|
ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の「PLAYSTATION 3(PS3)」用の専用リモコン「BDリモートコントローラ(CECHZR1J)」が7日に発売された。 通常、テレビやDVDプレーヤーなどのリモコンは赤外線方式だが、BDリモートコントローラでは通信方式にBluetoothを採用している。PS3では「ワイヤレスコントローラ」もBluetoothを利用しているなど、基本的なワイヤレスシステムをBluetoothで構築しており、リモコンもその一環に取り込まれているといえるだろう。
もちろん「BDリモートコントローラ(以下BDリモコン)」という名称の通り、基本的にはBlu-ray DiscやDVDビデオの再生用リモコンという位置づけ。BDプレーヤーとしての動作が高速で、操作性もこなれているPS3だが、ゲーム用コントローラによる独特の操作体系には馴染めない、という人も多いだろう。そうした人にとっては非常にうれしいオプションだ。価格は3,600円。 ただし、Bluetoothを採用したことで、例えば一般的な赤外線を用いた学習リモコンにBDリモコンの機能を登録することはできない。また、BDビデオのポップアップメニューなど、新しい操作体系の扱いがどうなっているかも気になるポイントだ。 なお、BDリモコンをPS3で利用するためには、6日に公開されたPS3の最新システムソフトウェア 1.30を適用する必要がある。 ■ シンプルな認証作業
リモコンの電源は単3電池×2本。外形寸法は約219×51×25.5mm(縦×幅×厚み)、重量は実測で103g(本体のみ)/139g(電池含む)。若干厚い印象も残るが、ソニーの液晶テレビ「BRAVIA KDL-40X2500」の付属リモコンと比較してみると、外形寸法もほぼ同じで、デザイン的にもかなり似ている。最近のソニーグループのAV製品用リモコンの意匠をかなり意識したデザインといえそうだ。
リモコンの上部に10キーを備え、上部左にイジェクトボタンや音声切り替え用の[AUDIO]、アングル切り替え用の[ANGLE]、字幕切り替え用の[SUBTITLE]ボタンを装備。その下に青/赤/緑/黄のボタンと、DISPLAY、TOP MENU、POP UP/MENU、RETURNの各ボタンを備えている。
中央には、ENTERキーと方向キーを配しているほか、その周囲にはPS3付属のワイヤレスコントローラと同じく、L1/2/3やR1/2/3、△、○、□、×といったボタンも装備。PS3で電源ボタンを兼ねる[PSボタン]は方向キーの下部に備えている。再生/停止や、スキップ/バック用の[PREV/NEXT]と、早送り/戻し用の[SCAN]、コマ送り用の[SLOW/STEP]といった再生系ボタンは本体の下部にまとめられている。 コントローラでは△でOSD表示など操作を覚える必要があったが、BDリモコンではプリントされた文字を見ながら操作できるので、説明書無しでも基本的な操作は問題なく行なえる。ただし、自照式ではないのでシアター環境などでの利用は厳しそうだ。 通常の赤外線リモコンでは、電池を入れればすぐに利用できるが、Bluetoothの場合は機器間での登録作業が必要となる。PS3が最新のバージョン1.30になっていれば、設定メニューの[周辺機器設定]-[Bluetooth機器登録」からリモコン登録が可能となる。 Bluetooth機器登録を選択すると、[BDリモートコントローラの登録]という項目が現れる。ここで決定キーを押すと、BDリモコンのENTERキー(方向キー中央)と、STARTボタンを同時に5秒以上押すよう促すダイアログが表示される。表示に従ってボタンを押すと、10秒程度で登録が完了する。基本的には「コントローラ 割り当て 7」として登録されるようだ。
なお、BDリモコンを複数のPS3に登録することはできない。Bluetoothでのペアリングを行なうと、新しく登録を行なった方のPS3のみ操作可能となり、以前登録したPS3は操作不能となる。現時点では、複数のPS3でBDリモコンを使い回すことはできない。同様に1台のPS3に複数のBDリモコンを登録することもできない。 ■ 驚異的な通信性能と無指向特性
PS3の主電源が入っている場合、BDリモコンのいずれかのボタンを押すと電源がONになる。ゲーム用のワイヤレスコントローラではPSボタンで電源ON/OFFとなっていたが、BDリモコンの場合、電源ON時のボタン指定は特にない。電源のOFF時は、ワイヤレスコントローラと同じくPSボタンを長押しして、コントローラや本体の終了を選択するという形だ。 ワイヤレスコントローラでは、しばらく利用しない場合は通信を停止してしまい、その後再度認証し、通信を開始するためにPSボタンを押す必要がある。しかし、BDリモコンは一度PS3側で登録を行なえば、こうしたスリープ状態に入ること無く利用できる。
