iTunes映画配信開始。「1,000本は始まりに過ぎない」

-Appleに聞く。「ソニーが参加するのであれば歓迎」


iTunes Storeに[映画]のタブが加わった

 2010年11月10日、アップルのiTunes Storeで映画の配信がスタートした。

 米国でiTunes Storeにおいて映像配信がスタートしたのは2006年の9月で、もう4年前になる。こうしたコンテンツ配信サービスについては、各国ごとに事情が異なることも多く、全世界で一斉立ち上げは難しい。とはいえ、4年というのはかなりのタイムラグだ。

 なぜ、いま日本での映像配信サービスをスタートするのだろうか? 米Apple iTunes カナダ & アジア太平洋地域担当シニア・ディレクター ピーター・ロウ氏に話を聞いた。


■ 11社が参加。レンタルと販売の2方式で展開

 10日にスタートしたiTunes Storeの映画配信サービスの概要については、別記事に詳しいが、iTunes Storeにおいて、新たに[映画]の項目が追加され、1,000以上の映画のレンタルや購入が可能になった。

Apple TV

 PCやMacintoshだけでなく、ダウンロードしたコンテンツを、iPhoneやiPod touch、iPadなどの様々なApple製品で再生できることが特徴だ。従来[ミュージック]のiTunes Storeでできていたことの多くが、[映画]でもできるようになるわけだ。

 また、小型のセットトップボックス(STB)である新Apple TVも今週発売される。8,800円という価格も安価だが、サービスの開始に合わせて対応のハードウェアを用意するという点も、日本参入にあたり、周到な準備を行なってきたことがうかがえる。

 コンテンツ提供者としては、20世紀フォックス、パラマウント・ピクチャーズ、ウォルト・ディズニー・スタジオ、ワーナー・ブラザース、ユニバーサル・ピクチャーズなどのハリウッドの大手スタジオ5社。日本ではアスミック・エース、フジテレビ、角川映画、日活、松竹、東映の6社が参加し、合計11社となる。

 配信方式としては、レンタルと購入の2種類が用意され、解像度もHDとSDの2種類が用意される。映像形式は、HDがMPEG-4 AVC/H.264で解像度1,280×720ドットで、ドルビーデジタル5.1ch(ステレオなどもあり)。SDもAVCで解像度は720×480ドットのドルビーデジタル5.1chとなる。

HD映画だけも検索可能ディズニーの作品

 レンタルや販売方法などについては、コンテンツパートナー側が設定する形となっており、スタート時の価格は下表のとおりとなる。

【レンタル】

作品SDHD
新作400円500円
旧作300円400円
200円300円

【販売】

作品SDHD
新作2,000円2,500円
準新作1,500円2,000円
旧作1,000円2,000円

 ロウ氏は、こうしたコンテンツのネット配信では、コンテンツホルダなどのパートナーとの緊密な協力が必要な点を強調。日本のiTunes Store展開としては、先日スタートした、大学との連携による、講義のネット配信「iTunes U」などもこうした取り組みの一環だが、今回もハリウッド大手に加え、日本のコンテンツプロバイダーとの話し合いや調整を経て、映画配信のスタートにこぎつけたという。

 iTunes Storeの映画配信では、人気の映画の視聴だけでなく、トップセラーや、「HD動画」や「ディズニー」、「日本語字幕」といったジャンル検索、キーワード検索にも対応。コンテンツの詳細ページでは2~3分のプレビューも行なえるほか、出演者やキャストの情報をクリックすると、関連作品も調べられるなど、iTunes Storeの音楽配信などのノウハウを生かした検索性の高さも特徴という。

詳細画面トムハンクス関連作品プレビュー機能も備えている

 販売形態としては、レンタル/購入の2方式があるが、いずれもコンテンツを一旦ダウンロードしてから再生する。iTunes Storeからダウンロードし、インターネット経由で映像を取得。レンタルの場合は、パソコンやApple TVで、ダウンロードしながら再生できる。課金には、日本のクレジットカードが必要となる。

再生しながらの早送りなどのトリックプレイにも対応。レンタルした映画の視聴期限は、ダウンロードから30日以内で、最初に再生してから48時間以内となる。その間は何度も視聴可能。「購入」したHD/SD映画は何度も視聴できる。

パソコンダウンロード。[レンタルした項目]という表示が現れる。あと、29日と23時間でレンタル終了と案内最初の再生開始時に、48時間の期限を明示する再生画面。フルスクリーンでの再生も可能

 基本的にはWindows PCやMacのiTunesを使ったダウンロードとなるが、レンタルの場合はApple TVやiPadからもコンテンツを選択し、購入/再生開始できるという。また、編集部でiPhone 3GSで試したところ、無線LAN経由でiTunes Storeから映画「旭山動物園物語」をダウンロードし、再生できた。ただし、ダウンロードしながらの再生はできなかった。

iPhone 3GSからレンタルでダウンロードiPod機能の「ビデオ」から再生できた
iPhone 3GSでレンタルしたビデオを再生

 なお、「購入」(買い切り)については、パソコンでのダウンロードが必要。ダウンロードした番組は、LANを介してApple TVなどの端末にストリーム配信できる。

 気になるのは今後のコンテンツの展開。映画だけでなく、テレビドラマなどの配信にも期待したいところだ。また、今後のコンテンツパートナーの拡充の方針はどうなのだろうか?

 Appleの方針として将来の方針については、言及できないとのことだが、ロウ氏は、「今回の1,000タイトルは始まりに過ぎない」とする。

ロウ氏:(以下敬称略)日本のみならず、世界各国でコンテンツの所有権にかかわる様々な問題、困難があり、調整は難しいものです。世界各国で様々なチャレンジがありますが、新しい日本のスタジオパートナーとはすばらしい仕事ができたと思います。多くのスタジオや、フジテレビのようなテレビ局などにも協力いただけました。

 タイトル数などの将来の目標は明らかにしていないが、「今の段階で1,000タイトルというのは成功だと思っていますし、さらに追加していきたい」という。

 もう一点気になる点は、Appleのコンテンツパートナーとの連携の方針。例えばiTunes Storeの音楽においてはソニー・ミュージックの楽曲は配信されておらず、本日の映画の発表においてもソニー・ピクチャーズは入っていない。Appleとしてなにか特別な方針はあるのだろうか?

ロウ:一緒にやりたいというパートナーさんは歓迎です。基本的には、同意書を結び、デジタル化して納入していただくだけで、デジタル化のための変換サービスなども提供しています。確かに現在のiTunes Storeには、ソニー・ミュージックは入っていません。映画についても同様です。しかし、もし入っていただけるのであれば、歓迎したい。

 レンタルとセルの販売比率については、どう考えているのだろうか?

ロウ:将来の予測は出せません。ただし、日本は、レンタルがとても普及したマーケットです。だからこそレンタルのサービスをしっかりとスタート時点で整えました。ただ、好きなものを残したいという方も当然いらっしゃいます。我々が重視しているのは『お客様に選択肢を用意する』ということ。そこで、レンタルとセルの2つを用意したのです」



(2010年 11月 11日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]