小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第1229回

望遠ブーム来てる!? 9年ぶりに大復活した、ソニー「RX10 V」
2026年8月5日 08:00
気軽に持ち出せる600mm
前回Hasselbladと共同開発のOPPO「Find X9 Ultra」をレビューしたところだが、光学230mm、オプションレンズを追加すれば光学300mmで撮れるというモデルであった。
スマートフォンの望遠シフト……というか望遠インフレが起こったきっかけは、2025年発売の「Google Pixel 10 Pro」および「10 Pro XL」に搭載された「超解像ズームPro」だったのではないか。光学では約113mmだが、そこからさらに20倍拡大し、ボケた部分はAIが生成して差し替える。
それは写真って言わないのでは……という議論もあったところだが、望遠のニーズがあることは確認された。
そんな動きに呼応するかのように、ソニーから高倍率ネオ一眼「RX10 V」が登場した。7月31日発売で、ソニーストアでの直販価格は363,000円。
前作RX10 IVから、実に9年ぶりの後継機投入ということになる。光学24mmから600mmのズームレンズはそのままに、中身を今風に刷新したモデルだ。
ネオ一眼というジャンル自体がほぼ途絶えてしまった今、そもそもネオ一眼ってなんだ? というかたもいらっしゃるだろう。温故知新、今だから逆に新しいということかもしれない。
今回は「RX10 V」をお借りできたので、早速試してみよう。
かなりαに寄せた作り
ネオ一眼とは、レンズ交換式カメラ並みの大型ボディに、ズームレンズを一体化したカメラである。まだレンズ交換式デジタルカメラが高価だった時代、高機能デジタルカメラとして、だいたい2000年代初頭から流行ったスタイルだ。
センサーはそれほど大きくないが、センサー、レンズ、ボディを一体設計できるので、かなりの高倍率ズームを搭載できたことがウケた。パナソニック「FZシリーズ」や富士フイルムFinePixの「FinePix Sシリーズ」などをご記憶のかたもいらっしゃるかもしれない。
やがてミラーレス機が登場してレンズ交換式の敷居が下がる2010年頃から、ネオ一眼は衰退していく。
ソニーのRX10シリーズは、そうした流れと交差するように、2013年に登場した。1インチセンサーを備えたハイエンドコンデジ、RX100の初号機が2012年に発売、翌年に同じ路線のハイエンドネオ一眼として、RX10の初号機が投入された。
RX10シリーズはほぼ年1回ぐらいのペースで新モデルが投入され、2017年の第4世代まで続いたわけだが、2025年頃にはひっそりと市場から姿を消した。さすがにもう後継機はないだろうと思われていたところに、RX10 Vの登場でみんなびっくり、という経緯である。
RXシリーズは、ボディデザインを変えずに中身だけ新設計になっていくというスタイルだが、10 Vはボディデザインを含めて新設計となっている。重量はバッテリー込みで約1,111gと、片手で持つにはややずっしりしている。
ボディは旧モデルがカーブの大きなデザインだったのに対し、Vはかなり直線的なラインを強調しており、α7シリーズに近いイメージとなっている。ただズームレンズを最大まで繰り出すと、ビューファインダーの後ろからレンズフードの先まで全長27cmぐらいになる。このシルエットはあまり見かけなくなったスタイルだ。
レンズはユーザーから好評だったという24~600mm(35mm換算)の「ZEISS Vario-Sonnar T* 24-600mm F2.4-4.0」を引き続き搭載。フォーカスレンジのFULLと無限遠〜3mの切り替えスイッチもそのままだ。一方ボディ側にあったAF/MF切り替えスイッチはレンズ側面へ移動した。このあたりの操作感もα7に近い。
センサーは1インチ約2090万画素のExmor RS CMOSセンサーで、静止画時最大約2,010万画素、動画時最大約1,680万画素となる。AFは位相差検出とコントラスト検出を組み合わせるファストハイブリッドAF。
