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【11月30日】 【11月29日】 【11月28日】 |
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ソニーは27日、2004年度第3四半期(2004年10~12月)連結決算を発表した。売上高は前年同期比7.5%減の2兆1,482億円、営業利益は同13.0%減の1,382億円、税引前利益は同5.4%減の1,492億円、当期純利益は同55.3%増の1,438億円。同社は1月20日の段階で下方修正を発表しており、それに準じた内容となった。 営業利益は、「スパイダーマン2」の好調ぶりに支えられた映画部門、携帯電話事業が好調なソニー・エリクソンが実績をあげたものの、主力のエレクトロニクス部門や、新型プレイステーション2の発売を前に、生産数量と在庫を絞り込んだゲーム部門が減益となったことが大きく影響している。 エレクトロニクス部門は、売上高は前年同期比0.9%減の1兆5,108億円、営業利益は23.3%減の494億円。フラットディスプレイテレビや、デジタルカメラが全世界で好調な売れ行きを見せたのに加え、液晶リアプロジェクションテレビが米国市場で好調な実績をあげたが、ブラウン管テレビや携帯オーディオプレーヤー、パソコンなどが不調。 さらに、フラットテレビの価格下落や、カムコーダの欧州地区における価格下落の影響が、利益の圧迫につながったほか、構造改革費用を104億円計上したことなどが影響して、減収減益となった。 しかし、ソニー・エリクソンは、売上高で前年同期比40%増の2,727億円、税引前利益で204%増となる190億円と、7四半期連続で過去最高の実績を上回る好調ぶり。メガピクセルカメラを搭載したGMS端末や、第3世代携帯電話端末の人気が貢献している。 VAIOに関しては、「売り上げは減少したが、付加価値戦略へのシフトによって増益になった」(井原勝美執行役副社長)としたものの、上半期の国内パソコンが当初想定した出荷台数に達しなかったことから、年間出荷計画を下方修正すると発表した。 当初の計画では、全世界で370万台としていたものを330万台へ修正。日本では120万台から100万台へ、海外は250万台から230万台とした。また、デスクトップパソコンは、130万台から90万台へ、ノートパソコンは240万台と据え置きにした。 またデジタルカメラは1,500万台から1,400万台へ、DVDレコーダは200万台から170万台へ下方修正。DVDレコーダーは、米国での不振が影響している。
その一方で、一部製品で上方修正を発表した。これによると、LCDテレビが当初計画の70万台から100万台へ、プロジェクションテレビは100万台から125万台とした。プロジェクションテレビのうち、液晶リアプロジェクションテレビについては、49万台から70万台に上方修正した。また、ブラウン管テレビも、南米地区での根強い需要があることから940万台から970万台に上方修正している。 ゲーム部門に関しては、売上高が前年同期比23.0%減の2,826億円、営業利益は36.8%減の446億円となった。新型プレイステーション 2の発売を控えて、日米欧のすべての地域で販売数量が減少したこと、さらに第2四半期以降に実施した価格引下げ措置が影響。
グランツーリスモ4などの自社ブランドでのヒットソフトによる増収効果はあったものの、ハードの減少をカバーすることができなかった。さらに、次世代ゲーム機の開発に向けたR&D費用の負担も影響した。
音楽部門は、ソニーBMGへの事業移管の影響があり、売上高では前年同期比60.1%減の563億円、営業利益では25.6%減の120億円となったが、ソニーBMGは売上高1,582億円、営業利益で37億円となった。ソニーBMGでは、176億円の構造改革費用を計上しており、これが営業利益を抑える結果となった。 映画部門は、「スパイダーマン2」のDVDおよびVHSソフトが第3四半期だけで2,800万本を販売。これが下支えとなり、売上高は12.1%増の2,031億円、営業利益は3.3倍となる186億円となった。 なお、金融部門は、ソニー生命の増収により、収入で5.5%増の1450億円、営業利益で9.8%増の139億円と増収増益となった。
