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携帯電話では、もう上位機種だけのものではなくなったワンセグ機能。パソコン用やカーナビなどの付加価値としても人気で、受信エリア内に限るなら普及期に入ったともいえる。 そんな中、BLUEDOTやKFEは、ワンセグのポータブルテレビを発売し、新ジャンルを開拓。そして、今回採り上げるソニーの「XDV-100」は、「ワンセグ+AM/FMラジオ」という組み合わせを提案した。搭載する機能の絞り込みなど、同社が「通勤ラジオからの置き換えを狙った」とするコンセプトも興味深い。今回はシルバーモデルを借りて試用した。 ■ 渋めのラジオっぽい作り。ボタン数も限定
XDV-100は、ワンセグとアナログのFM(ステレオ)/AM(モノラル)対応の受信機。2.83型/320×240ドットのTFT液晶ディスプレイを搭載する。録画や録音、デジタルラジオの受信には対応しない。
BLUEDOTの「BTV-400K」は4型/480×272ドットの液晶で、外形寸法が70×126×11mm(縦×横×厚さ)と薄型/大画面。一方、XDV-100は約61×98.3×15.1mm(縦×横×厚さ)とやや厚みがある。 デザインは、BTV-400Kは光沢感のある表面や、タッチパネルの操作系など、どちらかといえば若者向けの印象を受けるが、XDV-100は角ばっていて見るからに無骨な感じで、個人的には好感が持てる。丸みを帯びた形状よりもこういったデザインが好きな人も少なからずいるだろう。 側面や背面などを見るとワンセグテレビ、というより普通のラジオっぽい形なので、電車の中でもさりげなく使える。逆に、デザイン性の高いポータブルプレーヤーを外に出してアピールしたい人には物足りないかもしれない。ともかく、最近のソニー製品にしては、女性が好みそうなデザインでないことは確かだ。カラーバリエーションもブラックとシルバーのみと割り切っている。
ソニーも製品のターゲットユーザーを40~50代の男性としており、「あえて男性向けのデザインにした」と説明している。操作ボタン周りの表示もアイコンや英字ではなく、やや大きめの日本語となっており、年齢層を問わず操作しやすい作りだ。 ただ、これまで携帯用として名刺サイズのラジオを使っていた人には、厚さは若干気になるかもしれない。スーツやジャケットの内ポケット程度なら問題なく収められるが、シャツの胸ポケットだとやや厚ぼったくなってしまう。ラジオとワンセグを収めるために必要な筐体サイズだったのは仕方ないところだが、「持っているのが気にならないサイズ」というレベルにはまだ達していない。
操作は画面右のジョグレバーを中心に利用。レバーを押し込むことで「決定」の操作となる。側面には電源ボタンを含む横長のボタンを、天面には音量+/-ボタンを備える。この横長ボタンは突起部が小さいため、人によっては押しにくく感じるかもしれないが、ボタン数も少ないためポケットの中に入れたままでも操作できるレベル。 現在店頭に並ぶ小型ラジオ製品では、チャンネルプリセットボタンを備えるモデルが多いが、この製品には搭載しない。ポータブルラジオに慣れた人には不便かもしれない。 アンテナはフリーアングル/伸縮式のロッド型。すぐに引き出せるようにするためか、アンテナ先端は収まり切らないようになっている。FM利用時にはイヤフォンコードをアンテナとして利用するため、接続されていないと接続を要求するメッセージが表示される。なお、イヤフォンをつないでもスピーカーから音声を出すことはできる。
付属品はイヤフォンやストラップのほか、液晶保護カバーや、キャリングケース、クレードル型の充電スタンドなど。液晶保護カバーは簡易スタンドとしても利用できるほか、イヤフォンを巻きつけて固定できるので便利。 キャリングケースは、液晶保護カバーをつけたままでも本体収納できる余裕のサイズだが、衣服によってはポケットに入りきらない大きさかもしれない。
■ ワンセグ+ラジオの相互補完で便利に使える
