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HD DVDプレーヤー初号機「HD-XA1」を試す
-ついに発売された次世代DVD「買い」か「待ち」か


3月31日発売

標準価格:オープンプライス


■ DVD“次世代”へ

 2005年度の最終日となる3月31日。東芝からHD DVDプレーヤー「HD-XA1」が発売された。同日発表、同日発売という、国内家電メーカーとしては前代未聞な販売方法ながら、2005年度という”公約”通りの年度内発売を遂げたわけだ。

 初期出荷は1,000台程度とのことだが、大手量販店には31日の午後過ぎには展示され、販売開始された。最初期に出荷されたカメラ量販系の店舗では、ほぼ全ての店で99,800円(10%のポイント還元あり)という価格となっていたが、AV専門店では8万円台で受注を行なう店舗もあり、ポイント還元などを考えると実質ほぼ9万円程度で購入できることとなった。

 北米で発表された499ドル(4月6日現在の為替レートからすると約58,800円)のHD DVDプレーヤー「HD-A1」には及ばないものの、“次世代”プレーヤー第1弾としてはさほど割高感は感じない。

 一方のBlu-ray Discについては、各社1,000ドル以上の価格設定のミドル~上位クラスの製品を投入してくることが予想され、競合との比較という点では比較的割安な製品ともいえる。今回製品版のHD-XA1で、HD DVDの実力を検証した。


■ 本体の高級感は充分

 本体とリモコンのほかは、HDMIケーブルと、AVケーブル、取扱説明書、そして4月27日までの出荷分には、「バイオハザード」と、「ムーンライト・ジェリーフィッシュ」の2本の映画をセットにしたHD DVDのスペシャルディスクが付属する。

 本体の外形寸法は437×354×115mm(幅×奥行き×高さ)、重量は8.9kg。横幅は通常のDVDプレーヤーとほぼ同じだが、115mmという厚みはかなりのボリューム。ミドルクラスのAVアンプに匹敵する厚みだ。

 8.9kgと重量も重いが、オーディオ機器らしい剛性感と重量感がある。ボディはブラックとシルバーのツートンで、上位クラスのDVDプレーヤーに匹敵するどっしりとしたデザイン。

 前面にはトレーを覆うドアを装備しており、これをリモコンで開閉可能。アルミ削り出しの大型インシュレータなど、細かい作りの良さは、価格以上の高級感を演出してくれる。

本体前面 本体背面 本体側面

ドアを空けると、トレーや操作ボタンが現れる

 ドアを開けるとHD DVDのトレーが現れるほか、再生/停止などの基本操作系のボタンを装備。また、本体左にはUSBの形状をした拡張端子を備える。

 現在のところこの拡張端子の利用方法は決まっていないが、コンテンツホルダからの要望が多いネットワークコンテンツ対応したストレージや、ゲーム用のジョイステック接続などでの利用を想定しているという。


トレー部。ドライブはNEC製 まだ用途の決まっていない拡張端子 操作ボタン部

HDMI端子やアナログ5.1ch音声出力を装備

 背面にはHDMI出力や、コンポーネント映像出力、D4映像出力、S映像出力、コンポジット出力、5.1chアナログ音声出力、アナログ音声出力、光デジタル音声出力、同軸デジタル音声出力などを装備。RS-232端子も装備している。プロジェクタとテレビの併用を考えるとHDMIは2系統欲しかったところだ。

 HD DVDでは最大7.1chまでの音声出力に対応するが、HD-XA1でサポートするのは5.1chまで。7.1ch出力については、現在のバージョンのHDMIでは、データをそのままデジタル出力する「ビットストリーム」で出力できない。そのため、プレーヤー側でアナログマルチで7.1chを備えている必要があるが、HD-XA1ではそれらを備えていないため、最大チャンネル数は5.1chとなる。ただし、DTS-ESやドルビーデジタルEXなどによる6.1ch収録音声については同軸/光デジタル出力などから出力可能となっている。


シアターライトリモコン

 リモコンは、オートセンサー付の「シアターライトリモコン」。振動を感知するとボタン部がうっすらとオレンジに点灯する蓄光式のリモコンで、アルミの素材感は高級オーディオの趣があるが、手に触れる部分はプラスチックで、見た目から想像していたより大分軽めだ。

 また、4月27日までの初期出荷分には、「HD DVDプレミアムディスク」が付属する。これには「バイオハザード」と、「ムーンライト・ジェリーフィッシュ」の各HD DVDディスクを収録している。映像コーデックはいずれもH.264/MPEG-4 AVCで、音声はバイオハザードがDTS(日本語/英語)、ムーンライト・ジェリーフィッシュがリニアPCM(2ch)となっている。

