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パイオニア、50型フルHDのPDPを来夏までに発売
-DVDレコーダは東大研が協力。Blu-rayドライブは今夏


3月23日発表


パイオニア株式会社取締役社長
伊藤周男氏

 パイオニア株式会社は23日、都内で企業説明会を開催し、同社の取締役社長伊藤周男氏が来期に向けての方針を説明した。

 冒頭に2005年3月期の連結業績について、「売り上げ、利益ともに、大幅な下方修正。純利益では、9期ぶりの赤字になる見通し」を示した。

 その原因は、「想定以上の価格の下落、競合の激化、過剰在庫の費用などがかさんだ。事業別ではDVDレコーダや、PDPの外販ビジネス、カーエレクトロニクス事業の不振」とする。

 その立て直し策として、「ブランドポジショニングとして、従来より『付加価値戦略』をとり、『憧れ』を狙ってきた。しかし、急激な価格低下による、商品のコモンディティ化によって、付加価値の差別化が難しい状況になった。個性豊かな、パイニアらしい商品を導入するためには、販売チャンネル施策も重要。市場との接点をより近くするような、取り組みを行なっていく」と説明。

 経営の効率化に向けて、経営効率委員会を設置。人事政策として、派遣社員の削減、海外駐在員の見直しなどを行ない、全体の人員を削減する。2004年12月末現在、連結の従業員が39,000人だが、そこから約2,000人程度を削減する予定。

 生産体制についても見直し、世界中にある40拠点を、統廃合を含む生産拠点の集約化により、30拠点程度にすることを目標にする。なお、人員削減や拠点の統廃合については「海外が中心になる」とした。

 またグローバルSCMを導入したものの、導入後間もないということでうまく機能せず、結果的に過剰在庫を抱えることになっているという。現在の計画では、今期期末の在庫回転日数は53日と予想されているが、来期は45日以下にすることを目標に据えた。

 開発体制も、開発パワーや、開発費の負担を軽減するために、モデル数を10%程度削減。モデル数を削減することに伴い、部品点数を削減するなど、大幅な見直しが行なわれる。

 これらの施策により現時点で、300億円程度の効果が期待できると同社では見ている。しかし実行するためには、一時的に費用が発生するため、300億円が来期に即プラスになるというわけではない。

 同社では、来期を「建て直しの時期」とし、「新たな成長軌道に乗るべく、全社一丸となって取り組む」という。さらに、「成長路線に戻すための基礎固めの時期と考えているので、数字的にはあまり期待しないでほしい。ホームエレクトロニクスは、まだ厳しい状況は1年は続く。黒字化できますとはいえない。黒字化への基礎固めをしたい」と語った。

 同社は、'97年に「2005ビジョン」を発表。数値目標として、2005年に連結売上げ1兆2,000億円を掲げた。しかし、「前期までは達成可能かと考えていたが、今期はこんな状況になったので、旗を降ろさざるを得ないと考えている」と厳しい状況だ。


■ フルHDのPDPは50インチ。来年のワールドカップまでに投入

 同社の事業の柱であるPDPについては、「現在、SDとHDパネルは均衡しているが、世界的なHD放送の流れの中で、高精細パネルの比重はますます高くなっていく」と市場を分析。

 「今後も、付加価値の高い、高精細パネルに特化した商品展開の方針を継続する。この市場(XGA以上)でのNo.1を目指す」とした。

 コスト削減策として、「シングルスキャン」を次世代モデルから採用。さらに、昨年NECから買収したPDPの技術を統合した、新モジュールも早期に投入することで、歩留まりの向上と、部品の共通化を推進する。さらに、部品点数の削減によりコストダウンを進めていくという。

 製造ラインを専用ライン化することで、切り替えロスをなくすほか、現在43インチ、42インチと分かれているパネルを42インチに統一し、3面取りを採用。コストを削減する。加えて、海外組み立てでも、現地での部品調達率を向上させるなどにより、年率30%のコストダウンを目指す。

 また、「フラットパネルディスプレイでの消費電力について誤解があるのではないか?」とし、「液晶よりPDPの方が若干消費電力が多いが、43型の「PDP-435SX」は306W、他社の45型液晶は319Wで、パイオニアのPDPの省エネ性能は、すでに液晶と変わりないレベルに達している」とアピール。今後とも、優位性を維持していきたいとした。

 液晶と比較して、フルHD化が遅れているPDPだが、「現在、フルHD対応を開発中。現時点では、導入時期や販売価格は詳しく話せないが、今年10月のCEATECや、年明けのCESには出展したい。遅くとも、2006年のドイツで開催されるワールドカップは、フルスペックのプラズマテレビで楽しんでいただきたい」と語り、製品化が近いことを強調した。

 高解像度化は、画面サイズが大きくなるほど容易になるが「50インチ以上、1,920×1,080ドットを予定しているが、なんとか50インチで実現したい」とした。さらに、「NHKなどでHDのテストをやっているのは全部50インチ。これ以下のサイズは意味がないと考えている。50インチを中心にやっていく」(プラズマディスプレイ ビジネス カンパニー プレジデント五月女勝氏)という。