記録動画フォーマットは以下の通り。相変わらずXAVC HS 4Kだけは29.97pが撮れない謎仕様となっている。
| 記録フォーマット | 動画形式 | 解像度 | フレームレート |
| XAVC HS 4K | 4:2:2/10bit | 3,840×2,160 | 119.88p,59.94p,23.98p |
| 4:2:0/10bit | 3,840×2,160 | 119.88p,59.94p,23.98p | |
| XAVC S 4K | 4:2:2/10bit | 3,840×2,160 | 119.88p,59.94p,29.97p,23.98p |
| 4:2:0/8bit | 3,840×2,160 | 119.88p,59.94p,29.97p,23.98p | |
| XAVC S HD | 4:2:2/10bit | 1,920×1,080 | 59.94p,29.97p,23.98p |
| 4:2:0/8bit | 1,920×1,080 | 119.88p,59.94p,29.97p,23.98p | |
| XAVC S-I 4K | 4:2:2/10bit | 3,840×2,160 | 59.94p,29.97p,23.98p |
| XAVC S-I HD | 4:2:2/10bit | 1,920×1,080 | 59.94p,29.97p,23.98p |
ビューファインダは0.5型Quad-VGA OLEDで、3,686,400ドット。液晶モニタは3型TFT液晶で、1,620,000ドットとなっている。液晶モニタは横出しバリアングルではなく、チルトのみとなっており、自撮り対応は難しい。
9年ぶりの更新でもっとも大きいのは、色域・ダイナミックレンジ関係の機能がαシリーズとほぼ同じになったことだ。つまりクリエティブルックとピクチャープロファイルも使え、Log撮影にも対応する。一方でZV系に搭載された「シネマティックVlog設定」は搭載されていない。
ボディ軍艦部は、モードダイヤルがαと同じ右側に移動し、左肩には何もない。ステータスディスプレイは廃止され、シャッターボタンのレリーズもなくなった。背面は左肩にメニューボタンを配置し、ジョイスティックの搭載や十字ダイヤルへの機能割り当てなど、使い勝手はαシリーズに合わせている。両者を持ち替えても、ほぼ違和感なく使えるだろう。
記録系はシンプルで、UHS-I/II対応のSDカードスロットが1つだ。端子類は左側で、マイク入力、ヘッドフォン出力、MicroHDMI出力、USB-C端子、MULTI端子がある。
自在な画角設計が魅力
ではまず画角のバリエーションから見ていこう。35mm換算で24mmから600mmまでの光学ズームレンズに加え、超解像ズームとデジタルズームが使える。それぞれはモードで選択できるので、超解像ズーム領域でリミットをかけるということもできる。超解像ズームは写真撮影などでは2倍の1,200mmまで使えるが、4K動画撮影時は1.5倍の900mmまでとなる。デジタルズームは変わらない。
さすがにデジタルズーム4倍は荒れが目立つが、超解像ズームの1.5倍程度なら十分実用範囲の解像度を維持する。ちょっと寄り足りないという場合に重宝する。
手ぶれ補正は、OFF、スタンダード、アクティブの3段構成。アクティブは以前から定評がある方式で、補正力はかなり強い。ただし600〜900mmとなると、手ぶれ補正を入れても手持ち撮影では動く被写体を追うのは難しい。カメラの動きと手ぶれ補正が追いかけっこになってしまうからである。テレ側の撮影では三脚は必須だ。
望遠となるとフォーカスが課題になるところだが、画素領域の約70.6%をカバーする像面位相差AFがあるのに加え、リアルタイム被写体認識もあるので、動物などの被写体に対しては目を中心に自動的にAFが追従する。認識対象としては、「人物」、「動物/鳥」、「動物」、「鳥」、「昆虫」、「車/列車」、「飛行機」がある。またカメラが自動的に被写体の種類を認識する「オート」もあるので、特定のものを想定していない場合は種類を切り替える必要はない。
