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IFA2006の会期2日目となる9月2日(現地時間)、東芝デジタルメディアネットワーク社 社長兼CEOの藤井美英氏が「Next Generation AV and Enhanced LifeStyle」と題して基調講演を行ない、同社のHD DVDや戦略などについて解説した。 ■ AV機器の王様はテレビとパソコン 藤井氏は、「テレビにおいては、技術の進歩によりHDTVを楽しめる環境ができてきている。DVDエリアにも、そうした変化が必要だ」と、テレビの進歩にパッケージソフトが遅れている状況を紹介し、HD DVDの必要性をアピール。さらに、HD DVDのインタラクティブ機能など新機能を説明し、「これらのテクノロジーの進歩はPC産業に似ている。日に日に機能が強化されていく。それがHD DVDの目指す方向」とした。 しかし、「DVDを振り返ると、“DVDはDVD”。光ディスク装置でしかなかった。次世代のHD DVDには、新しい機能を盛り込む必要がある。VC-1やMPEG-4 AVCなどの新しいコーデック、AACSによる新しい著作権保護などを盛り込み、HDTVにあった映像体験を提供する」と訴えた。
HD DVDを取り巻く周辺環境については、「『HD DVD』と米国で言えば、再生プレーヤーのことを指す。しかし、日本では『HD DVD』といえば、8割方HD DVD“レコーダ”を想起する。しかし、これは正しくない。実際はHDDレコーダ with HD DVDだ」とし、HDDを中心とするAV環境が求められていると語る。 「次世代のAV製品はHDDを中心としたメディアステーション/プレーヤーになる。コンテンツの視点から見ると、メディアサーバー、HD DVD、PC、ポータブルプレーヤー、携帯電話などで同様にコンテンツが扱える環境が望ましい。そうした未来の機器への要求は、“相互に利用可能”で、“少ないハードウェア/ソフトリソースで動作”し、“高速なアクセス性能”が求められる」とし、そうしたデジタルAVの世界で、HDDを中心にさまざまなビジネススキームを生み出すべく、各社が取り組んでいることを紹介。 新しいデジタルAV機器の姿としては、「新しいディスプレイテクノロジ」、「新しいプロセッサ」、「ストレージデバイス」の3点から解説。ストレージについては、HDDや光学ドライブ、フラッシュメモリ領域における東芝の実力をアピール。さらに、プロセッサでも“CELL”、液晶でもIPSαなどの強みを活かして事業展開が図れるとした。 HDDを中心としたAVソリューションとしては、「PCがAVの機能を持ち始めている」とし、パソコンとAV機器の連携についても熱弁を振るった。 「AVとPCの融合。何がAV環境の“王様”になるべきか、という議論がある。これは非常に面白い。AV/家電では垂直統合のビジネスモデルが成功への道だと信じられている。一方、PCでは歴史的に水平分業が基本と、テクノロジは似ているが、ビジネス環境が違う」と、業界の違いを説明。 さらに「BD陣営の多くの企業は、家電業界を代表していると思っている。“私はPCが嫌い”、“家電のビジネスモデルを守らなければならない”、“なんでPCをサポートしないといけない?”などの思いを抱いているだろう。だが、それはナンセンスだ」とし、「次世代のAV環境はテレビ、PC、携帯電話のそれそれが連携し、活用されることになるだろう。テレビは家庭の中心に、PCは個人の部屋にそれぞれ置かれ、ゲームやセカンドテレビに利用される。携帯電話やモバイルプレーヤーはモバイル用途で個人が利用するものになる」と、PCとの積極的な連携を強調した。
■ HD DVDをシフトを加速。HD-E1/XE1の国内発売を示唆
HD DVDの市場動向については、「HD DVDへのシフトを急速に進めていく」と宣言し、「2007年にはDVDビジネスのうちHD DVDの割合を15%に、8年に50%以上に増やしていく。コンテンツ無しには達成できないが、HDTVの普及は次世代DVDの普及を後押しする。第4四半期から、2007年、2008年と飛躍的にHD DVDが普及する」と予想した。 さらに、HD DVDプレーヤー「HD-E1」、「HD-XE1」を紹介するとともに、「日本や米国でもまもなく発表したい」と、国内投入も示唆。さらに、HD DVDの量産、オーサリングの容易さや、ハイブリッドディスクなどでDVDからの移行を図れるなどのメリットを紹介した。
また、「再生メディアとしては30GBは十分な容量。将来に備えて45GB、60GBのディスクフォーマットも、来年にDVDフォーラムに提案できればと考えている」と将来のHD DVDの容量拡張についても言及した。カーナビ応用などの応用例も紹介したほか、HDDを用いたムービーカメラなどの例を紹介。「5~6年前、Blu-rayやHD DVDの検討を始めたときは、DVDは単純な光ディスク装置でしかなかった。現在は、光ディスクが全てをカバーするのではなく、HDDやフラッシュメモリとの競合がある」とし、機器や用途にあわせたデバイス選択が必要とした。 最後に、HDD/HD DVDのホームサーバー応用例などを紹介し、「HD DVDが未来のメディアステーションプレーヤーの第1候補だ。HD DVD/HDTVによるHD映像環境を積極的に立ち上げていく」と語り、「今回、SEDテレビを紹介できなくて申し訳ない。もし、来年のIFAでスピーチの機会が与えられれば、SEDテレビをフラッグシップモデルとしてを紹介できるよう取り組んでいく」と、意気込みを語った。
□IFA 2006ベルリンショーのホームページ(英文) ( 2006年9月3日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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