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2007 International CES【ビルゲイツ基調講演】
-Windows Vistaが切り開くConnected Experienceとは?
 Xbox 360がIPTV用のSTBとして利用可能に


「Connected Experience(相互接続された体験)が重要」と語るゲイツ氏

会期:1月8日~11日(現地時間)

会場:Las Vegas Convention Center
    Sands Expo



■ 必要なのは高性能ハードだけでなく、その相互連携が生む利便性

CESも今回で開催40回目
 International CES 2007が今年も北米時間1月8日より開幕する。今回のCESは記念すべき開催40回記念ということで、ロゴ表示にも「40th Anniversary 1967-2007」の表記が目立つ位置に入れられている。

 記念すべき開催の基調講演に迎えられたのは、今年も米Microsoft会長兼CSAのビル・ゲイツ氏。ゲイツ氏自身もCESの基調講演は今回で丁度節目の10回目だ。

 「現在、65%の家庭でデジカメが利用され、全米の40%の家庭で複数のPCが所有され、さらに若い人の多くがテレビを視聴するよりもPCを使う時間の方が長くなってきた。これはここ数年の動向として非常に大きな革新だ」(ゲイツ氏)。

 どこのメーカーが最大サイズのテレビを出すのか、どこが最大容量のハードディスクを出すのかを確認するために、CES展示会場を見て回るのが好きだというゲイツ氏だが、現在は優れたハードウェアだけでは人々にリッチな体験を提供することはできなくなりつつあると主張する。

 「優れたハードが相互にネットワークされたシステムこそが、今最も求められている機能であり、これこそが、現在のコンシューマエレクトロニクスのキーポイントだ」とゲイツ氏は指摘する。ここで言う「ネットワーク」は、サービス自体のことも指しているが、それよりも多様な機器を相互に接続し、システム全体で有機的な機能を発揮する仕組み…・・・すなわちソフトウェアこそが重要だというのだ。そして、そのソリューションを具現化するマイクロソフトとしての1つの"解"が「Windows Vista」だと語る。

Windows Vistaはマイクロソフトのこれまでの活動の中で1つの節目であり、過去10年間のコンピュータソフトウェアに対する研究成果の一つのマイルストーンにもなっているとゲイツ氏は言う


■ マイクロソフトの新マイルストーン「Windows Vista」

 Windows Vistaは新しいOffice2007と同時発売されることもあって、根幹ソフトウェアのメジャーバージョンアップとしてはWindows95以来のビッグイベントとして認識され、注目を集めている。ゲイツ氏はどんな機能が提供されるのか、実機を使って実際にデモを披露した。

 披露されたのは「シャドウコピー機能」や「Windows Live Search」など。前者は誤って上書き保存してしまったファイルの前の状態を呼び出せる機能。後者はVista搭載PCのローカルとネットワークを区別無く一元サーチする機能だ。後者のデモでは、ビジュアル的なインパクトが強い、Google Earthによく似た3D地球儀的なデモを披露して来場者の視線を集めていた。

 また、VistaではXbox 360ジョイパッド(有線タイプ)が標準のジョイパッドとして透過的に活用できるため、デモではパッドでラスベガスの町を飛び回るデモを実践。ちなみに3Dグラフィックスは、Direct3Dベースでアクセラレーションで極めて高速に動作するのが特徴となっている。

Windows Live Serachのデモ。ラスベガスの地図を表示。そこからXbox 360コントローラを使ってシームレスにラスベガスの街並みをフライバイ。客席からは歓声が上がった

スポーツファンにはたまらないMedia Centerの新機能「SportLounge」
 Media CenterのコンセプトはVistaにも継承されており、デモではさらに新しいMedia Centerの機能である「SportLounge」が紹介された。これはマイクロソフトとFoxSports.comが共同開発したもので、スポーツ中継のリアルタイム映像や結果データなどを、お気に入りのチームや選手などにフォーカスして視聴/録画できる、ユーザー本意にスポーツ中継が楽しめる新機能。この他、Media Centerユーザーに提供される新コンテンツであるShowtime/Nickelodeon/Starz Vongoのオンデマンドビデオサービスなども紹介された。いずれもハイビジョンクオリティでの配信となる。

