トピック
同じスピーカー×4台で“インシュレーター比較試聴”してみた。IsoAcoustics「GAIA Neo」のロゴを、正面に揃える理由
2026年9月29日 08:00
スピーカーの下に設置する“インシュレーター”。金属系やゴム系、付属のスパイクなど、オーディオファンによって使っているものは様々だ。そんなインシュレーターだが、同じスピーカーを4台用意して、「Aのインシュレーターを取り付けた2chスピーカー」と「Bのインシュレーターを取り付けた2chスピーカー」を、切り替えながら試聴したことがある人は、あまりないだろう。
今回、各社のハイエンドスピーカーで、標準インシュレーターとしての採用が広がり、注目度が高まっているIsoAcousticsのインシュレーターを使い、A/B比較を体験。その音の変化をレポートしたい。
インシュレーターをA/B比較する
“インシュレーターA/B比較用装置”……と言っても、複雑なものではなく、ベースはシンプルなスピーカー切換器だ。IsoAcousticsが、インシュレーターの効果を検証・デモするための装置で、IsoAcousticsのインシュレーターを使っているスピーカーに切り替えると、IsoAcousticsロゴが光るようになっている。
スピーカーはPMCのフロア型「Prophecy9」を4台用意。Aのペアには、IsoAcousticsのインシュレーター「GAIA II Neo」を接続。Bのペアには、Prophecy9付属のスパイクを取り付けた。なお、カーペット上で安定した設置を行なうために、Aペアのインシュレーターの下には、日本では未発売の「GAIA Carpet Disks」を配置。高さをあわせるために、Bのスパイク下にはオーディオボードを敷いている。
まとめると以下の組み合わせだ。
- Aペア:インシュレーター「GAIA II Neo」+「GAIA Carpet Disks」
- Bペア:インシュレーター「付属スパイク」+オーディオボード
2chスピーカー間の距離が同じになるよう、Aペア、Bペアのスピーカーは互い違いに配置。リスニングポイントで、音楽を流しながら、リモコンでA/Bを切り替えてみる。
IsoAcousticsロゴが前に来る理由
音を出す前に、この比較で使用する「GAIA II Neo」というインシュレーターを見ると、スピーカー底面に取り付けた4個すべてにおいて、IsoAcousticsのロゴが正面に来るように取り付けられている。取材の撮影だからカッコよく見えるようにロゴを揃えた……のではない。ロゴが前に来るように取り付けるのが必須であり、そうすることで効果が最大限に発揮されるというのだ。
GAIA II Neoのハウジングは金属(ステンレススチール)だが、その天面(Oリング)と底面には合成エラストマー製のアイソレーターが配置しており、それらを中央に貫通させた金属パーツでまとめている。分厚いサンドイッチが崩れないように楊枝を刺したような構造だ。
注目は、このアイソレーター部分。振動を吸収・抑制するため、ある程度の柔らかさのある素材になっているのだ。聞けば、独自の技術により、横方向の動きに対しては強く抑制するのに対し、前後の動きに対しては、抑制はするもののある程度の動きは許容するという、“向きによって硬度を変えた”仕組みになっているのだとか。
IsoAcousticsのグローバルセールスマネージャー、ポール・モリソン氏によれば、音を出している時のスピーカーは、前後左右に揺れている。搭載しているウーファーやミッドレンジなどのユニットが激しく振動するため、その振動がスピーカーのエンクロジャーにも伝わるほか、ユニットの背後から放出された音が、エンクロージャー内部で乱反射し、筐体を振動させる。また、部屋や床からの反射が戻ってくることも、スピーカーを振動させる要因となる。
インシュレーターは、そうしたスピーカーの振動を抑えるのだが、GAIA II Neoの場合は、横方向の動きはガッツリと抑えつつ、前後の動きは抑えながらもある程度許容するように作られているわけだ。
単純に考えると「全方向の振動を抑えてしまえばいいのでは?」と思うが、スピーカーの振動というエネルギーを完全に抑える事は困難であり、開発者によれば、全方向に動きにくいインシュレーターを使うと、逆に、エネルギーを制御できなくなるという。
モリソン氏は、「増水して暴れている川の流れをイメージするとわかりやすいのですが、暴れる川を、無理に抑え込もうとしても溢れ出してしまう。そこで、流れる方向性を制御をしながら、流れ自体は自然に任せるイメージです」と語る。
