|
キヤノン株式会社とキヤノン販売株式会社は26日、プライベートショー「Canon EXPO 2005 in Tokyo」を開催した。同社の新製品や今後の事業展開を、パートナー各社に紹介するイベントで、会期は28日までだが、入場には招待状が必要となる。 カメラや事務機、医療機器など、同社が手がける幅広い製品が扱われているが、ここではディスプレイやビデオ関連を中心にレポートする。なお、カメラ/イメージング関連については、僚誌デジカメWatchでレポートしている。 ■ SEDを「家庭内ポータル」に。イメージング環境の中心にSED
会場では東芝と共同開発中の次世代ディスプレイ「SED」を大々的に展示している。CEATECでも30台を超す展示機を用意していたが、Canon EXPOではSEDの製品展示のほか、各所のデモ用のディスプレイとしても利用されており、試作機ながら数10台のSEDディスプレイが確認できる。 SEDを中心としたディスプレイ関連展示は、ビジネス製品を中心とした「仕事とキヤノン」ゾーンに集中。展示機はCEATECと共通で、36型の1,280×768ドットパネルを採用し、暗部コントラストは100,000:1以上、輝度は430cd/m2、応答速度は1ms以下、視野角は上下/左右160度(コントラスト200:1)、消費電力は130W。 会場ではPDPや液晶との比較デモを実施し、コントラストの高さや、周辺フォーカス性能、応答速度などをアピール。さらにスポーツや高感度カメラ映像などさまざまな映像ソースを表示し、SEDの性能の高さを見せている。また、CEATECと同様に市場投入モデルとなる55型のカットモデルも出展。こちらは映像表示などは行なわれず、発売についても2006年初頭と従来通り。 パネルスペック的には、CEATECからのアップデートは無かったが、会場の至る所でSEDがデモなどに利用されており、同社のカメラ、映像ソリューションの中核としてSEDが位置づけられていることが確認できる。
民生機器を中心とした「暮らしとキヤノン」ゾーンでは、同社製品やイメージングの近未来像を提示。SEDを中心に、デジタルカメラ、ビデオカメラを組み合わせたホームイメージング環境を提案している。 まずは、SEDディスプレイに無線レシーバ機能を内蔵し、デジタルカメラで撮影した映像をすぐにディスプレイ表示するデモを実施。実際に来場者の写真を撮ってSEDディスプレイに撮影映像をワイヤレスで表示してみせた。同社ではIEEE 802.11b無線LANに対応した「IXY DIGITAL WIRELESS」を発表しているが、これを改良し、PictBridge対応ダイレクトプリンタやPCだけでなく、ディスプレイへのダイレクト出力も可能にしたもの。 さらに、コンセプトモデルとして、Advanced デジタルカメラやHDビデオカメラレコーダも参考出展。いずれもモックアップだが、会場の説明ビデオではスチルカメラに顔認識技術や、まばたき撮影防止技術、ビデオカメラには自動追従機能などを投入し、次世代の映像ソリューションとして提案。さらにテレビと接続して、撮影映像をプリントできる「デジタルテレビプリンター」も出展している。
これらのカメラから取り込んだ映像などをネットワークやストレージ上に蓄積し、SEDディスプレイからアクセス。撮影した映像を自動的に振り分けてカレンダー上に表示したり、専用のリモコンから高速にサムネイル選択するなどのデモが行なわれた。また、取り込んだ映像は顔認識技術により、被写体を自動判別。写っている人ごとのフォトアルバムを自動作成するなどのコンセプトが紹介された。 同社ではこれらの機能を「フューチャーフォトアルバム」と命名。展示コンセプトの実現時期については、「2010年頃」とのことだが、SEDテレビへの搭載を予定。「SEDの画質以外の要素でも、キヤノンの技術を活かした差別化をしたいと考えた」とのことのことで、業務用途だけでなく、民生向けのテレビでも「家庭内ポータル」としてSEDを推進していく考えを明らかにした。
■ 64型フルHD LCOSリアプロやパノラマプロジェクタなど