 デジタル写真データの活用支援機能も備えており、写真データをドラッグ&ドロップするだけでDVDにライティングできたり、DVDビデオ形式のアルバムが作成できる「DVD Maker」をアピール。さらに、最上位のVistaである「Windows Vista Ultimate」の追加機能として提供される予定の「GroupShot」(仮称)は、複数の写真に存在する要素を選択し、それらを1枚の画像に自動合成してくれるレタッチソフト。こうしたユニークな支援ソフトはUltimateユーザーに「Ultimate Extras」として順次オンライン提供されるという。この他、ユーザーが撮影したムービーを「動く壁紙」として利用できる機能なども紹介された。

 さらに、コンシューマ向けのVistaテクノロジーベースのサーバー「Windows Home Server」という製品も告知。HPとの共同開発で進められており、PC/Zune/Xbox 360の全てのデータを自動保存したり、それぞれの相互接続を支援できるという。コンシューマ向けのサーバーソリューションであるため、HDDなどのストレージデバイスの管理や増設なども簡単に行えるとのこと。まだ試作段階だが、2007年後半に発売予定となっており、製品名は「HP Media Smart Server」となる予定。

本格的な写真合成系レタッチソフト「GroupShot」 滝が流れ落ちる渓流の動画が無限ループで再生される「動く壁紙」のデモ HPが2007年後半発売予定の「Windows Home Server」マシンの「HP Media Smart Server」


■ Xbox 360がConnected Entertainmentの中核を担う

 続いて、Xboxをはじめとしたマイクロソフトのエンターテインメント系事業のトップである、President of Entertainment and Devices Divisionのロビー・バック氏が、ゲイツ氏が語る「Connected Experience」をさらに押し広げたキーワード「Connected Entertainment」について解説。

President of Entertainment and Devices Divisionのロビー・バック氏
 「Connected Entertainmentの充実には2つの意味がある。1つはコンテンツそのものの充実。人々には音楽、映画、テレビ、ゲームといったデジタルコンテンツをいつでも欲しいときに入手したいという願望がある。もう1つは、ユーザー同士のコミュニティの充実のこと。人々は様々なデジタルコンテンツをいろんな意味で仲間と共有したいう願望がある」と語るバック氏。

 音楽に関しては2006年にリリースしたZuneについて言及。100万台以上のセールスを記録しており、北米でiPodに次ぐ2番目のシェアを持つポータブルオーディオプレイヤーになったと宣言。ワイヤレスネットワーク機能で音楽がダウンロード購入でき、さらには仲間とシェアして聞くことができることをアピールした。

 ゲームについてはWindowsプラットフォームを使ったPCゲームこそが、実は全世界で2億人ものユーザーがいる世界ナンバーワンのゲームプラットフォームであることを指摘。また、欧米では大成功しているXbox 360は公約通り、出荷ベースで1,000万台を2006年12月31日時点で記録したという。ゲームコンテンツも、PC向にフライトシミュレータの定番「フライトシミュレータX」や、FPSゲーム「Shadow Run」、「Halo2 For Windows Vista」などがリリースされる。Xbox 360でも、2006年11月に発売され、わずか8週間で270万本のセールスという、近年としては珍しいスマッシュヒットとなった「Gears of War」があった。2007年には「Halo3」、「Grand Theft Auto4」というヒット確実なタイトルが控えており、"安泰"といっていい見通しを立てている。

