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株式会社日立製作所は20日、薄型テレビの戦略説明会を開催。フルHDパネル採用製品のリリーススケジュールや、2006年下期を目処にした事業の黒字化計画、中長期的なシェア目標などを明らかにした。
同社の薄型テレビ事業は2004年度までは黒字で推移していたが、市場価格の急激な下落や増加する需要に対する供給能力不足などで、2005年度は赤字が見込まれている。これを受けて同社は、2006年下期の黒字化を目標に掲げた。
2008年度における全世界でのシェアは、プラズマテレビのHD解像度(フルHD含む)モデルでシェア30%(プラズマ全体20%、国内42%)、液晶テレビでは26V型以上でシェア7%(国内7%)を目指す。また、薄型テレビを中核にデジタル家電事業全体の拡大も図り、売上高で2005年度の8,500億円から2010年度には1兆5,000億円まで育成する。
■フルHDラインナップを充実
ユビキタスプラットフォームグループ長兼CEOの江幡誠常務は、薄型テレビ事業が赤字に転落した要因を「市場の見誤り」と分析する。具体的には、プラズマでは2005年度にHDパネルの需要が増加すると見込んだが、テレビ自体の需要は倍増したもののHD比率は横ばいとなり「消費者に対して、画質など、HDの魅力のアピールが不足していた」と振り返る。
また、液晶テレビでは中型モデルの需要が急激に増加したが、自社テレビ用パネルの供給体制の確立が遅れたという。なお、プラズマでは2005年度に68万台、液晶では20万台を販売台数目標としていたが「現在のところ、少し届かない状態」だという。
売価下落のペースは「想定していた範囲内」としながらも、パネル/セット一体となった原価低減の遅れや、パネル増産体制の遅れが影響。また、世界市場、特に北米での販売力やブランド力の強化策が不足していたことなどが原因だったとする。 こうした問題点を解消して黒字化を果たすため、江幡誠常務は「勝つためのシナリオ」を披露。プラズマではALISパネルの高精細表示を活用した新製品を商品化。37V、42V、55V型のHDモデルメインストリームとしながら、既に発表している42V型、および60V型クラスのフルHD製品系列を充実させるという。なお、42V型は2007年春の量産を目指しているが、「フルHD解像度の製品投入は60V型クラスの方が先になるだろう」と予測した。
生産能力面では、プラズマは2006年10月には連結子会社FHP(富士通日立プラズマディスプレイ)の宮崎事業所三番館が量産を開始。2006年に二番館と合わせて月産20万台、2007~2008年には30万台体制を構築する。液晶は、2006年第2四半期に持分法適用関連会社のIPSアルファテクノロジが生産を開始する。最大生産能力は年間250万台。これに伴い、FHPには1,550億円、IPSアルファには1,100億円の設備投資を行なっている。
江幡常務は「生産能力だけでなく、プラズマではパネルのガラス厚を1.8mmに薄型化したり、フィルタを直貼にしたり、無鉛PDPを開発するなどして、コスト競争力の向上に努めたい」と語る。また、松下電器との協業についても「一部部材の共通化や、検査システムの共用など、具体的な展開に向けて話し合いを進めている」とした。
■HDでVGA並み、No.1低コストのHDプラズマテレビ
特に力を入れるプラズマテレビでは、成長が見込まれるHDモデルに特化した集中投資を実施。LSIの集積による部品数削減や、ユニット部品の合理化、ソフトウェアのコンポーネント化による開発効率拡大などでコスト力を強化。 「2008年度に国内の42V型で、インチあたり5,000円という価格状況になっても耐えられる原価低減を実現する」とし、「42型に限らず、HDでもVGAパネル並みのコストを実現し、No.1低コストHDテレビを実現したい」とした。
また、LSIやドライバICのルネサス、日立GSTのHDD、日立化成工業の関連材料などを挙げ「グループ企業としての強みを活かし、HDDの録画機能付きテレビなど、他社との差別化も積極的に進めていきたい」という。
■年2回のモデルチェンジ体制へ
製品計画と、販売体制強化、ブランド力の向上にも努める。モデルチェンジ頻度は、現在の1年に1回では「価格の下落に対応できない」とし、年2回モデルチェンジを行なう計画に変更。特に、2006年はトリノオリンピックやFIFAワールドカップなど、大きなイベントがあるため「イベントにあわせた製品投入を春、秋と連続して行ないたい」という。 具体的な計画は明らかにされていないが、2006年4月には「新ALISパネル」と「新IPSパネル」を投入。2006年8月にも新モデルを投入するという。ラインナップは、プラズマが55V/50V/42V/37V型、液晶が37V/32V/26V型となる予定。 2005年は映画「宇宙戦争」とのタイアップなどを行なったが、「今後もブランドイメージの向上戦略には取り組みたい。また、現在不足している北米での販路拡大に向けた営業拠点の配置も進める」という。販売投資は2006年度に、2004年の約3倍となる予定。
最後に江幡誠常務は、「赤字転落の本質的な原因は、当初薄型テレビの開発で先行した立場にいたため、甘えが生じ、経済/経営的なコミットメントが不足したからだと言える。だが、シェアを落としたことで目が覚めた。本来やるべきことをやるだけだが、パネルの実力や開発力には自信がある。コスト力でも他社に負けることはない」と語った。
□日立製作所のホームページ
(2005年12月20日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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