ミニレビュー

XREALの安価なサブブランド「xbx」、実は「色が一番良い」製品だった

「xbx a01+」。価格は4万3,980円

サングラス型ディスプレイはかなり選択肢が増えてきた。メーカーが増えてきたこともあるが、同じメーカーが積極的にラインナップを拡大し、バリエーションが増えているのも大きな要素である。

XREALの低価格モデル「xbx a01+」(以下xbx)はまさにそんな製品だ。評価用製品を使って、AV的な価値を少し説明してみたい。

低価格化のために色々カットしているが……

表示スペックで言えば、xbxは同社の「XREAL 1S」や「XREAL One Pro」などに比べて、ワンランク下と言える。xbxはXREAL社のサブブランドであり、低価格で手に取りやすいのがポイントだ。XREAL 1Sが67,980円であるのに対し、xbxは43,980円。2万円以上安くなっている。

価格を下げ、若者向けにサブブランドとして展開しているのがxbxということなので、デザインやパッケージもかなりポップだ。

パッケージ・付属ケース・ケーブルなどはポップな装い
xbx本体。ミラーシェードで派手な外観

安価な理由は、光学系と制御系がシンプルになっていることにある。

XREALシリーズは外光の透過を軽減するため、3段階の電子調光機能が入っている。もっとも暗い状態にすると外光はほとんど入ってこない。

しかしxbxにはそれがない。だから、標準で搭載されているフレームだと少し外光が透過してくる。フレームを外すと半分くらい透けて見える感じだ。映像を見やすくするには、付属の透過防止シェードに取り替える必要がある。

シェードを外すとこんな感じ。裏から見ると向こうが透けて見える
遮光カバーフレーム。こちらも付けるとサングラス的。向こう側は見えなくなる

また、画像処理がシンプル化されているため、いわゆる「3DoF」の機能がない。

XREAL 1Sなどでは「空中に大きな画面を固定して表示する」機能があるし、あくまでイメージであるが、「どのくらいの距離にどのくらいのサイズで見えるのか」をカスタマイズする機能も搭載されている。

だが、xbxにはそれがない。首の動きによって映像がブレるのを補正するブレ防止機能はあるが、それも、映像入力が120Hzのときに限られる。表示される画像の大きさも、少し小さく感じられるだろう。

軽さと「輝度の高さ故の発色の良さ」が魅力

要は、「快適なディスプレイとして差別化するための機能」の一部がカットされた製品なのだ。

だったら買う意味はないのか、安物だからダメなのか……というとそんなことはない。

結果として「安い」「軽い」という利点が生まれているからだ。

重量は62g。フレームを外すと56gだ。XREAL 1Sは78g、XREAL One Proが87gなのでかなりの差になる。これは装着感に大きな影響を及ぼす。メガネは鼻と耳の小さな領域で支えるものだから、軽さは快適さと表裏一体になる。だから長時間つけた時ほど、xbxと他の製品での感覚は変わる。

そしてもう1つ大きいのが「画質が良い」ことだ。正確に言えば「輝度が高いから画質に影響する」と言うべきだろう。

スペックでは、xbxの輝度は1,600nitsとなっている。それに対して、XREALシリーズのうち最も輝度が高いXREAL 1Sは700nitsだ。

この数字ほど明るさに差があるように見えるか、というとそうではない。テレビやスマホなどと違い、光学系の作りも含め、色々なパラメータがあるので明るさはかなり異なってくるからだ。

だが、スペック上輝度が高いことは明確に「色のリッチさ」につながる。全体が明るく見えること以上に、発色が良いということが大きな利点になるのだ。

見比べると、画面サイズの違いから来る迫力や、見やすさの面では上位モデルの方が優れている。一方で、軽さから来る快適さと色のリッチさから来る体験の部分ではxbxの方が上と判断できる。良さが異なっているのだ。

xbxからはウルトラワイド表示などの機能もなくなっているので、PCのディスプレイとして使った時の快適さでも劣る。ただ、「16:9の画面が表示できればいい」「細かい調整は不要」なら、もちろんPC用ディスプレイとしても使える。

これらのことから、xbxは「AV用のディスプレイとしては手軽でかなり良い」製品、と言えるのである。

今後も「機能と画質のジレンマ」は続く

これらの製品は「ARグラス」と呼ばれる。XREALもそう呼称している。だが、現実問題としてAR要素はほとんどない。だから、本記事でも、本誌で執筆しているレポートでも、筆者は一貫して「サングラス型ディスプレイ」と呼んでいる。

だが逆に言えば、「ベターディスプレイ」として考えただけでも、発色や軽さ、表示サイズやPCとの接続性など、多様な価値が存在する。その中で「安さ」「映像の見え方」などの面で評価すると、価値を持っているのはxbxということになるのである。

画質面で上位と下位の逆転現象が起きるのは、光学系設計の難しさとバランスによるものでもある。また、上位も下位も片目1,920×1,080ドットもしくは1,200ドットと、スペック上の差が小さいデバイスが使われているためでもある。この点を変えていくのはなかなか難しい。

おそらく今後も、「機能的には上位」「単純な画質だと別の選択肢」というジレンマが続くのではないか……と予想している。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、AERA、週刊東洋経済、週刊現代、GetNavi、モノマガジンなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。 近著に、「生成AIの核心」 (NHK出版新書)、「メタバース×ビジネス革命」( SBクリエイティブ)、「デジタルトランスフォーメーションで何が起きるのか」(講談社)などがある。
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