つまり、エネルギーを抑え込むのではなく、うまく“いなす”ためのインシュレーターがGAIA II Neoというわけだ。
では、“いなす”方向が、横方向を抑えつつ、前後は許容する理由はなんだろうか。これは、スピーカーに取り付けたユニットが振動する様子を思い浮かべるとわかる。
ユニットは前後に振幅して音を出すが、この時に、ユニットが取り付けられているスピーカー全体が横や斜めなどの方向に動いてしまうと、当然ユニットの位置も動いてしまう。
モリソン氏はこれが、再生した音のフォーカスがボケてしまう原因だと言う。つまり、音のフォーカスをにじませないために、エネルギーをいなす方向を決めており、それこそがIsoAcousticsのロゴが正面に来るように取り付けなければならない理由というわけだ。
工夫はこれだけではない。スピーカーの底板と接する上部のアイソレーターはフラットなOリング形状で、ネジ止め用のネジ穴を設けている。反対側の、床と接する下部のアイソレーターは、中央が少しくぼんだ形状になっている。こうするとこで、吸盤のように床と吸着し、安定度が増すほか、もし床が完全に平らではなく、わずかな傾斜があった場合でも、密着度が上がるわけだ。
GAIA II Neoの効果を体験する
前置きが長くなったが、以下のA/Bの比較試聴をしてみよう。
- Aペア:インシュレーター「GAIA II Neo」+「GAIA Carpet Disks」
- Bペア:インシュレーター「付属スパイク」+オーディオボード
試聴する前は、正直に言って「違いはあるだろうけれど、そこまで大きな違いは出るかな?」という半信半疑状態だった。というのも、比較相手のBペアも、不安定な場所に設置しているとかではなく、しっかりとしたオーディオボードの上に、スピーカーの付属スパイクでの設置したものだからだ。
低音が多めの曲や、ボーカル曲、フルオーケストラなどの曲を再生しながら、リモコンでA/B切り替えをしたのだが、最初の曲で、始めて切り替えた瞬間に「んん?」と声が出るほど音が変わる。よーく聴き比べて、細部に注目したら違がわかる……とかいうレベルではなく、切り替えた瞬間に「ぜんぜん違うじゃん」というレベルで変わる。
変化は大きくわけて2つの点だ。
1点目はフォーカスと音場だ。ベースなど、中低音が豊富な楽器でわかりやすいのだが、弦がブルブルと震える様子が、GAIA II Neoを使ったAペアでは、ビシッとシャープになり、動きが目に浮かぶようになる。付属スパイクのBペアに戻すと、音の輪郭がボワッと膨らむ。Aペアではタイトに鋭く震えていた弦が、Bペアでは、まるで緩んだゴム紐のように見えてしまう。
音像がシャープになった事も手伝い、立体感・臨場感もアップする。楽器やボーカルがクッキリと前に浮き上がるとともに、その楽器や声の響が、スピーカーの背後の空間へと広がっていく様子もAペアの方が圧倒的に見やすく、よくわかる。
A/Bペアを切り替えると、Aがリアルなライブステージで、Bはカキワリというか、そのライブの映像を表示したテレビのように見えてしまう。
そして重要なのはここから、2点目の変化だ。
1点目はぶっちゃけ「インシュレーターが余分な振動を抑えてくれて、フォーカスがクリアになったよね」という、予想していた変化(とはいえ、その変化量にも驚いた)なのだが、2点目は「それでも音が死なず、むしろ生き生きとする」という点だ。
筆者はこれまで、家のスピーカーでインシュレーターを変えてみたり、オーディオボードを追加したり、エンクロージャーの振動を抑えようと、スピーカーの上に鉛のオモリを置いたりしたことがある。読者の中にも、そうした対策をした人がいると思うが、これらはやりすぎると、音がシャープになりはするのだが、演奏の熱気や、ボーカルの艶、芳醇な響などが消えてしまい、無味乾燥というか、そっけない音になってしまう事がある。
最初は「DIYで対策した効果があった」と満足していたのだが、しばらく聴いていると「なんかつまんない音になっちゃったな」と、オモリを降ろしたりして、元に戻した事もある。
だが、GAIA II Neoの音は、フォーカスや音場の向上という面で大きな効果を発揮しつつ、例えばベースの中低音がグッとこちらにせり出してくる熱さや、芳醇で深い楽器の響きといった“美味しい要素”がまったく失われず、いやむしろ、付属スパイクで聴いた時より熱く、深い音になる。料理で余分な雑味を抑え、うま味を増やすかのように「音が死なず、むしろ生き生きする」のだ。
おそらくこれが、振動のエネルギーをうまく“いなした”効果なのだろう。感心すると同時に、「これは、本当にオーディオが好きな人が作ったインシュレーターなのだろうな」と感じた。
