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東芝、経営方針説明会を開催
-SEDは8月から作り貯め。下期にCell関連の生産開始


西田厚聰社長
8月9日発表


 株式会社東芝は9日、都内のホテルで経営方針説明会を開催。6月より社長に就任した西田厚聰氏が、SEDディスプレイやHD DVDプレーヤー/レコーダの今後の展開、イノベーション戦略、2007年度の目標などを説明した。

 同社は7月28日に2005年度第1四半期の連結決算を発表。営業損益は前年同期の141億円の黒字から、今期は19億円の赤字となり、電子デバイス部門におけるテレビなどの価格下落による減益の影響が目立っている。

 冒頭、西田社長は、こうした現状について「難問が山積してはいるが、東芝が潜在的に持っている力を活性化させれば、解決できると確信している」とし、「継続的成長の実現」、「イノベーションの乗数効果の発揮」、「CSRの遂行」を経営方針のキーワードとして提示した。

 「継続的成長の実現」は、成長戦略と資源の戦略的配分を主な目的としている。まず、「電子デバイス」と「デジタルプロダクツ」を成長事業領域とし、「社会インフラ」を安定事業領域と規定。この3つを基幹事業として継続的成長を目指すという。これは、2003年に同社がグループの基本戦略として発表した計画を、今後も引き続き実践していくことを意味している。

半導体分野での注力製品一覧

 「継続的成長の実現」の中では電子デバイス部門が「当面、売上げ・利益ともに最も成長が見込める分野」と説明。2004年から2007年までのCAGR(年間平均売上高伸張率)を8%、営業利益率も8%と目標を掲げた。西田社長は「NAND型フラッシュメモリやブロードバンドシステムLSIなど、東芝の強みを生かせる製品に注力すれば十分に実現可能な数字だと考えている」という。

 また、同分野への設備投資や研究開発費の投入も積極的に行なう。2005年から2007年までの3年計画での設備投資額は1兆1,000億円で、2002年から2004年までの8,583億円と比較すると約2,500億円程度増加。その内、65%程度を電子デバイスが占め、中でも全体の50%を半導体事業へ割り当てるという。また、研究開発費は1兆2,000億円を予定しており、46%を電子デバイスが占めている。

 半導体事業における、2007年度のCAGRは9%で、同社が予想する2%という市場成長率を大きく上回る数字を提示。NAND事業の拡大やブロードバンドシステムLSIの立ち上げや、中国市場での売上げ拡大、コスト構造改革などを行ない、「売上高で、半導体事業の世界3位グループに入ることを目指したい」という。


■ SEDは8月から“作り貯め”

 SEDパネルの開発については、「8月から量産を開始する予定。しかし、“パイロットライン”とも言えるキヤノンの平塚にあるラインで生産するのでキャパシティは小さい。製品として売り出すには作り貯めをしなければならないので、量産開始後すぐに発売とはならない」と説明。「サイズは50型クラスから始めることになるだろう。本格的な量産は2007年からの姫路の工場で開発する。1,800億円程度を投資するのでコスト面なども問題になるが、最近の薄型テレビの価格下落を考慮しても、材料費などの面で液晶よりもアドバンテージがあると考えている」という。

 また、年末にプレーヤーを、2006年春にレコーダを予定しているHD DVDについては「コスト面で、ほかの次世代DVDと比べて優位性がある。現在のDVDメディアと同等のコストでメディアが作れる利点は大きい。また、PC用の薄型HD DVDドライブなども年末に向けて準備しており、十分戦っていける分野だと感じている」と自信を見せた。

Cellの周辺システムLSIの開発をスタートさせる

 システムLSI分野では、大分工場に建設した300mmのクリーンルームが順調に立ち上がっていることを明らかにしたほか、SCEIが開発を進める次世代ゲーム機「プレイステーション 3」などで採用される次世代プロセッサ「Cell」の開発に関する予定も発表。