プラズマディスプレイ ビジネス カンパニー プレジデント
五月女勝氏

 フルHD以外でも、「夏からシングルスキャの画期的な商品を出す。ハッ!とするようなすばらしいものをご提案できると確信している」(五月女勝氏)と自信を見せた。

 新聞などで、「プラズマ新ライン計画を凍結」と報じられた件については、「そもそも計画がないのに凍結と書かれて困った。実際には、生産の投資で、新しい工場を作るというのは今のところ考えていない。現在のラインを効率を上げることで、能力を上げる。現時110~20万台の生産能力をもっているが、生産効率を上げることで、140万の生産能力にはなると考えている。これについては、そんなに大きな投資にはならない。PDPも含めた全体の投資は、今期は700億円だが、来期は通常通り400~500億円の間になる」とした。

 厳しくなっている外販は「昨年からPDPの外販がかなり落ちた。しかしここに来て、XGAを中心にやってきた点が、評価されてきた。色々なところから話が来ている。もちろん、薔薇色で売れるとは考えていない。大変だと思うが、外販事業は伸びるとは考えている。ただ、爆発的に行くかどうかはまだ疑問がある。信頼関係を早く築くことを中心にやっていきたい。100万台の25%ぐらいは外販をやりたいと考えている」(五月女勝氏)と、明るい兆しを説明した。

 また、欧米ではLGやSamsungの安いPDPがシェアを伸ばしているが、「欧米でもHD放送が増え、安くても画質が悪いと売れなくなっている。LGやSamsungは安いが、ほとんどがVGAパネルなので、売れなくなっていると販売店から聞いている。市場は圧倒的にHDに向かっているが、LGやSamsungは追いつけていない」と、画質での優位性が高いことを強調した。


■ 新しいアイディアを採用したDVDレコーダを投入。Blu-rayドライブは今夏出荷

 ホームエレクトロニクス事業については、「今期は、非常に厳しい状況。特に、DVDレコーダ事業は低価格化が激しい」(伊藤周男氏)という。

 来期からは、「開発期間を30%程度短縮。世界同時の年2回の新製品導入を実現する。在庫削減、生産リードタイムの短縮の実現、部品の共有化の徹底で、すでに原価の大幅な削減効果が現れてるが、さらに取り組みを一層強化する」。

 この春に導入予定のレコーダにも言及。「ユーザーのニーズを分析して、『録画』、『操作性』、『ダビング』に関する新しいアイディアを採用する。特に、操作性に関しては、東京大学の先端科学技術研究センターの協力のもと開発を進めている」ことが明らかにされた。

 「既に、販売店への紹介を進めているが、非常に高い評価をいただいている」という。なお、DVDレコーダ用ドライブのOEM出荷は今期120万台、来期は240万台を見込む。さらに、スリムドライブ技術による、新たな展開も予定されている。

 AVシステム事業については「損益悪化を招いているが、パイオニアにとって、オーディオは家業・ブランドも含めて、大きな基幹であり、強みでもある」とし、「付加価値戦略として、DVDレコーダ搭載モデルなど高付加価値商品を他社に先駆けて投入していく。こういう商品を売ることができる販売戦略やチャンネルを構築していきたい」との展望を語った。

 その一方でコスト削減についても、「不採算モデルからの撤退と、開発機種の絞込み。特にシステム商品を中心に進めていきたい」と強化する方針だ。

 PC用DVDドライブの世界市場は、今期は5,600万台といわれているが、「来期も30%ほど伸びて、7,400万台と引き続きの成長が見込まれている」という。「来期は、スリムドライブを中心に、従来の顧客に加え、国内外の大手PCメーカーに広げる。さらに、アフターマーケット向けの販売策を強化。これらにより、来期の販売台数は1,000万台の大台にのる予定」。

 さらに、「PC用Blu-rayドライブについても、今年の夏までには市場導入を行なう予定。来年以降の本格普及に向け、とにかく他社に先駆けて、いち早く市場に商品を出すを考えている」と積極的に取り組む姿勢だ。


■ カーナビを中国で発売。カーCDプレーヤーではシェアNo.1を維持

 カーナビについては、「日本市場は、今後安定成長期に変わるが、今後の成長性は海外市場。特に北米市場は、急速な伸びが予想される。2007年3月期には、販売台数100万台を達成したい」と語り、「来春には、中国市場への導入を予定している。地図の作成に向けて、全力を上げている」という。

 「カーオーディオのアフターマーケット市場は、CDプレーヤーが中心になっているが、欧米では頭打ちになっている。しかし、アジアや中南米の新興市場の成長により全世界の台数を着実に押し上げる。カーCDプレヤーは、事業全体の基礎をなすもので、その他の波及効果も絶大。引き続き、No.1シェアの維持拡大を目指す。販売台数は2008年3月期で、今期の30%を目標とする」とした。

 さらに、「今までのオーディオ、ビジュアル、ナビゲーションに、車内外の情報を融合させる。同時に、iPodなどのモバイル環境との親和性も考慮した、車内空間を提案していく」という。

 加えて、「他社とのコラボレーションも積極的に進めていく。今期の売り上げに占めるOEMビジネスは36%程度となっているが、2008年3月期には40%程度になっていると見ている」と、他社との連携も強化する。


□パイオニアのホームページ
http://www.pioneer.co.jp/

(2005年3月23日)

[AV Watch編集部/furukawa@impress.co.jp]


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