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■ 必要なのは高性能ハードだけでなく、その相互連携が生む利便性
記念すべき開催の基調講演に迎えられたのは、今年も米Microsoft会長兼CSAのビル・ゲイツ氏。ゲイツ氏自身もCESの基調講演は今回で丁度節目の10回目だ。 「現在、65%の家庭でデジカメが利用され、全米の40%の家庭で複数のPCが所有され、さらに若い人の多くがテレビを視聴するよりもPCを使う時間の方が長くなってきた。これはここ数年の動向として非常に大きな革新だ」(ゲイツ氏)。 どこのメーカーが最大サイズのテレビを出すのか、どこが最大容量のハードディスクを出すのかを確認するために、CES展示会場を見て回るのが好きだというゲイツ氏だが、現在は優れたハードウェアだけでは人々にリッチな体験を提供することはできなくなりつつあると主張する。 「優れたハードが相互にネットワークされたシステムこそが、今最も求められている機能であり、これこそが、現在のコンシューマエレクトロニクスのキーポイントだ」とゲイツ氏は指摘する。ここで言う「ネットワーク」は、サービス自体のことも指しているが、それよりも多様な機器を相互に接続し、システム全体で有機的な機能を発揮する仕組み…・・・すなわちソフトウェアこそが重要だというのだ。そして、そのソリューションを具現化するマイクロソフトとしての1つの"解"が「Windows Vista」だと語る。
■ マイクロソフトの新マイルストーン「Windows Vista」 Windows Vistaは新しいOffice2007と同時発売されることもあって、根幹ソフトウェアのメジャーバージョンアップとしてはWindows95以来のビッグイベントとして認識され、注目を集めている。ゲイツ氏はどんな機能が提供されるのか、実機を使って実際にデモを披露した。 披露されたのは「シャドウコピー機能」や「Windows Live Search」など。前者は誤って上書き保存してしまったファイルの前の状態を呼び出せる機能。後者はVista搭載PCのローカルとネットワークを区別無く一元サーチする機能だ。後者のデモでは、ビジュアル的なインパクトが強い、Google Earthによく似た3D地球儀的なデモを披露して来場者の視線を集めていた。 また、VistaではXbox 360ジョイパッド(有線タイプ)が標準のジョイパッドとして透過的に活用できるため、デモではパッドでラスベガスの町を飛び回るデモを実践。ちなみに3Dグラフィックスは、Direct3Dベースでアクセラレーションで極めて高速に動作するのが特徴となっている。
デジタル写真データの活用支援機能も備えており、写真データをドラッグ&ドロップするだけでDVDにライティングできたり、DVDビデオ形式のアルバムが作成できる「DVD Maker」をアピール。さらに、最上位のVistaである「Windows Vista Ultimate」の追加機能として提供される予定の「GroupShot」(仮称)は、複数の写真に存在する要素を選択し、それらを1枚の画像に自動合成してくれるレタッチソフト。こうしたユニークな支援ソフトはUltimateユーザーに「Ultimate Extras」として順次オンライン提供されるという。この他、ユーザーが撮影したムービーを「動く壁紙」として利用できる機能なども紹介された。
さらに、コンシューマ向けのVistaテクノロジーベースのサーバー「Windows Home Server」という製品も告知。HPとの共同開発で進められており、PC/Zune/Xbox 360の全てのデータを自動保存したり、それぞれの相互接続を支援できるという。コンシューマ向けのサーバーソリューションであるため、HDDなどのストレージデバイスの管理や増設なども簡単に行えるとのこと。まだ試作段階だが、2007年後半に発売予定となっており、製品名は「HP Media Smart Server」となる予定。
■ Xbox 360がConnected Entertainmentの中核を担う 続いて、Xboxをはじめとしたマイクロソフトのエンターテインメント系事業のトップである、President of Entertainment and Devices Divisionのロビー・バック氏が、ゲイツ氏が語る「Connected Experience」をさらに押し広げたキーワード「Connected Entertainment」について解説。
