同イベントは毎年行なわれており、NHK放送研究所の研究活動と成果を視聴者に公開するもの。今年は「ウレシイを咲かせたい」をテーマに、33項目の展示を実施している。なお、2002年4月1日にオープンした新研究棟で行なわれる、初の一般公開となっている。
■ 視聴/ユーザーインターフェイス関連の技術 新規のフォーマット関連の展示は、2003年以降の放送開始が予定されている地上波デジタル放送関連の展示が中心。PDAでの視聴環境や、データ放送サービスの紹介を行なっている。 PDAの試作機は、地上波デジタル放送のコーデック、OFDMの復調装置がまだ小型化できていないため、OFDM復調装置を外部接続とし、PC上でMPEG-4に変換、IEEE 802.11bで無線伝送したシステムを展示。OFDM復調装置は現状でも車載できる程度の大きさだが、将来的には1チップで提供できるため、PDA1台で視聴可能になるという。 データ放送では、車やPDAなどに搭載されるGPSに連動するサービスを紹介。位置情報を元にデータ放送のフィルタリングを行ない、現在位置に対応する地図などを放送から取得できるという。また、映像番組の視聴と連動する外部機器の展示も行なわれた。デモでは子供番組にあわせて、ぬいぐるみが動いていた。
ネットワーク関連の展示では、番組をNHKのサーバーに蓄積し、ネットワーク上からのストリーム放送による番組の視聴が可能なVOD(ビデオ・オン・デマンド)システムや、蓄積型のホームサーバーの展示が行なわれた。 VODは「再放送のリクエストに対応するシステム」と位置付けられ、VODサーバーには1週間の番組を蓄積し、タッチパネル式液晶ディスプレイから番組情報(EPGを想定)を参照しながら番組を指定することで、番組を視聴する。なお、ストリームによる放送で、ダウンロードは行なえない。 さらなるパーソナライズへのアプローチも行なわれており、「TV4U(TV for You)」と名付けられた自動番組生成システムを展示。自分の好みの番組や、居住地域に関するニュース、天気予報、さらにスケジュール、メールなどの個人情報も内包する番組を、CGによるキャラクターがキャスターとなって個人専用の番組を作成するという。デモではCGキャラクターが合成音声でニュースを読む番組などが公開されていたが、現状ではまだ機械的な印象はぬぐえない。
また、放送局での編集を想定したシステムとなるが、顔を自動認識して人名を表示したり、大まかな画像を描いて、対応するシーンを検索するシステム。ニュース原稿を音声認識し、ニュース記事、専門用語のインデックスを自動生成するシステムも研究されている。 これらのシステムを連動させることで、視聴者はより多くの情報を容易に検索することができることになるが、その使い方の提示としてか、テレビ前にカメラを設置し視聴者が任意の対象を指差す(例えばサッカーの試合中に1人の選手を指差す)ことで、その対象に関する情報(選手の人名など)を表示するシステムも展示。より対話性の高い放送へのアプローチも公開されている。
■ 放送/中継関連の技術 放送/中継関連の技術は、現在行なわれているBSデジタル放送や、2003年以降に開始予定の地上波デジタルの放送に使用されるMPEG-TS(トランスポートストリーム)に関する放送/中継技術の展示が行なわれた。 現在のBSデジタル放送では、雲などによる電波障害が発生して視聴に支障をきたす場合があるが、デジタル圧縮が施されているため、原因の把握が難しくなっているという。そのため、放送監視を目的とした「TS品質モニター装置」を開発。展示を行なっている。 デモでは電波状態の悪い受信状態での画像を検出/解析し、リアルタイムに復号を実行。明らかにエラーの確認できる映像が、通常の放送として復号されていた。 地上波デジタル放送の中継技術では、海面での反射などにより正常な信号の受信ができない中継局の受信方式として、アンテナを2つ設置したダイバシティ方式での受信を展示。それぞれのアンテナからの受信電波を1つにすることで正常な信号を復元するという。 また、山間部などのでの電波の回り込みを回避する「回り込みキャンセラー」や、長距離伝送時に信号が遅滞する際のエラーを補正する「長遅延マルチパスの等化装置」なども紹介されている。
■ 撮影/編集関連の技術 撮影関連の展示のなかでも来場者に人気があったのは、「水平解像度4,000本級」の映像を実現するためのカメラ、プロジェクタの展示。双方とも実働デモを行なっており、特に320インチのスクリーンにプロジェクタ2台をスタックして投射するデモには40分待ちの行列ができるなど、高い注目を集めていた。 昨年展示された高解像度カメラは三脚に設置できないほど巨大なものであったが、今回の展示では大型ながら三脚に設置して実働デモを実施。収録した映像をプロジェクタでの投射デモに中継している。 撮像素子、投射素子とも解像度は800万画素×4を搭載。レッド/ブルー(R/B)にグリーン×2(G1/G2)を合わせる方式で、インターフェイスは合計でHD SDI×16。合計21スピーカーを使用する、「19.2chサラウンドシステム」で投射デモを行なっていた。 投影デモを実際に視聴した印象は、静止画やゆっくりした映像では70mmフィルムの映画以上に高いディティールを持ち、色の表現も自然だが、動きの速い映像では輪郭表現や色再現性などにまだ改善の余地があると感じられた。
また、波長405nmの青紫レーザーを使い、2レーザーでビットレート200Mpbsの記録が可能なHD撮影用の光ディスクは、再生のデモなどを実施。光ディスクによるHD撮影機材を対象としている。 高密度垂直磁気ディスク(HDD)の展示では、試作2.5インチディスクの隣りに「100円玉サイズで20GBの容量」を目標とする試作ディスクも見られた。 PDAなどで放送をストレージすることを想定した技術だが、現状では1bitのピッチ幅は28nmとほぼ目標を達成したが、磁気ヘッドのトラック幅が大きいため、目標の1/3程度の容量だという。
□NHKのホームページ (2002年5月17日)
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