IsoAcousticsとは
IsoAcousticsはカナダの企業だ。創業者は、カナダ放送協会(CBC)で約20年勤務し、ラジオやテレビのスタジオ設計でシニア職を勤めたデイブ・モリソン氏。
彼の仕事はスタジオ設計だけにとどまらず、1980年に、CBCが当時最大級のマルチメディアセンターを計画した時に、モリソン氏が、マルチメディアセンター全体を支えるように、3,000個のアイソレーションパッド設置する設計を担当。近くを通る路面電車や地下鉄からの振動の影響を受けない建物にしたそうだ。
こうした仕事を通じて、著名なスピーカーエンジニア達とも交流。それが縁で、彼らが開発したスピーカーを、モリソン氏の家に導入する事になり、スピーカーエンジニア達と、「スピーカーの置き方、音にどのような影響を与えるのか」を徹底的に研究。それを基に、プロのスタジオ向けの製品を開発。グラミー賞受賞アーティストや、スタジオエンジニアとも関係が深まり、ロンドンのアビーロードにも製品を導入。
やがて、カナダにおけるHi-Fiマーケットの成長も手伝い、コンシューマー向け製品も2016年から手掛けるようになったそうだ。
開発の手法は科学的だ。例えば、インシュレーターの開発では、無響室にスピーカーを配置し、前述のABテストと同じように、スピーカー付属インシュレーターを使った時の音と、IsoAcousticsのインシュレーターを使った時の音を測定。その周波数特性のグラフに、大きな違いが出ない……つまり、スピーカーメーカーが出したい音に、IsoAcousticsのインシュレーターが“色付け”をするものではないことを測定。
その上で、スピーカーのバッフル面の動きをレーザーで精密に測定。グラフの紫の線は、付属スパイク時のもので、振動が大きい事を示しているが、GAIA IIを取り付けると、緑の線となり、振動が大きく抑えられているのがわかる。
ちなみにモリソン氏によれば、「“床の影響を完全に無くしてみるとどうなるか”というの実験もしました。チェーンでスピーカーを天井から吊り下げて、中に浮いた状態で測定したのが青のグラフです。実際にどんな音かというと、こもったような、ビックリするほどダメダメな音でした。これは、スピーカーが、そもそも床に設置する前提で作られているものだからです」。
豊富なラインナップと、それを選びやすくするWebサービス
インシュレーターのラインナップは豊富だ。フロアス型スピーカー用として「GAIA」シリーズがあり、設置するスピーカーの重量に応じて「GAIA I」、「GAIA II」、「GAIA III」の3モデルがある。
そのGAIAシリーズの進化版であり、イチオシの次世代モデルが「GAIA Neo」シリーズ。GAIAの設計をベースとしながら、アイソレーション性能を改良したほか、シームレスな高さ調整が可能になり、取り付けもより簡単にできるようになった。ブラックまたはダーククロームの2色展開で、このシリーズも設置するスピーカーの重さにあわせて、「GAIA I Neo」、「GAIA II Neo」、「GAIA III Neo」の3モデルがある
また、GAIAの大型バージョンとして「GAIA-TITAN」シリーズもあり、今後、その次世代バージョンの「GAIA-TITAN Neo」も発売予定だそうだ。
ちなみに、最大耐荷重(4個セットの場合)は、GAIA I Neoが100kg、GAIA II Neoが55kg、GAIA III Neoが32kgとなる。モリソン氏は、製品の選び方として、「設置するスピーカーが重すぎると、インシュレーターがアイソレーションの効果を発揮し辛くなるため、あまり耐荷重ギリギリのモデルを選ぶのではなく、10%くらいのバッファを見て選んでいただくのがベスト」とアドバイスする。
これらのインシュレーターが、効果を最大限に発揮するためには、スピーカー付属のスパイクは使わず、その代わりとしてIsoAcousticsのインシュレーターをスピーカー本体にネジ止めする事が理想とされており、スピーカー取り付け用のネジも付属。
他にも、Bowers & WilkinsのD3/D4フロア型スピーカーのキャスターと外して、GAIAのインシュレーターを取り付けるためのステンレススチール製アダプタープレートなども用意している。
さらに、スピーカーの脚部が取り替えられない場合や、コンポなどに向けたインシュレーターとして「OREA」シリーズも用意。天面がOリング + ネジ穴ではなく、フラットなエラストマーになっている。