音楽に関しては2006年にリリースしたZuneについて言及。100万台以上のセールスを記録しており、北米でiPodに次ぐ2番目のシェアを持つポータブルオーディオプレイヤーになったと宣言。ワイヤレスネットワーク機能で音楽がダウンロード購入でき、さらには仲間とシェアして聞くことができることをアピールした。
ゲームについてはWindowsプラットフォームを使ったPCゲームこそが、実は全世界で2億人ものユーザーがいる世界ナンバーワンのゲームプラットフォームであることを指摘。また、欧米では大成功しているXbox 360は公約通り、出荷ベースで1,000万台を2006年12月31日時点で記録したという。ゲームコンテンツも、PC向にフライトシミュレータの定番「フライトシミュレータX」や、FPSゲーム「Shadow Run」、「Halo2 For Windows Vista」などがリリースされる。Xbox 360でも、2006年11月に発売され、わずか8週間で270万本のセールスという、近年としては珍しいスマッシュヒットとなった「Gears of War」があった。2007年には「Halo3」、「Grand Theft Auto4」というヒット確実なタイトルが控えており、"安泰"といっていい見通しを立てている。
ゲームにおけるコミュニティの充実についてはXbox LiveのWindows Vistaへの展開を挙げた。Xbox Liveは500万ユーザーを獲得しており、ゲーム専用ネットワークとしては世界最大。これがWindows Vistaへも展開されるのだから実際強力だ。「Shadow Run」、「UNO」、「Halo2」といったタイトルはPC(Windows Vista)とXbox360との相互オンラインプレイが可能と宣言され、ゲームプレイ体験の共有の幅が広がったと宣言された。
テレビと映像に関する「Connected Entertainment」の充実については、3つの方策でサポートすると言う。セルソフトとしては、Xbox 360 HD DVDプレーヤーをアピール。2つ目はMedia Centerを搭載したPC内のビデオファイルをXbox 360で再生できる「共有性」を強調。そして、3つ目としてXbox Liveの新サービス「Video Market Place」により、Xbox 360でハイビジョンを含む、オンデマンドビデオ配信が可能になったことをアピールした。
これに加え、Xbox 360が高い確率でハイビジョンテレビやブロードバンドに接続されていることを指摘。Xbox 360をIPTVセットトップボックスとして活用するソリューションを新たに発表した。現在のところ放送局としてAT&T、British Teleom、Deutsche Telecom、C-Com、Swisscomが賛同しているという。IPTVの成功例は少ないが、ゲーム機として絶大なシェアを持つXbox 360を活用してやってみようというのは、業界初の試みであり、その動向は非常に興味深い。
□関連記事 ■ 多機能化するXbox 360とPCの関係 以上のように、今年の基調講演の内容は、発売を直前に控えたVistaに絞られていたため、あまりセンセーショナルな情報はなく、例年と比較しておとなしめの内容という印象を受けた。 欧米で好調なXbox 360は、ついにゲーム機として以外のコンセプトを積極的に乗せ始めた。普及した機器に便利な機能をドンドンと追加させ、既成事実を積み上げ、ついにはデファクトスタンダードを勝ち取る方針はマイクロソフトの得意技とも言えるだろう。 Xbox 360 HD DVDプレーヤーだけでなく、オンデマンドビデオやIPTV用のSTBとしてXbox 360を活用する戦略は、AV的な視点から見ても動向が気になるところ。これを受けて、PS3の次なる一手にも注目が注がれる。 また、Xbox 360を多機能化させすぎると、PCのカジュアルユーザーが「Xbox 360でいいや」ということになり、PCと競合する可能性もある。12月に発表されたXbox 360用の「XNA」は実質的にはXbox 360上の.NET Framework(のサブセット)であり、この機能を充実させていけば、VistaとXbox 360で共通のソフトウェアも動かせるようになる。2007年のマイクロソフトは、PCとXbox 360の「統合と差別化」部分で大きな動きを見せそうだ。
□2007 International CESのホームページ(英文) (2007年1月8日) [Reported by トライゼット西川善司]
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