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日本電気株式会社(NEC)は10日、地上デジタル放送の受信が可能な携帯電話の試作機を開発。都内で記者発表会を開催し、試作機の解説とデモンストレーションを行なった。
公開された試作機は、NECエレクトロニクスが2002年10月17日に発表した携帯端末向けの地上デジタル放送用OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)復調LSI「μPD61530」を、W-CDMA方式の第3世代携帯電話に組み込んだもの。 さらに、携帯電話に搭載可能な地上デジタル放送受信用小型アンテナ、UHFチューナなどを内蔵。放送ストリームの制御や、テレビ視聴用のアプリケーション、AVデコーダなどはソフトウェアで実装しており、ベースとなった携帯電話のプラットフォームを利用している。 実際に、この試作機のみで地上デジタル放送を受信でき、現時点で最大1時間の映像の視聴が可能。本体サイズも、ベースとなった携帯電話とほぼ同じで、地上デジタル放送受信用回路の省スペース化と、低消費電力化を実現している。
今年の12月から、東京、大阪、名古屋で放送が開始される地上デジタル放送は、家庭用テレビなどの「固定受信」を皮切りに、将来的には自動車などの「移動受信」、携帯電話などの「携帯受信」用の放送サービスも予定されている。具体的な放送開始時期は決定していないが、同社は「2005年には開始されると考えている」とのこと。 携帯受信用の端末としては、既にPDAサイズの試作機などが他社から発表されているが、「既存の携帯電話に地上デジタル放送受信のための機能を組み込んだ試作機は世界初」(同社)としており、モバイルターミナル事業部長の田村義晴氏によれば「この試作機で、既に地上デジタル放送の携帯受信に関する基本的な技術開発は実証できた」という。 なお、地上デジタル放送では、1ch 6MHzの帯域を13セグメントに分割し、その内1セグメントが携帯端末用放送に使われる。試作機に搭載されたOFDM復調LSI「μPD61530」は、この1セグメントのみ受信可能となっており、複数のセグメントを利用する地上デジタルラジオなどには対応していない。
デモンストレーションでは、MPEG-4形式の動画データをOFDM変調器で変調し、テレビ用の室内アンテナで簡易放送を行ない、試作機で受信した。放送免許の関係で受信可能範囲は室内アンテナの周囲10cm程度に限られるが、良好な受信が確認できた。 なお、携帯端末向け放送の動画フォーマットに関しては、NHKや民放連などの放送局側とMPEG-4を管理する団体MPEG LAとの間で、ライセンスに関して合意に達していないが、今回の試作機ではMPEG-4を利用している。
試作機の受信可能ビットレートは最大300kbpsまで。デモでは160kbpsのMPEG-4データを受信していた。解像度は160×120ドット(SQVGA)で、フレームレートは約15fps。音声は48kbpsのMPEG-2 AACで、モノラルとなっている。なお、将来的にはデコーダの性能向上を見込んで、解像度QVGAで15fps程度のクオリティを実現したいという。
チューナの機能は、UP/DOWN式の選局に加え、チャンネルスキャン機能も搭載。EPGやデータ放送受信機能は、今後開発していく。なお、テレビ受信中に電話がかかると、自動的に電話モードに切り替わる機能は既に搭載している。 バッテリは、携帯電話と同じリチウムイオンを使用。試作機では1時間程度の映像受信が可能だが、将来的にはテレビの視聴時間を1時間以上確保しつつ、さらに2時間以上の通話を目指す。そのため、LSIやソフトウェアのアルゴリズムなどを改良して、より省電力化を図っていくという。 なお、価格は「従来の携帯電話の上位モデルとしてランナップする程度の価格に抑えたい」としており、「通常の携帯電話の2倍や3倍という価格は考えていない」。また、商品化の時期については「2005年に開始されるであろう放送に合わせて」としている。 だが、端末が完成しても、地上デジタルの携帯向け放送自体の具体的な仕様が決定していないのが現状。今回の発表の意図について田村氏は「技術的には、すでにこの段階まで実現可能ということをアピールしたかった。この発表を機に、地上デジタル放送に関する議論がより活発になればうれしい」と語った。
□NECのホームページ
(2003年7月10日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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