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Appleが同社初の“フラッシュメモリ”プレーヤーとしてiPod shuffleを発売したのは、1年10カ月前の2005年1月。そのiPod shuffleがモデルチェンジし、11月3日より発売される。 初代shuffleは販売的にも大ヒットしたが、2005年の流行語としても取り上げられるなど、iPodの名を世に知らしめた製品ともいえる。1年10カ月といえば、新製品が続々と投入される市場の中では、かなり息の長い製品といえるが、第2世代となるshuffleでは大幅な変更が図られた。 従来は縦長の首掛けスタイルだったが、新shuffleはクリップ付きの小型の筐体を採用。液晶ディスプレイを備えず、丸型コントローラによる操作系などは従来モデルを踏襲しながら、デザインイメージは一新されている。 内蔵メモリは1GB。1モデル、1色のみのシンプルなラインナップとなった。AppleStore価格は9,800円。 なお、AppleStoreの店舗での発売は3日からだが、発表直後にAppleStoreの直販サイトで購入した人には、1日からすでに届き始めているようだ。 ■ 魅力的な小型化。Dockの活用がポイントに
付属品はイヤフォンと、イヤーパッド、専用の「iPod shuffle Dock」と、取扱説明書のみ。第2世代iPod nanoと同様に、ジュークボックスソフト「iTunes 7」のCD-ROMなどはバンドルされず、Appleのサイトからダウンロードする形だ。そのためパッケージも新iPod nanoと同様に小型の専用パッケージとなっている。
まず、本体で驚かされるのはその小ささ。外形寸法は41.2×27.3×10.5mm(幅×縦×厚み、クリップを含む)と、従来モデル(24.9×83.8×8.3mm)と比較するまでもなく小型。重量も15.5g(従来モデルは22g)と軽量化されている。背面にクリップを備えており、シャツなどに留めて利用できる。 ボディカラーはシルバーのみで、素材には酸化被膜処理されたアルミニウムを採用している。プラスチック筐体の従来モデルと比べると、見た目も触感も高級感を増している。 手に持ってみるとその小ささは際立つ。Appleでは、「世界最小・最軽量のデジタルオーディオプレーヤー」とアピールしているが、小ささを生かしたユニークなデザインは確かにインパクトがある。 液晶ディスプレイは備えていない。操作ボタンは従来から変更無く、エルゴノミック設計の円形コントローラを備え、再生/一時停止、スキップ/バックの各操作が可能。本体上面にはスライダー型スイッチを備え、電源のON/OFF切り替えのほか、リピート/シャッフルの再生切り替えが行なえる。
本体下面には、ヘッドフォン出力を装備。ヘッドフォン出力は、付属の「iPod shuffle Dock」との接続端子も兼ねており、パソコンとDockを介して連携できる。家庭と会社など、2箇所以上で利用する場合、Dockを持ち運ぶか、2つのDockを用意する必要がある。そのため、iPod shuffle Dockの単体販売も行なわれ、AppleStore価格は3,400円。 旧shuffleは首から下げるデザインとなっていたが、新型ではクリップ固定型になったことで、より装着の自由度は増している。スーツやシャツに固定するほか、小さいのでポケットに入れてもまったくかさばらない。
■ iTunes 7.0.2へのアップデートが必須。シンプルな操作性
パソコン側の転送ソフトはiTunes 7を利用する。パッケージには付属しないので、ウェブサイトからダウンロードして、PCもしくはMacintoshにインストールする必要がある。なお、新shuffleの利用には、発売に合わせて公開されたiTunes 7.0.2が必要となる。 再生フォーマットは、AAC、MP3、WAV、AIFFとAudible。Apple Losslessには対応していない。
転送もシンプルで、iPod shuffleを接続すると、転送画面に移行する。アルバムや楽曲を選択して転送してもいいが、shuffleではディスプレイを備えていないため、選曲しながらの再生はできない。iTunesの「オートフィル」機能を使うと、ライブラリから楽曲をランダムに選曲して、プレイリストを作成し、shuffleに転送できるため、気軽にシャッフル再生を楽しみたい人はオートフィルを活用した方がいいだろう。逆に、積極的な選曲を行なう場合は、iPod nanoなどディスプレイ付きのプレーヤーのほうが使い勝手はいい。 本体は小型でクリップ固定可能となっている。15.5gと軽量とは言え、しっかりしたシャツでないと、胸ポケットなどに装着すると裏返ってしまうことも。アクセサリ的に格好良く装着してもいいが、基本的に選曲操作を行なわないと考えると、電車などでの利用時にはポケットに突っ込むだけでもいいだろう。
