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エンターテイメントに精通した弁護士「エンタメ・ロイヤー」
-アニメや音楽などのコンテンツ産業を法律面でバックアップ


理事は弁護士とクリエイター、有識者らが務める
4月13日発表


 音楽、映画、アニメなどのコンテンツ産業の振興を図るため、エンターテイメント業界に精通した法律家の連携・育成などを行なう団体「エンターテイメント・ロイヤーズ・ネットワーク」が設立。13日に東京・霞ヶ関ビルで設立記者会見を行なった。

 同ネットワークは、2003年3月に発足した内閣官房知的財産戦略本部が行なっている知的財産に関する検討や、'03年7月8日に同本部がまとめた「知的財産推進計画」に触発、賛同した弁護士やクリエイターが中心となって設立した団体。知的財産戦略本部と協力関係にはあるが、戦略本部内の組織ではなく、独立した団体となっている。

設立会見は東京・霞ヶ関ビルで行なわれた

 設立の最大の目的は、エンターテイメントコンテンツ産業を法律面からバックアップすること。現在のエンターテイメント業界では、権利関係の不明確さがコンテンツ流通の障害になったり、作品の二次的利用形態が多様化したにも関わらず、クリエイターに利益が還元される法的根拠が整備されていないなどの問題がある。

 また、コンテンツの制作段階でも、知的財産権の証券化を含む資金調達方法が明確に確立されていないなど、法的問題が産業全体の振興を妨げている例は多く、こうしたシステムの不備が国際競争力の低下を招くという懸念の声も広がっている。

 こうした状況を踏まえ、知的財産権などの個々の法律をメインに研究するのではなく、実際のコンテンツビジネスの現場を理解。さらに、アニメ、ゲーム、音楽、映画など、特定の分野だけでなく、エンターテイメント業界全体に精通した法律のスペシャリスト、通称「エンタメ・ロイヤー」を生み出していこうというもの。

 具体的な活動としては、年に1、2回シンポジウム、月1回の頻度で研修会などを開催する予定。コンテンツ業界に関する契約実務や立法、判例の動向など、実践的な事例を交えて研究・情報交換を進め、疎遠になりがちな弁護士とクリエイター達の間のネットワーク構築も行なうという。

 メンバーは弁護士、弁理士、税理士に加え、大学教員や学生、研究者などからも幅広く参加を呼びかけ、講師を招いての勉強会なども実施する予定。なお、呼びかけから1カ月で既に108人の弁護士が集まっており、同ネットワークでは今年上半期中には200人を超えると見込んでいる。


■ 2年で500~600人のエンタメ・ロイヤーを

弁護士の久保利英明氏

 同ネットワークの理事長を務める弁護士の久保利英明氏は「アメリカには100万人の弁護士がおり、エンターテイメントに関する問題を取り扱っている弁護士は2万人いると言われている。しかし、日本には弁護士が2万人、その中でこの問題にメインで取り組んでいる人は1,000人もいないだろう」と現状を解説。

 さらに「音楽やアニメなど、個別の分野で関わっている弁護士は少なからずいるが、法律面だけで現場との繋がりを持たない人が多い。また、個々の分野を超えてエンターテイメント界全体に精通した弁護士はいない」としたうえで、「日本映画を海外でリメイクする際の法的問題や、漫画などの海賊版にしっかりと対応できる能力を持った法律家を増やしたい。4年、10年計画と言っている暇はない。2年で5、600人レベルに持っていきたい」と抱負を語った。

 クリエイター、コンテンツ産業分野からは、理事を務める漫画家の里中満智子氏、角川書店の角川歴彦会長、エイベックスの依田巽会長兼社長、小学館のキャラクター事業センターでセンター長を務める久保雅一氏が出席。なお、民放からはフジテレビの日枝久会長も理事に名を連ねている。

角川氏は映画「リング」のリメイクに関する裁判を例にあげ、国家的にコンテンツを保護する必要性を語った 日本のアニメや漫画に良く似た映画が海外で作られても、クリエイターはどうすることもできないといった状況も改善したいという里中氏 依田氏は「音楽関係で法的問題が起こって弁護士に相談すると、その弁護士が相手側の相談にものっていた」という体験談を語り、エンターテイメントに関わる弁護士の不足を訴えた

「ポケモン」のプロデューサーを務める久保氏

 里中氏は「漫画は、日本人の文化や思想を世界の人に理解してもらう上で、非常に役立つもの。今後は世界の読者に求められて発信するのではなく、自ら積極的に文化を紹介していく必要がある。クリエイターとしては自分の生み出したキャラクターや物語を安心して任せられる市場・システムが欲しい。そうすれば、純粋に創作のみに力を注いでいける」と期待を寄せる。

 また、世界で人気を博している「ポケモン」のプロデューサーを務める久保氏は「日本のアニメを海外に輸出する際には、様々な問題が発生する。中には契約交渉の道具として訴訟を起こす相手もおり、日本の常識では通用しない事態も起こる」と体験を語り、「国際競争力を持つためにもエンタメ・ロイヤーのバックアップは必要。逆に、自分も現場で得た知識をどんどん弁護士の方へ伝えていきたい」と抱負を語った。


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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040309/todai.htm

(2004年4月13日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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