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JASRAC、2005年度業績説明会を開催。ネット配信が停滞
-著作権保護期間の延長不要論は「バカげている」


吉田茂理事長

5月17日発表


 社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)は17日、2005年度の事業報告説明会を開催した。あわせてネットワーク配信などの環境整備への取り組みなどが紹介された。


■ 著作権保護期間の延長を強く求める

 冒頭挨拶を行なった船村徹 会長は、著作権保護期間を現在の「作者の死後50年」から、70年に延長するよう強く求めていくことについて熱弁をふるった。

船村徹 会長

 「我々は国際的な水準である70年への延長を求めている。しかし、中には70年は長すぎる、もっと短くしろと言う実に不思議な学者がいる。彼らは、“次に来る人がそれをたたき台にして、いろいろ物真似ができる”、“それがタダでできるからいい”とバカなことを言う。こういうのを机上の空論というのだ」と、延長不要論を一蹴。

 「我々作家は一曲一曲魂を込めて、一生懸命作っている。これが命の綱。それをどんどん短くしろと言う。そんなバカな話はあるか?」と、意見を表明するとともに、保護期間延長に取り組んでいく姿勢を示した。

 吉田茂理事長は、JASRACの昨年度の取り組みを説明。政府で策定した「知的財産推進 計画2005」を受け、民間でも円滑な権利処理に向けた取り組みが進んでいることなどを紹介し、「JASRACもデータベースの活用やノウハウの提供など積極的に協力していく」と説明した。

 さらに、新たなデジタルコンテンツ向けの取り組みなども継続的に行ない、2005年に経団連が各権利者団体と確認した、放送番組のストリーム配信の暫定料率についても、4月以降も適用延長することを発表した。また、2005年8月にサービスインしたiTunes Music Storeが、本格的なビジネス市場ができるようになった事例などを紹介し、「配信事業はさらに多種多様なサービスへの拡大が予想されるが、新しい環境にすぐに適用できるよう、整備を進めていく」とした。

 現在の取り組みとしては、Podcast配信やIPマルチキャストなどへの取り組みを紹介。Podcast番組での音楽利用について、従来の1曲ごとの許諾から、番組単位での許諾ができるよう整備を進めており、再生期限を設けたダウンロード配信などでの使用料規定を策定中という。間もなく暫定合意し、6~7月には実際に利用可能となる見込み。

 また、IPマルチキャストにおいても、対応を進めている。ただし、「文化振興を視野に置いた議論が必要。地デジ推進という要請があれば、その要請に応じた配慮が必要となるだろう」とした。さらに、2005年度に強化した、ほぼ全ての申請項目のインターネット対応や、電子データ化などの取り組みなども紹介した。


■ 使用料徴収額増加も、「着メロ」などに停滞感

 2005年度の使用料徴収額は、過去最高の1,135億8,957万円(前年比2.5%増)。内訳としては、音楽CDの生産実績が下げ止まり、オーディオディスクの徴収額が前年比97.3%の約260億4,598万円と前年並みを確保。DVDを含む、ビデオグラムの徴収額が146億9,841万円(前年比5.6%増)と堅調。さらに、放送使用料は258億8,583万円(同15.5%増)、着信メロディを中心とするインタラクティブ配信が92億850万円(同0.7%減)となり、全体では過去最高の徴収額となった。

 分野別では、演奏や放送、有線放送を含む「演奏」分野での徴収額が前年比7.2%増の約483億5,145万円、CDやDVDなどを含む「録音」分野が約443億2,577万円(同0.2%増)、「出版」分野が同5.1%減の約15億4,350万円、レンタルCDなどを含む「貸与」分野が同3.7%減の約36億6,728万円、通信カラオケやインタラクティブ配信(着メロなど)を含む「複合」分野が同1.7%減の約149億5,944万円となっている。使用料収入の合計は前年比2.6%増の1,128億4,765万円となった。

 ただし、近年大幅に伸張し、徴収額増に寄与していた「インタラクティブ配信」が初のマイナスとなった。特に着メロが前年比78.5%となり、大幅に減少。着うたは前年比220.1%、ダウンロード型の音楽配信は同190.2%と大幅に伸張した。なお、iTunes Muisc Storeについては「最終的なデータ受け渡しが終わっていないため、まだ入っていない」(菅原瑞夫 常任理事)という。

加藤衛 常務理事

 前年に引き続き徴収増となったが、加藤衛常務理事は「全く楽観視はしていない。いままで、引っ張ってきたインタラクティブ配信が足踏み状態で、牽引者が期待できなくなってきたことは、かなり深刻。市場自体が小さくなっているわけではないが、利用者の好みが変わってきたように感じている」という。また、放送関係の料率見直しによる収入増などもあるが、「放送事業者の事業収入にリンクするもので、牽引していくわけではない」という。

 ただし、ネットワーク配信などの新たな流通形態には積極的に対応していく方針で、「音楽の流通形態が大きく変化しており、許諾が降りないため新たなサービスが始められないということになってしまうのは問題。JASRACの責任は重大だ。市場が本格的に立ち上がる前に利用者に暫定的にでも許諾を出してしまうよう取り組んできた」とした。

 また、「これからの配信ビジネスは、一定期間の再生期間を許可する“レンタル型”も増えていくだろう。そのための規定の協議をしていており、新しい市場を作っていくだろう」と新たな取り組みについても言及した。

 中国からの著作権収入も大幅に増加し、一昨年は約100万円だったが、2005年度には630万まで拡大。台湾からも従来50~100万程度だったものが、230万円まで増えたという。「使用料がどの分野で使われたのか、実はまだ明細が来ていない」としながらも、「官民での中国へのエンフォースメントや、中国国内での法改正などの効果かもしれないと期待している」という。

□JASRACのホームページ
http://www.jasrac.or.jp/
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050518/jasrac.htm

( 2006年5月17日 )

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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