AVリモコンとしては当たり前ではあるが、基本的に常に操作を行なうゲームのコントローラと違い、BD/DVDプレーヤー利用時にはメニュー設定や再生操作の後は、基本的にはコントローラを利用しない。そのため、ワイヤレスコントローラの場合、再生中に前のチャプタに戻る、といった簡単な操作時を咄嗟に行なう場合でも、いちいちPSボタンでコントローラを再認識させてから、操作する必要があるなど面倒だった。普通のAVリモコンとして利用できるのはうれしい改善といえるだろう。 XMBの操作や各種設定も問題なく行なえる。XMBの移動は中央の方向キーで、決定はENTERキーを利用。リモコン下部のボタンで、BDビデオやHDD上のビデオファイルの早送り/戻し、音声付き早見、スロー再生などが可能となっている。基本的な操作はかなりシンプルだ。 BDビデオ用として、使い勝手が向上するのは、POP UP/MENUボタンだろう。同ボタンを利用することで、ビデオ再生中にチャプタ選択や音声/字幕切り替えが可能。もちろん最初のトップメニューに戻るTOP MENUボタンも備えている。 字幕や音声をワンボタンで切り替え可能な専用ボタンを用意したことも、BDプレーヤーとして利用する場合はうれしい改善点。また、△ボタンを押して、専用のOSDを呼び出すこともできる。いずれもレスポンスはコントローラ利用時と遜色なく、非常に高速だ。
ただし、BD/DVD再生時の10キー操作は押しても任意のチャプタスキップなどにはならない。赤/青/緑/黄色のボタンについても、ソフトによっては機能が割り当てられるようだが、今回試した限りは特に動作しなかった。
Bluetoothの採用ということで気になるのが通信距離や指向性。特にカタログ値は無いが、多くのBluetoothが10m近い通信距離を持っているので期待が高まる。試したところ、編集部フロアのどの領域でも問題なく操作が可能で、パーティションで仕切られた会議スペースなどからも操作を受け付けた。 さすがに別の階に移動すると操作できなかったが、同一フロアであれば10m以上の距離でも、ほとんど障害物の影響なく操作できた。そのため、指向性についても赤外線とは全く感覚が異なり、PS3と正反対の向きに向けて操作しても、問題なく反応する。この無指向特性は通常の赤外線リモコンでは全く体験できないレベルといっていい。
また、ユニークなのは、電池残量を確認できること。BDリモコンでは単3乾電池×2本を電源として利用するが、XMB表示時に[PSボタン]を1度押すと、現在の割り当てチャンネルと電池残量がテレビに表示される。Bluetoothの双方向性を生かしたユニークな機能だ。 ただし、Bluetoothの採用はメリットばかりというわけではない。例えばテレビ用リモコンとして応用したり、学習リモコンにPS3の操作コマンドを登録することはできない。一般的な赤外線方式でないだけに当たり前ではあるが、このあたりは割り切りが必要だ。 また、「Xbox 360 HD DVDプレーヤー」に付属するリモコンでは、プレーヤー操作のほか、テレビのチャンネルも登録してテレビリモコンにも活用できた。チャンネル切り替えなどはさほど必要ないとも思うが、テレビ用のコードを登録できれば、「PS3とテレビの電源を入れて、入力をPS3に切り替えて、操作する」という一連の起動/基本動作を一つのリモコンで可能となるだけに、このあたりの割り切りは残念ではある。 ■ リモコンでゲームプレイ 基本的なメディア操作や設定作業のほぼ全てが可能と思われたが、「ゲーム」利用時には注意が必要だ。 【訂正】 今回、「RIDGE RACER 7」や「ブラスト・ファクター」の体験版、「GENJI」や「まいにちいっしょ」といったゲームで試したが、いずれも起動まではできるものの、そのままプレイはできない。ゲームのタイトル画面が表示されると、リモコン操作を受け付けなくなる。 ただし、ゲームを起動後にBDリモコンのPSボタンを長押しすると、コントローラ番号の変更画面が現れる。ここで、コントローラ番号を[7]から[1]に変更すると、ゲームプレイも可能となった。ゲーム終了後も電源を落とすまでは、同コントローラ設定のまま利用できる。 ただし、電源をOFFにすると、コントローラ番号は[7]に戻ってしまうため、再度ゲームを立ち上げた際にコントローラ番号の再設定を行なう必要がある。
【追記】 機能的にはコントローラとほぼ同じことが可能なので、ブラウザの起動や操作も可能。ただし、テンキーからの文字入力は行なえない。 ともあれ、BDリモコンを使うことで「BD/DVDプレーヤー」としての使い勝手が大幅に向上するのは間違いない。BD/DVDのみならず、HDD上のビデオやメディア再生を片手で気軽に行ないたいという人にもマッチするだろう。 リモコンの機能を考えると3,600円という価格は若干高く感じるかもしれない。また、1つの学習リモコンに機能を統合したいという人には全く向いていない。しかし、BD/DVDプレーヤーとしての操作性向上はもちろんのこと、Bluetoothによる新しい操作感など「新しい物好き」にとっては魅力的な製品になっている。PS3のAVプレーヤーとしての付加価値を高める重要なオプションの登場といえるだろう。 □SCEのホームページ ( 2006年12月7日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
Copyright (c)2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|