4月27日出荷分までに付属する「プレミアムディスク」 真鍮製のインシュレータを装備する

 なお、同ディスクにはHD DVDディスクの特徴であるインタラクティブ機能(アドバンスト機能)は備えておらず、ほぼDVDと同様のオーサリングがなされているようだ。再生中のチャプターメニュー表示などの新機能は利用できない。


■ 設定画面はシンプル

リモコン下部をスライドさせて設定メニューを呼びだす

 まずは、付属のHDMIケーブルで50型プラズマテレビ「VIERA TH-50PX600」に接続してみた。HDMIでの出力時には480i/480p/720p/1080iの各出力を選択可能。HDMI出力とD端子/コンポーネントの切替は、リモコンのD端子/HDMIボタンで選択可能。また、480i/480p/720p/1080iの切替は解像度切替ボタンで選択する。

 リモコンの下部をスライドさせるとチャンネルキーと[設定]ボタンが現れる。ここで設定画面を呼び出すと、映像設定/音声設定/言語設定/イーサーネット設定/各種操作設定が現れる。

 映像設定は、TV画面設定のほか、黒レベル(普通/明るい)と、プログレッシブ変換(フィルム/ビデオ/自動)の各設定を用意。音声設定では、HDMI音声出力設定(自動/ビットストリーム/PCM/ダウンミックスPCM)や、ダイナミックレンジコントロール、アナログ音声出力のスピーカー設定などが用意される。各種操作設定では、設定メニューのスキンを3タイプから変更できる。

設定メニュー画面 映像設定 プログレッシブ変換はフィルム/ビデオ/自動の3モードを用意
音声設定 HDMI出力設定 ネットワーク設定

 また、Ethernet設定も用意。HD DVDソフトでは、インターネット経由で専用サイトのコンテンツにアクセスして、字幕ダウンロードやショッピングなどの機能の追加やコンテンツ購入ができる製品も予定されている。Ethernet設定では、こうしたネットワーク機能のためのDHCPクライアント設定などを行なう。

3種類のGUIメニューを用意


■ 動作はやや緩慢だが、再生時のレスポンスは満足

起動時間はかなり長め

 電源を投入すると本体前面のディスプレイに[WELCOME]の文字が現れる。起動画面が現れるまでは約25秒で、その後[NO DISC]と表示されるまで、約40秒とかなり待たされる印象だ。新フォーマットの第1弾製品なので、動作速度が遅いのは避けられないところではあるが、通常のDVDプレーヤーの起動/ローディングのレスポンスを想定していると、違和感は否めない。

 もっとも、日本で普及している多くのハイビジョンレコーダでは最新機種を除いて起動時間が遅めなので、それらをDVDプレーヤーとして利用している場合は、起動からディスク再生までの時間は、さほど変わらないと言えるかもしれない。いずれにしろ、DVDプレーヤーと同じ感覚で操作ができるレベルまでは至っておらず、起動やローディング速度は遅いと言わざるを得ない。

 リモコンのドレー開閉ボタン、もしくは本体前面のボタンで、トレーを開け閉めできる。トレーの前にはアルミ製のドアを設けており、これもリモコンで開閉可能だ。この開閉動作が、ゆっくりと重圧な動きで、なかなか高級感がある。

 ただし、ドアを開けたまま電源OFFにしてしまうと、手動でドアを戻すとうまく止まらないことがある。また、ドアをリモコンで戻すためには、再度電源を入れて、ドア開/閉ボタンを押さなければならないのだが、起動が遅いのでまどろっこしい。

 HD DVDディスクを入れると、ローディングを開始。ローディングから本体ディスプレイに[HD DVD]と表示されるまで約30秒強、出画までの時間は約40秒。DVD「スパイ・ゾルゲ」では、本体のディスプレイに[DVD]と表示されるまで25秒弱、再生開始まで約30秒とHD DVDより若干早いようだ。

ディスク挿入時に再生層を選択する

 なお、HD DVDとDVDのハイブリッドディスクを入れると、トレー挿入時にどちらのディスクを再生するか聞いてくる。ここで、再生したいフォーマットを選択する。なお、HD-XA1では、再生層の選択はこのディスク挿入時のみで、再生開始後の切替はできない。