ワンセグを見る場合の操作は、電源ON後に、都道府県を選択するか、オートスキャンまたはマニュアルでチャンネルを設定。FM/AMラジオも同様に地域設定または手動スキャンで見られる状態になる。プリセットのチャンネルリストはワンセグ/ラジオ共に3つまで登録できる。選局時は、ワンセグ/ラジオ共にレバー上下で切り替える。 画質は5段階の明るさ以外は変更できないという割り切った仕様。アスペクト比は16:9/4:3が選べるが、16:9の番組を全画面表示にすると左右がカットされた映像になる。字幕は1と2が利用可能で、16:9ではテレビ映像の下に、4:3ではオーバーレイで表示される。
EPGは、視聴中に「画面/バンド」ボタンを押すことで表示。16:9表示→4:3表示→EPGの順で切り替わる。このボタンに割り当てたのは、操作系をまとめるためだとは思うが、ボタン表示には「番組表」の文字がないため、初めて触った時にどうやって出すのか少し迷った。EPGを見る度に画角を変えなければならないのは違和感もある。 例えば、視聴中にジョグレバーを押し込むことでEPG表示にしてもいいのでは? とも思ったが、その操作は利用中のチャンネルリスト一覧表示に割り当てられており、そこから選局もできる。これはこれで必要な機能だ。中央ボタンはEPGに、チャンネル切り替えはラジオのように独立したボタンにしても良かっただろう。 まして、ワンセグ機器でもあることから、最初のユーザーは受信チャンネルの比較的多い都市在住者が大半となるのは間違いない。人によってはそう頻繁に切り替えることはないだろうが、受信に特化した機器ではあるので、今後のモデルで検討する価値はあるように思う。ちなみに、レバー長押しだと受信中チャンネルをマニュアルでリストに登録できる。なお、EPGからの視聴予約は行なえない。
そのほか、画面には電池残量や、受信レベル(4段階)、現在使用中のチャンネルリスト番号が表示されている。また、「画面/バンド」ボタンを長押しすると、画面を消してワンセグの音声のみ聴くことができた。携帯電話でも同様のことはできるが、例えば移動中にいったん電車を降りる時などに活用できそうだ。 画質は解像度がワンセグ放送と同じQVGAということもあり、受信状況さえよければ特に問題ないレベル。また、映像上のテロップや、字幕も普通に判別できる。視野角は、ポータブル機器としてはやや狭く感じるが、周囲から覗かれる心配は少ない。 受信感度も比較的良好で、編集部のある東京・千代田区では東京MXテレビを含む全チャンネルが受信できた。自宅のある練馬区で携帯電話「W51T」と比較したところ、W51Tの方にやや分があり、東京MXテレビの受信では少し差が出たが、他のチャンネルではほぼ同等だった。 JR中央線で新宿から高尾方面に移動しながらテストしたところ、高架下などでは映像が切れ気味になるほか、通過駅のある比較的速い電車内だと、途切れが顕著になる。もっとも、この傾向はW51Tでもほぼ同じだ。さらに進むと、荻窪では見通しがよい場所の走行中でも受信が乱れ、吉祥寺、三鷹辺りでは内容がほぼわからなくなる。立川では全く受信できない状態だった。 ただ、特徴的なのはワンセグの受信レベルが低い場合の「受信できません」という表示が出るのがやけに早いこと。視聴中に受信レベルが下がった場合は画像が乱れるだけなのだが、チャンネルを変える前から受信が悪い場所などでは、携帯電話やUSBワンセグチューナのように、しばらく探索する様子を見せるのではなく、すぐエラー表示となる。 場合によっては、「受信中」表示のままで粘ることもあったが、全体的に探索時間は短いように感じる。電波状況の微妙なところで無理に見るよりは、ストレスが少ない。なお、一旦エラーとなっても受信できるようになればボタンを押さなくても表示されるのは他の機器と同様。 起動時間は、ワンセグの状態で電源ONから映像表示まで約5秒前後。ちょっとした時間に取り出して見るなら、携帯電話でメニューを呼び出すよりは簡単に使える。チャンネル切替も、受信状況によるが携帯電話のW51と比べると総じて1~2秒早かった。
