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東映アニメーション株式会社は30日、静止画と画面効果、音楽、音声で構成する新しいタイプの映像コンテンツ「画ニメ」(ガニメ)レーベルを設立。第1弾ソフトとしてDVDソフト10タイトルを8月1日より順次発売する。価格は各3,129円。プロジェクトパートナーは幻冬舎。書店を中心にCD/DVDショップなど、様々な販路でリリースしていくという。
第1弾のタイトルラインナップは下表の通り。
「画ニメ」は、紙芝居のように静止画を順次表示し、それに音楽や台詞などを重ねた映像コンテンツ。アニメーションのようなキャラクターの動きは少ないが、ズームやパン、トランジションなど、構図や編集テクニックを駆使する「リミテッド・アニメーション」の手法を採用。静止画に時間軸の変化を持たせて魅力を引き出し、フルアニメーションとは異なる視点で“想像力を刺激する”コンテンツを目指すという。
通常、アニメーションを作成するためには多数のスタッフや予算が必要となり、アーティスト個人が主体となって全てを製作するのは難しい。その点、画ニメでは作画枚数が限定されるため、作家の感性や裁量が大きく活かされることになる。 例えば作画の面では、多数のスタッフが分担して絵を描くわけではなく、クリエイター自身が描いた画像だけを使って作品を構成することも可能なため、視聴者にとってクオリティが高いだけでなく、制作者のこだわりをよりダイレクトに活かせる器になるという。
なお、東映アニメは今回の「画ニメ」以前、2004年2月に同様のコンセプトの「GA.ニメ」を発表。第1弾ソフトとして「~この支配からの卒業~ 尾崎豊」(TAGA-001/3,800円)をリリースしている。これについて東映アニメ 企画営業部 コンテンツ事業室長兼コンテンツ事業室 チーフ・プロデューサーの北崎広美氏は「これまでの“GA.ニメ”は、まず尾崎豊という企画ありきのものだった。新しい“画ニメ”は様々な可能性を持ち、現代アートを新たな次元に押し上げる新フォーマット。これが本来の“画ニメ”の姿であると考えて欲しい」と語った。
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■ 天野喜孝、佐野史郎らが「画ニメ」を語る
発表会場には、第1弾の目玉タイトルを手掛けた天野喜孝氏、佐野史郎氏らが出席。作品に対する想いや、画ニメという新しいスタイルの可能性について語った。 ゲーム・ファイナルファンタジーシリーズのビジュアルコンセプトなどで知られる画家の天野氏が手掛けた「Fantascope ~tylostoma~」は、自身のWebサイト内で発表されたオリジナル作品をベースにしている。画ニメ版製作にあたって、200枚以上の墨絵を描き下ろし。都市の廃墟に700年ごとにやって来る男と1人の情婦が繰り広げる、独特な螺旋物語が展開する。 声優として杉本哲太、宇梶剛士、麻生祐未ら俳優陣が参加。画ニメとしての映像化はCM界で活躍する木村草一氏が担当している。 天野氏は「来週ヨーロッパで行なわれるイベントで、自分の作品を発表することになっていたのだが、ちょうど画ニメが完成したので、これを上映する予定。静止画で構成される映像作品なので、どのように披露していいか難しい点もあるが、楽しみにしている」という。作品のターゲットについては「特に絞っておらず、とにかく多くの人に見て欲しい」と語った。 佐野史郎さんの作品「つゆひとしずく」は、山陰地方出身の佐野さんが、同じ山陰地方出身の写真家・植田正治氏の写真を使い、新たな映像表現に挑戦したというもの。劇中に挿入される言葉は小泉八雲のものを、音楽は加藤和彦氏が担当している。 佐野さんは「画ニメをやらせてもらう事になり、自分で絵を描くのは大変だと考えていた時、地元ゆかりの植田さんの写真を使おうと思いついた。そこに、山陰について様々な作品を残している小泉八雲の言葉を組み合わせ、自分の思う世界を表現した」という。「植田さんの写真はシュールレアリズムなので、そういった技法や世界観に興味がある人に観て欲しい」と話す。
奥秀太郎監督は太宰治の「女生徒」と、森鴎外の「舞姫」の2本を画ニメ化した。奥秀監督は「昔の文学を、私を含め、若いクリエイターの手で映像化できて光栄に感じている。若い世代は文学作品に触れる機会が少なくなっているが、普段本をあまり読まない人や、子供達に観て欲しい」と意気込みを語った。
■ 「画ニメ」紹介書籍やクリエイター発掘も 画ニメに関するコンサルティングや流通、販売には、幻冬舎グループが協力する。具体的には、8月1日の第1弾ソフト発売に合わせ、幻冬舎メディアコンサルティング発行、 幻冬舎発売にて「NEW MEDIA CREATION」というタイトルの書籍を発売。詳細は未定だが、画ニメ作品の紹介だけでなく、クリエイター発掘の場としての役割も担うという。 流通面では幻冬舎が書籍流通を担当。CD/DVDショップやその他の販売店は幻冬舎エムディーが担当する。幻冬舎エムディーの弘瀬増美社長は「例えば画ニメで芸能人や音楽アーティストの作品が出た場合、ライヴ会場で販売するなど、様々な流通チャンネルを考えている」という。 新「画ニメ」について、東映アニメの高橋浩社長は「東映アニメは今年、創立50周年を迎えた。そして、新たな50年に向けた挑戦が“画ニメ”である」と説明。「世界で活躍するアーティストに参加してもらい、それぞれのこだわりの世界を画・言葉・音楽で表現していきたい」とし、ヨーロッパなどの海外市場での販売展開や、海外アーティストとのコラボレーションなど、今後の展望を語った。
幻冬舎の見城徹社長は「これまで幻冬舎では12本のミリオンセラーを世に出してきた。売れるべくして売れた作品もあるが、幻冬舎の営業力を尽くしてミリオンセラーにしてきた作品も多い」とし、プロジェクト・パートナーとしての画ニメを売り込むための実力をアピール。
さらに、「自分のこだわりを発揮できる場として、自分の作品を発表したい場として関心を寄せるアーティストも多い」とし、作り手側からの画ニメの魅力を説明。「画ニメは良い意味でホームメイドな手触り、雰囲気が感じられ、それが作り手側にも受けて側にも新鮮。このコンテンツをどんなふうに売り込んでいこうか、ワクワクしている」と語った。
□画ニメのホームページ
(2006年5月30日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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