パナソニックが「ビエラ CX800シリーズ」で狙う「ジャパンプレミアム画質」とはなにか

4K=高画質ではなく、複数の条件が整ったテレビが高画質なテレビである……。こういう認識は、そろそろ多くの人が持ち始めたものだと思う。では、解像度以外になにが重要なのだろうか? 「まずは色」という答えが多いだろう。それはもちろん正解だ。だが、色という情報のカバーする範囲はきわめて広い。「発色」を見直すことで、我々が「色」という言葉から想起する「鮮やかさ」以外の部分でも、様々な観点で画質向上に寄与することがわかってきている。

パナソニックがここ数年一貫して取り組んでおり、新型ビエラ「CX800シリーズ」でも重要視しているが、そういう「色の持つ本当の価値」の再認識であり、結果、テレビセット全体での画質向上が実現されている。

高画質テレビにおいて4Kが当然のものとなり、その次の段階を狙う製品がどのような部分を大切にしているのか。それを、CX800シリーズから確認してみることにしよう。

ジャパンプレミアム画質に満足

高輝度液晶パネルにはふさわしい「高画質化技術」が必要

今年登場する画質重視のテレビでは、「4K」に加え「輝度再現性」が重要と言われている。今年後半には登場と言われている4K対応のBlu-ray Disc規格「Ultra HD Blu-ray」で、よりリッチな輝度情報を持つ「HDR」のサポートが決まっていることもあって、明部・暗部の情報をいかに再現するかが問われているのだ。

明部・暗部の情報がしっかり表現できるようになると、画質には様々なプラスの効果が生まれる。平板であった映像に立体感や奥行きがわかりやすくなり、結果、精細感が高まったように感じる。精細感というと映像の解像度のこと、というイメージが強く、4Kのような技術的ジャンプが重要……と感じがちだ。だが実際には、人間の目は「ドットの数」を見ているわけではない。細かな木々のざわめきは、ドットの数だけでなく、葉の陰影による色の差によって初めて「精細感」として認識される。だからこそ、陰影をより正しく再現できる「輝度再現性」があって、映像には精細感が生まれる。そしてその時、色が正しく再現されていないと、高画質化という意味では不満が残る。

マスターモニターの映像に迫る勢い

パナソニックが大切にしているのは、この「輝度」と「色」両面が揃った高画質化だ。

CX800シリーズでは、ディスプレイとして高輝度IPS液晶パネルが採用されている。高輝度なものを採用した理由は、輝度再現性を重視してのものだ。

液晶テレビにおいて「輝度」はずっと重要な要素だった。液晶のダイナミックレンジの狭さをカバーするためには、ピーク輝度を上げることが重要だったからだ。しかし、現在の液晶テレビでは、全面が煌々と明るく発光することは、もはや望まれていない。明るいところと暗いところをきちんと表現できることが重要だ。

そのためCX800シリーズでは、直下エリア駆動型(※)のバックライトを採用した。これにより、明るい部分は明るく、暗い部分は暗く表現するのが容易になっている。さらに、それとセットで働くのが「ダイナミックレンジリマスター」である。
(※)49V型はエッジエリア駆動型

パネルやバックライトの性能が上がったと言っても、その能力が限界があり、映像信号のすべてを加工なく表示できるわけではない。また、映像信号を単にパネルに渡しても、人間の目から見て「より自然に見える映像」にはならない。放送からディスクメディアに至るまで、現在流通している映像では、本来人間が感じた輝度をそのまま記録できず、撮影時に色の明るさ成分が失われてしまう。明るい部分は単なる「白」になり、明るさの中にある色の階調性が失われると、映像からはディテールが失われ、結果階調感も生々しさもなくなる。そこで、CX800シリーズでは、ダイナミックレンジリマスターを使い、記録時に失われた「各色」の持つ、それぞれの明るさを再現する。その情報と部分駆動バックライトを組み合わせることによって、「明るい部分が明るい」だけでなく、色の再現性を含めた「精細かつ明るい」という要素を実現するわけだ。

同時に、部分駆動バックライトにおいては「精度」も重要だ。部分駆動バックライトは、画面全体を分割し、それぞれで輝度を変えることで「明るさ」「暗さ」の両方を実現する。一方、分割数は液晶の画素よりはずっと少ないため、「明るい部分のすぐ隣に暗い部分がある」ような場合、光が本来暗い部分にも影響を及ぼしてしまう。これが曇りの日に太陽や月の周辺に「かさ」が差す現象に似ていることから、この副作用を「ヘイロー(Halo)」と呼ぶ。CX800シリーズもヘイロー(Halo)と無縁ではないが、ダイナミックレンジリマスターとバックライト制御、さらにはバックライト制御を見越した画像そのもののコントロールによって、従来に比べヘイロー(Halo)の出現をぐっと抑えている。

「精細かつ明るい」を実現している

こうした技術の積み重ねによりCX800シリーズは、従来の同価格帯製品に比べ、ずっと高い輝度再現性を実現している。この先には、「Ultra HD Blu-ray」によるHDRサポートが待っている。見た目の印象に近い、よりリッチな輝度情報が提供されるようになると、ここまでで説明した「リッチな高輝度再現」のための仕組みは本領を発揮する。Ultra HD Blu-ray対応製品と映像ソフトの登場は、今年年末以降と言われている。まだまだ先のようだが、テレビのように長く使う高価格商品を買うなら、先への備えがある方がありがたい。CX800シリーズはHDR対応のアップデートが明言されており、その点では安心だ。