音声は内蔵スピーカーまたはイヤフォンで聴くことができるが、スピーカーは一般的なラジオ受信機と同様のモノラルのため、メインはイヤフォンになるだろう。切り替えは「設定」ボタンを長押しすることで行なえる。音質は、ワンセグだとソースの問題でシャリシャリした傾向は否めないが、FMでは受信環境が良ければ音楽コンテンツでも満足できる。 ワンセグの視聴エリアは現状ではまだ広くないため、FM/AMと併用ができる点は便利。なお、XDV-100ではワンセグとラジオの同時受信は行なえない。例えば、映像はワンセグで、音声はラジオでということができても面白いが、試しに携帯電話のワンセグとXDV-100のラジオで高校野球を見たところ、デジタル放送特有の遅延により、常に音声が先行するという結果になった。受信すること自体は可能になったとしても、この差を解決するのは容易ではないかもしれない。 メニューはワンセグ受信時の場合、テレビ映像にオーバーレイ表示され、設定中でも何の映像を受信しているかは判別できる。字幕のある番組なら字幕を注視すれば内容がわからなくならずに済むのは便利だ。 設定メニューはシンプルで、ワンセグ/ラジオとも項目は「画面設定」、「基本設定」、「プリセット設定」の3種類。各項目内の設定内容も最大6種類で、画面がスクロールすることはなく、一覧性は高い。ワンセグ/ラジオで共通の設定項目としては、画面の明るさ(5段階)や、30/60/90/120分のオフタイマー設定などがある。
連続視聴時間は、仕様ではワンセグ放送受信時では最大5.5時間、FMステレオラジオは約25時間、AMは約30時間。貸出機でチャンネルを数回切り替えながら使用したが、ワンセグ(音声はイヤフォン出力)は5時間15分ほど連続で受信できた。 充電には付属クレードルを利用。特にバッテリの持続に大きな不満があるわけではないが、外出先で切れても大丈夫なように、単3電池などが使える外付けの電池パックなどがあってもいいように思う。 ■ デジラジ対応など、受信端末としての完成に期待
携帯電話やパソコンのUSBワンセグチューナなど、見られる手段は増えたワンセグだが、ソニーは製品発表時、「携帯電話でワンセグを見るのに抵抗がある人など、潜在的な需要はある」と見ていて、この製品で「ワンセグを知っていても見たことがない層」の取り込みを狙うという。その意味では、男らしいデザインや「ワンセグを見なくてもラジオとして使える」という安心感は魅力だ。 ハードウェアとしては、マニュアルを見ずに一通りの操作ができる点など完成度は高い。データ放送には非対応だが、想定ユーザー層でのデータ放送の需要などを考えると、第1弾モデルから搭載する必要は無いように感じる。 録画/録音機能については、対応してほしいという人も少なからずいるとは思うが、これ以上厚みなどが増すとしたら、個人的には必要ないと感じる。この製品は受信機としてのブラッシュアップをまず追求し、録画対応などはまた別のシリーズでもいいのではとも思える。 シンプルさが売りだが、もし付加機能を入れるのであれば、一部の携帯電話で搭載されているデジタルラジオへの対応を望みたい。今回、AMラジオを内蔵した点は良い選択だったと思えるので、今後のモデルで期待したいところだ。受信エリアやコンテンツ数など今は問題も多いが、専用端末でソニーが先駆けとなれば、デジタルラジオ自体の普及にも大きなステップとなるだろう。 なお、デジタルラジオのほか、フラッシュメモリやカードスロットの搭載についても同社に尋ねた時には、「検討項目には当然含まれている」と前向きな回答を得られた。内蔵のH.264デコーダを利用して、メモリーカード内のファイルが再生できる機能が本体サイズなどの問題をクリアできるなら、喜ばしいことではある。 もっとも、録画/録音機能やデジタルラジオ、カードスロットなど全てを組み込んだとしても、それは今のワンセグケータイから通信機能を省いただけの製品。個人的には携帯電話のような便利さではなく、毎日持ち歩くものに加えても良いと思えるほどの薄さやバッテリ持続を追求し、低価格化も実現して欲しい。搭載する機能が増えていくのか、あくまで通勤ラジオのシンプルさを守り続けるか、今後の行方も気になる第1弾製品だ。
(2007年3月30日) [AV Watch編集部/nakaba-a@impress.co.jp]
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