本体の操作は非常にシンプルで、基本操作は前面に丸型ボタンを利用する。再生/停止を中心に、上下にボリュームアップ/ダウン、左右に曲戻り/送りを割り当てている。電源のON/OFFは、上面のスライドスイッチで切り替える。 電源を投入した後、再生/停止ボタンを押すと、再生がスタートする。あとは、丸型ボタンの左右で曲送り/戻し、上下でボリューム調整を行なうだけ。左右ボタンを長押しすることで、曲の早送り/戻しも可能となっている。 再生モードは、転送した楽曲の順に再生する「曲順再生」と「シャッフル再生」が用意され、スライドスイッチで切り替えられる。オートフィルで楽曲転送した場合は、ランダムに作成されたプレイリストを再生するためどちらでも問題ない。転送したアルバム順やプレイリストの順などを再生する際には、リスト再生を選択する。また、再生時に再生ボタンを3回続けて押すとプレイリストの先頭に戻ることができる。 HOLDスイッチは備えていないが、再生ボタンを3秒間長押しすると、HOLDになる。HOLDをしなくても、ポケット収納やシャツにクリップしている場合にはほとんど誤動作を起こさないので、あまりHOLDを使う機会もないかもしれない。なお、HOLDの解除は設定時と同様に再生ボタンの3秒間長押しする。 操作レスポンスは非常に良く、操作もシンプルなため、戸惑うようなところは全くない。ディスプレイが無いので、再生していて「この曲なんだっけ」と思っても確認できないのは若干ストレスが溜まるが、これは小ささや機能面とのトレードオフ。積極的にライブラリを活用して音楽に浸るというよりは、スポーツやBGM的なカジュアルな利用で、オーディオプレーヤーの活用の幅を広げてくれそうだ。 ■ 音質は良好。小型化がプレーヤーの可能性を拡大
新iPod nanoでは、イヤーパッドを省いて、小口径化した新イヤフォンが付属したが、新shuffle付属のものは従来のiPodと同じようだ。音質面ではさほど大きな差は感じないが、質感はshuffle付属のもののほうがチープに感じてしまう。 iPod/iPod nanoと比較すると、やや高域よりのバランスで、チャンネルセパレーションが非常に良い。中低域は他のiPodシリーズより若干弱く感じるが、中高域の見通しが良く、音像がくっきり出て気持ちいい。周波数帯域的にはさほど広いわけではないが、分解能が高く、個人的にはiPodシリーズで一番好みの音作りだ。音質設定機能などは備えていないが、基本的にはソースを選ばずに活用できるだろう。 なお、9月に発売された新iPodおよびiPod nanoでは、ライブ盤などの曲間のギャップを無くした「ギャップレス再生」に対応したが、残念ながらiPod shuffleではギャップレス非対応となっている。シャッフル再生時にはほとんどギャップを感じられないが、ギャップレス対応の新nanoのようなスムーズな繋がりにはなっていない。 ライブ盤を曲順再生してみると、やはり曲間ギャップは知覚できる。ただし、ギャップはかなり短く押さえられているので、元の楽曲間が完全に繋がっているようなソースでなければ、さほど気にならない。とはいえ、iPod nanoでシャッフルモードで再生した際、ギャップレスの接続が思いのほか気持ちよかっただけに、非対応は残念なところだ。 充電はiPod shuffle Dockを介したUSB経由で行ない、連続再生時間は最長12時間。バッテリ残量は電源ボタン脇のランプで確認でき、残量が十分な場合は緑に、少なくなるとオレンジ、赤色に変わっていく。 従来のiPod shuffleはUSB接続だったため、パソコンさえあればどこでも充電が可能となっていたが、新モデルはDockを持ち歩かなければならないのがやや面倒。もっとも対応機器の多いiPod周辺機器なので、いずれ、専用Dock以外の選択肢もサードパーティなどから発売されるだろう。 基本機能は従来のiPod shuffleと変わらないのだが、小型化されたことで活用の幅が大幅に広がったと感じる。とにかくとり回しが楽で、気軽に音楽を聞くための製品としての魅力は従来モデルから大幅に向上したと感じる。個人的には旧shuffleは選曲できないプレーヤーという中途半端な印象をぬぐえなかったのだが、新shuffleの小ささは、それを補ってあまりある魅力を生み出している。 マイナスポイントとしては、USB端子がなくなったのでUSBメモリとして活用するのが面倒なことぐらいか。多くの人にとっては小型化のメリットのほうが大きいだろう。 小型のプレーヤーとして通勤通学など日用的に利用するのもいいが、9,800円と比較的低価格なので、スポーツジム専用プレーヤーや、語学学習用にPodcast番組をコピーして、専用端末として活用するなど、小ささを活かした様々な応用が見込めそうだ。 □アップルのホームページ ( 2006年11月2日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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