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「Cellが未来をクリエイトする」SCE久夛良木社長
−“リアルタイム”が生み出すPS3以降の世界


SCE久夛良木健社長

6月9日開催


 都内ホテルで開催中された「IBM Systems and Technology Innovation Forum」にて、ソニー・コンピュータエンタテインメント株式会社の久夛良木健社長兼グループCEOが講演した。

 PLAYSTATION 3についての情報にはアップデートは無かったものの、Cellの開発におけるIBMとの強固なパートナーシップを強調すると共に、エンターテインメント分野を超えた、Cellの活用を参加者に呼びかけた。


■ Cell開発での協力関係をアピール

 久夛良木氏は、SCEIの10年の歩みを振り返ると共に、コンピュータがグラフィックスとエンターテインメントの世界を急速に変化させてきたことを解説。聴講者に企業の情報システム部門の担当者などが多いこともあり、エンタープライズ系とは異なる、エンターテインメント分野でのコンピュータ活用の歴史を振り返った。

プレイステーションの歩み

 プレイステーションでのLSI Logicとのパートナーシップや、プレイステーション2のEmotion Engineの取り組みを紹介。Emotion Engineは、特定の用途向けの大規模なプロセッサ開発として「ゲーム産業始まって以来。家電、コンピュータ産業を含めて初めてのチャレンジだった。無謀と言われたが、コンピュータの持つ可能性を紹介し、開発者のクリエイティブティを引き出したいと考えた」と振り返り、ゲーム市場の参入からプロセッサ開発までに至った経緯などを説明した。

 「多大な知的財産そして、エンジニアの熱意を詰め込んだ、PLAYSTATOION 3を今秋に発売する。全く新しいエンターテインメントのために、コンテンツソサエティに提案している」と、PLAYSTATION 3のためにIBM、東芝と共同開発したCellへの取り組みを紹介。

 「Cellがなぜ必要なのか」については、「今までのCPUはクロック向上で性能を上げてきたが、消費電力の向上を伴うなど製造上の理由もあり、いままでのようにリニアに上昇していくということはない。どうやってこの10年の間に、10倍、100倍のコンピュータパワーを発揮していき、コンピュータの可能性を引き上げることができるのか。その検討の結果」とする。

 そのため、Cellには、ネットワークを介して相互に接続して、演算する構造を取ったという。「1つはPCプロセッサと同程度でも、それらが将来的に相互接続されれば、いままでのコンピュータアーキテクチャを大きく変える可能性がある。IBMの知識やノウハウ、知的財産、さらに東芝の製造技術、アプリケーション実現へのアイデアが一緒になってCellがスタートした」とパートナーシップを強調した。

PLAYSTATION 3を11月発売 PS3に搭載するCell


■ “リアルタイム”をどう活かすのか

Cellの浮動小数点処理性能

 また、Cellでは、「浮動小数点処理を極端に強化した」とし、その理由を「リアルタイム性を重視した。相当高価なスーパーコンピュータに近い能力を実現した」と、リアルタイム性へのこだわりを強調した。

 そのリアルタイム性を、「全てコンピュータエンタテインメントのために使う。これがPLAYSTATION 3のコンセプト」という。さらに、ネットワークを活用した分野についても、「IBMなどパートナーと協力して、あらゆるサーバーやネットワークなど、あらゆるインフラを整備できたら、ほかのスーパーコンピュータや、政府保有のシステムでもできないことができる。これを目指したい」と、PLAYSTATION 3とCellによるコンピューティングの将来像を語った。

 リアルタイム性を活かしたコンピューティングの例として、「(ゲームの)グランツーリスモでは、リアルタイムでCG合成はあたり前。さらに、世界中の自動車メーカーから実際の車の設計時に利用したCADデータを素材として提供して頂いている。そのデータをゲームで利用し、コースのデータとあわせて、それらの情報をリアルタイムで生成する“シミュレータ”になっている」と説明。

