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松下電器産業株式会社は11日、2005年度の経営方針説明会を開催し、中村邦夫社長が「2005年は躍進21計画を推進する上で、まさに正念場になる一年だ」と語る一方、「より速く、より強く」を今年のスローガンに掲げ、2006年度の営業利益率5%以上、同社独自の指標である連結CCMにおいて、ゼロ以上という目標達成に向けた体質強化の一年であることを訴えた。
毎年1月10日は、創業者である松下幸之助氏の社長時代から伝統的に続いている1年の方針を発表する、同社の元日ともいえる日。この日は、全社員に対して方針が発表された後、報道関係者をはじめとする外部にも内容が公表される。今年の場合は10日が祝日だったことから、11日の発表となった。
■ 躍進21の初年度に高い自己評価 まず、中村邦夫社長は、2001年度からの「創生21」計画に続き、2004年度から実施している中期経営計画「躍進21」の初年度の取り組みを総括し、「各ドメインごとの自立した構造改革が進むとともに、強い商品を連打できたこと、松下電器と松下電工のコラボレーションによる製品投入、重複事業の最適化などを実現することができた」とする一方、「しかし、下期になって、原油高、材料高、円高のトリプル高が影響し、厳しい状況になった」と市況の変化に懸念を示した。 こうした状況を受けて、2005年度は「厳しい状況の中でも、しっかりと足を地につけた上で、事業の成長を図りたい。そのためには、技術立社、知財立社を目指すとともに、IT革新、生産革新、コスト低減活動による現場力の強化、Panasonic Wayとよぶグローバルエクセレンスを目指した取り組みに力を注ぐ」とした。
■ 2004年度の3つの成果 中村社長は2004年度の取り組みとしては、先にも触れたように、「構造改革、強い商品の連打、松下電器と松下電工のコラボレーションが成果につながった」と話す。 構造改革では、躍進21計画で掲げた当初目標を大幅に前倒ししながら、ドメインごとに自立した取り組みを実施したことを示し、具体的な事例として、パナソニックファクトリーソリューションズ(PFSC)では、2社の統合による機種数半減、拠点再編のほか、キット化、在庫レス化、内部化の生産革新を実施するなどの構造改革を実施。30%のシェアを奪回し、赤字体質の脱却に成功するといった成果を収めたという。 強い商品の連打としては、オリンピック需要によるデジタル家電機器の急成長に加えて、V商品が好調な実績を示し、上期決算が好調であったこと、国内においては、同社系列店であるナショナルショップが高い成長を維持するといった動きが見られている。 また、松下電器、松下電工のコラボレーションでは、デザイン、ブランド、ショールームという3つの観点からのコラボレーションを実施したのに加え、第1弾となる「コラボV商品」を発表。さらに、重複する事業や人員、流通体制に関しては、最適化を行ない、4,200人の社員を再配置。さらに、電材、設備、アプライアンス分野で4,000億円規模にのぼる再編を行なったという。2005年以降には、売上高で1,000億円以上のコラボレーション効果が発揮できるものと見込んでいる。
■ 2005年は逆風下でのスタートに 松下電器では、電機業界の世界需要を、2005年には前年比1%減のマイナス成長になると予測している。過去3年間にわたる成長基調から、一転して急降下するという厳しい見方をしているのだ。 「2005年は逆風下のスタートを余儀なくされる。その逆風下のなかで、その流れに押されるのか、それとも成長するのかは、経営体質の強化と、引き続き強い商品が連打できるかが左右することになる。躍進21で掲げた、2006年度への営業利益率5%、CCMゼロ以上を達成する上では、まさに正念場の1年になる」と厳しい姿勢を見せている。 その上で、2005年度には、営業利益率で4%以上、CCMでは、各ドメインごとにゼロ以上を目指し、2006年の躍進21計画の最終年度につなげたい考えだ。 成長戦略の加速としては、技術立社および知財立社として、他社に真似ができないブラックボックス技術による差異化、これをベースにしたV商品の創出。そして、業績に直結する研究開発の促進などを進める。2005年は、67件のV商品を市場投入する計画で、同商品だけで売上高1兆5,000億円を目指す。 また、「今後10~20年後の世界は、突然登場した新たな商品によって構成されるのではなく、いま取り組んでいる商品の延長線上に創出されると考えており、いまの事業を進化させ、それに付加を与えることが必要」と前置きし、「たとえば、デジカメで撮影した画像を、SDカードでブリッジして、100インチ以上のプラズマテレビやモバイル機器で閲覧することで、ユビキタス環境が実現する」といった事例を示した。 この考え方に基づき、戦略事業に対しては集中的な投資を行なう姿勢を示し、半導体では魚津工場に1,300億円、PDPでは新規に竣工する尼崎工場に950億円を投資。さらに、テレビ用の液晶パネルでは日立製作所、東芝と合同で設立するIPSアルファテクノロジを1月からスタートすることなどを強調した。 PDPの生産を行なう尼崎工場では、今年11月の稼動を目指しており、これにより全社で年間480万台の生産体制と、パネル、半導体からセットまで一貫生産体制を実現するとした。 一方、海外戦略については、引き続き「成長のエンジン」と位置づけ、全社収益の60%以上を海外で確保する計画。とくに、中国に関しては、1兆円プロジェクトを実施しており、高付加価値製品の展開、販売網の拡充と実需促進体制の強化などによって、7,000万人と呼ばれる富裕層をターゲットにする予定。1兆円プロジェクトとは、2005年には中国生産で1兆円、2006年には中国国内販売で1兆円を目指す計画だという。なお、同社では2005年を海外事業飛躍の年と位置づけている。