2006年に発売されたばかりのポータブルオーディオプレイヤー「Zune」 Xbox 360は公言通り全世界で1,000万台を出荷したという

 ゲームにおけるコミュニティの充実についてはXbox LiveのWindows Vistaへの展開を挙げた。Xbox Liveは500万ユーザーを獲得しており、ゲーム専用ネットワークとしては世界最大。これがWindows Vistaへも展開されるのだから実際強力だ。「Shadow Run」、「UNO」、「Halo2」といったタイトルはPC(Windows Vista)とXbox360との相互オンラインプレイが可能と宣言され、ゲームプレイ体験の共有の幅が広がったと宣言された。

ついにPCとXbox 360で同一タイトルの相互対戦や協力プレイが可能になる。できそうでできなかった新しいゲームのプレイスタイル

 テレビと映像に関する「Connected Entertainment」の充実については、3つの方策でサポートすると言う。セルソフトとしては、Xbox 360 HD DVDプレーヤーをアピール。2つ目はMedia Centerを搭載したPC内のビデオファイルをXbox 360で再生できる「共有性」を強調。そして、3つ目としてXbox Liveの新サービス「Video Market Place」により、Xbox 360でハイビジョンを含む、オンデマンドビデオ配信が可能になったことをアピールした。

Xbox 360でオンデマンドビデオ配信が開始される。有料コンテンツはXbox Liveのマーケットプレイスにてマイクロソフトポイントで購入が可能

 これに加え、Xbox 360が高い確率でハイビジョンテレビやブロードバンドに接続されていることを指摘。Xbox 360をIPTVセットトップボックスとして活用するソリューションを新たに発表した。現在のところ放送局としてAT&T、British Teleom、Deutsche Telecom、C-Com、Swisscomが賛同しているという。IPTVの成功例は少ないが、ゲーム機として絶大なシェアを持つXbox 360を活用してやってみようというのは、業界初の試みであり、その動向は非常に興味深い。

Xbox 360がIPTVセットトップボックスとして活用できるようになる

□関連記事
【2006年11月8日】北米でXbox 360向け映画/TVドラマのダウンロード販売が開始
-HD/SD動画を配信。「マトリックス」や「M:i:III」など
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20061108/ms.htm


■ 多機能化するXbox 360とPCの関係

 以上のように、今年の基調講演の内容は、発売を直前に控えたVistaに絞られていたため、あまりセンセーショナルな情報はなく、例年と比較しておとなしめの内容という印象を受けた。

 欧米で好調なXbox 360は、ついにゲーム機として以外のコンセプトを積極的に乗せ始めた。普及した機器に便利な機能をドンドンと追加させ、既成事実を積み上げ、ついにはデファクトスタンダードを勝ち取る方針はマイクロソフトの得意技とも言えるだろう。

 Xbox 360 HD DVDプレーヤーだけでなく、オンデマンドビデオやIPTV用のSTBとしてXbox 360を活用する戦略は、AV的な視点から見ても動向が気になるところ。これを受けて、PS3の次なる一手にも注目が注がれる。

 また、Xbox 360を多機能化させすぎると、PCのカジュアルユーザーが「Xbox 360でいいや」ということになり、PCと競合する可能性もある。12月に発表されたXbox 360用の「XNA」は実質的にはXbox 360上の.NET Framework(のサブセット)であり、この機能を充実させていけば、VistaとXbox 360で共通のソフトウェアも動かせるようになる。2007年のマイクロソフトは、PCとXbox 360の「統合と差別化」部分で大きな動きを見せそうだ。

ほかにも、最先端研究動向として自動車メーカーのFORDと共同開発している車載コンピュータソフトウェア「Synch」や、マイクロソフトが考える未来のライフスタイルのプレゼンテーションが行なわれた

□2007 International CESのホームページ(英文)
http://www.cesweb.org/
□米Microsoftのホームページ(英文)
http://www.microsoft.com/
□関連記事
【2006年1月6日】【CES 2006】ビル・ゲイツ基調講演レポート
-Vista/WMP11/Xbox 360など。HD DVDリッピングのデモも
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060106/ces08.htm

(2007年1月8日)

[Reported by トライゼット西川善司]


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