 ディスクのローディングなどには時間がかかるものの、起動してしまえば、通常のDVDと遜色ない操作感で、レスポンスも良好だ。再生/停止やチャプタ/トラックのスキップ/バック、早送り/戻しなどの基本操作はほぼDVDと同じ感覚だ。再生を一時停止しながら、電源を落とすと、次回の電源投入時にその場所から再生が可能。ただし、ディスクを取り出してしまうと、レジュームは効かない。

 今回テストに試用したバイオハザードやムーンライト・ジェリーフィッシュはほとんど通常のDVDと同様のオーサリングということもあり、操作感という点に置いては既存のDVDの違いを意識することはなかった。

 起動時に気になったのは、ファンノイズ。空調の動いているオフィスなどでは、さほど気にならないが、静かなリビングでは、起動するだけでファンの回転音がかなり耳障り。プレイステーション 2(SCPH-7000)はもちろん、日立のハイビジョンレコーダ「DV-DH500W」よりもうるさく感じる。

 DV-DH500Wは、HDDの回転音に電源ファンの音が混じっている程度なのだが、HD-XA1ではいかにもファンが回っているというノイズで、かなり耳障り。AV機器よりはパソコンが動いているような印象だ。

 初期のDVDレコーダなどではファンノイズやHDDの駆動音がかなりうるさい製品があったが、プレーヤーと考えると、このノイズはかなり違和感がある。今後、世代を重ねるにつれ改善されると思うが、このあたりの作り込みはまだまだ第1世代という印象。


■ “次世代”を感じさせる画質

 フルHD対応の液晶テレビ「REGZA 37Z1000」と「VIERA TH-50PX600」に接続し、バイオハザードとムーンライト・ジェリーフィッシュの2本を鑑賞した。

 画質は、さすがにDVDとは雲泥の差で、再生して最初に出てくる警告画面の字幕から“次世代”を感じさせてくれる。バイオハザードの地下の密室シーンでもノイズをほとんど感じさせない。また、解像度が高いこともあり、DVDよりグッと奥行きが深まったような印象を残す。

 付属のディスクは、バイオハザード、ムーンライト・ジェリーフィッシュともにコーデックはH.264を採用している。特にムーンライト・ジェリーフィッシュは、マスターの映像も今一つのようで、最初のデモ用ディスクとしてはあまり適していないようにも思えた。それでもハイビジョン映像の魅力は至る所に感じさせる。

 また、通常のDVDのアップコンバート機能も搭載している。HDMI出力ではDVDを480pのほか、720p/1080iにコンバートして出力できる。なお、D4端子やコンポーネント出力の場合、CSSによる著作権保護を施した市販DVDビデオについては、720p/1080iへのアップコンバートは行なえず、480pまでとなる。

 また、Blu-ray Disc陣営が優位性をアピールしている“1080p”については、HDMI接続のDVDアップスケーリングで簡単に比較してみた。ディスプレイは1080p入力に出力に対応した「VIERA TH-50PX600」で、1080p出力対応の「DIGA DMR-EX550」と、HD-XA1の1080i出力を比較視聴してみた。

 結論から言うと、1080i/pでの目に見える違いというのは、あまり体験できず、プレーヤーの違いによる、ノイズの取り方や色味の違いのほうが気になるという印象。それより、DVDでも「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」などの高画質ディスクは、HDと見まごう品質で、「ここまでの情報がDVDに収録できるのか」、という驚きがある。

 将来の拡張性という意味では特にテレビなどのディスプレイはすぐに買い換えるモノではないので1080p対応は嬉しいが、今すぐどうしても必要というわけでもないかもしれない。

 なお、HD-XA1は、HDMIの1080i/720p出力に対応しているが、HD DVD-ROMの収録映像は、フィルムソースの場合は基本的に1080/24p、CGなどでは1080/60iなどで記録するという。そのため、HDMIの1080i/720p出力用にフラグを設定し、2-3プルダウンなどの処理を行なったのちディスプレイに出力、ディスプレイ側でフラグを適切に処理して、表示するという。

 HD DVDでも帯域が2倍の次世代HDMIが規格として確定すれば、1080/60pで出力するプレーヤーを作ることはメーカーの判断でできる。そのため、BD/HD DVDのいずれかのディスクの優劣というよりは、プレーヤーの仕様とディスプレイ環境の問題といえなくもない。ただし、映像マニアにとっては最上級の規格のサポートというのは重要なこと。無碍に否定するようなことでも無い筈なので、今後の対応には期待したいところだ。