■ 経営は分権、ITは集中の方針 現場力の強化としては、あらゆる活動成果を数値化するとともに、IT革新の加速を掲げ、「経営ITアーキテクチャー」の推進に取り組む計画だ。 「経営は分権、ITは集中」の方針のもと、ITを駆使した徹底管理と「見える化」の実現によって、現場の課題発見、解決を早期化する考えだ。また、生産革新では、2001年5月から全社規模で取り組んできたセル生産をさらに進化させる「ネクスト・セル生産プロジェクト」を実施。工場在庫の半減、モデル工場化の推進を行なう。 「まだまだ労働生産性が低いと感じている。この課題解決のためにネクスト・セル追求する。漫然とやっていても成果はでない。材料在庫、仕掛、商品在庫ゼロを目指す。これにより、海外の生産拠点とも互して戦える体質を作る」(中村社長)と厳しい姿勢で取り組む。 同社では、コストバスターズの名称で、コスト削減活動を展開しているが、成功事例の横展開や、数値化の推進を進め、2005年には年間600億円、2006年にも同様に600億円規模の「ムダとり」を行なうという。
■ Panasonic Wayを掲げる もうひとつ、今回の方針で同社が掲げたのが、Panasonic Wayである。これまで組織のフラット&ウェブ化に向けて、部課制度の廃止などに積極的に取り組んできたが、この組織を有効に機能させるためには、自らを変革、レベルアップしていく社員一人一人の意識改革と行動が必要として、事業家精神を発揮でき、多様性が生きる風土を実現するという。 そのほか、G&Gリスクマネジメント委員会の設置によるリスクマネジメントの実践、2004年の年間配当15円、上限1,000億円での自己株取得などの株主価値重視の経営、連結総資産の圧縮。「スーパー正直」の考え方をベースとした企業の社会的責任への取り組みなどを実践していく考えを示した。 連結総資産の圧縮では、中村社長が就任時に1兆円の資産圧縮目標を掲げたが、2005年4月期には、連結総資産は6兆7,500億円となる見込みで、2001年3月期に比べて、1兆4,000億円の圧縮を実現することになる。 同社では、2005年度の経営スローガンとして、「より速く、より強く」を掲げた。「2005年は躍進21計画の達成の鍵を握る年。ここれを乗り越えればグローバルエクセレンスへの道も見えてくる。逆風を跳ね返し、たくましく成長し続けるという思いを込めた」と説明している。 実は、このスローガンの横に、「躍進21 一人ひとりが創業者」という文字が書かれている。「一人ひとりが創業者」という言葉は、2003年の同社スローガン。この言葉をあえて表記したところに創業者精神を改めて社内に植えつけようとしている狙いが感じられた。
■ プラズマ事業の収益性に質問が飛ぶ 質疑応答では、松下興産の株式売却報道についての質問があり、「当社は松下興産の少数株主であり、主体性を持つ企業ではない。松下興産自身が判断すること」と話す一方、「創業家と経営は分離しており、松下家は尊敬しているが、経営に関与するものではない」とも語った。 また、当日報道された中村修二氏と日亜化学との青色LED発明対価訴訟の和解については、「当初の200億円という額には驚愕したが、和解という道筋にいたったのは極めて喜ばしい。ただ、8億4,400万円という和解金額が妥当なものかどうかは、まだよくわからないのでコメントを避けたい」とした。 一方、注目が集まったのはPDPに対する収益性の問題。価格下落が激しいなかで、いかに利益を確保するかという点に何度か質問が飛んだ。これに対して中村社長は、「PDP事業では絶対に負けない。画質はもちろんのこと、画作りや価格でも負けない。徹底したコスト力の強化を図り、利益を出していく。プラズマは、2005年からしっかりと儲かっていくことになる」とし、「薄型テレビは、ブラックボックス技術を持っていないと競争ができない分野であり、組み立てだけでやっているメーカーはこれから厳しくなるだろう」とした。 また、「中国も販売だけ膨張するのではなく、収益性もある。半導体事業に関しても、2004年後半は厳しかったが、2005年には急速に立ち上がるだろう。半導体は社内の商品に利用する頭脳、心臓ともいえる部分で、単に半導体事業の収益性だけでは判断ではない重要なものでもある」とした。
さらに、「携帯電話は、欧州、中国において、新製品の投入が遅れ収益性が悪化したが、社内の開発体制の見直しを行なった。2004年は金融政引き締めによる見直しが行なわれたことによって、流通段階に中国市場全体で5,000万を超える在庫があったことがわかるなど、当初の見込みよりもはるかに大きい影響を各社に及ぼした。だが2005年からは収益にも貢献するだろう」とした。
□松下電器のホームページ (2005年1月12日) [Reported by 大河原克行]
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