 さらに、最近では「(単にCADデータをもらうだけでなく)自動車メーカーからは、“こういう機構をいれたいのだけれど、それがドライバビリティにどういう影響があるのか”、といったシミュレーションに活かすなど、相互のコミュニケーションになりつつある」とゲームからリアルへのフィードバックがスタートしていることを解説し、「われわれの想像しなかったコラボレーションが生まれつつある」という。

リアルタイム性能をエンターテインメントにフル活用

 こうした、Cellによる“リアルタイム性”を活かしたコラボレーションを聴衆に呼びかけ、「ビジネスのアプリケーションと異なり、PLAYSTATION 3では、1/60秒ごとに全てのアクションのレスポンスを返さないといけない。それをフルHDの映像で、リアルタイムに全て作り出す。このリアルタイム性能をゲーム以外にもっと活用できる」とし、医療用のモニタリングシステムなどの例を挙げて、参加者に「われわれの仕事に役立つかもしれないと感じて欲しい。また、(Cellをどう活かすのか)一緒に考えて欲しいし、われわれも皆さんと見つけていきたい」と呼びかけた。

 コンピュータの活用については、先月、スティーブン・スピールバーグと会談した時の話を紹介。「10年前にお会いした時には、“コンピュータを使って映画を作るなんて考えたくも無い”と話していた。しかし、先月にお会いした時には、“PLAYSTATION 3が発売されたらすぐに欲しい”。コンピュータの今の表現力や、インタラクティビティで、さまざまなことができる」と語ったという。ただし、「これはスピルバーグがコンピュータで何かやるという、コミットメントでは無いので新聞には載せないで」と述べ、会場の笑いを誘った。

 また、ENIACから始まるコンピュータの歴史中の、IBMの存在の大きさを語ると共に、「われわれもビデオゲームから、プロセッサをつくるようになり、そして、もっと大きなところで活用できるリアルタイムコンピュータにトライしようというところまで来ている」とし、様々な用途でCellを活用できることを紹介。

 「Cellは、単精度(32bit)浮動小数点ですが、医療画像処理やエンターテインメントに適している」とし、ラックマウントサーバーのシステム例などを紹介。こうしたCellサーバーで、「いままで見たことも触ったこともないような世界が、そこで実現できる。それがわれわれの切なる願い。渇望的な夢になっている」と、Cellの作り出す未来像を語った。

Cellのロードマップ Cellベースのサーバー Cellベースのスパコン

Cellサーバーの利用イメージ

 また、特にマルチメディア関連の演算処理の能力をアピールし、「Blu-ray DiscやHD DVDなどのHD対応が進んでいるが、現在のコンピュータでは、フルHDのストリームをデコードするのは難しい。BDでは54Mbp、2つのHDストリームを流せるが、このデコードは今の最先端PCでは実現できない。しかし、Cellでは、2系統のHDストリームを自由に扱える」とCellパフォーマンスをアピール。

 短期的な例として、ホームサーバー的な用途も紹介。「いろいろなフォーマットのストリームを変換して貯めたり、アップロードするなどの利用もある。機能を追加していくというのはコンピュータの特徴で、さまざまなミッションに対応できる」という。

 「PLAYSTATION 3は最初の提案だが、Cellを活かした新しいインテリジェントなネットワークを目指したい。10年内に世界のネットワークに接続されたCellの演算能力を活かした、新しいコンピューティングの世界を作っていきたい。そのために、新しい世界に対するクリエーションを投げかけてほしい。今日を未来をデザインする最初の一日にしたい」とCellコンピューティングへの協力を呼びかけた。


□ソニー・コンピュータ・エンターテインメントのホームページ
http://www.scei.co.jp/
□日本アイ・ビー・エムのホームページ
http://www.ibm.com/jp/
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−次世代HDMI搭載も表明。「最先端のBDプレーヤーだ」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060315/scei1.htm

( 2006年6月9日 )

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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