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ドルビーラボラトリーズインターナショナルサービスインク日本支社は3日、「ドルビーデジタルプラス(DD+)」や「Dolby TrueHD」など、Blu-ray/HD DVDで採用される同社の新オーディオコーデックについて、コンテンツ制作者向けの活用セミナーを開催した。 ■ HD DVD/BDで全く異なるDD+の扱い
同社 技術戦略ディレクター兼CE/ICビジネスグループリーダーの白柳亨氏は、Blu-rayやHD DVDにおけるDD+、TrueHDの扱いについて説明した。 DD+は、ドルビーデジタル(DD)の拡張版と位置づけられ、不可逆(Lossy)なコーデックという点では従来のDDと共通。HD DVDではプレーヤー側での対応が必須となっているほか、Blu-rayでもオプション採用されている。 DD+は、コーデックの能力としてはチャンネル数18.2ch、最大ビットレートも6Mbps以上と、従来のDDから大幅に拡張されている。
ただし、HD DVDやBlu-rayのアプリケーション規格において、最大チャンネル数やビットレートが制限されており、HD DVDにおいては最大7.1ch、ビットレート3Mbpsまで。Blu-rayでは7.1ch、最大1.664Mbpsまでと規定されている。 HD DVDにおいてはDD+は必須のコーデックとなっているため、HD DVDプレーヤーには必ずDD+のデコーダが搭載される。DD+非対応のAVアンプなどへのデジタル出力は、DD+からDDに変換して出力される。 HD DVDにおける3Mbpsという最大ビットレートは、HD DVDが利用しているMPEG-2 PSシステムのAudioPackサイズによるものという。また、Blu-rayでのDD+は、本編用音声としてはオプション扱い。Blu-rayにおける位置づけは、「5.1chには従来のドルビーデジタルを利用、7.1chなど、5.1ch超の音声用にDD+を利用する(白柳氏)」というもの。
なお、最大チャンネル数はHD DVD/Blu-rayともに7.1chだが、7.1chの設置イメージとしては、5.1chに追加するリア/フロントサラウンドのほか、天井やスクリーン裏への追加チャンネル設置も提案されている。 しかし、現在発売済みのHD DVDタイトルでは、DD+は採用されているものの、使われているチャンネル数は5.1chまで。7.1chタイトルは登場していない。「現状、ハリウッドのスタジオでも7.1chのスピーカーをどこに置くかは決めていない。そもそも、7.1chでの映画制作が行なわれていない(白柳氏)」という要因が大きいようだ。 DD+では、5.1ch以上のチャンネル数を実現するため、サブストリーム構成を採用。5.1chまではIndependent Substream(IS)と呼ばれる、単独でデコード可能なストリームと、ISの追加チャンネル情報となるDependent Substream(DS)を用意。各ストリームで最大5.1chのデータを格納可能で、ISをDD、DSをDD+という構成も可能となっている。 しかし、HD DVDとBlu-rayでは、これらサブストリームの扱いが異なっている。HD DVDにおける7.1chエンコードでは5.1ch分のISと、4chのDSを用意。7.1chストリームを7.1ch対応機器でデコードする場合には、ISのフロント側3.1chを生かし、リアL/Rの情報をDSの4chに置き換える。また、5.1chデコード対応機器の場合は、ISのみを生かし、DSのストリームを破棄する。 HD DVDにおいては、DDも最高448kbpsまで利用可能だが、基本的には5.1/7.1chにおいてもDD+が採用される。
一方、Blu-rayでは5.1chまでは必ず通常のDDを収録する。そのため、ISは必ず5.1chのDDとなり、DSのみがDD+となる。7.1chデコーダではISのフロント3.1chを生かし、リアL/RのデータはDSの4chに置き換えてデコードする。つまり、フロントチャンネルが必ずDDで、DD+のみのストリームは収録できない。 そのため、最高ビットレートもIS(DD)が最高640kbps、DS(DD+)が最高1,024kbpsの1.644kbpsに制限される。「実際のディスク収録時には、DSで1,024kbpsも使わず、もっと低ビットレートで利用することになるのでは(白柳氏)」という。
HD DVD、Blu-rayともに本編用音声に加え、コメンタリーや特典用の音声規格を定めている。HD DVDではSub Audio、Blu-rayではSecondary Audioと呼ばれるこれらの音声については、HD DVD/Blu-rayともにDD+が必須コーデックとなっている。
■ TrueHDについても各フォーマットで異なる特徴
また、ロスレスコーデックのDolby TrueHDについても解説。 TrueHDは、HD DVDで2chのデコードが必須、Blu-rayでは、オプション扱いとなっているが、技術的にはDVDオーディオで採用された「MLP Lossless」の拡張版。HD DVD/Blu-rayなどHD映像ディスク用のブランドとして「TrueHD」を使用している。 TrueHDの音声ストリームは、0/1/2の3つの「サブストリーム(Substream)」から構成される。2chデコードの場合は、サブストリーム0をデコード。6chはサブストリーム0/1、8chはサブストリーム0/1/2のすべてをデコードするという構成となっている。 HD DVDにおいては、TrueHDで拡張された新しい「FBBストリーム」に加え、DVDオーディオ用の「FBAストリーム」のデコードも可能。そのためDVDオーディオ用に作成した音声データをHD DVDディスクに転用することも可能となっている。 FBAの場合は18Mbps、8chまで、FBBの場合は9.6Mbps/6chまで利用可能となる。ただし、DVDオーディオ機器でFBBストリームのデコードはできない。
また、Blu-rayにおいては、FBAストリームのみで、18Mbps/8chまで利用可能。また、TrueHDストリームの前に、必ずドルビーデジタルのストリームをつける必要がある。このストリームについてBlu-rayの規格書では「Dolby Lossless」と呼ぶが、これらはドルビーの技術/ブランド名ではなく、あくまでBlu-ray規格での名称とのこと。 HD DVD、Blu-rayともに本編用音声に加え、コメンタリーや特典用の音声規格を定めている。HD DVDではSub Audio、Blu-rayではSecondary Audioと呼ばれるこれらの音声については、HD DVD/Blu-rayともにDD+が必須コーデックとなっている。
■ 制作ツール利用時の注意も喚起
また、ドルビー日本支社の中山尚幸氏は、Dolby TrueHDやDD+のエンコード/デコードなどが可能なソフトウェアスイート「Dolby Media Producer」の概要や、次世代ディスクのオーサリング時の注意点を説明した。 Media Producerは、制作ツールやエンコーダ、デコーダから構成されるMacintosh用の制作アプリケーション。中山氏はダイナミックレンジ圧縮やメタデータ管理の特徴、注意点について説明するとともに、簡単なデモを実施。「特にDD+では出力されるファイルが全然違う。きちんとしたファイル管理が必要」と呼びかけた。
□ドルビーのホームページ ( 2006年8月3日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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