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インテルのプラットホームを利用した組込み向けプラットフォームの最新のソリューションを紹介するイベント「Intel Embedded Showcase 2006」が27日、東京・秋葉原コンベンションホールで開催された。ホールでは携帯端末開発ソリューションなどの展示が行なわれたほか、ワンセグ放送やデジタルラジオ受信に関するコンファレンスも行なわれている。 エスケイネットは「地上デジタル ワンセグおよびデジタルラジオ放送受信機の開発事例と取り組み」と題した講演を実施。同社のワンセグ/デジタルラジオ受信機への取り組みを紹介するとともに、TBSラジオ&コミュニケーションズ デジタル推進局 デジタル推進部の塩山雅昭氏を招き、デジタルラジオの現状と今後を解説した。
■ デジタルラジオ本格放送は2007年春 TBSラジオ&コミュニケーションズの塩山氏は、海外のデジタルラジオの現状を解説。米国やカナダ、ポルトガル、フランス、ドイツ、イスラエル、シンガポールなど、多くの国で既にデジタルラジオの放送がスタートしていることや、デジタルラジオ受信端末の世界出荷台数が2004年の約500万台から、2005年には約2,200万台へと急速に増加していることなどを説明。「日本はデジタルラジオ後進国だ」と語る。
そもそも、日本でのデジタルラジオは、'98年の10月に行なわれた総務省による地上デジタル放送懇談会で、アナログテレビがデジタルのUHFに移行した後のVHF帯を利用することや、アナログラジオはデジタルラジオ開始後も存続することなど、基本的な考え方が提示された。
その後、免許方針や放送普及への基本計画や技術基準などが策定。2001年9月に実用化試験局への予備免許が付与され、2003年10月から東京と大阪で実用化試験放送が開始されている。 ロードマップとしては2011年以前を「先行普及時期」、それ以降を「本格展開時期」と位置付け、先行普及時期はVHF帯の使われていない隙間である7ch(地域によっては8ch)を利用(現在も実用化試験放送で利用)。同帯域を8個のセグメントに分割し、NHKに1セグメントを割り当て、民放が利用する残りの7セグメントを全国で1つだけの民間免許主体(マルチプレックスジャパン)が受け持つ計画となっていた。
しかし、既報の通り、TBSラジオ&コミュニケーションズやニッポン放送、エフエム東京ら民放5社は、マルチプレックスジャパンの発起人会を一旦解散する方針を決定。これまで先行普及放送は2006年後半にも開始する計画だったが、「まず不可能」(塩山氏)という状況になっており、先行放送の開始時期が不透明になっていた。 この一連の動きについて塩山氏は「デジタルラジオはこれまで、チャンネル編成や送信管理、普及・広報などの各事業を社団法人デジタルラジオ推進協会(DRP)が一手に担ってきた。この形をテレビなど、他のメディアと同じようにするため、チャンネル編成と送信管理を担当するマルチプレックスジャパンを設立しようとした」と、これまでの計画を説明。 その上で、「今回白紙になったのは、このマルチプレックスジャパンの部分。デジタルラジオそのものが白紙になったわけではない。この点が上手く伝わらなかった」とし、新聞などでなされた「デジタルラジオそのものが白紙」という風潮の報道を否定した。 なお、マルチプレックスジャパンが白紙になった理由は、2011年以降のVHF帯の割り当てについて、ラジオ局以外にも利用したいという企業が登場したことや、新たな技術提案があったことから、総務省が周波数割り当てを総合的に再検討する方針に変更したことに起因する。 塩山氏は「マルチプレックスジャパン設立にあたっては、ラジオ局だけでなく商社や自動車メーカーなどにも出資を仰いだ。だが、2011年以降の周波数利用が今の段階では見えないため、先行本放送(本格放送)開始が2007年3月を超えてしまいそうな状況になった。すると、役員の決済は通ったのに年度内に出資の支払いができないなど、細かいファイナンスの問題などが発生するため、“ズルズル引き伸ばすのは良くない”ということで一旦白紙になった」と説明。
その上で、新たなロードマップを提示。これによれば、2006年10月に情報通信審議会にて帯域検討の中間報告がなされ、2007年6月には答申がまとめられ、2011年以降にデジタルラジオで使用可能となる周波数帯域や帯域幅が決定するという。そして、時期は未定ながら、答申を受けて放送免許の免許人がDRPからNHKと民間というスキームに切り替えられ、「2007年春に、現在実用化試験放送で利用しているVHF 7chを利用した本格放送が開始できる」(塩山氏)という。 なお、2011年以降については「7ch以外に4~12ch/52MHz帯を利用したいとデジタルラジオ側は希望している」という。ただし、割り当てが変更され、2011年以降7chとは別の帯域を利用することになる可能性もある。その際は「新帯域と7chを1年程度サイマル放送し、新帯域への移行を実施したい」(塩山氏)とした。 また、塩山氏はDRPが実用化試験放送の増力を準備していると発表した事にも触れ、「現在は800Wで出力しているが、それが2.4kWに増力される。9月17日にはテストも行なわれ、実際に栃木県小山市の網戸で東京タワーからの電波を12素子のアンテナで受信してみた。比較としてTBSラジオは71dBμvだが、デジタルラジオは33.75dBμv(800W時は32.01dBμv)だった。低い数字だと思われるかもしれないが、アナログラジオと異なり、デジタルラジオではこれでも十分に受信できる」と説明。 これにより、2011年以前の出力は東京2.4kW/大阪240Wで行なわれ、2011年以降に全国エリアへと拡大する。塩山氏は「リスナーにとっては試験放送用の電波でもコンテンツが楽しめれば本放送と同じ。今後端末が一般向けに販売されれば、2011年以前の本格放送でも新しいラジオを楽しむことができる」と語る。 さらに、TBSラジオの取り組み案として、10月からデジタルラジオ用コンテンツの開発を開始し、KDDIがデジタルラジオ対応の携帯電話を年内に発売すると発表したことも考慮し、2006年12月頃からサービス放送(ティザー放送)を試験放送にて開始。2007年に設備の切り替えを行ない、2007年2月頃からプレ放送をスタート。本格放送に繋げたい考えを明らかにした。
■ エスケイネットは、ワンセグ/デジタルラジオに注力
次いで、エスケイネットのデジタルプロダクツ推進室 田野勉室長が登壇。同社のワンセグテレビ向け開発モジュールとして、CardBus対応PCカード、ExpressCard、MiniCardなど、各インターフェイスに対応したモジュールや、受信用のWindows XP向けアプリケーションなどを紹介。Windows CEを搭載したIntel Xscale評価ボードを利用し、CFカード用ワンセグ受信モジュールを組み合わせた組み込み向け開発試作機なども解説した。
また、デジタルラジオについても受信モジュールを評価キットとして開発中。デジタルラジオチューナの開発も予定している。さらに、放送局向けの標準受信機も開発中など、ワンセグ/デジタルラジオの受信機開発ソリューションに積極的に注力していることをアピールした。
□Intel Embedded Showcaseのホームページ
(2006年9月27日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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