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「もののけ姫」4K UHD BDは“映画館クオリティ”を収録。当時の初号試写を目指した4Kリマスター
2026年6月19日 08:00
6月24日に発売される「もののけ姫」の4K UHD+ブルーレイセット(品番:WDUG-1196)。2025年3⽉に北⽶で、続いて同年10⽉からは⽇本国内でもIMAX劇場上映され⼤ヒットを記録した「もののけ姫」の4Kデジタルリマスター版を収録したものとなっている。
今回、4Kデジタルリマスターにあたってどのような工夫がされたのか、スタジオジブリ執行役員映像部部長でエグゼクティブ イメージング ディレクターの奥井敦氏と、ポストプロダクション部 部長の古城環氏に話を聞いた。
奥井氏は1982年に旭プロダクションに入社し撮影の仕事を開始。「紅の豚」(92)、「海がきこえる」(93)の撮影監督としてスタジオジブリ作品に参加し、1993年撮影部発足と同時にスタジオジブリに移籍。「平成狸合戦ぽんぽこ」(94)以降、撮影監督、映像演出として全てのスタジオジブリ作品に参加。「もののけ姫」でも撮影監督を務めた。
古城氏は、1993年スタジオジブリへ入社し撮影部へ配属。社内での仕上げ・撮影および編集のデジタル化の際、ノンリニア編集の立ち上げに従事。「千と千尋の神隠し」(01)制作時に制作部ポストプロダクション班へ異動。以後編集作業から、音響作業までの制作管理を担当し、「借りぐらしのアリエッティ」(10)で制作デスク、その後「コクリコ坂から」(11)~「思い出のマーニー」(14)では制作全般から音響作業までを担当している。「もののけ姫」では、撮影部で撮影を担当している。
アナログ作品を4K HDRリマスター化
4K HDR化は北米で「STUDIO GHIBLI FEST」という、スタジオジブリ作品を劇場で上映する企画があったことや、その準備を進める中で最近の劇場のプロジェクターが4K対応になってきたことなどもあり実現したのだという。
その中で、シーンによってデジタルでの着色なども行なわれつつも、アナログ撮影で仕上げられた最後の作品となった「もののけ姫」から4K HDR化がスタートすることになった。
ジブリ作品では「平成狸合戦ぽんぽこ」から3DCG技術を取り入れ、「耳をすませば」制作時には外注であはあるが、本格的にデジタル映像への取り組みをスタート。「もののけ姫」では初めてジブリ社内でCG制作を開始し、デジタルペイントも取り入れられた。
当時は映画用の映像をデジタルで全てを完結するには膨大な時間がかかり現実的ではなかったため、CGの映像を作るカットを限定して、そこに技術をつぎ込んでいく形で制作されたという。
奥井:スケジュール的な問題でセルペイントが間に合わないという状況になって、それに対応するためにデジタルペイントを一部導入することになりました。それが「もののけ姫」以降に繋がる作業にもなりましたが、最終的には全体の1割くらいがデジタル技術のシーンになっています。
古城:ディダラボッチの中のパーティクルとか、その表現を豊かにするためのものは、事前にここを(デジタルで)ちゃんと使いましょうという流れでしたが、後者はスケジュールとの戦いなので、監督やアニメーターが大量の動画を描くわけですが、物理的にこのカット、この枚数を残り時間じゃ塗れないとなる。当然、カロリーの高い作画のカットが後回しにされていくわけです。乾く時間が必要無いデジタルの素晴らしさを実感しました(笑)
奥井:デジタルペイント自体は、CGを使って制作するシーンの作画部分はデジタルにした方が親和性が高いという判断をしていたので、そういうところで利用するために導入していました。その範囲を少し広げるという形だったのですが。
古城:だいぶ広がりましたよね(笑)
4Kリマスターで目指したのは“初号試写の映像”
今回の4Kリマスターにおいて、映像の方向性をどのように定めたのかを教えてもらった。
古城:今の新しい技術を使えば何でもできちゃうんですけど、そういったことはやめて、1つの理念として、制作当時の初号試写で、スクリーンで観た映像を再現しようというのがまずコンセプトとしてありました。技術的なトラブルや傷などは直していますが、それ以上のことをやるというのは、『やりたくてもやっちゃダメ』と決めていました。
奥井:リメイクはしていません。あくまでリマスターです。
そして、今回の4Kデジタルリマスターは、13年前に行なわれたHDリマスター時にスキャンしたデータを活用。このとき、将来的なアーカイブを見越して、4Kでスキャンを行なっており、このデータを有効的に活用したという。
奥井:4KはSDRでグレーディングしたものがベースとしてあって、そこからさらにハイライトとシャドウを調整したものが今回のHDRになります。フィルムで撮影したシーンに関しては、当時も透過光という発光部分を強く光らせる処理をしています。
この効果を足したシーンはデータ上でもそれを活かすことができるんですね。一方で、デジタル制作されたカットはSDR内でのハイライトまでしか存在しないため、HDR領域まで伸ばす作業が発生します。
