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エプソン、3LCDプロジェクタ用の高画質化技術「C2FINE」
-無機配向膜を採用。“漆黒の黒”とコントラスト10,000:1を実現


5月24日発表


 セイコーエプソン株式会社は24日、液晶プロジェクタ向けの高温ポリシリコンTFT液晶パネル(HTPS)用に無機配向技術を利用した「クリスタルクリアファイン」を発表した。略称はC2FINE(シースクエアファイン)。

クリスタルクリアファインの特徴

 従来の同社製HTPS「Dシリーズ」からさらに高開口化/高精細化/高画質化を進めるパネル技術で、同社では水晶のようにクリアな高画質という意味を込め「クリスタルクリアファイン」と命名した。

 クリスタルクリアファインの採用により、コントラストを従来比で約4~5倍まで高めることができるほか、黒の再現性向上や、配向ムラの低減が図れる、大幅な高画質化が実現できるという。液晶プロジェクタの“黒浮き”の改善やコントラストの改善が期待され、同技術を2006年度以降に順次、同社のHTPSに適用していく予定。

 なお、クリスタルクリアファインは6月8日から10日まで米国で開催されるInfocommに出展される。



岩野英明 TFT事業部長

 岩野英明 TFT事業部長は、新技術の概要を解説。「従来のDシリーズでは、明るさを求めて高開口化を推進してきた。市場はデータやホームシアター、リアプロジェクションなど広がっているが、民生市場では“画質”が競争力の源になる」と述べ、シアター向けの画質に注力したクリスタルクリアファインのコンセプトを紹介した。

 また、クリスタルクリアファインによって実現される高画質について、高コントラスト/ピュアブラック/シルキーイメージの3つのキーワードを掲げた。


クリスタルクリアファインの3つの特徴 従来技術との比較

・高コントラスト

無機配向膜と垂直配向技術の採用で、高コントラスト化を図った

 無機配向膜と垂直配向技術の採用により、従来のTNモード液晶に比べて、コントラストを大幅に向上。同社がデモに利用した試作機でも既にコントラスト比10,000:1を実現しており、従来比で約4~5倍の高コントラストを実現できるという。


・ピュアブラック

 従来のTNモードでは、電圧がかかっていない時に白表示、電圧を加えることで黒表示を行なう「ノーマリーホワイト」となっており、電圧を加えた際に液晶が立ちきらないために、黒を完全な黒として表現することができなかった。

 クリスタルクリアファインの垂直配向VAモードでは、電圧OFF時に黒、電圧を加えることで白を表示する「ノーマリーブラック」となったことで、黒の沈み込みを大幅に改善。「漆黒の黒が再現できる」という。


従来のTNモード液晶では白が基調となる ノーマリーブラックとなったことで、黒の沈み込みを改善 左が従来のHTPS搭載機。C2FINE試作機では、明らかに黒が沈み込んでいる

・シルキーイメージ

 無機配向では、被膜形成を分子レベルで堆積することで、配向膜を生成する。そのため、成膜と配向処理を同時かつ非接触で実現できるため、従来のHTPSで必要となっていたラビング工程(配向性をもたせるためにこする工程)が不要となる。HTPSプロジェクタでは、ラビング行程に伴う縦縞などが指摘されてきたが、クリスタルクリアファインではムラを低減して、よりスムーズな画質を実現できるという。

従来のTN液晶で必要だったラビング行程が不要に 無機配向では成膜と配向処理が同時に行なわれる

 従来の720p/HTPSを利用したリアプロテレビと、1080p対応のクリスタルクリアファイン搭載リアプロテレビの比較デモも行なわれたが、黒の沈み込みの違いは一目瞭然。パネル解像度が異なるほか、試作機ではダイナミックアイリス機構なども搭載しているため、一概には比べられないが、コントラスト感、精細感ともに試作機が上回っていた。

 なお、今回の試作機に搭載したHTPSは、D5世代のパネルにクリスタルクリアファインを適応したもの。0.9インチ/1080pパネルで、開口率は52%、ドットピッチは12μm。同社ではパネルテクノロジの進化とともに、D3/D4/D5など、DシリーズとしてHTPSのブランド展開を図ってきたが、クリスタルクリアファインはDシリーズとは別のブランド展開を予定しているという。

720pの従来機(左)と1080pのC2FINE搭載試作機(右) 黒の沈み込みやコントラストなどに大きな違いが確認できる

従来品表示画像と無機配向表示画像の比較
(エプソン提供)
従来品表示画像 無機配向表示画像

 2006年度の出荷を予定しており、価格については「現状の延長線上で提供できる(下斗米伸行 TFT設計技術部長)」という。また、2006年以降、同社のHTPSを順次クリスタルクリアファインに切り替えて行く方針だが、「従来のTNでも、輝度の点で優位になるなどのメリットがある。データ、シアター、PTVの3つの市場に対して、それぞれの市場に最適な仕組みを判断していきたい(下斗米技術部長)」としている。

□エプソンのホームページ
http://www.epson.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.epson.co.jp/osirase/2005/050524.htm
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【2004年10月18日】エプソン、フルHD解像度の液晶プロジェクタ用「D5」パネル
-量産出荷は2005年5月を予定
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20041018/epson.htm
【5月24日】ソニー、高温ポリシリコンTFTの配向膜を無機化
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(2005年5月24日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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