美肌効果も備えるが、これは認識対象を「人物」に設定したときのみ使用できる。カラートーンはいじらず、顔部分のディテールを落としていくようだ。Hiではさすがにまつ毛などの輪郭がボケる感があるが、Midぐらいまでは自然な効果が得られる。
「Log撮影」を始め、色域・ダイナミックレンジ関係はαシリーズとほぼ同じ機能が使えるようになった。かなり選択肢が広いので図版でまとめておく。
クリエイティブルックでの撮影例
「Log撮影:切」では、いわゆる画像フィルター系の機能として、クリエイティブルックとピクチャープロファイルが使える。ソニーオリジナルのシネマトーン「S-Cinetone」はピクチャープロファイルから選択する。今回のサンプルは「S-Cinetone」を選択して撮影したものだ。またユーザーがLUTを作ってそれを撮影時に当て込むPPLUTも備えている。
「Log撮影:入」ではクリエイティブルックとピクチャープロファイルは無効になり、その代わり色域とダイナミックレンジがマニュアルで選択できるようになる。こちらのモードで撮影すると、カラーグレーディングが必要になる。S-Log3系やS-Gamut3系に対応するので、αシリーズと混在させたマルチカメラ収録に対応できる。
夜間撮影で使いやすいLog撮影
撮影モードは、ZV-E10以降、写真・動画・S&Qの3モード切り替えとなっており、本機もその類に漏れず3モード切り替えとなっている。スロー撮影を多用する人には重宝する機能だが、センサーの最高フレームレートが120fpsなので、24pで撮影しても最高5倍スローとなる。
センサーが小さいのでもう少しフレームレートが上がるかと思ったのだが、フルサイズと変わらないスピードなのは意外だ。
続いて夜間撮影をテストしてみた。シャッタースピード1/30秒、絞りは開放のF2.4で、順にISO感度を上げている。
4K撮影時のISO感度は最高ISO12800となる。α7sシリーズでは最高ISO409600まで上げられるのに比べれば、わりと普通のスペックに見えるところだが、NR処理がよくできており、夜空のベタな部分もノイズ感はほとんど感じられない。
夜間の撮影は、S-Gamut3.Cine/S-Log3でLog撮影し、HDRにカラーグレーディングした。Log撮影時のISO感度は、1000スタートとなるため、暗所撮影に有利だ。ダイナミックレンジにも問題なく、暗部を持ち上げてもノイズ感が少ない。センサーサイズの割には前玉が大きいので、集光も良好だ。色味もよく出ており、グレーディング時にクロマは持ち上げる必要を感じなかった。
総論
10年ぐらい前までは、1インチセンサーは高級コンデジに搭載されていたものだが、昨今はスマートフォンへの搭載が進み、ハイエンドモデルの主力センサーサイズとなっている。こうしたセンサーを提供しているのも、ソニーやサムスンなど一部のメーカーに限られる。
そうした流れのなか、1インチセンサーに大型ズームレンズを搭載し、スマートフォンに対して光学性能で優位性を示したものが「RX10 V」、という見方ができる。また撮像面積が小さいので、望遠・絞り開放でボケすぎず、フォーカスが合いやすいというのも、メリットとして感じられる。
もう一つの位置付けとしては、すでにオワコン感があるネオ一眼のあり方を見直し、レンズ固定ながらαシリーズとほぼ同じ性能を持たせるという、ネオ一眼の再起動的な意味合いも感じさせる。
363,000円という価格は、α7 Vのレンズキットが買えてしまうぐらいの価格で二の足を踏むところである。だが開放F2.4で24〜600mmというズームレンズは、交換レンズではありえないスペックであり、ネオ一眼でしか実現できない。レンズ交換なしで、だいたい思った通りの構図で撮影できるというのが魅力だ。
先日もある発表会の取材で実践テストしたが、レンズ交換なしで寄り引きのバリエーションが広いのは助かる。現場に行ってみないとどうなってるのかわからないようなケースでの対応力は、さすがである。
レンズは変えられないが、その代わり1台で万能感のあるカメラというのが、RX10 Vの類を見ない魅力であろう。

