モニタースピーカーなど、デスクトップスピーカーを配置するための「Aperta」シリーズや、日本ではまだ未発売だが、サブウーファーを設置するための「Aperta SUB」というシリーズも開発。「あまり注目されない部分かもしれませんが、サブウーファーを設置した時の効果は非常に大きなもの」(モリソン氏)という。
また、今回の試聴でも使用した「GAIA Carpet Disks」(日本未発売)も、毛足が長いカーペットでも、より密着するためのアクセサリーとして開発。ユニークなところでは、インシュレーターを手軽に設置するため、スピーカーを持ち上げる「F1 Spacer Jack」という器具も開発している。
こちらも日本未発売だが、新たな展開として、レコードプレーヤーを設置するための「DELOS」や、「zaZen」といったオーディオボードのシリーズも展開している。
どれを買えばいいか迷う豊富さだが、製品選びのサポートとして、Webで製品セレクションウィザードを提供しているのもユニークなところ。日本の公式サイトでも用意されているが、スピーカーブランドとモデル名を選ぶと、最適なインシュレーターを提案してくれるもの。
IsoAcousticsが、スピーカーメーカーから製品を借りて、実際にインシュレーターを取付けるなどして情報を掲載しているのか、ユーザーからの情報なども取り入れて、日々アップデートしているとのこと。最近では、スピーカーメーカーとの関係も強固になったことで、どのサイズのネジで取り付けられるかなど情報も、もらいやすくなっているそうだ。
“スピーカー付属のインシュレーター”としてもIsoAcoustics広がる
ユーザーが別途購入するのではなく、スピーカーに標準で付属するインシュレーターが、従来のスパイクから、IsoAcousticsのインシュレーターに変わったモデルも近年増加している。
例えば、マーテンの「Coltrane Supreme Extreme」や、JBLの80周年スピーカー「Summit EVEREST」、ソナス・ファベールの創業40周年記念「Suprema」といった超ハイエンドスピーカーには、最初からIsoAcousticsのインシュレーターが付属したり、格納されたりしている。
モリソン氏によれば、こうしたスピーカーへの採用の広がりは、スピーカーメーカーとのコミュニケーションの深化と共に、今回筆者が体験したA/B比較テストを、スピーカーの開発エンジニア達に体験してもらった事もキッカケになったという。
モリソン氏は、IsoAcousticsの今後の立ち位置として、「我々は、例えるならスポーツカーにおける、タイヤメーカーのような存在だと自負しています」と語る。
「どんなに優れたスポーツカーでも、タイヤが無ければ走れません。スピーカーメーカーの考えを尊重しながら、その能力を最大限に発揮するものとして我々のインシュレーターがある。固定し、動かず、振動のエネルギーを消せず、反発させてしまうスパイクはもう過去のものです。我々はこの技術を、ターンテーブル用のベースプレートなどにも取り入れ、今後も発展させたいと考えています」。
スピーカースタンド「Aperta」シリーズ
全てブラック、シルバーの2色展開
・「Aperta」 36,300円前後(ペア)
・「Aperta 200」 45,650円前後(ペア)
・「Aperta 300」 29,150円前後
インシュレーター「GAIA」シリーズ
・「GAIA I」 91,300円前後(4個セット)
・「GAIA II」 55,000円前後(4個セット)
・「GAIA III」 36,300円前後(4個セット)
インシュレーター「GAIA Neo」シリーズ
全てダーククローム、ブラックの2色展開
・「GAIA I Neo」 117,700円前後(4個セット)
・「GAIA II Neo」 71,500円前後(4個セット)
・「GAIA III Neo」 47,300円前後(4個セット)
インシュレーター「GAIA-TITAN」シリーズ
・「GAIA-TITAN Theis」 145,200円前後(4個セット)
・「GAIA-TITAN Rhea」 181,500円前後(4個セット)
・「GAIA-TITAN Cronos」 254,100円前後(4個セット)
インシュレーター「OREA」シリーズ
・「OREA Graphite」 8,250円前後
・「OREA Bronze」 9,130円前後
・「OREA Indigo」 10,890円前後
・「OREA Bordeaux」 14,520円前後






