 「今年度の下期にはCellの周辺システムLSIの開発を開始し、その後Cell本体の開発もスタートさせる。大分工場のキャパシティをフルに活かして、世界No.1の技術力と、最先端プロセス技術のリーダーシップを堅持したい」と語った。


■ 「Microsoftと協力した製品も、時期がくれば発表する」

デジタルプロダクツの売上高伸張を示したグラフ

 デジタルプロダクツ部門では、2004年から2007年までのCAGRを7%と提示。営業利益は2%とした。注力する商品はHD DVDプレーヤー/レコーダ、SEDテレビを含む薄型テレビ、HDD、AVノートPCなど。西田社長は「市場の高い成長率を事業の中に取り込めるかどうかが重要」という。

 そのうえで、同分野での東芝の強みを映像分野を例に挙げて説明。西田社長は「AV機器がスタンドアローンな存在だったのは過去の話。高精細化し、コンテンツを蓄積するHDDを内蔵し、ネットワークに対応する機器が今後も増える。こうした市場の現状は“映像のパラダイムシフト”と言える」と解説。

 その上で、「ネットワーク化やHDDなどの要素は、コンシューマー・エレクトロニクスとPCの技術を融合させて実現できるもので、幅広い分野で事業を行なう東芝の強みが生かせる」と語る。また、「ストレージ事業でHDDの小型・大容量化を進め、東芝が発売する全ての映像・音響商品群にHDDを搭載させていきたい」とした。

 なお、6月27日に発表した米Microsoftとの協業については「NDAを結んでいるので中身は詳しく説明できないが、PCとAVの技術を融合させるという面で関係を強化しており、時期がくればその成果を製品として発表できるだろう」と答えた。また、「クロスライセンスに関して、Microsoftから東芝へのOSのライセンス料の引き下げなどがありえるか?」という質問に対しては「MicrosoftのOSのライセンス料は米国司法省と結んだ契約なので変わらない。数量に応じたディスカウントがあるだけだ」と否定した。

 また、「映像の東芝」を実現するための戦略として、HDDを内蔵して音楽や映像を持ち運ぶ「gigastyle」と、SEDやHD DVDなど、HD対応の機器を示す「HDstyle」を紹介。そのうえで「これらを包み込み、どちらの要素も併せ持ったNetstyleも存在する。今後も夢のある差異化商品を提供していく」と意気込みを見せた。

高精細化、ネットワーク化、HDDの搭載などを“映像のパラダイムシフト”と説明。同社の強みが活かせる市場になっているという 「映像の東芝」実現に向け、差異化商品の提供に注力する

2007年度の姿

 なお、西田社長は説明会の最後に全体的な目標を「2007年度の姿」として発表。2007年度の売上高を6兆6,000億円、営業利益率を4%以上とまとめた。

 西田社長によれば「この数字は最低限クリアできるというもの。今まで毎年同様の数字を発表していたが、“達成できたためしがない”と言われ続けてしまっていたので、今年は最低ラインとした。社内的には遥かに高い目標を設定しており、この数字に満足せずに邁進したい」と語り、同氏が社長を務める新体制の改革の片鱗を見せた。

□東芝のホームページ
http://www.toshiba.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jir_14.htm
□関連記事
【6月27日】Microsoftと東芝、HD DVDプレーヤーの共同開発を検討
-デジタル家電とPCの両分野で協調を強化
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050627/mstoshi.htm
【5月31日】東芝、SEDのパネル量産拠点を姫路工場に決定
-2007年内には7万台規模で生産
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050531/sed.htm
【2月22日】東芝、次期社長候補を西田厚聰専務に決定
-「“映像の東芝”復権を実現する強いリーダーを」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050222/toshiba.htm
【2004年9月14日】キヤノンと東芝、SED方式の新薄型ディスプレイ事業を共同立ち上げ
-来年8月からフルHDパネルを生産。36型SEDテレビを初披露
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040914/sed.htm

(2005年8月9日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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