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ソニーから技術継承した新ディスプレイ「FED」を発表
−19.2型FEDを公開。2009年の実用化を目指す


4月9日発表


 ソニーが開発していた次世代ディスプレイ「FED」(Field Emission Display/電界放出ディスプレイ)事業を継承した株式会社エフ・イー・テクノロジーズは9日、事業説明会を開催。19.2型のFEDディスプレイを公開した。

 エフ・イー・テクノロジーズは、ソニーと投資ファンド テクノロジーカーブアウト投資事業有限責任組合(TCI)が共同で設立したFED事業会社。新会社の資本はTCIとソニーが共同で出資。ソニーグループは新会社にFED関連資産を譲渡し、技術や人材などの経営資源を提供、新会社でFED事業化に向けた研究開発を行なう。


■ 自発光デバイスならではの映像。均一性が特徴

19.2型WXGAパネルを初公開

 今回、エフ・イー・テクノロジーズの事業説明とともに、開発中のFEDが展示された。

 同社が開発したのは、19.2型1,280×960ドットのFEDで、輝度は400cd/m2、コントラストは2万:1。画素ピッチは0.306mm。FEDは、CRTと同様に電子をカラー蛍光体にぶつけて発光させる自発光型のディスプレイ。ソニーのトリニトロン技術の一部を継承し、CRTに近い構造としながら、広視野角や高コントラスト、低消費電力などを特徴とする。


蛍光体はCRTをベースに新開発 放送用マスターモニタとの比較 製品化時には26型程度でフルHDとなる見込み。発表会場では2枚のFEDパネルを利用してデモを行なった

 一瞬だけ点灯して画像表現を行なうインパルス型駆動のため、ホールド型の液晶ディスプレイに見られる残像感はほとんどなく、動画視認性に優れているという。また、24fps〜240fpsまでの対応を確認済みで、プロ仕様の特殊用途でも利用可能としている。

FEDの構造 インパルス駆動により高い動画応答性能を実現 滑らかな階調表現が可能に

 電子を蛍光体に衝突させて発光させる自発光式という点で、キヤノンの開発している「SED」に近いが、SEDとは電子源となる「エミッタ」の構造が異なっている。SEDではNano Slitと呼ばれる薄膜上のスリットから電子を取り出すが、FEDではスピント型と呼ばれる円錐状のエミッタ構造を採用。1ピクセルに対して微細なエミッタ(ナノスピントエミッタ)を1万個以上対抗させる構造により、画面の隅々まで歪みのない均一な映像再現が可能という。

 また、スピント型の採用により、低電圧駆動も可能。約15Vで駆動できるため、量産時にはパネルドライバを液晶用とほぼ同等のコストで実現できる。また、カソードのアドレス方式は単純マトリックスのため、配線設計が容易で製造しやすいとしている。

エミッタ構造 ユニフォーミニティ(均一性)などがナノスピントエミッタの利点 アドレス方式は単純マトリックス

FEDとLCDの構成部材の違い

 蛍光体はCRT用をベースにEBU/SMPTEに準じた新開発のものを採用。蛍光体、エミッタともに1万時間以上の長寿命特性を確認しているという。また、FEDでは部品点数が少なく、構造が比較的シンプルなため、「本質的には低コスト化が可能(技術企画本部 監物秀憲 本部長)」としている。


放送向けモニターなどプロフェッショナル市場に展開

 事業展開としては、フルHDで30型以下のサイズでの立ち上げを予定。「24〜26型ぐらいからになるのではないか(長谷川正平社長)」という。その際のパネル解像度は1,920×1,080ドットのフルHDとなる予定。

 分野としては、動画性能や高コントラスト性能、階調表現などの特徴を活かして、プロの映像クリエイターや、放送局用のマスターモニタなど、ハイエンド市場向けの展開を目指す。

 発売時期については、「今回がデビュー戦。これから1年以内に次のステップにいくために開発を進めるが、商品化はベストケースで2009年頃(長谷川社長)」としており、さらに民生展開については「第1弾の成功次第。早くてもプロ向けのさらに1年後ぐらいにはなる」という。

 今回発表した19.2型FEDは、11日より東京ビックサイトで開催される「ディスプレイ2007」に出展される。


■ FEDはソニーに収まりきらない技術

エフ・イー・テクノロジーズ 長谷川正平社長

 自ら「きれいなディスプレイ大好き人間」と語る長谷川正平社長は、トリニトロンをはじめ、民生向けのハイエンドCRTモニタ「プロフィールプロ」の設計やシャープらと共同で開発を行なった「プラズマアドレス液晶(PALC)」など、ソニーのディスプレイ事業に関わってきた。FEDには、'99年に米Candescentと共同開発をスタートして以来、携わってきたという。

 しかし、2005年にソニーは、自社のテレビ事業を液晶テレビを中心とした「BRAVIA」に加え、次世代技術として有機ELを中心に据えることを決定した。ただし、FEDについても「このままやめるのはもったいない、なんとか継続できないか」という声が、開発陣のみならず、経営陣にもあったという。そのため、TCIの支持を受けて、新しい「カーブアウト」という形で新会社の設立に至ったという。

 FEDについては「シェアを追うことなく、健全な利益体質を目指す」とし、プロフェッショナル向け市場を中心に事業化を目指し、「技術優位や高付加価値に共感いただける顧客に訴えていきたい」とした。

 量産に向けて、「1年以内に次のステップにいくために、開発を続ける。その後の展開は、パートナーの方針にもよる」としており、2009年の商品化は「ベストケース」と強調している。

 また、現時点では事業化に向けた開発を進めているところだが、最終製品の開発は行なわず、基本的にはモジュール供給会社となる見込み。「形や仕様については、セットにする会社が考えることとなると思う」という。なお、技術的には50〜60型までの大型化は可能としている。

 TCI出身のエフ・イー・テクノロジーズ桝谷均取締役は、同社の設立にあたり採用した「カーブアウト」について説明した。

 「大企業の新事業創出という点では、スピンアウトと社内ベンチャーの中間的なもの」とし、「本業と乖離したりあるいはバッティングしたり、という問題がある場合でも、資本/経営的には独立しながら、協力関係を築いて事業拡大に向けて取り組める」と説明。その上で、ソニーの本筋に収まりきらないコンセプトと戦略的スパンを持った育てるべき技術。里子に出しても育成を見守るべきで、だからこそ、ソニーも協力してくれている」と解説した。

エフ・イー・テクノロジーズ桝谷均取締役 カーブアウトの特徴

ソニー技術戦略部の武田部長

 また、ソニー技術戦略部の武田 立部長は「FEDはソニーが長年暖めてきた技術。だが、全ての技術を市場に投入することはできず、経営効率の観点から選択と集中を行なう必要がある。そのため液晶と有機ELに集中することにした。これがソニーの“ビジネス状況”」とソニーの事情を説明した。

 「しかし、FED技術は完成度も高く、このまま開発をやめてしまうには忍びないし、社会的な資産を葬り去るのはもったいない」と今回のカーブアウトに繋がったという。


□エフ・イー・テクノロジーズのホームページ
http://www.fe-tech.co.jp/
□関連記事
【2006年12月7日】ソニー、「FED」事業化に向け、ファンドと共同で新会社
−次世代ディスプレイ事業化の可能性を検討
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20061207/sony.htm

( 2007年4月9日 )

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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