ディスプレイ関連では、デバイスにLCOSを採用した64型フルHDリアプロジェクションテレビを出展している。解像度は1,920×1,080ドット。輝度は300cd/m2以上という。LCOSを選択した理由については、「フルHDの大型プロジェクションディスプレイを考えた時に一番使いやすく、画質がいいため」という。LCOSの供給元については非公開。 最大の特徴は「オフアキシャル構造」という独自の光学系の採用により、奥行き29,9cmと大幅に薄型化したこと。業務のほか、民生用のテレビの展開も検討しているが、製品化時期は未定という。
また、2.4型の有機ELディスプレイも出展している。解像度は320×240ドットで、輝度は300cd/m2、コントラスト比は500:1以上、色域はNTSC比で70%以上。回路基板にはアモルファスシリコンTFTを採用している。 キヤノンの有機ELは今回初公開で、「材料の開発から自社で行なっている」という。製品展開については、「中小型での展開を想定しているが、自社内で一番引きが強いカメラ用液晶モニタの置き換えがもっとも有望と考えている」とした。 実際に「EOS 5D」に実装した形で展示。色再現の向上に加え、有機ELは自発光するためバックライトが不要で、消費電力の低下も図れるという。
さらに2.5:1というワイドアスペクトで表示可能なパノラマプロジェクタも参考出展している。同社のLCOSデータプロジェクタ「SX50」に搭載している「AISYS(Aspectual Illumination System)」を改良した光学エンジンと超広角ズームレンズを搭載し、パノラマ投射を可能にした。 さらに、本体正面にカメラ機能を内蔵し、プレゼンテーションを行なう人のジェスチャに合わせて表示切り替えや、プレゼンデータの送り/戻しなどが可能なインテリジェント機能も搭載するという。
■ HDVカメラ「XL H1」も出展
9月に発表されたレンズ交換式のHDVカメラ「XL H1」も出展。11月下旬より発売され、価格は105万円。手ぶれ補正機能搭載のHD20倍ズームレンズ「20×ズーム XL 5.4-108mm L IS」がセットになっている。 撮像素子は、新開発の1/3型総画素数約167万画素CCDを使った3板式。HDV規格の1080iと、DV規格の記録と再生が可能で、HDV規格の24F/30F記録と音声4ch記録に対応している。 会場ではモデル撮影可能なデモステージや、SEDを利用したリアルタイムプレビューやプレイバックも実施。新開発の映像エンジン「DIGIC DV II」なども展示している。
さらに「XL H1」を用いた無線HD伝送デモも行なわれており、IEEE 802.11aを利用したHDV映像のリアルタイムプレビュー/プレイバックなどを行なっている。現在のところリアルタイムプレビュー時には約2秒程のタイムラグがあるほか、伝送方式が802.11aのため遮蔽物には弱いというが、見通しで50m程度の距離であれば25MbpsのHDV映像を難なく伝送できるという。 デモ機ではIEEE 1394接続の無線アダプタとテレビ側の無線アダプタが必要となっているが、将来的にはカメラとテレビの双方に無線機能を内蔵し、「ビデオ出力/データ転送のワイヤレス化」を実現する方針という。 また、放送局用の次世代フィールドレンズも出展。カメラ部とコントローラ間をワイヤレスで伝送できる。
□関連記事 燃料電池も参考出展。カメラを中心として実装しており、現在のところは従来の電池とさほど撮影枚数は変わらないが、数年内には3~5倍程度まで拡大できる見込みという。
■ グローバルエクセレントカンパニーを目指す
Canon EXPO開催にあわせ、同社取引先やパートナーを集めた御手洗不二夫社長による基調講演が行なわれた。 御手洗社長就任後の10年を振り返り、日本経済の動向分析などを中心とし、「グローバルエクセレントカンパニー」への強い意欲をアピール。国内の製造業の競争力強化については、「イノベーションの持続による、高付加価値化」、「先進国に適した生産技術の確立」を掲げ、キヤノンがその先陣を切ることを表明した。 □キヤノンのホームページ (2005年10月26日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
Copyright (c)2005 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|