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「CEATEC JAPAN 2005」基調講演レポート
「電子情報技術のイノベーションが創造する新しいライフスタイル」
東芝 取締役会長 岡村正氏


岡村正会長
10月4日開催

会場:幕張メッセ


  CEATECの主催者のひとつである社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の会長を務める、東芝の岡村正取締役会長は、4日に行われたCEATECキーノートスピーチの先陣を切って、「電子情報技術のイノベーションが創造する新しいライフスタイル」をテーマに講演を行なった。

 冒頭、岡村会長は、「日本のITインフラは、ほぼ整った」とし、ブロードバンドの家庭普及率が52%に達したこと、携帯電話の普及率が98%に達したこと、今年12月には地上デジタル放送の視聴可能地域は57%になることなどを挙げた。だが、インフラの整備の一方で、セキュリティなどの問題点があり、それに取り組んでいく必要があることも強調した。



■ 21世紀型のイノベーションとは

 岡村会長は、「20世紀は、技術革新をベースにしたイノベーションが多かったが、21世紀はそれが通用しなくなった」と前置きし、20世紀型のイノベーションと、21世紀型のイノベーションには大きな差があることを示して見せた。

 岡村会長によると、20世紀型のイノベーションは、科学的発見や技術革新が、そのままイノベーションに結びついたのに対して、21世紀型では、科学的発見や技術革新に加えて、市場革新など、新たな要素が必要になるという。

 「ニーズが量から質へと変化し、これまでの産業界と学術界とが、双方に、自然にわりかあえていたものが通用しなくなった。産業界と学術界がお互いに歩み寄り、将来のビジョンを共有化することで、科学的知識の共有化、体系化に取り組み、融合した形でイノベーションに取り組んでいくことができるようになる」などとした。



■ 3つのキーワードから東芝の製品、技術を紹介

 一方、岡村会長は、東芝の未来のライフスタイルづくりとして、「驚きと感動」、「安心と安全」、「快適」という3つのキーワードを掲げていることを示し、それを実現する製品や技術を紹介。

 「驚きと感動」のなかで、岡村会長が真っ先に紹介したのが、SEDだった。

SEDの技術

 「キヤノンと開発しているSEDは、薄型テレビよりもさらに薄く、コントラスト比が高く、高速動画応答性にも優れ、低消費電力を実現する究極のディスプレイだ。来年の出荷を目標に開発を進めている段階」として、市場投入が近いことを訴えた。

 また、HD DVDに関しては、「現行のDVDとの同じディスク構造を踏襲し、長時間録画とPCとの親和性という部分にこだわった」などとするに留まり、それ以上については言及しなかった。

 一方、AVノートPCに関しては、昨年投入した「Qosmio」が新たな価値を提供する製品として高い評価を受けていることを示し、「来年早々には地上デジタル放送テレビが受信でき、さらにHD DVDによるハイビジョン映像が閲覧できる製品を発売する」とし、HD DVDドライブ搭載PCの製品化を春モデルで予定していることを明らかにした。

東芝のHD DVDプレーヤー CEATECでは、東芝サムスン ストレージ・テクノロジーが開発したHD DVD対応ノートPC用ドライブ内蔵のノートPCを展示

 さらに、ホームネットワークという観点では、「テレビがホームットワークの中心として様々な映像を提供する形で進化する」として、「いまは、'50年にテレビ放送が開始されて以来の大革命のなかにある」とした。

2つめの「安心と安全」というテーマでは、一部で実験中といわれるサイバーホスピタルの取り組みについて紹介した。

 サイバーホスピタルでは、患者の診断情報や、遺伝子情報データベース、代謝情報などを融合して管理、体の変化に応じてシミュレーションを行ない、それをもとにした診断、治療を行うというものだ。これらの情報をもとに、ネットワーク上につくられた仮想患者に対して、治療シミュレーションを行なうことで、最適な治療を施すことができるようになるという。

 また、すでに岡村会長も利用しているという、インターネット健康相談サービスによって、生活習慣病の改善などが可能で、IT、ネットワークと医療の融合という動きが、「安心と安全」の世界では重要な取り組みだとした。

 そのほか、災害時の防災ネットワークサービスでの取り組みなども紹介した。

 3つめの「快適」では、高速道路交通システムでの東芝の貢献や、ホームネットワークでの取り組み、さらにセキュリティ対応マンションシステムの提案などのほか、東芝が取り組む生活支援ロボットにも触れた。

 生活支援ロボットでは、「東芝のロボット開発は、生活の視点に立って考える必要があると考えており、いま、生活支援型のロボットを作るためにはどうするかという取り組みを行なっている。

 具体的には、人とロボットのコミュニケーション技術に力を注いでおり、複数の人の声をどう聞き分けるか、ロボットが人の声にあわせて常に近くにいる、といったことを実験している。少子高齢化の未来のライフスイルを実現するものだといえる」とした。



■ キーテクノロジーの数々を紹介

CELLは「ほぼ実用化のめどがついた」という

 これらの製品を実現する東芝のキーテクノロジーも紹介された。そのなかで掲げたのがCell、燃料電池、HDDなどである。

 Cellでは、家電製品などへの応用を示したほか、燃料電池では携帯オーディオプレーヤーや携帯電話の試作品が完成したことを受け、「ほぼ実用化のめどが立った」などと自信をみせた。

 また、HDDはギネスブックに登録した世界最小の0.85型を開発していることを示しながら、「このほど、ビデオカメラにもHDDを搭載した」として、技術的な先行性をアピールした。

小型燃料電池の特徴 HDDの用途など

 さらに、NAND型メモリ技術、著作権保護技術、モバイルノートPCにおける安全化技術などを紹介した。



■ 東芝のDNAは「驚きと感動」

同社が掲げた「驚きと感動」

 最後に、岡村会長は、東芝のDNAは、「驚きと感動を与えられる製品開発にある」とし、創業者である田中久重氏の精神などについて触れた。

 今年、東芝は創立130周年を迎えており、岡村会長は、最近の講演では、決まって田中久重氏の話に触れてきた。今回の講演でもこの点に触れ、最後にこう締めくくった。

 「驚きと感動は、東芝が創業以来培ってきたDNAである。2000年のITバブルの崩壊で、東芝をはじめとする日本のエレクトロニクスメーカーは、大変厳しい状況に陥り、自信を喪失していた。だが、先人たちが残した日本の物づくりの精神によって、力を取り戻してきた。東芝でいえば、それは、驚きと感動を与えること、人と社会のために役立つものを提供すること、それに向けた探求心を欠かさないということだった。これをもう一度自覚して、事業を進める必要がある」

 東芝の今後の事業拡大の鍵は、驚きと感動を提供する製品づくりであることを宣言して、岡村会長のキーノートは終了した。


□CEATECのホームページ
http://www.ceatec.com/index.html
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(2005年10月4日)

[Reported by 大河原克行]


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