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ソニーは7日、出井伸之会長(67)と安藤国威社長(63)が6月22日をもって退任し、後任の会長にハワード・ストリンガー副会長(63)、社長には中鉢良治副社長(58)が就任すると発表した。
あわせて、真崎晃郎氏、久夛良木健氏、徳中暉久氏、ヨーラン・リンダール氏、大西昭敞氏の各社内取締役が退任。このうち、現執行役副社長兼COOの久夛良木氏は、セミコンダクタショリューションズネットワークカンパニー担当、ホームエレクトロニクスネットワークカンパニー担当、セミコンダクタソリューションズネットワークカンパニーNCプレジデントを離れてグループ役員となり、セミコンダクタ関連の担当は中鉢氏が引き継ぐ。久夛良木氏はゲームビジネスグループを引き続き担当する。経営陣の一新に伴い、記者会見を開催し、今後の方針などが説明された。 出井会長は、「新しい体制を執行側から、発表させていただいた」と切り出し、社外の意向での社長交代という一部報道を否定しながら、今回の執行役交代の意義を説明した。
「中国企業/市場の伸張やデジタル家電などの新たな動きが始まっており、新しいイノベーションが求められる時期になった。執行役の交代にもちょうどいい機会と考えた。新体制のスタートは公式には6月22日だが、オペレーションは速やか新しい体制でやってもらうことになる」と述べ、早期にストリンガー氏と、中鉢氏による新体制に移行する旨を解説した。 ストリンガー新会長については、「'97年にソニー・アメリカに入社した際には、エンターテインメントのスタッフとして相談役的な位置づけだったが、現在はエレクトロニクス事業もしっかりと見てもらっている。以前はいろいろ問題があるたびにハリウッドに駆けつけていたが、(ストリンガー氏が担当するようになった)2000年ぐらいからハリウッドに足を運ばなくてよくなっており、ニューヨークのオフィスに行く機会も少なくなった。彼は優秀な現地のマネジメントチームを作っている」と評価。 「(ストリンガー新会長が)ニューヨークと東京の両オフィスを拠点とすることで、エレクトロニクスにきちんと目が届くのか心配するかもしれないが、私がハリウッドに行かないように、常に日本にいなくても問題はない。中鉢さんや他のエレクトロニクスのスタッフと協力してがんばってほしい。新しいマネジメントには期待しているし、ここでジェネレーションの交代が必要」と説明する。 主に磁気メディア畑を担当し、現在は生産戦略本部長やEMCS担当の副社長をつとめている中鉢新社長については、「ソニーを裏から支える人」と評価。「表の商品力、裏のオペレーション力」という中鉢氏の言い回しを例に引き、「最終製品の人ではないけれど、生産などのオペレーションから見てきた人で、コアデバイス、キーコンポーネントの経験がある。純粋なエンジニアとして、ソニーのエレクトロニクスを牽引している人だ」と紹介した。 出井会長は新執行役を、「グローバルで、自由闊達な企業群を率いるのに適している」と評価、「社長に就任した'95年から約10年経った。(中期経営計画)TR60で公表した利益率10%という目標には届かなかったが、ソニーの中で変革の芽は育っている。自分で予測したグローバルなネットワークの時代が訪れて、その時期に経営から去るのは寂しいが、次世代のページをめくったというさわやかさの方が大きい」と自らの任期を振り返った。 また、安藤社長も「ストリンガー新会長はTR60のスタート以来大変な成果を上げ、積極的なイニシアチブと、リストラクションで、業績に寄与した」と高く評価し、「これからが攻めの時代で、バトンタッチの最大のチャンスだった」と期待をかけた。 ストリンガー新会長は、新執行役3人が赤を基調に線の入ったネクタイを着用していることから「スパイダーマン」と切り出し、笑いを誘い、「今後はネットワーク時代に入って競争の方式が違ってくる。グローバルな組織は、マネージメントから変わらなければいけない」と説明。 「今までのマネジメントを継承しながら進化させていく。最強のエレクトロニクスカンパニーになるよう努力していく」と目標を語った。なお、前体制の掲げた「TR60」については、「完成度の高い計画で、基本路線は踏襲する」としながらも、TR60で掲げた「2006年度に営業利益率10%達成」という目標は、「すぐに達成できる数字ではない。目指すべき目標、エンカレジメントとして残していきたい」と語るにとどまった。 中鉢新社長は、「AV/IT時代に向けて、着々と布石を打ってきた前の経営陣を踏襲する。世界第一級の技術を組み合わせて、顧客中心の製品を作っていく」と目標を語った。 また、生産戦略本部長としての経験から、「ソニーが苦境に陥っているが、現場の力も意欲も健在だ。生産、設計、開発、マーケティングなど個々の現場の力は高い。ビジネスの激変期には、意志決定はもちろん、社員のより広く深いコミュニケーションを行なうことが必要となる。お客様の目線で再び消費者の皆さんに深く感動を与える製品を届けたい」と意欲を語った。 質疑応答では次期社長候補として有力視されていた、久夛良木健副社長についての質問も及んだ。「中鉢氏にあって久夛良木氏に欠けていた点は?」との質問については、「中鉢さんのいいところは“グッドリスナー”であるということです。良く聞いてまとめるか、良く自分の意見をまとめるか。中鉢さんはいろいろは意見を聞いて、正しい判断をするマネージャーと考えている。エレクトロニクスの若いスタッフをモチベートできる(出井会長)」と説明した。 また、中鉢氏は今までのソニーに欠けていたものとして、「消費者からの目線。何が求められているか考え、メーカーとして迅速に設計し、モノを造り、商品化するという、メーカーとして当たり前のことが連携不足でうまくいっていなかった部分がある。また、いままでプロダクト(最終製品)だけでメッセージを発してきたが、裏の競争力(デバイス)で、ソニーの潜在力を高めていきたい」と述べ、今後の改善を意志を明らかにした。 半導体事業については、「バランスある判断が必要となる。(プレイステーション 3搭載の次世代プロセッサの)CELLについては、PS3やデジタルテレビなどに搭載する方針は変えない。いかに使うのかというのが課題になってくる(中鉢)」と説明した。 □ソニーのホームページ (2005年3月7日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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