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JASRAC、04年度業績説明会を開催。徴収額は過去最高
-テレビドラマのネット配信に期待


吉田茂理事長

5月18日発表


 社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)は18日、2004年度の事業報告説明会を開催した。事業報告と2005年の活動方針が説明され、テレビドラマのネット配信への期待や、デジタルオーディオプレーヤーへの私的録音補償金適用に向けた活動などが語られた。


■ 使用料徴収額過去最高に

 2004年度の使用料徴収額は、過去最高の1,108億円(前年比1.2%増)。内訳としては、音楽CDの低迷を受け、オーディオディスクの徴収額が前年比94.7%の約267億7,384万円と落ち込んだものの、DVD市場の拡大により、ビデオグラムの徴収額が139億1,814万円(前年比1.5%増)と堅調。さらに、放送使用料は224億1,862万円(同13.6%増)、着信メロディを中心とするインタラクティブ配信が92億7,302万円(同12.9%増)と伸張し、全体では過去最高の徴収額となった。

 分野別では、演奏や放送、有線放送を含む「演奏」分野での徴収額が前年比104.5%の約451億2,223万円、CDやDVDなどを含む「録音」分野が約442億3,026万円(同96.2%)、「出版」分野が同93.4%の約16億2,729万円、レンタルCDなどを含む「貸与」分野が同102.1%の約38億987万円、通信カラオケやインタラクティブ配信(着メロなど)を含む「複合」分野が同110.2%の約152億1,766万円となっている。使用料収入の合計は前年比101.3%の1,100億734万円となった。

 また、録音用CD/MDや録画用DVDなどに含まれる「補償金」は、前年比94.8%の8億21万円となっている。私的録音補償金は前年比83.5%の6億2,459万円と減少、録画メディア用の私的録画補償金は前年比181.7%の1億7,562万円と大幅増となった。


■ ネットでの利用申請データベースが稼働

 JASRACの吉田茂理事長は、2004年度の活動を振り返り「オーディオディスクの落ち込みにより、録音分野では減少となったが、DVDビデオが好調でビデオグラムが下支えした形となった。また、インタラクティブ配信と放送の利用料が伸張したことで、徴収金額は前年を上回る結果となった」と説明した。

 また、2004年度の活動実績として、「著作権侵害への対応」と、「EDI(電子データ交換)化の推進」などについて解説。著作権侵害への対応については、東京高裁によるファイルローグの控訴棄却を挙げ、「JASRAC勝訴の一審判決が支持されたことで、ネット配信の適切な運用について、適切な判断がなされた」とコメント。

 EDI化は、ネット上での利用許諾申請などを推進するための取り組みで、2004年5月に演奏会での音楽利用に関するネット経由の利用申請システム「J-OPUS」を稼働、CD/ビデオグラム/出版での利用については「J-RAPP」を4月に、映像コンテンツに関する「J-ARIA」も4月に稼働しており、「音楽利用許諾システムについては、2004年にほぼ開発完了し、稼働した。今後は徴収から分配までの一括したシステムの実現を目指していく」という。


■ テレビドラマのネット配信に期待

加藤衛 常務理事

 加藤衛 常務理事は、2004年度の業務を振り返り、「過去最高の使用料徴収額となったが、今後の状況については楽観視はしていない」という。その理由として、2005年の1~3月期のCD/DVDの売り上げの不調を挙げ、「CDは前年比85%、ビデオグラムは約78%となっており、急激に落ち込んでいる。今まではCDの売り上げ減をビデオグラムが補う形となっていたが、旧作のDVD化なども一巡し、従来のような伸びは期待できない。また、CDにおいても大手レコード会社の落ち込みが大きい」と説明。

 しかし、「この4年間で、音楽の使われ方は大きく変わってきたが、着メロに代表されるインタラクティブ配信などは確実に伸張している。JASRACはその変化にいち早く適応することに力を入れてきたが、その姿勢は堅持していきたい」と語り、3月に合意に至った、テレビドラマをインターネットでストリーミング配信する際の著作権使用料金の料率決定について言及した。

 「暫定的にではあるが、放送コンテンツのインターネット配信用の料率を決めることができたのは大きな前進。料率が決まっていないため、従来のネット配信は実験的にしか行なわれていなかったが、今回の決定により本格化が見込まれる。業界の発展、流通に役立つと、ちょっと自負している」と、期待のほどを語った。

 また、3月に発覚した、阪神タイガースの私設応援団「中虎連合会」を著作者として登録された楽曲について、同連合会などの関係者が著作権法第121条違反(著作者名詐称)で刑事罰を受けた事件についても言及。

 「特に関西方面では大きな話題になったが、JASRACの管理に対する社会的な信用、責任を失う重大な事件と考えており、厳しく受け止めている」と語り、名称不詳楽曲についての作品データベース整理や、類似曲については委託者への再確認を行なうなどの対策を行なうことを決定した。また、広く一般からの情報窓口として4月1日よりインフォメーションデスクを設けており、情報の収集や管理を強化していくという。

 なお、1月1日から施行された日本販売禁止レコードの還流防止措置については、「今までに8件の措置がとられた」という。


■ iPodを私的録音補償金の対象に

 なお、文化庁の文化審議会著作権分科会 法制問題小委員会で検討されている、私的録音補償金の適用製品をiPodなどのデジタルオーディオプレーヤーへの拡大については、「関連業界との話し合いを進めている。制度の改正を含めて、急いでこれを成し遂げたいと考えている(加藤常務理事)」。

 現在、JASRACを含む7つの権利者団体が、同委員会に「iPodなどのHDD内蔵録音機器を制度の対象とする」、「HDDやパソコンなどの汎用タイプの機器にも実態をふまえた対応」、「現行の政令指定方式の変更による、機器対応の迅速化」などの要望を提出している。

 デジタルオーディオプレーヤーについては、「法改正を必要とせず現行法でも対応できると考えている。メーカーはデータ用に使える汎用製品と訴えているが、製品の売り方を見ていれば“Goodbye MD”や“1万曲の録音”など音楽用途と考えていることは明らか。メーカーと話し合いを進め、理解していただけると考えている(泉川昇樹 常任理事)」という。

□JASRACのホームページ
http://www.jasrac.or.jp/
□ニュースリリース
http://www.jasrac.or.jp/release/05/05_1.html
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050324/keidan.htm
【2004年5月19日】JASRAC、2003年度業績説明会を開催。DVDの著作権利用料が伸張
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040519/jasrac.htm

(2005年5月18日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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