■ ソニーは音楽のコーデックに関して、戦略的な誤りがあった また同社では、1月20日に2004年の連結業績見通しの下方修正を発表しているが、そこから設備投資額などを増額したことを新たに発表。井原副社長は、「ソニーの2005年の収益性の回復は、次の4つのポイントに集約できる」と語った。 一つは、ディスプレイビジネスの強化。井原副社長は「CRTの時代にはソニーはナンバーワンを維持し、高い収益性を維持してきた。しかし、フラットテレビの時代になり収益性が悪化してきている。コスト競争力もなくなってきている。それは、CRTでは独自の技術を持ち、他社と差異化できる製品を市場に投入できたが、フラットテレビになり、ソニーの強みを発揮できるものがなくなったのが要因。フラットテレビでは、ソニーの内製率は一桁であり、一台あたりの収益性が大きく異なる。ソニーがコスト競争力を発揮し、差異化できる製品を投入するためにもキーデバイスの内製化が必要だ」とした。 すでに同社では、液晶リアプロジェクションテレビで、SXRDという独自技術を採用。さらに、液晶テレビでも、年末商戦向けに投入した製品で、独自のLEDバックライト技術である「トリルミナス」や独自のオーディオ技術のS-MASTERを組み込むなど、独自技術による他社テレビ製品との差異化をすすめている。「これが評価を得始めている」(井原副社長)という段階だ。 「春商戦向けには、中小型のラインアップを強化し、ボリュームゾーンでも、差異化できる製品を用意したい」とした。なお、プラズマテレビに関しては、「引き続き製品投入は続ける」(井原副社長)としたものの、「当社の特徴が発揮できるのはリアプロジェクションテレビと液晶テレビであり、投資はここに集中させる」と話した。 今年春以降には、サムスンとの合弁による液晶パネル工場のSLCDが稼動するが、「市場の動向にあわせて、ソニーが求めるパネルサイズを切る出すことができるなど柔軟な体制を整えている。さらに、基本回路部分もシャーシを統一し、多くのサイズに利用できるようにしている。市場の動向にあわせてフレキシブルな製品投入が可能になるという強みが発揮できる」と強調。「2005年度中には黒字化の目処をつけたい」(湯原執行役常務)とした。 二つめが、デジタルイメージングビジネスの強化である。昨年投入したHD対応カムコーダ戦略の加速とともに、カムコーダをテープメディアからDVDへと移行させる戦略を、先行している米国に加えて、日本、欧州へも展開。さらに、デジカメも高画質や使い勝手のよさを追求するとともに、世界市場での事業強化、デジカメとカムコーダの融合製品の展開などに力を注ぐという。 三つめが、昨年11月設立したコネクトカンパニーによる携帯音楽プレーヤー事業の強化。「iPodに押されて苦境に陥っているが、この分野はソニーが作ってきた分野であり、さすがソニーと言われる製品とサービスを提供したい。携帯音楽プレーヤーは、ネットワークウォークマンが主流となるが、いろいろな端末の形が考えられ、ここにソニーのクリエイティビティを生かしたい」と井原副社長は意欲を見せる。 また、井原副社長は、この分野に向けて、「ソニーは音楽のコーデックに関して、戦略的な誤りがあったと思っている」と語り、「守るべき技術と、採用すべきオープンな技術をどう選択するかという点で混乱があった。パソコンの世界ではMP3が多くのユーザーが利用しているのにも関わらず、なぜ、ソニーはこれを採用しないのか、というのはユーザーの視点からみれば当然の問題提起だが、これをやっていなかった反省がある。結果として、ビジネスにネガティブなインパクトを与えた。もっとユーザーの目線に立ち、採用すべきオープンな技術と、守るべき独自の技術を見極めることが必要だ」とした。 四つめのポイントが半導体・キーデバイスへの投資である。「他社との差異化を図るには、カムコーダーや液晶テレビなどに使用する半導体をもつことと、キーデバイスを持つことが不可欠である。これが差異化とともに、コストダウンにもつながり、価格競争力を持つことにも直結する。この部分の投資を強化したい」とした。
今回の決算会見は、一部で評価が高い製品が登場し始めていることを訴えつつも、依然としてソニーが収益性の悪化に苦しむ様子が伝わってくる内容となった。果たして、2005年度は差異化できる製品の投入と、それを支えるキーデバイスの開発へとつなげることができるのか。そして、2006年度を最終年度とした中期経営計画TR60で掲げた営業利益率10%達成に向けた布石は打てているのか。その点では不信感を完全に払拭できるものではなかったといえるだろう。
□ソニーのホームページ (2005年1月27日) [Reported by 大河原克行]
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