 画質に加え、音質の良さも印象的。同軸/光デジタル音声を中心に、デノンのAVアンプ「AVC3890」に接続し、HD DVDのほか、DVD、CDを聞いてみたが、中低域の力強さと、セリフの聞き取りやすさが印象的。比較に利用したマランツのユニバーサルプレーヤー「DV8400(2003年4月発売/発売時の実売15万円)」よりも好ましく感じた。

 なお、HD-XA1では、DVDオーディオやSACDの再生には非対応。また、HD DVD-RやHD DVD-RWへの対応についても現時点では正式対応していない。近日のレコーダの発売や、2層HD DVD-Rの規格化を待って、サポートされる可能性もあるが、現時点では未定。

 また、DVD-RW/RAMではVRモード記録のディスク再生に対応するが、デジタル放送のコピーワンス番組を記録したDVD-RW/RAMの再生は現在のところ対応していない。第1弾製品ということで、いろいろ手が回っていない感があるが、できればファームウェアアップデートなどで対応して欲しいところだ。

メンテナンス画面

 アップデートについては、本体のネットワーク機能を利用する。ブロードバンド接続環境でルータなどのDHCPクライアントとして接続するだけなので、普通にパソコンをネットワーク参加させるのと同じようなイメージでネットワークに参加できる。

 ネットワーク設定の[メンテナンス]からネットワークアップデートを呼び出して、ウィザードに従って作業を行なうことで、ファームウェアを更新できる。DVDプレーヤーというより、ほとんどパソコンに近い機能だ。

 また、HD DVDプレーヤーでは、ネットワーク経由でダウンロードしたコンテンツを保管しておく「Persistent Storage」を備えている。HD-XA1では130MBの内蔵メモリを搭載しているようだ。


ファームウェアの更新もネットワーク経由で行なえる 4月6日現在アップデートはできない Persistent Storage情報


■ 今すぐHDコンテンツを観たい人に

 HD-XA1の発売により、HD DVD/Blu-rayの“次世代”争いも、戦いの場が市場に持ち込まれた。今後の展開は不確定な要素が多いが、2つの規格が競って開発を続け、パートナーの拡大に努めたことで、Managed Copyの採用などのの機能の追加や、PCとの相互利用性など、次世代ディスクとしての完成度を高めていったともいえる。もっとも、そこで一定の合意を得て、統一することが望ましかったが……。

 しかし、初代のプレーヤーが10万円を切る(米国では6万円弱)という低価格で発売されるのも、フォーマット戦争があってこそのこと。この争いを不毛ととるか、有意義なものとするかは、評価の分かれるところだ。もちろん、どちらかの優位を見極めて、購入するという「待ち」の姿勢もありだが、パッケージソフトの世界では、ディスプレイの高解像度化が先行したこともあり、映画ファンやマニア層にはディスプレイ先行の環境が健全でないと思っていた人も多いだろう。また、DVDソフトを買うより、より高画質なBSデジタルの放送を待つといったパッケージソフトの意義を否定するような現象から、ようやく脱却できる、という点に意義を感じる人も多いだろう。

 「今すぐにHDのパッケージソフトを観たい」という人には、HD DVDが現状唯一の選択肢となる。実際に再生したディスクは、映像だけでも“次世代”の可能性を強く感じさせるものとなっている。今すぐにハイビジョン映像を体感したい人、そして既にDVDの画質に我慢できなくなっているユーザーであれば、欲しいビデオタイトルが出た時点で買って損は無いとも言える。

 ローディング時間やファンノイズなど気になる点もあり、プレーヤーとしての完成度はまだ向上していくと思われるが、それでも画質や音質の完成度は現時点でもかなりの高レベルだ。

 結局プレーヤーの普及については、ソフトのラインナップ次第。ソフトがHD DVD/BDの争いに決着を付けるといって間違いないだろう。市場での競争に軸が移ったことで、今後は映画タイトルの動向により注目が集まることとなるだろう。

 HD DVDの持つ映像の可能性については、HD-XA1でもすでに実証された。あとは、各ソフトメーカーのタイトル投入を待つこととともに、ネットワークや拡張機能がどこまでソフト側で対応できるのか、という点にも期待したい。ともあれ、フォーマット競争も市場での競争となったからには、空しい足の引っ張り合いではなく、画質や音質などのクオリティ、機能、性能など、具体的なアドバンテージを消費者に呈示し続けて、本当の優位性を消費者に示し続けていってほしいものだ。

□東芝のホームページ
http://www.toshiba.co.jp/index_j3.htm
□製品情報
http://www3.toshiba.co.jp/hdd-dvd/products/hddvd/hd-xa1/index.html
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( 2006年4月6日 )

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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