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ソニー、2004年度連結決算を発表
-エレクトロニクス事業の赤字が拡大


井原勝美執行役副社長兼グループCSO&CFO

4月27日発表


 ソニー株式会社は、2004年度連結決算を発表した。

2004年度連結業績

 出井会長-安藤社長体制の最後の通信簿となる今回の連結業績は、売上高が前年比3%減の7兆1,596億円、営業利益は26%増の1,139億円、税引前利益は9.1%増の1,572億円、当期純利益は81.7%増の1,638億円の減収増益となった。

 井原勝美執行役副社長兼グループCSO&CFOは、「売上高のマイナスは、海外音楽事業の再編によって、ソニーBMGに移行した分が、持ち分法による売り上げ計上となったこと、さらに円高による差益分があった。これを踏まえれば、実力ベースでは、2003年度実績を維持したと考えている」と説明したが、主力となるエレクトロニクス部門の低迷ぶりが依然として続いており、「率直に言えば、非常に残念な結果」とした。


■ エレクトロニクスの赤字が拡大

湯原隆男執行役常務

 エレクトロニクス部門は、売上高が前年比0.4%減の5兆216億円、営業損失はマイナス343億円の赤字。前年に比べて赤字幅を275億円も増加させた。

 「フラットパネルテレビ、デジタルスチルカメラ、液晶リアプロジェクションテレビは増収となったが、ブラウン管テレビ、携帯型オーディオが減収。また、価格下落による売上原価率の悪化と、818億円の構造改革費用を計上したことが減益要因」(湯原隆男執行役常務)とした。

 エレクトロニクス部門のなかで、AV/IT関連を合計すると、売上高が前年比1%減の3兆3,671億円、営業利益は前年比81%減の205億円となった。ビデオ事業は、売上高で9%増の1兆441億円を計上したものの、DVDレコーダーが価格下落の影響や、米国市場での出荷台数が予想以上に伸びなかったこと、収益源であるカムコーダーが欧州市場において価格下落の影響を受けたことが影響。前年に比べて営業利益が半減した。

 また、テレビ事業も、「昨年後半から存在感がある製品を投入できている」(井原副社長)とするように、売上高は4%増の9,651億円となったものの、営業損失はマイナス257億円の赤字。「固定費の削減はやってきたが、これが市場の価格下落に追いつかず、限界利益を超えてしまうことの繰り返し。もう一度、ソニーのエレクトロニクス部門のトップラインを引き上げ、オペレーション固定費の削減とともに、製品のコスト競争力をあげていくことが必要」とした。

エレクトロニクスは赤字拡大 カテゴリ別の売上高/営業利益

 井原副社長によると、液晶テレビは、今年2月に発売したハッピーベガが好調であることや、部品点数を大幅に減らし、飛躍的にコスト削減を図ったテレビ新製品の投入、さらに4月19日から生産を開始したS-LCDにおける液晶パネルのコスト削減効果が見込まれ、「2005年の下期からはこれらの効果が数字に反映されるだろう」とした。

 また、オーディオ事業は、携帯オーディオの不振で、前年比16%減の5,723億円、営業損失はマイナス57億円の赤字となった。その一方で、パソコンを中心とする情報・通信事業は、売上高は7%減の7,856億円としたものの、オペレーション体制の改善と高付加価値製品に絞り込んだことで前年の赤字から一転して124億円の黒字となった。

 エレクトロニクス部門における地域別売上高は、日本がフラットテレビの増収の一方で、バイオや携帯電話の減収要素があり10%減、米国では液晶リアプロジェクションテレビやデジカメの好調に支えられ、現地通貨ベースでは1%増(決算上は4%減)、欧州はフラットテレビ、デジカメの増収で激しい価格競争のなかで前年並みを維持。その他地域では、デジカメ、パソコン用ドライブ、バイオが好調で9%増となった。

 なお、主要製品の出荷実績は以下の通り。

 HDD&フラッシュ内蔵型携帯オーディオが85万台(前年との比較なし)、ビデオカメラが735万台(前年比11.4%増)、デジカメが1,400万台(前年比40%増)、DVDビデオプレーヤーが950万台(前年比11.8%増)、DVDレコーダーが170万台(前年比161.5%増)、LCDテレビが100万台(前年比132.6%増)、PDPテレビが30万台(前年比42.9%増)、プロジェクションテレビが120万台(前年比30.4%増)、そのうち液晶リアプロジェクションテレビが65万台(前年比160%増)となった。

 パソコンのバイオは、330万台(前年比3.1%増)で、そのうちデスクトップが90万台(前年比30.8%減)、ノートパソコンが240万台(前年比26.3%増)。また、国内が100万台(前年比9.1%減)、海外が230万台(前年比9.5%増)となった。


■ PSP出荷台数は297万台。2005年度は1,200万台を目指す

 ゲーム部門は、売上高が6.5%減の7,298億円、営業利益が36.1%減の432億円。PS2用ソフトが日米欧ともに増加し、過去最高の売り上げとなったものの、PS2本体が日米欧で販売数量が減少したことと、戦略的な価格引き下げによって減収。また、プレイステーション・ポータブル(PSP)の立ち上げ費用の影響が減益につながった。

