております。

――スポーツだけでなく、ライブ、イベント、ファッションショー、舞台なども配信するとのことですが、どのイベントを海外向けに配信するかという判断はどのようにしているのでしょうか?

藤井:海外での“マス“の注目度はもちろん、そのコンテンツが抱える“コア“なファンの規模や熱量も含め、グローバルマーケットにおいてコンテンツがどのような価値をもっているか、を多角的、総合的に判断して決定していきたいと考えています。

新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着きを見せ始めてから、世界各国よりたくさんの観光客が日本に訪れ日本の様々なコンテンツが再び脚光を浴びたり、世界デビューに向けて動き始める日本のアーティストが多く現れるなど、日本のエンターテインメントが世界に向けて大きく動き出しているという時流を感じており、今後も各国のコンテンツの垣根が低くなっていくと感じています。

坂本九さんの「SUKIYAKI」がBillboard 1位を獲得した1964年から今年で60年。K-POPの枠を飛び出し、アジアのアーティストとして世界で活躍するBTSやNEWJEANSの勢いや、アニメ楽曲をきっかけにYOASOBI、EVE、Adoといった日本人アーティストが軒並み海外で人気を集めるなど、アジアの音楽が世界で注目されていることは周知の事実です。

スポーツ界でも、MLBで活躍する大谷翔平選手がスポーツ選手史上最高額となる1,000億円の契約金を結び、ボクシングでは井上尚弥選手が圧倒的な強さで、史上2人目となる2階級での主要4団体の王座統一を成し遂げました。他にも、にじさんじやホロライブといった日本発のコンテンツであるVTuberなど、アジアを起点にグローバルで視聴されるコンテンツが増加しており、日本をはじめとしたアジアのエンターテインメントで世界と戦うにはとても良いタイミングだと感じています。

実際に音楽、アニメ、映画、格闘技など多岐にわたるジャンルの方たちと話をするなかでも、「グローバルでの成功」という言葉を多く聞くようになりました。

今回、第一弾として取り組む格闘技興行はもちろん、海外のビルボードで人気の日本アーティストによるライブ公演や、年々注目度が増しているVtuberやゲーム配信イベントなど、日本ならではの独自性を持ったコンテンツを世界に発信していければと思っています。

――今後特にこんなイベントを配信したい、こんな機能を搭載したいなど、展望を聞かせてください。

藤井:各国における決済システム対応率も80%以上を目指し、本サービスの提供国も順次拡大していきたいと思っており、多言語による字幕の表示、マルチアングル機能の実装も検討しています。

今回配信する格闘技興行については、今後も継続的に配信していきたいと考えておりますが、海外でも人気があるアーティストライブやスポーツ興行など多岐にわたる日本やアジアを代表するコンテンツを、ABEMAの強みである安定で高品質な映像配信を可能にする技術力を活かして、配信していきたいと考えています。

山崎健太郎