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セイコーエプソン、過去最高の中間期決算
-プリンタの滑り出し好調も、リアプロは苦戦


木村登志男代表取締役副社長

10月26日発表


 セイコーエプソン株式会社は26日、2004年度中間期決算を発表し、売上高、営業利益で過去最高の業績となったことを明らかにした。

 また、会見では、同社の木村登志男副社長が、年末商戦に向けて、プリンタが好調な滑り出しを見せていることを強調する一方、今年3月に米国で投入し、日本でも5月に発売した液晶リアプロジェクションテレビの「LIVING STATION」が、当初の予想を下回る状況で推移していることを明らかにした。


■過半数のシェアを獲得したプリンタ

 木村副社長によると、「上期のプリンタ事業は国内では苦戦したが、下期は好調な滑り出しを見せており、調査会社のGfKジャパンの調べによると、18日~24日の週では51.4%のシェアに達した。日本は、海外に比べてマルチファンクションプリンタのウエイトが低い一方、フォトプリントに対する需要が高いことから、フォトベースのマルチファンクションプリンタを4機種投入した。マルチファンクション中心の戦略が当たっていると判断している」と説明。

 今年の年末商戦は、シングルプリンタの機能を強化したキヤノンと、マルチファンクションプリンタで勝負をかけたエプソンというように両社の戦略が一線を画したが、出足はエプソンに軍配があがったことをアピールした。

9%のシェアを獲得した「PM-A870」

 GfKジャパンの調べでは、18日~24日の集計で、最上位のPM-A900が6.8%、主力となるPM-A870が9%のシェアを獲得するなど、同社の複合機だけで市場全体の25.8%のシェアを獲得しているという。

 また、中間期の決算では、棚卸し資産が、前年同期に比べて488億円増加の2,046億円。中でも、情報関連機器事業では435億円の1,403億円と増加していることが明らかにされたが、木村副社長は、「これはプリンタの新製品の在庫によるもの。昨年は新製品の立ち上げにもたついたこともあり、年末商戦向けの在庫が少なく、下期の情報関連機器の売り上げが低下するという結果につながった。今年度は、年末商戦に戦えるだけの在庫を確保しており、特別に在庫が多い状況ではない」と、商戦の本格化を前に臨戦体制が整っていることを強調した。

 同社のプリンタ事業は、上期にはアジア地域向けに低価格モデルの販売を縮小したことや、日本での市場全体の動きが前年割れで推移したというマイナス要素はあったものの、欧米でのフォト需要の立ち上がりによって上期が増収となったこと、さらに日本での下期の立ち上がりの好調ぶり、欧米でもフォトプリンタに対する需要が顕在化してきたことで、「当社の強みが生かせるようになってきた」(木村副社長)として、下期の売上計画を上方修正した。


■日米で苦戦するリアプロテレビ

57V型のリアプロ「ELS-57P1」

 一方、液晶プロジェクションテレビの「LIVING STATION」について木村副社長は、「米国では、ようやくAVスペシャリティチャネルで認知されはじめた段階。当初の計画よりも遅れており、かなり苦戦している」と説明。「月間2,000台の計画には及ばず、現在、3桁の後半にまで到達したところ。当社にとって新規事業でもあり、粘り強くやることで、それなりのポジションを確立したい」とした。

 日本での販売実績は明らかにしていないが、先ごろ、価格引き下げなどの措置をとったものの、まだその成果は表れていない。さらなるテコ入れが必要だといえそうだ。

□関連記事
【5月31日】エプソン、同社初の57V/47V型リアプロテレビを国内投入
-国内テレビ事業に参入、エプソンダイレクトでの直販を開始
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040531/epson.htm


■電子デバイス事業が大幅な増益に

 今回発表した上期決算は、過去最高の売上高、営業利益を計上する好決算となった。全社売上高は前年同期比3.9%増の6,834億円、営業利益は98.9%増の658億円、経常利益は98.4%の637億円、当期純利益は138.3%増の394億円という大幅な増益だ。

 情報関連機器事業では、シングルファンクションプリンタの数量減少や、スキャナーの出荷台数が減少したものの、マルチファンクションプリンタの出荷数量の増加や、レーザープリンタにおける消耗品需要の増加がプラスに影響。

 さらに、液晶プロジェクタがビジネス向けの低価格機へシフトするという動きがあったものの、ビジネス向けおよびホーム市場向けの数量増加が貢献。そのほか、同事業部門全体の総原価低減活動の成果もあり、売上高は前年同期比2.9%増の4,345億円、営業利益は同9.8%増の309億円となった。

 電子デバイス事業は、ディスプレイ事業において携帯電話向けSTN液晶が、モノクロパネルの事業縮小、カラーパネルが約10%に達する価格下落の影響を受けて減収。半導体事業においては、携帯電話などに採用されている画像処理用半導体の増加に支えられシステムLSIの受託生産が大幅な増収となったほか、水晶デバイス事業では携帯電話、デジタルカメラ向けの水晶振動子、水晶発信器の数量増加で増収。電子デバイス事業全体では、売上高で前年同期比4.9%増の2,207億円、営業利益は293.8%増の371億円と大幅な増益となった。

 精密機器事業は、ICハンドラの販売数量増加、眼鏡レンズの北米向け出荷数量の増加、ウォッチ事業のOEMの拡大といったことが影響し、売上高は13.6%増の438億円、営業利益は93.2%増の27億円となった。


■情報関連機器の通期見通しを上方修正

 同社では、今回の上期決算を受けて、通期見通しを修正した。同社は7月27日の時点でも修正をしているが、「今回の修正は上期の実績やコスト削減効果などを踏まえたもの」としており、前回修正に比べて、売上高はマイナス250億円の1兆5,320億円、営業利益は修正なしの1,170億円とした。

 売上高を下方修正した理由として同社では、「情報関連機器事業では売り上げ増加が期待されるものの、電子デバイス分野において、大型液晶ディスプレイの価格下落、携帯電話の市場の先行きの不透明感があるため」とした。

 実際に修正値を事業セグメントごとに見ると、情報関連機器は、売上高で、7月27日の予測に比べて180億円増となる9,760億円、営業利益で110億円増の770億円としたのに対し、電子デバイスは、売上高で430億円減の5,000億円、営業利益では90億円減の480億円とした。

 同社は、引き続きコスト低減活動を強化する一方で、三洋電機との合弁で設立した三洋エプソンイメージングデバイスで生産するアモルファスTFTを、収益性が高い中小型へとシフトすることなどで電子デバイス事業における収益性の改善を目指す。「現在、パソコンやテレビ用の大型パネルの生産に特化しているが、下期には15%を中小型とする計画をさらに前倒しして、30%にまで中小型の比率を引き上げたい」(同社)としている。

 同社では、下期の取り組みとして、インクジェットプリンタを中心とした新製品投入と強力な販売活動により、業績回復基調を確実なものとする一方、三洋エプソンイメージングデバイスの立ち上げ、総原価低減活動を推進するとしている。


□エプソンのホームページ
http://www.epson.co.jp/
□中間決算短信(連結)
http://www.epson.co.jp/osirase/2004/041026.htm
□中間配当金の増配および期末配当予想の修正に関するお知らせ
http://www.epson.co.jp/osirase/2004/041026_2.htm

(2004年10月26日)

[Reported by 大河原克行]


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