 しかし、PSPが、昨年12月の国内での発売に続き、3月には米国での発売が開始され、両市場ともに好調に推移。3月末までの累計出荷は国内144万台、北米153万台の合計297万台に到達。ソフトも570万本の実績に達した。5月からは韓国、台湾、香港で発売、9月には欧州での発売もあることから、「2005年度は、PSPが、年間を通じて収益に貢献できる」(井原執行役副社長)と、今後の増収を計画している。2005年度のプレイステーション・ポータブルの出荷計画は1,200万台で、PS2と同数を見込んでいる。

ゲームはPSPの立ち上げ費用などが響き減益に PSPは2005年度1,200万台出荷を目指す


■ 映画部門はスパイダーマンが牽引

 音楽部門は、売上高が43.4%減の2,491億円、営業利益は前年の60億円の赤字から88億円の黒字へと転換した。

 減収は、ソニー・ミュージックエンターテインメントの音楽制作事業がソニーBMGに移管したことが大きく影響。「その影響を勘案すれば、前年並みの実績」(湯原執行役常務)。一方で、日本における売上げ増加や原価率改善により営業利益は黒字となった。「日本のソニー・ミュージックエンターテインメントは7%の増収。オレンジレンジが273万枚の実績となるなど、国内マーケットシェアは暦年ベースで22%」という。なお、ソニーBMGの2004年8月から今年3月までの売上高は3,421億円、税引前損益はマイナス56億円の赤字となっている。

 映画部門は、売上高が前年比3.0%減の7,337億円となったものの、営業利益は81.4%増の639億円。営業利益率は前年の4.7%から8.7%となり、ソニー全体の収益増加を支えた。スパイダーマン2の爆発的なヒットが大きく影響。さらに、DVDおよびVHSソフトの売り上げの増加、映画のテレビ向け配給の増加が貢献した。

音楽部門の売り上げ/営業利益 映画部門は引き続き好調

 金融部門は、金融ビジネス収入が5.6%減の5,606億円、営業利益は0.6%増の555億円となった。


■ 2005年度も「厳しい環境が続く」

2005年度の業績予測

 同社では、2005年度の業績見通しとして、売上高で4%増の7兆4,500億円、営業利益で40%増の1,600億円、税引前利益が8%増の1,700億円、当期純利益は51%減の800億円。

 実は、本業の儲けを示すといわれる営業利益が大幅な改善をしているが、このなかにはソニー厚生年金基金の代行返上分600億円が含まれており、実質的には減益傾向という厳しい予想であることがわかる。

 「エレクトロニクス部門については、フラットテレビ、リアプロジェクションテレビで増収見込むほか、構造改革の成果が一部で出ている。しかし、価格下落、円高などの影響を受けて、利益を伸ばせる体質にはなっていない。特定の部門や、特定の地域での効果に留まっており、これがソニー全社を引っ張っていくということには至っていない。構造改革費用が減少する分だけ営業利益に貢献するが、まだ厳しい環境は続く」としている。

 また、ゲーム部門も、PSPが比較的順調であるものの、次世代プレイステーションへの研究開発投資もあり、利益はほぼ横這い。映画部門は、MGMの持つライブラリーのDVDビジネスが期待できるが、2004年度のスパイダーマン2の収入をカバーできずに減益の予想を立てているという。

 主要製品の2005年度の出荷計画は以下の通り。

 HDD&フラッシュ内蔵型携帯オーディオが450万台(前年比429.4%増)、ビデオカメラが750万台(前年比2.0%増)、デジカメが1,500万台(前年比7.1%増)、DVDビデオプレーヤーが850万台(前年比10.5%減)、DVDレコーダーが270万台(前年比58.8%増)、液晶テレビが300万台(前年比200%増)、PDPテレビが15万台(前年比50%減)、プロジェクションテレビが160万台(前年比33.3%増)、そのうち液晶リアプロジェクションテレビが140万台(前年比115.4%増)となった。

 バイオは、370万台(前年比12.1%増)。そのうちデスクトップが90万台(前年並)、ノートパソコンが280万台(前年比16.7%増)。国内100万台(前年並)、海外270万台(前年比17.4%増)。

 今回の決算でも、残念ながらエレクトロニクス部門の回復感を得ることはできなかった。むしろ、2004年度は同部門の赤字幅を拡大させており、早期の体質改善が必要なことを裏付ける結果となったともいえる。2005年度の完全回復は難しいとする指摘があるなかで、どこまでエレクトロニクス部門の回復を推進できるかが、今年度の鍵といえるだろう。

 なお、次世代ディスクを巡る動きに関しては、「東芝と話し合いを進めていることは事実である。交渉中の内容であるため、現時点ではこれ以上いえないが、Blu-rayのビジネスは、ソニーがこれまで多くの投資をしてきたこと、多くの特許を所有していることからも、大事なこれからのビジネスであると認識している。この世代では、いまよりもソニーの収益性を高めることができる」とした。

 また、中国の影響については、「大変心配しており、バイオのウェブサイトへの集中攻撃で、閲覧できなくなり、パソコンのビジネスを止めることになるといった問題も発生した。さらに店頭では日系ブランドの製品を置くと、破壊行為の対象となるために展示を取りやめたという例もあり、ビジネスにも影響が出ている。2005年度第1四半期では、当初計画の約25%程度のリスクがあると見込んでおり、それを折り込んで、年度計画を立案した。それ以降に関しては、リスクは折り込んでいない。生産面では大きな支障がなく動いている」(井原副社長)とした。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□ニュースリリース(PDF)
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/IR/financial/fr/04q4_sony.pdf
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(2005年4月27日)

[Reported by 大河原克行]


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