デジタル制作したカットの中にも光らせたい部分はいっぱい入っているんです。しかし、(ハイライトが)頭打ちのデータは、フィルムにレコーディングしているとはいえ、それをもう一回スキャンしてデータにしたとしてもハイライト部分の情報はないわけです。この部分はフィルムで撮影したシーンとの差異が出て来てしまう。そこで今回は、ハイライトを伸ばす処理を施して差異が目立たないようにしています。
では、デジタル作画のシーンが見違えるほど変わったのかというと、そうでは無いと奥井氏は続ける。
奥井:HDRに関しては確かに手は入れていますけど、多分一般の人が観てその違いがわかるかと言われるとあまりわからないのではと思います。なので、あまりそこを意識して観る必要はないと思うんですよ。きらめき感はよりわかりやすくなっているとは思います。
なお、IMAX上映の映像はIMAXフォーマットに合わせるための調整が入っているため、大元となるデータは同じものの、今回UHD BDに収録された映像と厳密には異なるものだという。UHD BDに収録されている映像がマスターで、それを上映フォーマット用に調整されたものがIMAX上映での映像、というような形だ。
アナログ制作シーンとデジタル制作シーンの差がほぼ0に
そんなあくまで当時の初号試写のクオリティを目指したという今回の4Kデジタルリマスターだが、制作者だからわかるような微妙な差異について、今回の試写で気付いたと古城氏が話す。
古城:4Kの初号の時に率直に思ったのは、アナログ制作したカットとデジタル制作したカットの違いがほとんどわからなくなっていたということですね。
背景にセルを重ねてフィルムで撮っただけのカットと、フィルムで撮ったけど1回スキャンしてデジタル上で合成してもう一回フィルムに戻すというカットと、背景にデジタルでペイントしたキャラを乗っけてそれをもう一回フィルムに戻すという3パターンの作られ方をしていて、デジタルで処理したカットは全体の1割くらいあります。それをフィルムの頃から観ていて、なんとなく作業した場所も覚えているんですよ。
「ああここデジタルでやってたな〜」とかわかった上で観ても、その差がわからないぐらいシームレスに観られるなというように感じています。1つの作品として良くなったんじゃないかなと思います。奥井さんにこのことを初号試写の時に話したらニヤって笑ってましたけど(笑)
奥井:フィルムスキャンしたデータを使用したカットは、再度フィルムに戻す関係で、どうしてもエッジが甘くなるんですね。逆にデジタルでペイントしたキャラクターはデータ上でパキッとしている。それをフィルムにレコーディングすることで少しは柔らかくなっているのですが、フィルムをスキャンしてまた戻すのと、デジタルをフィルムに1回戻すだけだと、質感が違うんですね。
マスターとなっているフィルムにはこういったカット毎に微妙に差がある状態の映像が収められているわけだが、13年前のHDリマスターでは、2Kのデジタルデータを基準にマスタリングを実施したという。一方で、今回は4Kで仕上がる関係で、マスターのフィルムをスキャンしたデータをベースに再調整が行なわれた。
奥井:そこをオリジナルのフィルムで撮影したものをターゲットにして、全カット調整してます。今の時代だからできることですね。
UHD BDには“映画館で上映できるクオリティー”をそのまま収録。できるだけ映画館に近い環境で
今回のUHD BDについては、音声も公開当時の5.1chのマスター音源を使用。自宅に映画館のクオリティをもってくるようなつもりで収録していると古城氏は話す。
古城:UHD BDの音に関しては、劇場公開当時の所謂ダイナミックレンジの広い5.1chのマスターを使っています。Blu-rayはご家庭で観るために少しダイナミックレンジを狭めているんです。音の小さいところだけちょっとボリューム感を上げる処理をしています。UHD BDに関しては、そのちょっと上げる処理をしていません。これはある程度環境が整った方が観ていただけるというのと、映画関係者に『それを出せ!!』と言われたからですね(笑)
Blu-rayに関しては、音は前回と同じ物ですが、画は4Kで作ったものを2Kにしているので変わっています。ちなみに今回はバリアフリーにも対応していますので、難聴者向け日本語字幕と視覚障害者向けの音声ガイドを新規で収録しています。
奥井:パッケージは満足のいくものができました。フィルム作品の弱点はプリント(複製)する度にどんどん劣化していってしまうことです。公開時の上映プリントの時点ですでに劣化しているわけですね。今回のパッケージは、初号プリントで見た時のクオリティをもっと良くしたものだと思っています。ぜひ、楽しんでください。
古城:繰り返しになりますが、UHD BDには映画館で上映できるクオリティの画と音がそのまま入ってます。できるだけ映画館と同じような環境に近づけて視聴してもらえればと思います。ぜひ、音量は85dBで(笑)
「もののけ姫」4K UHD+ブルーレイセット
- 発売日:6月24日
- 価格:11,880円
- 品番:WDUG-1196
- 発売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン
- 発売・販売元:ハピネット・メディアマーケティング
- 6月19日(金)より全国のIMAX劇場にて期間限定上映
「魔女の宅急便」(4Kデジタルリマスター)