「ヘキサクロマドライブ」を高輝度に合わせて強化

輝度を正しく再現しようとすると、次に問題となるのが「色」だ。輝度と色は不可分な関係にある。高輝度な部分が白に、低輝度な部分が黒になるだけではダメで、「明るい中での色」「暗い中での色」がそれぞれ正しく表現できることが重要である。

パナソニックは昨年より、こうした部分の色再現性を考え、「ヘキサクロマドライブ」という独自の機構を採用している。通常、テレビでの色処理は、光の三原色である「R(赤)G(緑)B(青)」の3色を軸として行われる。だがヘキサクロマドライブでは、ここにその補色となる「C(シアン、青緑)M(マゼンタ、赤紫)Y(黄色)」の3軸を加え、6軸(ヘキサ)で処理することでより忠実な色再現性を狙っている。

3軸でなく6軸で制御する理由は、「明るい中での色」「暗い中での色」の正確な再現にある。特に液晶パネルにおいて問題になるのは、暗い場合の表現である。液晶パネルは、中間域では正確な色が再現できるものの、特に暗い色になると、原色からずれた色合いになってしまい、結果、ベタッとした絵になることが多かった。そこで、ヘキサクロマドライブでは低輝度時の「色のねじれ」を、6軸制御によって補正し、液晶テレビが苦手としていた、暗いシーンでの豊かな色表現を可能にしている。

さらに、CX800シリーズでは低輝度に加え「高輝度」での画質向上に挑戦している。CX800シリーズは液晶が高輝度パネルになっている。それに合わせて輝度方面の補正が充実しているのはすでに説明した通りだが、さらにヘキサクロマドライブについても、輝度方向での処理能力を高め、従来比約1.6倍の色表現が可能になっている。

明るさ・暗さの正確な表現に加え、そうした領域での色再現性を高めた結果、CX800シリーズは、輝度変化・色変化の多い映像でも、さらにリッチな映像が楽しめるようになった。明るい、と感じるのはもちろんだが、そこに正しい色が載ってくることで、精細感・立体感が感じられるようになっているわけだ。

高輝度再現・色再現は、テレビ業界全体が目指す方向性だ。そこに、これまで培ってきた技術を上手く生かし、トレンドを先取りする形で実現しているのが、CX800シリーズの特徴といえる。

これから、テレビに入ってくる映像の種類は大きく変わっていく。放送はもちろんだが、ビデオ・オン・デマンドのようなネット系への依存度は高まっていくし、Blu-ray DiscもUltra HD Blu-rayへと変わる。そこでは解像度変化はもちろんのこと、輝度・色域表現も変化していく。現在、放送では「BT.709」という色域が採用されているが、今後Ultra HD Blu-rayや、スーパーハイビジョン放送ではより広い「BT.2020」が使われる。CX800シリーズでは、高輝度・高色域に合わせたシステムを活用し、BT.2020にも対応する。高画質化と将来に向けたサポート、両面を満たしているわけだ。

日本市場に合わせた「ジャパンプレミアム」チューニング

一方で、テレビはカジュアルに楽しむものでもある。正面から画面に向き合って映画を楽しむこともあるが、ソファーに寝転がって見ることもあるし、テレビをつけっぱなしのまま、自分は部屋の隅で別の作業をしている……なんてこともあるはずだ。そういうカジュアルなシーンでも違和感のない画質であることもまた、今のテレビに求められている要素でもある。特に現在、リビングのテレビは大画面化している。画面が大きくなると、斜めから見た時の視野角は大きくなる。ソファーに寝転んだ程度でも、大きな視野角で映像を見ることになり、色の変化がきになりやすい。CX800シリーズでは、液晶パネルにIPS方式を採用しているので、視野角による色変化が小さく、不快感が少ない。

この時重要なのは、「カジュアルに見ても違和感のない色合いにチューニングする」ことである。日本人は床に座って過ごす時間が多い。テレビの配置は当然、他国とは違う。座ったり寝たりと、とにかく色んな姿勢でテレビを楽しむ。そうした日本的な使い方を想定して作っている点は、日本メーカーが日本市場向けに作っている強みだ。実は色合いについても、「日本向けチューニング」が行われている。日本人の肌の色がよりきれいに見えるよう、色温度を中心にチューニングすることで、画質が「日本人好み」になるようにしているという。

製造の面でも色々な努力がある。

液晶パネルは、同じメーカーの同じ工場で作られたものであっても、細かいレベルで見れば、色合いや明るさに差がある。製造段階では、そうした差を「出荷に足る水準で合わせる」ことが必要になる。それはどのメーカーもやっていることだが、その範囲は製品やメーカーによって異なる。ぴったり同じ水準に合わせることは、製造コストの上昇を招くためだ。

だがそこでパナソニックは、画質軸へのこだわりから、出荷される製品毎のばらつきをできるだけ抑えるよう、時間をかけた独自のチューニングをほどこし、製品を出荷しているという。せっかく技術にこだわったのだ。それをすべての製品で、十全に味わい、楽しんでもらえるようにしたいからだ。追い込めるだけチューニングを追い込み、ばらつきを抑えているという。

こういう細やかな取り組みは、カタログスペックには見えてこない。だが、「日本市場で日本のお客様に、差を理解して買っていただく」には、こうした裏に隠れた努力も必要になる。

パナソニックは今期より「ジャパンプレミアム4K」というキャッチフレーズを使っている。いまや、国内で作るだけでプレミアム、という時代ではない。市場により近いところで手間をかけることで、初めてプレミアムが生まれる。パナソニックが主張したいのは、そういうことではないだろうか。

「ジャパンプレミアム4K」は、宇都宮工場で製造されている!
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