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TI、トム・エンジバス会長兼CEOが会見
「DSPが電子機器産業を牽引する」


トム・エンジバス会長/社長兼CEO

7月29日開催


 テキサス・インスツルメンツ(TI)のトム・エンジバス 会長・社長兼CEOが来日、都内ホテルにて会見を行なった。エンジバスCEOは、日本市場の重要性や2002年2月に日本に設立した「デジタル・コンシューマ・エレクトロニクス・ソリューションズ カンパニー(DCES)」の役割などについて説明した。

 まず、「日本メーカーは、民生機器市場において確固たる地位を確立し、特にデジタル技術への移行において中心的な役割を担っている。従来TIにとって民生機器向けの半導体事業は小さな事業分野だったが、今ではとても大きな事業になっている。同分野においては日本メーカー各社との共同作業で最高のDSPを生み出すことができた。共同作業において、TIは競争力を高め、また、各日本メーカーの国際競争力の向上にも寄与できたと思う」と述べ、日本メーカーとの連携が、DSPを中心とした今日のTIの成功に大きく寄与したとの見解を明らかにした。

 続いて、同社が最も力を入れているシグナル・プロセッシングについて解説した。携帯電話やブロードバンド通信、ワイヤレスLAN、デジタルオーディオ/ビデオ、デジタルラジオ、自動車、産業機器など幅広い応用が可能で、エンジバスCEOは、「電子機器産業の革新、成長の牽引役は、マイクロプロセッサからシグナル・プロセッシングに変わった」と述べた。

 また、シグナル・プロセッシングを牽引しているのが、TIのDSPとアナログICであり、DSPの優位点としてプログラマビリティを挙げた。「例えば、第1世代の携帯電話がスタートした時には誰も携帯電話で写真を撮るなど考えていなかった。まして写真を送信するなど想像もしなかった。しかし、今日の日本ではカメラ付き携帯電話は一般的で、世界に広がりつつある。高性能/低消費電力のDSPがカメラ付き携帯の普及に寄与している」とDSPの機能革新を説明した。

 そして、「従来電子機器産業を牽引してきたPCに変わり、モバイル・インターネット機器やポータブル・マルチメディア製品、自動車などのアプリケーションが最前線にあり、成長の牽引役となる」と、シグナル・プロセッシングの重要度をアピールした。

 DSPの性能向上については、今年初頭に720MHzの製品を投入し、1GHzのDSPも発表している。エンジバスCEOは、「これらの応用により、例えば自動運転を可能にする“スマートカー”の実用化や、医療分野では、脳のペースメーカーの開発などの新たな市場を切り開くかもしれない」という。また、PDAでのHDTV表示や高速ワイヤレスネットワーク製品などの応用例についても解説した。

 「1チップ化」もキーワードとして取り上げられた。集積化によるシステム設計の簡素化や、消費電力の削減、小型化促進などが行なえる。携帯電話では数年前は、パワーマネージメント、アナログ/デジタルベースバンド、高周波LSIなど200近い個別部品を必要としていたものが、今では4つのチップと、パワーアンプに集積されているという。今後の目標として、1チップ化することでさらなる高機能、小型化などが期待される。

DSPの高速化ロードマップ ワイヤレス用DSPの集積化

 また、PDAや携帯電話のリファレンスデザインの提供により業界各社との連携を深めていくほか、設備投資についても積極的に行なっていく。現在は主に130nmプロセスを利用して量産を行なっており、今年初頭には90nmプロセスで携帯用ベースバンドのサンプル出荷も開始している。最新プロセスの最初の製品がPC向けでなく携帯電話向けとなったことも、「ワイヤレスがテクノロジリーダになっていることを示している(エンジバスCEO)」という。

 なお、現在、300mmウエハ製造施設を建造中で、2005年より起工開始される予定。新施設では60nmプロセスでの製造開始を予定しており、ワイヤレス製品やDSPが中心と成る見込み。

 また、日本に設置されているデジタル家電にフォーカスしたDCESカンパニーについても触れ、DVD/ビデオイメージング/デジタルオーディオ/カメラ携帯電話の4事業部門について解説した。

 DVD事業では、DVDのアナログ・フロントエンド市場で60%を超えるシェアを、デジタル・フロントエンドでは、10%シェアを獲得している。

 ビデオ&イメージング事業では、HPやコダック、松下電器、日本ビクター、シャープなどへの製品供給を行なっており、デジタルカメラの画像処理チップや、液晶ディスプレイ用のドライバICなどが採用されている。

 デジタル・オーディオ事業については、ビクターのAVアンプ「AX-V8000」に採用されたDSPチップ「Aureus」(オーリアス)を例に上げて解説。DTS-ESやドルビーデジタル EX、THXサラウンド EXなどのほか、さまざまなオーディオ処理アルゴリズムに対応できるとアピールした。

 カメラ携帯電話事業では、携帯電話向けのOMAPプラットフォームの利点を解説。OMAP採用のNEC、富士通、パナソニックの各社の最新FOMA端末で、劇的に電池寿命が向上したことを強調した。

PDAや携帯電話でリファレンスデザインを開発 製造施設に積極投資

 今後も日本での投資を継続していくほか、デジタル家電の隆盛を前に「今後5~7年は日本の動きに大きく左右される」と述べ、日本重視の戦略を続けていくことをアピールした。

 なお、7月25日に米国でQualcommが、携帯電話の特許ライセンス契約違反を理由にTIを提訴した件については、「われわれがCDMAのチップを作り上げたこの四半期に訴訟を起こしたのは偶然ではないだろう。市場に早く投入したいという、われわれに対する動きでは無いかと思っている」とコメントした。

□TIのホームページ(英文)
http://www.ti.com/
□ニュースリリース(戦略説明会について/和文)
http://www.tij.co.jp/news/corp/2003/corp_03_006.htm
□ニュースリリース(Qualcommの提訴に関する反論/英文)
http://focus.ti.com//docs/pr/pressrelease.jhtml?prelId=sc03165

(2003年7月29日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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